Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

スプリングハザード

2007/05/07 03:34:37
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※『春爆発』の続きの話です。
 あの話はもういいや、という方は無理をしないようお願いします。
 また、壊れ話が苦手な方も無理をしないようお願いします。



『春爆発』の内容は覚えていない、または前の話は読む気は無いという方のためにあらすじ。


『春度バースト現象
 
 春が終わるときにもたらされる現象。
 春らしい気候が少ないときに人間から発せられるハズの春度が溜まってしまうことが発生する理由。
 特に思春期に入った人間は影響を受けやすく、人格が大きく変わることもある。
 心のままにワガママに君を突き破りたい現象とも言われ、この季節に多くのカップルが誕生する。
 妖怪などは基本的に温度差の影響は受けないため、この現象が起こることはあまりない。』


春が終わりを迎える頃に幻想郷の人間と半人間に突如襲い掛かったこの現象。
これに感化された者は己の羞恥心も背徳感も忘れて、性欲を満たす為に暴走した。
そして時は過ぎて5月となった。
あの時の悲劇は忘れ去られたかに思えたが?



というわけで本編をどうぞ。







































「夏ももう近いわねぇ。」


お茶を飲みながら一人季節の流れを感じている人間がいた。
博麗の巫女こと博麗霊夢だ。


「まぁどの季節になってもお茶がおいしくてたまらないけどね。」


暖かい陽射しに照らされながら境内を見る。
極楽浄土があるのならこんなところではないかと思わせる風景に酔いしれるのだった。
と・・・


「あら?」


白い服を着た女の子がうつ伏せに倒れていた。
霊夢はとりあえず近付いてみた。


「あなた・・・リリー・ホワイトだっけ?こんな所で何してるの?」


弱弱しくリリーの体が動き、霊夢を見る。
春には笑顔満開とでも言うような顔のリリーであったが、この時ばかりは顔はやつれていた。


「だ、大丈夫?」

「ま・・だ・・・」

「まだ?」


何か伝えたいことがあるのか。
春はもうそろそろ終わりを告げる。
夏が来ればきっとこの子は消えてしまう。
だけどまだやりたいことがあるのだろう。


「ここが・・・春なんですよぉおお!!」

「な!?」


突然リリーが霊夢に向かって飛び込んだ。


(ピカッ)


その瞬間、目の前が白くなった。
そして次に頭の中で桜の花びらが巻き上がる光景が浮かぶ。
その光景が見えたと認識した瞬間には再び視界が戻っていた。


「な、何!?今のなんなの!?」


気付くと目の前にいたはずのリリーの姿が無かった。
今ので今年最後の力を使ったのだろうか。
しかし妙なことを言ったものだ。


「ここが春ってなんのことかしら?どこが春?」


変なの、と心の中で呟いた。
春の妖精が消えたということは夏の始まりと捉えていいのか。
しかしまだ春が残っているような言い方が気がかりだ。


<まだわかってないようですね。>

「な!?どこ!?」


どこかから声が聞こえた。
さっきまでいた春の妖精の声が。


「どこにいるの!?」

<あなたの中です。>

「な、なんですって!?」

<どうやらあなたには春度バースト現象の影響がなかったようですね。
 というかバーストされずに溜まりっぱなしとは・・・流石は年中頭が春の巫女さんです。
 これで私はこのまま来年の春を待てるわけですね。>

「春度バースト現象!?何それ!?」

<人間に溜まる春度・・・しかし春らしい気候が無い年では春度は発散されない。
 そして夏という環境の変化などにより、一気に春度を発散するために人間は暴走します。
 性欲を満たすことで春は発散されるのですが・・・あなたはなかったのですね。>

