Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

驚きの4枚刃

2007/05/05 06:02:44
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 硬い椅子に長い間座り続けた後の柔らかい布団の感触。
 いつでも羽毛110パーセントの極上の柔らかさは、人間だろうが人間でなかろうが思わず体を横たえたくなるだろう。
 当然、死者を裁く閻魔さまだって例外ではない。


 小さな体にふさわしい小さく軽い音の後に続くマシュマロのようなふわふわ感に、四季映姫・ヤマザナドゥの顔は思わず緩む。
 いかにも重そうな閻魔帽子も、労働時間の間ずっと顔に貼り付けていた厳しい表情も脱ぎ捨てた彼女は、この瞬間は少女にしか見えないだろう。


 「ぅぁー……」

 少ない給料をやりくりして自分で買った羽毛布団。
 確か今より60年前の大異変が終わり、裁判ラッシュにひと段落着いた記念に買ったものである。
 現在の地獄の財政難を考えると、ひょっとしたら今後これ以上の贅沢は出来ないかもしれない。
 よい買い物をした、と思う。
 あの時の布団屋の息子もそろそろ私の裁判を受けるころかもしれない。
 無事に三途の川を渡れたら、裁判結果にはちょっと色をつけてあげようか……。
 どうやら脳が本格的にとろけてきたようだ。

 それにしても、今日の裁判は非常に忙しかった。
 小町もやる時にはやるんだなぁ、と感心してしまった。
 その数、通常の仕事量の3倍。
 小町も顔を赤くして舟をこいでいたようで、今頃自分と同じように布団にもぐって寝ているのだろう。
 何かあったのだろうか? ほめるついでにちょっと聞いてみよう。
 
 妙に体が冷たいと思ったら、どうやら風呂で体を十分に拭けていなかったらしい。
 髪の毛が妙にしっとりしている。
 一本をつかんでみると、緑色の紙に枝毛が生えていた。
 そろそろ散髪に行こうかなぁ……。

 もう一度体を拭くべきかと思ったが、それよりも眠気が勝ってしまっているようだ。
 今日はこのまま寝てしまおう。
 明日も12時間労働で、早朝からの仕事である。
 今頃同僚が自分と同じぐらいの忙しさを体験している頃だが、休むのも閻魔の仕事だ。
 自分の枕元の線香に火をつける。
 地蔵だった時の癖で、こうするとよく眠れるのだ。
 知り合いからは「死んでるみたいだからやめてくれ」といわれるが……。 

 布団をかぶり、目をつぶる。
 心機一転、明日もがんばろう。
 ………
 ………






 四季映姫の夜は、こうして更けていった。
 彼女は、夢の中で懐かしいフレーズを思い出していた。
 「君が代」である。
 もはや何処で歌ったかも忘れてしまったが、なぜか思い浮かんでしまったのだ。
 「君が代は 千代に八千代に」
 それにしても、何故「君が代」なのか。
 「細石の いわおとなりて」
 いくら考えても分からない……
 「苔のむすまで……」
 何か大事なことを失念しているような……
 「苔のむすまで……」
 苔……まさか……
 「苔のむすまで……」
 苔……コケ……
 「香取慎吾版忍者ハットリくん」


 
 「なんでだーッ!!」
 四季映姫・ヤマザナドゥの夜は終わった。
 しかも夢に対するツッコミで。
 「……なんという無様な目の覚め方でしょう……」
 夢の中とはいえ情けない。
 しかも結構大声。
 近所では良い子で評判のヤマザナドゥがこんなことではいけない。
 とりあえず朝食を食べよう。
 それにしても、なぜ苔という言葉があんなにリフレインしたのか。
 我が家はそこそこに広く、カビはともかく苔の生えるような家ではないはずなのだが……。
 そこで彼女は気づく。
 だからってこの部屋妙に青臭くないか?
 そして、ざぁざぁという雨音。
 ……本当に苔かカビでも生えたのかもしれない。
 とりあえず外を見てみよう……。

 



 時が止まった。
 メイド長の能力を得たわけではない。
 窓に映った四季映姫・ヤマザナドゥの顔はそれだけのインパクトを秘めていたのだ。
 ……そのアゴに生えていた緑色の「ヒゲ」は。

