ある晴れた日のこと、橙は道を歩いていました。
「なにかおもしろいことないかなー」
ルンルン気分で歩いている橙は足元にあった石で
ドテッ
転んでしまいました。
少し擦り剥いてしまい涙目になっています。
「うぅ・・ぐすっ・・」
そこに
「大丈夫かい?」
いつのまにか男の人が手を差し伸べてくれました。その人はなぜか右手を隠しています。でも橙は藍さまから
『知らない人には用心するんだぞ』
いつも言われているので手をだしません
「しょうがないな・・じゃあ絆創膏を貼ってあげよう」
男の人はポケットから絆創膏を取出すと擦り傷にはってくれました
「じゃあ、僕はこれで」
そういって橙に背中を向けていってしまいました
「今のは誰だったんだろう・・」
男の人が見えなくなってから橙は藍さまに言われたことを思い出しました
『他人にお世話になったら人間でもお礼はちゃんというんだぞ』
「あ!お礼言わなきゃ!」橙は走ります、男の人が行った方向に、でも男の人は見えません
「そんなに時間はたってないはずなのに・・」
それでも橙は走ります、息が切れそうになっても、転びそうになっても
「ん?おまえは・・あの隙間妖怪のところの」
夢中で走っていたので気付きませんでしたが、いつの間にか上白沢慧音のいる里まで橙は来ていました
「あ・・ねえ、右手を隠した男の人知らない?」
橙は慧音に自分に絆創膏をくれた男の人を尋ねます
「右手を隠してる・・・?」
「うん!あのね、転んだときにいつのまにか目の前に居てね、絆創膏くれたからお礼がしたいの!」
その言葉を聞いたとき、慧音は悲しそうな顔をしました
「そうか・・わかった、こっちだ」
慧音は歩き始めます
「ねぇ、なんてお礼言えばいいかな?」
慧音に橙が話し掛けても、答えてくれません
それからしばらく歩きました
「ここだ」
着いたところは墓地でした。そこのとある墓前の前で慧音が立ち止まりいいました
「え・・」
橙は信じられないような表情で慧音を見ています
「昔…妖怪も人間も別け隔てなく怪我を治療した医者がいた。だが、自らが怪我を負い右手が切断され無くなってしまったのだ」
初めて知った事実
「そこから病気になり命を落とした・・しかし・・そのやさしさが幽霊となり、怪我をした者を治療してくれるようになった」
慧音が気付くと橙は泣きながら墓を見つめていました。なぜあの時すぐにお礼を言わなかったのか・・橙は後悔していました。
そこに
「おまえはどちらにせよ感謝しなければならない、泣く前にやることがあるはずだ」
そう言って慧音は橙を見る
その言葉を聞いて、橙は涙を拭い笑います
彼はきっと自分が怪我をしたから、泣いていたから助けてくれた。それなのに泣いていては失礼と橙は思いました。そして墓前に立ち、満面の笑みで
「ありがとう」
彼に伝えられなかったお礼をいいました
マヨヒガに帰ったら藍から何があったと聞かれるでしょう、でも橙は
「人にお礼を言ったよ」
とだけ言うでしょう、でも橙は少しだけ大人になれました
次の年から橙は絆創膏をもらった日に外出をするようになり、彼の墓前には花がそなえられるようになったそうです
終わり
朝から爽やかにして頂きまして、ありがとうございます!
清々しくいい朝が迎えられそうです
残念ながら朝には読めませんでしたが…w