「・・・他のみんなはどうなったの?」

<そりゃもう、色々エロエロでしたよ。
 あなたが発散しようとしなかったのはまだ春度が安全域だったからでしょう。
 なんて容量なんだ、あなたは。>

「ふーん、なるほどね。で、あなたがいることで私に何か害になることはあるかしら?」

<ありませんよ。むしろ年中私があなたの中にいることで話相手になってあげられます。>

「・・・まあ、いいわ。いさせてあげる。」

<ありがとうございます!>


巫女さん軽く了承。
そんなわけで春の妖精は霊夢の中にいついたのだった。
しかしその軽い考えで後に悪いことが起こるとは今の霊夢には知る由もなかった。




次の日のお昼ごろ・・・
従者に日傘を差してもらいながら飛んでくる吸血鬼がやってきた。


「霊夢ー、遊びにきたわよー。」

「あら、レミリアじゃない。今日は咲夜も一緒ね。お茶入れるから待ってて。」

「お構いなくとは言わないわ。むしろ構ってー。」

「はいはい。」


お茶を3人分用意して縁側に座る。
しかし何故だか今日のレミリアと咲夜の様子がおかしい。
何故か2人が妙に距離を置いている。


「どうしたの?なんか・・・2人ともやけに離れてるじゃない。」

「べ、別にいつもどおりよ。あ、お茶おいしいわ。」

「・・・・・おいしい・・・。」


咲夜は何故か顔を赤くして俯いている。
霊夢は何があったのか気になった。


「最近何かあったの?咲夜の様子もおかしいしさ。ケンカ?」

「・・・・・ケンカならまだいいわよ。」

「うっ、くっ・・・。」


あ、咲夜が泣き出した。
と、ここで桜の花びらが一枚散ってくるイメージが流れ込んできた。
どうやら春の妖精の呼びかけらしい。


<霊夢さん、それ以上聞いてはいけません。
 咲夜さんは春度バースト現象の影響を最も強く受けた一人なのですから。>

「え、そうなの?ってことは、咲夜はやっちゃったんだ。そりゃショックだわ。」

「なっ!!?」

「霊夢ぅっ!!それ以上言うとナイフ千本飲ますぞっ!!」

<れ、霊夢さん!!>

「うわっ、やっば!!」


巫女さん、冗談まじりで逃げる。
メイドさん、マジで追いかける。
吸血鬼のお嬢さん、緑茶を楽しみながら過去の記憶から必死に逃げる。


「まぁてぇえええ!!!」

「待たないわ!待つのは性に合わないわ!」

「待ちなさい!待たなきゃあなたを八つ裂きよ!」

「やなこった!どうせ待っても八つ裂きね!?」

「そのとおり!どのみちあなたは八つ裂きよ!」

「マジですか!?それって本気で言ってるの!?」

「当たり前!じゃなきゃあなたを追わないわ!!」

「落ち着いて!私が悪いと認めるわ!」

「許さない!ナイフの錆になりさい!」

「駄目だって!幻想郷はどうなるの!?」

「大丈夫!お嬢様がいるじゃない!」

「何よそれ!?誰でもいいわけないでしょう!」

「うるせぇよ!とっとと地獄に落ちちまえ!」

「超怖い!キャラ壊れたよ!咲夜さん!」


以上、巫女とメイドの追いかけっこ連歌でした。



こんなやりとりをしていて一見余裕そうだが、咲夜はかなりヤバイ状態だ。
霊夢はプレッシャーを感じて必死になって逃げた。


「こ、ここなら大丈夫かしらね。」


境内の近くの茂みに入り込んでなんとか咲夜の目から逃れた。
あの怒りようでは本当に殺されかねない。
とりあえずレミリアに頼んでなんとかしてもらうしかない。


<霊夢さん、私と話すときはわざわざ声に出さなくていいですから。>

「(あ、そうなの?それにしてもどうしてああなったのか知りたいわ。)」

<咲夜さんに症状が表れると突然美鈴さんを襲い始めたのです。
 そして人前にも関わらずエロいことしちゃいましてね。
 美鈴さんは今でも自室に篭っています。
 まぁ咲夜さんにやられたショックではなく・・・壊されちゃったからなんですけど。>

「(ありゃりゃ、普段真面目な人は溜めているものがあるのねぇ。)」

<更に、周りにいたメイドや挙句には自分の主人まで襲おうとしましたからね。>

「(見境無しか。恐いわね。)」

<!? 霊夢さん、危ない!!>

「え!?」


(ズドドドドっ)