 ……触れる。
 その手触りは髪の毛の触感ではなく、苔。しっかりむしてます。
 まさかと思って昨日の枝毛を見てみる。
 ……成長している。というか蕾が出来てる。



 「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAGH!!」
 彼女の近所での評判が落ちること請け合いの大声を出して、四季映姫は布団から転げ落ちた。
 間違いなく、昨日体をろくすっぽ拭かずに寝たのが原因だ。
 普段はうまくそう見えないようになっているが、彼女の緑色の髪は、総て植物なのだ!
 日ごろのケアを怠ってしまうとこのようなことになってしまう。
 頭から植物が生えることに疑問をお持ちの人々も居るだろう。
 しかし! 地蔵上がりの四季映姫が閻魔に就任したころは、そのようなものは生えていない。
 つまり地蔵のまま。マルコメとしておみそのCMに出ることも可能なぐらいキレイな頭なのである。
 流石に女の子がマルコメはまずいだろう、ということで是非曲直丁の科学技術班が作った特殊植物を頭に生やすことでせめて女の子らしく! という方策が立てられた。
 この特殊植物は、地獄製なので寿命が存在せず、宿主のエネルギーを少し拝借しているので枯れることがなく、それこそ菖蒲のように余計な葉を生やさずに生え、なおかつ手触りも通常の髪の毛以上、シャンプーリンスをしても枯れないという素晴らしい出来栄えである。
 この特殊植物、名称「リーフ21」の存在を知った時、彼女は是非曲直丁に感謝し、一生ここに奉仕しようとさえ思ったものだ。
 最近はアクセサリーとしてちょうどいい位置に花が咲くモデルも存在しており、同僚の中にはエキゾチックな赤い花と4枚の草、さらには日光を集めて2ターンに1度ビームを撃つという珍妙な草を生やすモデルを生やすものも居た。
 四季映姫にとってそのようなファッションは言語道断であり、通常の草だけのモデルを生やしているわけだが、まさか蕾が出来るとは。
 ヒゲのほうは……一夜のうちに苔むしたとしか考えられない。
 完全に地蔵なわけではないから、ここまで生えるのは絶対におかしいのだが、無精ひげレベルの苔なら不養生ばかりしていると生えることがある。
 
 しかし、今は「何故こうなったのか?」ではなく「これからどうしよう?」のほうが重要ではないのか?
 今鏡に写っている自分の姿はまさしく「お前はもうオシャレじゃない」と宣告されたかのようだ。
 当然他人に見せられる顔ではない。
 早急に対応が必要である。
 無精ひげ対策のために自分の部屋には髭剃りと生け花用のハサミが……。


 


 パシャリ!
 「SUCCESS!」という表示が出たのは決して気のせいではない。
 四季映姫の部屋を知り、なおかつこのような雨の中活動し、さらにカメラまで持っている。
 そのような存在はあの烏しかおるまい。
 射命丸文。
 よりによってあの一人マスコミに今の自分の姿をとられてしまったのだ。
 このままだと明日の文々。新聞の一面には「四季映姫・ヤマザナドゥ性別詐称疑惑!楽園の閻魔様は史実どおり漢だった!」などという不名誉な記事が幻想郷中にばら撒かれ、道行く人々に「マンダムドゥ」「よおこそ……男の世界へ……。」「四季映キレテナーイ」などというこれまた不名誉な仇名がつくことになる。

 

 早急に――本当に早急にあの烏をとっちめねばなるまい。
 速さで勝てるとでも思ったか。
 四季映姫には勝機がある。
 浄玻璃の鏡。
 この総てを見る鏡は窓から見える位置に飾られていた。
 当然、今の烏も写りこんでいる。
 彼女がいまどのルートを通っているのか、お見通しというわけである。
 後は先回りして全力全開ラストジャッジメントをぶち込むだけである。

 部屋に立てかけてあった手鏡サイズのそれを手に取り、覗き込む。
 自分の顔が写ると、またもや「お前はもうオシャレじゃない」と語りかけられている気分になるが、気にせず念じる。
 「射命丸文が今何処に居て、何処に向かっているのか」と……。

 


