Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

‐はるのなべとともに‐ EX

2007/05/04 10:41:05
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 あらすじ
  慧音のデフォルメキャラクター『けーにぇさん』登場。



「ねぇ永琳、コスプレが趣味の人ってどう思う?」
 輝夜、永琳、鈴仙の三人に妹紅も加えた食卓でのこと。
「構わないと思いますよ。私も若い頃は……あ、いえ、友人が好きでしたね」
「イナバは?」
「特には」
「せっかくウサ耳つけてるんだし、魔法でも覚えてナースウィッチになりなさい!」
 何を言い出すかと思えば、と苦笑いの永琳。
 今日の輝夜はやけに饒舌で話が止まらず、食べる時間より喋る時間の方が長い。
「この子は薬師見習いですからファーマシストウィッチですよ?」
「マジレス禁止!」
 びしぃ、と勢い良く箸を向けた。
「お行儀が悪いですよ」
「あ、そうね。反省するわ」


「とにかく、モモーイよモモーイ。
 冷静に考えたら鈴仙のキャラには絶対合わないけど、それはそれ!」
 ようやく食事を始めた輝夜の言葉に、食べずに月を眺める鈴仙は顔を向けずに答えた。
「モモーイと言うと……あのエスケートゥの人ですよね」
「え、えすけーつー?」
 永遠の少女である輝夜には化粧品なんて必要無く、今のところ興味も無い。
 そのため化粧品に関する情報には疎く、
「いくら電波キャラだからって分からない事ばっかり言わなくても良いわよ。ねぇ永琳?」
 永琳は失笑を返す。
 ジェネレーションギャップという表現は明らかにおかしいが、輝夜の認識ではモモーイ=声優で、
鈴仙の思い浮かべるモモーイは女優であった。
「桃井、スペース、エスケートゥでググれば分かりますよ」



 食事も終わり、ググって理解し満足気。
 そのままゲーム再開と思いきや妹紅が「帰らなきゃ」と言う。
「ダメよ。もう「今日は泊まる」って伝言頼んだわ。
 言っておくけどね、私は、私が快適に遊ぶための行動なら幻想郷一早いわよ」
 悪い笑みを浮かべながらコントローラーを渡して‐はるなべ(公式の略称)‐を選ぶ。
 そしてタイトルを見てにんまりした。


  はじめから
⇒ つづきから(STAGE.4)
  えくすとら


 念願の追加要素。東方と言えばエクストラである。
 喜び勇んで選択すると、最初に“復活できません”の警告が入り、特に輝夜のテンションが上がる。
「難易度上げてみない?」
 ひたすら嬉しそうな輝夜の提案だ。
「ずっとNormalで良いよ」
「だが断る!」


 決戦の舞台は八雲家のあるマヨイガ。
 ステージの始めに‐はるなべ‐に登場した『アイス』、『ビーム』、『プレス』、『カタナ』の4つを含む7つの能力のもとがあり、
『イリュージョン』&藍、『ダッシュ』&橙が初登場。
 『イリュージョン』&藍は分身や式を使ったトリッキーな攻撃ができる能力で、
総合的な火力はゲーム随一なのだが、分身を使わないと火力が上がらず攻撃範囲も独特すぎるため初心者には使いにくい。
 『ダッシュ』&橙も変わった能力で、無敵体当たりで攻撃できるが、
折り返し時と元に戻る時に無敵時間が無いため慣れないと無闇にダメージが増えてしまう。
 一見使いにくそうだが、この能力の真価は二人プレイ時2Pに能力を持たせた時にある。
「……肩車とは思いつかなかったわ」
 魔理沙をジャンプさせてキャラを重ねると橙が肩車し、その際に超強力な星「スターダストレヴァリエ」で攻撃できる。
 しかし凄い厨性能のため封印される事もしばしば。
 ちなみに魔理沙の見た目変化だが、『イリュージョン』で狐耳、
『ダッシュ』で猫耳になるためどちらも愛好者は多いとか。


 ともかく使い慣れた能力の方が良いだろうと『カタナ』とチルノの組み合わせ。
 そして最後に、紫の能力のもとは魔理沙が眠りだして一定時間操作不能になるという罠。


 進んだ先、始めに出てきたのはやはり橙だ。
 若干緊張して挑んだが、攻撃はただ突進してくるだけ。
 体力ゲージが長いだけの雑魚、と言っても差し支えない程度の強さだった。
「拍子抜けよ」
 輝夜が落胆と共にあっさり倒す。


 ―「まだ、終わらないよ!」―


 セリフ入りで復活した。が、体力ゲージの最大値が半分に減っているので弱い。
 生意気にも使ってきたラストスペル、隣野「猫のとおり道」も飛んでいれば当たらない。
「まさに猫まっしぐら、よね」
 次から次へと猫が走ってくるが、大抵は何匹通るかを数える前に終了を迎える訳で。


 ―「ごめん、なさい……藍……さまぁ―――」―



 そのまま倒れた橙の元に彼女の主の八雲 藍が登場する。
 橙を画面外へ避難させ、戻ってきて会話が始まった。


 ―「今日は私の誕生日でな。
   私へのプレゼントにと「一人前になります」と飛び出して行ったんだ」
  「どうりで。なにやら執念めいたものを感じたぜ」
  「良い子だろう。元気で素直で可愛くて、明るく健気で可愛い自慢の式だ」
  「こりゃあ酷い親バカだ」
  「私は……私はな。自分の大切な者も守れない不甲斐ない保護者だ。
   心から大切だと思うし言葉にもできる。だが、行動として守れた試しが無い!」―