「クククッ、やっと捕まえたわ。巫女巫女レーム。」

「し、しまった!」


ナイフが服の体から余った部分を通して地面に刺さった。
つまりは霊夢は仰向け状態で地面に貼り付けられた。


「正面からの攻撃に気付かないなんて・・・」

「少しでも私に隙を見せるとこうなるってことよ。」

「ぐっ!!」


やはり咲夜は強い。
霊夢は博霊の巫女で幻想郷を守る存在。
リリーとの会話に集中しすぎたこともあるが、少しの油断でここまでのことが出来たのだ。
伊達に完璧メイドの通り名を持ってはいない。


「さぁて、私の嫌な部分に触れてくれたあなたには一生モノの傷を負わせてやる!!」

「ちょ、ちょっと、ナイフを突き立ててどうするのよ!?」

「あひゃひゃひゃっ!!その綺麗な肌に『ゲイシャ』という字を刻んであげるわっ!!」

「い、いやっ!そんな外人が意味もあまり考えず勢いだけで彫った刺青みたいな言葉なんて嫌っ!」


霊夢の服を切り刻んでいく。
そしてあらわになった胸元に手を置いて狙いを定める。
このまま『ゲイシャ』を刻まれてしまうのか。


「ぅっ、はぁ・・・はぁっ・・・。」


突然咲夜が苦しみだした。
いや、苦しんでいるというよりかは・・・はぁはぁ?


「ちょ、ちょっと、どうしちゃったのよ?」

「わから・・・ない・・だけど・・・アンタに触れたら・・・なんか・・・」

<霊夢さん大変です!>

「どうしたの!?」

<咲夜さんの中の春度が急激に増幅しています!!>

「春度は発散しきったんじゃないの!?」

<あまりにも強大な春度を持つ霊夢さんに触れて感化されたのです!
 『春を伝える妖精』である私がいるわけですから、今の霊夢さんは言わば人間媚薬です!>

「誰が人間媚薬よ!!っていうかアンタがいるせいかっ!!」

「れ、霊夢・・・責任取ってよ・・・私を壊した責任取ってよぉ・・。」

<!? こ、これは・・・400%を超えています!!>

「な、なんの数字!?ぎゃぁあ、脱ぐな脱ぐなー!!」


咲夜が服を脱ぎ始めた。
そして自分が脱ぎ終わると、再び霊夢の服を破り始めた。


「ひっ、ひぃいいい!」

「あははぁ、霊夢のぷにぷにお肌が見えてきた。」

「やだっ、やだっ!!」

「嫌よ嫌よも好きのうち・・・美鈴も口では嫌がりがらも体はくねってたわ。」



(ぴりぴりぴりっ)


時間を止めずにゆっくり脱がしてくるあたりがイヤらしい。
それはともかく、このままではスッパにされてしまう。


「ニぃぃいいバズーーーカ!!!!」


(ぼぐしゃぁあぁああっ)


「ぎぁあああ!!」


その瞬間、赤い閃光が走って咲夜をブッ飛ばした。
いつもなら霊夢を襲う変態だけれども、今回ばかりは本当にヒーローだ。
でも、今のスペカじゃないよね?
通常攻撃に勝手に技名入れたあのアメリカ軍人のアレだよね?
・・・まぁつまり、レミリアが飛び膝蹴りで救ってくれたのだ。


「霊夢、大丈夫!?」

「れ、レミリア~、ありがとう。」


森の中なので、日があまり入らない。
そのおかげでレミリアはすぐに見つけることができたようだ。
霊夢の服に刺さっていたナイフを抜きながら心配そうに見つめるレミリア。
やっぱり持つべきものはラスボスだな、と心の中で思うのだった。