 ――その男は、子供の頃からいたずらが好きだった。
 好きな女の子のスカートをめくるのは当然として、時には大人を困らすようないたずらをやってのけたこともあった。


 「……はい?」
 もはや射命丸文とはまったく関係のないストーリーが、浄玻璃の鏡から流れ出してきている。
 この男はいったい?
 どこかで見たような……

 
 男のいたずら好きは大人になっても止まらなかった。
 多くの人を先導して、新聞のトップを飾るような(死者こそ出ないが)大きな事件を起こしたり、有名人をだましたりした。
 男は、そのいたずらの報いを受けた。
 有名人のファンに追いかけられ、逃げる途中で車に轢かれて死んだ。
 享年42歳。

 
 そういえば、60年前の大異変で、幻想郷中の花が咲いた事件があった。
 そして、この男は昨日地獄送りにしたはずの男である。
 幻想郷の花が咲いた理由は、幽霊がよりしろとして花に取りついたからである。
 立派なアゴヒゲと、蕾を触る。



 「……出てきなさい。」
 

 ヒゲと蕾を……そこをよりしろとして取り付いていた幽霊をつまんで、引っ張り出す。
 つまんだ手には「してやったり」という顔を貼り付けているような幽霊が身じろぎもせずに存在していた。

 「……あなたの罪状と刑罰は、すでに通告したはずですが?」

 閻魔の表情を作り、幽霊に語りかける。

 (いやぁ、地獄に行く前に一発でかいのをかましかたったのよ。罰はちゃんと受けるよ?)

 罰を受けるとは言っているが、間違いなく反省していない。
 この男の地獄行送りは曲げられないし、曲げる必要もあるまい。
 しかし、こいつには聞くことがある。
 
 「このいたずらの首謀者は?」

 私の髪の毛が植物であることに気づいているものは、この幻想郷では数少ない。
 おそらく風見幽香あたりは気づいていると思われる。
 そして、もう一人。

 (巨乳の死神の姉ちゃんに『なにかいたずらできねぇかなぁ』って呼びかけたら教えてくれたんだよ。)

 そう、昨日顔を赤くして3倍の効率で働いていた小野塚小町その人である。
 彼女をほめようと思っていたが、叱らなければいけないようだ。
 しかし、この幽霊はそれ以前に四季映姫の目の前で言ってはならぬことを言った。

 何も言わず、雨が降っているというのに窓を思いっきり開け放つ。
 四季映姫が見ている方向は地獄へ一直線。
 そして、いたずら好きの幽霊は見てしまった……彼女の、鬼神の如きその表情。

 (お、おい! ちゃんと首謀者も言ったし、罰も受ける! これから何をしようっていうんだよ! おい!)
 
 「私の目の前で……」
 
 浄玻璃の鏡を置き、幽霊を腰だめに構える。
 
 「胸の話は……」

 大きく足を振り上げる。

 その構えは弓を引き絞るかのごとく。
 
 「よしてもらおうかぁーーーーー!!!」

 おもむろに、そして勢いよくスイング!

 幽霊を投げた先は、地獄に一直線!


 雨粒をはじくことなく地獄に突き進んでいったいたずら好きの幽霊は、お星様になりましたとさ。



 「さて……二人の行方を追わなければいけなくなりましたね。」
 改めて、本来の目的のために浄玻璃の鏡を見る。
 すると、彼女らは同じところでネガ片手に爆笑している。
 どうやらきついお灸をすえなければいけないようだ。
 
 ハンガーに掛けてある閻魔スーツに着替え、重い帽子をかぶる。
 傘の赤は、今日は怒りの赤である。いつも赤だけど。
 
 「待ってなさい小町、そして射命丸文。貴方たちには、罰を与えなければいけません……。」
 
 家を出て、傘を片手に猛スピードで飛ぶ。
 しかし、四季映姫は最も大事なことを忘れていた。
 








 三途の川に笑い声が響き渡る。
 女二人の笑い声。
 主は当然、小野塚小町と射命丸文。
 笑い声のダシは当然、四季映姫ヒゲザナドゥの写真である。
 「ひゃはははははははは、こいつは最高だ。あんた、この写真どうするつもりだい。」
 「あははははは……流石に本人の許可を取ろうかとも思いますが、これはやっぱり秘密のまま出したほうが面白みが増すといいますか……そちらのほうもアレだけ忙しかったのに、良くそんな暇がありましたね。」
 「あたいも忙しかったから、つい、息抜きしたかったのさ。でもサボるにもサボれないからこうしたってことさ。あの場にうまくあんたが居合わせるとはねぇ。」
 「それにしても、あの幽霊うまくやりましたね。今頃どうしているんでしょう?」