「よかったわ。まだ何もされてなかったのね。」

「本当に壊されるかと思ったわよ。」

「あぁ、服が台無しね。後で直してもらいましょう。」

「かなり趣味のいい破き方をしてくれたわね。」


胸のあたりは真ん中から裂けて見えそうで見えないという感じ。
ドロワーズは取られ、スカートはビリビリ。
咲夜さんにはこだわりがあるようだ。


「確か美鈴もこんな感じだったわ。」

「美鈴みたいにされてたかも・・・今にしても怖いわ。」

「あぁ、もうこんなに・・・はぁ・・ふぅ・・なっちゃって・・・」

「れ、レミリア!?」


『え、今回はまともキャラじゃないの!?』という期待も空しく、突然イヤらしい目つきに変わる。
赤い瞳で見つめられると超が付くほど怖い。
そもそも吸血鬼は人間よりも力が強いため、さっきの咲夜さんよりも恐怖を感じた。
完全に捕まっている今では逃げようがない。


<霊夢さん大変です!!>

「あぁもう大体わかってるわよ!なんでコイツも春度が上がってるの!?」

<気温と関係無しに春度が増幅している霊夢さんは言わば春の素。
 強い春の素を持った者が近付けばもはや妖怪も幽霊も妖精も関係無い!
 万能媚薬と化したあなたはノーボーダー○〇○ヌード○なわけですよ!>

「なんで妙な残し方してんのよ!?」

<いやまぁ・・・外の触れてはいけない部分かと思いましてね。>

「こっちの方がマズイわよ!!」

「れ、れいむ~、れいむがほしいよ。やりたいよ。」

「うぁあ、3分経つ前に出来上がってる!!そんな無垢な子供の顔で言うなぁ!!」



封魔陣・・・


とりあえず周りにいた奴は全員吹き飛ばした。
一応手は抜いたが、止めを刺した方がいい気もしてきた霊夢だった。
しかし問題は・・・


「わ、私が万能媚薬ですって!?私に触れるとみんなの春が増幅するの!?」

<しかも霊夢さんが直接狙われるというパターンが多いようですね。>

「ど、どうするのよ!?私が危ないじゃない!!」

<とりあえずその有り余った春度をなんとかしないと。>

「あなたが出て行けばいいでしょ!」

<いや、それは勘弁してください。>

「じゃあ他の方法を考えなさいよ。」

<困ったときはこう言うじゃないですか。>

「・・・たすけてえーりんって?」

<おぅいえっ。>


あらゆる薬を作ることが出来る八意永琳。
彼女ならば春度を抑える薬が作れるのではと踏んだのだ。
というわけで霊夢は永遠亭へと向かったのであった。





永遠亭・・・




「ごめんください。博麗神社の巫女を務めております、博麗霊夢と申します。
 八意医師のお力を拝借したい所存で参りました。」

「えっと・・・永琳様の診察をご希望でしょうか?」

「はい。」

「では、こちらにお名前のご記入をお願いします。」

「わかりました。博麗・・霊夢っと・・はい。これでよろしいでしょうか?」

「はい、確かに。では博麗霊夢さん、こちらへどうぞ。」

<随分丁寧じゃないですか。>

「(誰かに頼る時は下手に回らないと上手くいかないって最近知ったのよ。)」

<・・・今までどんな交渉をしていたのですか?>


因幡に連れられて永遠亭の長い廊下を歩いていく。
ここまで広い屋敷はどのように掃除しているだろうか。
因幡が多いからそれほど困らないのだろうか。
そんな考えが浮かんでくる。


「あら、霊夢じゃない。」


声を掛けられた。
他の因幡とは違う耳を持った因幡。
鈴仙・U・イナバだ。


「こんにちは、鈴仙。仕事中?」

「うん。これから師匠の部屋に行って研究の手伝いなんだ。」

「あら、私もこれから永琳に会うところよ。」

「あ、そうなの?じゃあ因幡134号、この人は私が連れて行くから持ち場に戻っていいわよ。」

「わかりました。」


(ふりっふりっ)


因幡134号は来た道を戻って行った。
駆けてくときに揺れるお尻と尻尾が愛らしい。


「何ボーっとしてるのよ?」

「え、あ、いや・・番号で呼んでるんだなーって思ってね。」

「ウチは因幡の数が多いから、番号で割り振ってるの。
 私やてゐちゃんはリーダーの位置だから名前で呼ばれてるけど。」

「そうなんだ。数が多いのに、よく顔と番号を覚えてるわね。」

「覚えてるのはほんの一部よ。大体は『そこの因幡』で済ませてるわ。
 あの子はお尻がかわいいから覚えやすかったわ。」

「・・・左様ですか。」


再び廊下を歩き始めた。
と、突然頭の中に桜の花びらが散るイメージが流れてくる。
リリーの呼びかけだ。


<霊夢さん、RPGってご存知ですか?>

「(知らないわよ。何それ?)」

<簡単に言えば、敵倒しながら冒険をするという遊びです。>

「(それがどうかしたの?)」

<その遊びは敵を倒すたびに経験値を得て、レベルを上げて強くなるのです。>

「(だから何よ?)」

<霊夢さんはレミリアさんと咲夜さんをスペカで吹き飛ばしました。>

「(まぁ咲夜は巻き添えって感じだけど。)」

<霊夢さんを通じて、私に大量の経験値が入ってレベルが上がりました。>

「(・・・・・何か変わったの?)」

<多少離れてても春を伝えられるようになりました。>

「(ちょっ、マジか!?先に言いなさいよ!)」


鈴仙との距離は1メートル程度。
具体的にどの範囲が有効なのかはわからないが、今でも危険と感じる。
ここは距離を少し離すべきか。
しかしここで下手に離れて「どうして離れるの?」と逆に近付かれても困る。
ただでさえ距離を持っているのだ。これ以上離れても不自然だ。
現状維持でいこう。


「霊夢、着いたわよ。」

「え!?あぁ、ここなのね!」


(こんこんこんっ)


「う、ウドンゲです!入ってもよろしいでしょうか!?」


自分を愛称で呼ぶのは恥ずかしいのだろうか。
鈴仙は少し照れながら言った。


「はーい、どうぞー。」

「失礼します。」


(がらがらっ)


永琳の部屋の扉が開く。
このまま永琳の診断が受けられると思ったが・・・


「はい、どうぞ。」


普通は先に鈴仙が入ると思うのだが、恐らく客を優先するというのが彼女の礼儀なのだろう。
扉の前で鈴仙が先に入れてくれようとしている。
小さな親切大きなお世話とはこのことか。
しかし扉の前にいるということは、かなり接近してしまう。


「(その範囲に入るとどれぐらいで春が伝わるの?)」

<レベルアップしましたからねぇ・・・入った瞬間ですよ。>

「(このウィルスめが!!)」

「どうしたの?早く入りなさいよ。」

「あぁいやぁ、私病気だからえっと・・・近付くと鈴仙にも移っちゃうのよ。」

「そうなの?まぁ別にちょっと近付いたからってそう簡単には移らないって。」

「いやこれが厄介な病気でね、本当に近付けばたちまち移ってしまうのよ。
 だから扉から離れてちょうだいな。ね?」

「診断前でわかるのも妙な話ね。大丈夫だって。早く入りなさい。」


どうしても言うことを聞かない・・・
霊夢は普段あまり使わない頭をフル稼働させて考えた。
あんまりもたもたしていたら向こうから近付きかねない。
針や陰陽玉で脅かすのが有効かに思える。
しかし関係を悪くするのもあまりいい気がしない。
となれば・・・


「逃げるが勝ち!!」

「きゃっ!!」


一気に駆け抜けて永琳の部屋へ入る。
そして入るやいなや、すぐに扉を閉めて鈴仙を入れないようにした。
一瞬の出来事にただ困惑する鈴仙だが・・・


「うぅっ・・何これ・・体が・・・ムズムズするよ・・・」


体が火照ってくる。
暑さに耐えられなくなってブレザーを脱いだ。
それでも暑くて、汗ばんでYシャツが透けてくる。


「ま、まさか、これがその病気なの?でもっ、でもぉ・・・変な感じがする・・の・・・」


近くにいた因幡たちが何事かと近寄ってくる。
鈴仙は焦った。
自分に病気が移り、周りにまで感染したら永遠亭が大変なことになる。
そう思って急いで注意を促す。


「だ、駄目!みんな、私から離れて・・・このままじゃ皆・・・って!?」

「ウッサーーー!!」


鈴仙の理性が無くなる前に因幡たちの野生化が発動。
「やってやるぜ!!」と自分達の服を一瞬で脱ぎ捨てる。
流石は年中発情期の兎さんである。
鈴仙が性的な興奮状態であることをすぐに悟り、上司とやっちゃうチャンスだというのを理解した。