 「あの幽霊は、地獄に一直線です」

 その声は、今聞こえるはずのない声であった。
 文はその声を聞いたことがある。
 小町にとってはなじみの声だ。

 「小町」
 「は、はいぃぃッ!」
 「昨日はお疲れ様でした……と、言いたいところですが、今日はどうやら貴方に苦言を呈する必要があるようです。私は非常に心が痛いです。」

 しかし、自分の顔を見た小町の様子がおかしいことに気づく。
 彼女……自分の顔を見て、笑っている?

 「射命丸文」
 「はい……」
 「貴方は先日の説教を半分も聴いていなかったようで……」
 「ヒゲ……」
 「はい?」

 まさかと思ってアゴをさすると……まだありやがった憎きヒゲ。
 家を出る時、そり忘れたようだ。
 文の顔も当然笑っている。

 「「ふ……ふふ……あは……はははははははは!! ははははははははははははははh」」

 「言っておきますが。」
 
 笑い声をさえぎるかのようにつぶやく四季映姫。
 その声は笑い声を一発で止めるに値する恐ろしさを含んでいた。
 決して体裁を取り繕うわけではない。
 彼女の名誉を守るためにも、そう考えなければなるまい。





 「私の裁判は……最初から最後まで、クライマックスだぜ!」




 「「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!」」
 もはや四季映姫・ヒゲザナドゥの目には怒りしかない。
 彼女はスペルカードを腰に構える。
 度を越えたいたずらの末路を、目の前の二人にも教えてやろう。
 それが彼女の目下の目的である。

 full charge!!
 「行くぜ……私の裁判技、パート2´(ダッシュ)!!」
 「「ぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」」
結局私の裁判技パート2´の様子を魔理沙に見られるわけですが。


はぢめまして。
いや、はぢめましてのわりにはやりすぎてるかなぁと思わんでもないですが。

2次創作というジャンルすら初めてで、右も左も分からない状態です。
どのような挨拶をすればいいのかすらわからないぐらい。

とにもかくにも、よろしくお願いします。
園国田因
[email protected]
コメント



1.名無し妖怪削除
苔とか線香とか、もうどうしたらいいのか分かんねぇwww
2.削除
素晴らしいw
3.nama-hane削除
非常に楽しませていただきました。本当、凄いです!w
私はヒゲの生えた映姫様もかわいいのではと思ってしまいましたよ・・・(壊)
次の作品も楽しみにしています!
4.卯月由羽削除
リーフ21吹いたwww
あとやっぱりえーきさまはかわいいな
ひげが生えてようが

>日ごろのケアを行ってしまうとこのようなことになってしまう。
怠って、でしょうか?
5.園国田因削除
まさか初めてでここまで良い評価が得られるとは思いませんでした。
正直ビックリです

以下コメントレス
>名無し妖怪さま
萌えればいいじゃない。

>翼さま
ありがとうございます

>nama-haneさま
書いててやばいとおもったのはヒゲよりもマルコメえーきさまなんじゃないだろうかと思いました。
次回作の予定ですが、まったく立ってません!
次どうしよう……。

>卯月由羽さま
誤字修正いたしました。
思ったよりヒゲザナドゥが好評で驚いています。
6.翔菜削除
>名称「リーフ21」
バロスwww誰が上手こと言えとwwww
7.名無し妖怪削除
ちょっ、タイトルw
8.名無し妖怪削除
>2ターンに一度ビームを撃つ
ちょw
ソーラービームwww

いやはや、面白かったですw
9.ナナシさん削除
>おみそのCMに出ることも可能なぐらいキレイな頭なのである。
ハ○の映姫様に想像して悶えた俺はどうすればw

いいものを見せてもらいました。
10.名前が無い程度の能力削除
初投稿がこれかよwwアンタが最初からクライマックスだぜwww
11.とーなす削除
「リーフ21」ww
誰が上手いこと言えとwww
ああ笑った。