「ウササーーーッ!!」

「み、みんな止めて!病気がぁ!みんなに病気が移っちゃうよぉ!」

「ウササササーーーーっ!!」

「きゃぁああっ!!」


その時・・・


「やめろっ!私の女に手を出すんじゃねぇ!!」

「ウサぐはっ!?」


ズバッ、バシュッ・・・
かっこいいシルエットが因幡の奴らをイチコロだ。
鈴仙を影ながら想う因幡のナンバー2、因幡てゐだ。


「てゐちゃん!」

「ふっ・・・大丈夫ですか、鈴仙様?」

「もう我慢できない!!」

「へ?」


空を越えてーららら星の彼方ーいくぞーイナバー、欲望の限りー・・・


てゐは鈴仙の体に包まれる瞬間、懐かしいメロディーを思い出した。
鈴仙とてゐの声にならない声は壁を越えて永琳の部屋まで聞こえた。
それはさておき、永琳に診察してもらう霊夢の方はと言うと。


「ふーん、春度バースト現象ねぇ。
 どおりでこの前は私と姫だけ妙なことになってたのね。」

「私に近付くとまたおかしくなるから注意してね。」

「わかったわ。で、あなたの中の春度を抑える薬が欲しいのね。」

「そういうことよ。このままじゃ夜も眠れないわ。
 聞こえくるでしょ?普段まともな人でもああなってしまうの。」


(いやーっ、触らないでーー!!)


「今聞こえた声の主、てゐちゃんはどこを触られたでしょうか?」

「私にそれを答えろと?」

「言ってみなさいよ。」

「そんなの×××を×××にされたに決まってるわ。」

「はい、ブブーッ!その言葉を一文字でもオープンしたら大変なので全て伏せます!」

「失礼ね!じゃあなんのよ!?」

「いやー触らないで、と言ったのよ?」

「うん。」

「いやーイヤーear・・・というわけで耳でした!!」


ナゾナゾみたいに地球儀を解き明かしたら・・・カンタンなんだよ!!こんなの!!


「色んな意味で飛ばしすぎよ。しかもムカツク繋げ方してくれるわね。」

「さてと、あなたのご所望の薬を作ってくるから、ちょっと待っててね。」

「はーい。」


永琳は部屋の奥へと姿を消した。
どうやらそこで薬の調合をするようだ。
霊夢はしばらくリリーとしりとりをしながら待つことにした。


「(しりとりの『り』からね。)」

<はい、じゃあ・・・リビドー>

「(ど・・・ドーナッツ)」

<ツンデレ>

「(レバ刺し)」

<し・・・姉○○ん○り>

「(りんご)」

<ゴシックロリータ>

「(た・・・たろいも)」

<悶絶>

「(ツバメの巣)」

<す・・・○○た!>

「(おい、春の妖精!)」

<はい、なんでしょう?>

「(アンタは言うことが春っぽすぎるよ!)」

<いや、私は意味なんてわかりませんよ?それをイヤらしいと思う人がイヤらしいのです。>

「(うるせ)」


その後、リリーはひたすら春を感じさせる言葉を連発。
負けじと霊夢は食べ物ばかりを連発したそうな。
そんなこんなで10分近く経った。
錠剤とコップ一杯の水を持って永琳が帰ってきた。


「はい、お薬とお水よ。」

「早いわね。ありがとう・・・ってそんなに近付くな!」

「大丈夫よ。私はワクチン打ってあるから。
 あの時も理性が吹っ飛ぶ前にこれを打ったのよ。
 まぁ原因を突き止めるのに恥ずかしながら3分かかってしまったけれども。」

「そうなんだ。じゃあ永遠亭は何もなかったのね。」

「ただ、姫様が暴れだしたのよ。頑張って閉じ込めたんだけどね。」

「原因わかってるならワクチン打ってやれよ。」

「中から『えーりん、えーりん、〇〇てえーりん!!』って聞こえた時はドキッとしたわ。」

「あなたそれ聞いて何もしなかったの?」

「カゴに入れて妹紅さんの前で放ってあげました。これが私に出来た最善の方法なのよ。」

「いや、だからワクチン打てって。」

「大丈夫よ。2人の蓬莱人はちゃんと打ってもらったわ。角と言う名の注射をね。」

「・・・2人の泣き喚く顔が浮かんできたわ。」


なんか頭が痛くなってきた、と額に指を置く。
しかし流石は月の頭脳。
臨機応変に短時間で薬を作るその能力は素晴らしい。
これでどうにか事は治まりそうだ。
薬を口に含み、水と共に飲み込む。


(ごくっ)


薬を飲むと食堂を抜けて一気胃まで届く感覚した。
よく考えたら今日はお茶しか口にしていないことに気付き、少し不安に襲われる。
まぁ胃が荒れたと思ったらまた永琳に頼めばいいや、とすぐに解決。
さて、薬の効果は・・・


「どうかしら?春度の放出は治まったのかしら?」

<霊夢さん!>

「どうしたの?」

<むしろ増えてますよ!範囲拡大です!>

「な!?永琳!?」

「くくくっ、引っかかったわね。」

「どういうつもり!?」

「どういうつもりも何も、こんなに楽しいことは放っておけないじゃない。」

「あなたは・・・!!」

「これからあなたの春度はどんどん増すわ。その薬の効果は24時間。
 そうね・・・最終的には幻想郷全部を覆ってくれるかしら。
 まぁあなたの能力しだいで冥界もマヨイガも行くわよ。」

「今すぐワクチンをよこしなさい!」

「やっだぴょ~ん。」

「逃がすかぁ!」


永琳と霊夢は永遠亭の外へと飛び出す。
外にはまだ日は出ているが、もうすぐ日が落ちる。


「夜がくるわ!やっぱり夜に燃えなきゃ駄目よね!」

「夜が来る前に全てを終わらせる!あなたを倒してワクチンをもらうわ!」


(ごぉおおおん!!がぁあああん!!)


弾幕が竹林の中で広がる。
相殺される弾、地面に埋まる弾、竹をへし折る弾・・・
2人の弾幕合戦は時間が経てば経つほど激しさ増した。
しかし相手は蓬莱人。
倒したとしてもすぐに復活する。そして霊夢は人間。
軽い一発が当たるだけでも負けに直接繋がってくる。


「ほら、どうしたの!?この程度で参ったなんて言わせないわよ!!」

「それはこっちの台詞よ!博麗の巫女の力を見せてやるわ!」


(ズドドドドドッ!!)


より2人の戦いに激しさが増す。
永遠亭の周りはほぼ焼け野原となり、障害物は無くなっていた。
そして戦闘を開始して約3時間が経過した頃に突如異変が起きた。


「!?うっ、ぐっ・・・!!」


霊夢はよろめき始めた。
あまりに長い戦闘が霊夢の限界を迎えさせていた。


<だ、大丈夫ですか!?>

「ごめん・・・私はここまでみたい・・・幻想郷を守れなかったよ。」

「ふふっ、勝敗は決したようね。」

<な、何言ってるんですか!?被弾ゼロじゃないですか!まだやれますよ!>

「本当にごめんね。でも、駄目なの。もう意識を保っているのがやっとなの。」

<霊夢さん、まさか春に・・・?>

「所詮はただの人間ね。蓬莱の薬で底上げされた私の力には到底及ばない。」

「ばかっ、そういうのじゃないわよ。」

「なんですって?」

「私はもう寝る時間なんだから。」

「ふっ、こんなのが今まで幻想郷を守ってきたなんてね。」

「ふっ・・巫女って辛い仕事ね・・・」


(どさっ)


「・・・・・・ふわぁ・・」


(どさっ)


<お前もか!!>


時間にして午後9時03分   博麗霊夢・八意永琳 両名共に永遠亭前で就寝。




その後、霊夢は夜中にトイレに行くついでに永琳を起こしてワクチンを打ってもらったのだった。
ワクチンを打ち込み、気付いたらリリーが消えていたというアクシデントもあったが、
霊夢からすれば特に問題は無かったらしく、「今までご苦労様」と手を合わせたそうな。


春度の広がりは幸い竹林の中だけに留まり、被害は永遠亭と妹紅の家のみだった。

永遠亭では因幡たちのピンクの大合唱が響き渡り、次の日の朝には皆声が嗄れていたという。

屋敷の主である輝夜は妹紅を求めて外へと走り出そうとしたが、
机の角に小指をぶつけてあまりの痛さに春度も消し飛んでしまい、
まさかの正気のリザレクションを果たした。

妹紅の家では、被害に合った後にそうとも知らずたまたま夜中に酒を持ってきた慧音。
「ヘビィだぜ」と呟く妹紅とオールナイトフジヤマヴォルケイノだったそうな。



こうして幻想郷は桃色な危機を脱し、完全な春の終わりを告げた。



もうゴールデンウィークも終わりですね。 こんにちは、nama-haneです。

「他の人の話が気になる」と言ってくださる方が意外にもいてくれて、
うれしさのあまり続きを考えて書いた今回の作品。
前回よりも品の無さがパワーアップしています。
毎度のことながらキャラの扱いが申し訳ないです。
好きなキャラほどイジリたくなってしまうというのに最近気付いたのです。w


霊夢は最初から最後まで暴走しない『人間の規格外』みたいな設定だったのですが、
「なんでー?」と思われた方も多いと思います。
「頭が春っぽいって言われてるし、大丈夫だよね?」という考えで書いてしまったわけで・・・。
霊夢が暴走した話も考えたのですが、やっぱりダークで・・・18禁になりそうで・・・。
ごめんなさい、許してください。

しかも永遠亭とか慧音とか妹紅の内容が非常に薄いという結果に・・・
前の続きと聞いてこれらの事に少しでも期待されていた方がいましたら、ごめんなさい。
いない・・・ですよね?w  よかった。(え


プチでは少し長めになってしまったと思いますが・・・
最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございます。


※脱字部分を訂正致しました。
 読みにくくしてしまって申し訳ございません。
 以後気をつけます。
 ご注意くださり、ありがとうございます。
nama-hane
コメント



1.卯月由羽削除
リリー!何でそんな言葉を知ってるんだ!?

つーかこの設定の所為で妄想が止まりません、どうしてくれますかw
2.しず削除
>おぅいえっ
リリーかわいい。
3.創製の魔法使い削除
凄いカオスだ……
霊夢のスペック高いなぁ~
4.ドルルン削除
この作品のおかげで春の香りを感じました。
5.SETH削除
まさかの正気のリザレクションwwwwwwwwww
6.名無し妖怪削除
「お前もか!!」
「おぅいえっ。」
あ、応対文ができた・・・
7.名無し妖怪削除
前回春度バースト現象が起こってないのに春ってた人外ズが春度バースト現象発現したらどうなるか期待してたのに~
まあ、これはこれで大いによろしかったですが
8.名無し妖怪削除
霊夢が影響されないのはとても霊夢っぽくてしっくり来ました。咲夜さんの暴走超特急っぷりとえーりんの黒さにマジワロタ。
>霊夢の少し油断
なにがしかの脱字だと思います
9.欠片の屑削除
「やっだぴょ~ん。」 し、ししょー!!
10.蝦蟇口咬平削除
小指の爪の痛みで正気にかえんのかよ!!
11.名無し妖怪削除
えーりんと霊夢の弾幕前の会話があれですね
ラスボス前との掛け合いっぽいw