「狐ってこんなキャラだったかしら?」
「確かそうだったよ。深刻な顔で「橙が反抗期かもしれない」って慧音に相談してたし」


 ―「そんな自分に腹が立つッ!!」―


 雄叫びと共に黄金のオーラを体に纏い、吹っ飛んだ帽子の中の髪は逆立っている。
 超狐「スーパーテンコー」。
 穏やかで気高き心を持ちながらも激しい怒りによって目覚めた、伝説の神獣の名である。


 ―「なんだ、これは……。バカみたいな妖力だぜ」
  「それ以上に腹立たしい奴、霧雨 魔理沙。
   橙の心と体を傷つけた貴様を絶望させ、それから叩き伏せる」
  「そういやパチュリーから聞いた事がある。
   今の幻想郷で三つ、本気を出せば主と同じかそれ以上に強い奴が居るって話だが……」
  「さあ……伝説を垣間見る覚悟はできたか?」
  「はっ! 伝説だろうが何だろうが目も当てられなくしてやるぜ。
   あの黒猫のようになぁッ!」―


「あのさ、これって―――」
「魔理沙の死亡フラグよ」


 ―「あの子には橙という名があるッ」
  「弱すぎて名前も覚えて無いぜ」
  「貴様はッ、あの子の一生懸命を踏みにじっただけでなく、さらに侮辱する……ッ!
   ……私は完全に怒ったッ、怒ったぞ白黒ォォォォォォッ!!!!」―


 怒号と共に始まったSテンコー戦は開始5秒でゲームオーバー。
 それから10回ほど挑んでみたが全て20秒以内に敗北した。


 そして、夕日が沈む荒野で目を×にして倒れるチビキャラ魔理沙とそれを見守るチビキャラ魅魔の、
やけに凝ったゲームオーバー画面に見慣れてきた頃の事。
「無理ゲーになってるわよ!!」
 輝夜の愚痴は殆どのプレイヤーの心の声でもある。
 高速体当たりが直撃で4割ダメージなのを筆頭に、弾幕はガードしても体力の2割を削られ、
防御力も高い上に、ダメージを与えるとランダムで攻撃判定のある分身を作り出すため厄介極まりない。
 この性能のためHard撃破は中級者でも安定しないと言われ、
最高難易度のSテンコーは本ゲーム三強の一角として様々なやり込みの対象にされる頻度が一番高い。


「潔くNormalに戻そうよ」
 Sテンコーに呆れた妹紅の説得でNormalに戻したがやはり強い。
 最初にスペルカードを使ったため25%時の一回しか使わないが、召騎「神破天狐」は無数の分身を生み出し突撃させてくる技で、
本体は動かないが分身が速くて多くて避けにくい。
 それを破ってもラストスペル、神妖「天つ狐」は輪をかけて凶悪だ。
 飛び上がったSテンコーが上から降って来るガード不能技で、落下のタイミングが毎回ランダムかつ予兆が分かりにくく、
爆風にもダメージ有りという素晴らしく嫌な性能を誇る。
 そのため避けるコツが分からないと一方的にやられるだけだ。


⇒ 再挑戦するぜ
  お休みなさい


 もう見慣れたゲームオーバー画面の二択だが、
 再挑戦を選ぶと魔理沙が立ち上がって帽子を直し、頷いた魅魔と並んで夕日に向かう。
 試しにお休みを選ぶと夕日が沈み、目を横線にして眠ってしまった魔理沙を背負った魅魔が星空へ向かって飛んで行き、
暗転した後にタイトル画面に戻る。


 そしてリトライ4回目。
 三回目の落下の後に隙ができ、スペル中に攻撃しても分身が出ないという事が分かる。
 リトライ5回目。
 惜しい所まで行ってアウトになるが、体力が減ると動きが速くなると判明。
 リトライ6回目~9回目。
 省略。
 リトライ10回目。
 部屋の前を通りがかった因幡が本気で驚くほどの叫びが上がる。
「勝った勝ったぁーっ!」
「いや、嬉しいのは分かるけどさ……」
 無邪気な笑顔で万歳して喜ぶ輝夜に意見する気も無くなり、微笑を浮かべて隣を見る。
 そこには殺し合いでは絶対に見られない輝夜の姿があって、
彼女の笑顔を見ていると親父の仇なんかどうでも良くなってくるから不思議だ。



 子どもは寝静まり、大人は月を肴に一杯。そんな時間が来た。
 夜が更けてもゲーム画面に向かっているのは不健康極まりないのである。



 長丁場だったSテンコー戦が終わって扉を抜け、ついに真犯人の紫が現れた。


 ―「ご苦労様。スーパーテンコーは強かったかしら?」
  「いいや。楽勝だったぜ」
  「ふふ、そうね。その方が私も楽しめるわね。
   それじゃあ、覚悟はよろしくて?」―


 今回の紫は言葉の端々から本気だと感じさせられる。
 否が応にも高まる緊張感。


 ―「私の結界は百八式まであるわよ!」―


 かなり多いが本当にありそうで困る。と言うか絶対あるだろう。
 となればSテンコー以上の強さを見せ付けるに違いなく、予想通り強……微妙だ。
「テンコーより楽」
 とは輝夜を含む多数のプレイヤーの言葉である。
 Sテンコーより基本性能で劣るが、得意の隙間をそこかしこに展開し、その中に居る間は完全無敵。
 それだけ聞けば強敵なのだが、Sテンコーの殺人的な速度に比べるとどうしても遅く感じる。
 意地の悪い弾幕が多いもののダメージがそこそこのため印象に残らず、
ある意味本編より待遇が悪くなっているボスと言えるだろう。
 しかしスペルカード、春日「恋のユカリ伝説」を皮切りに攻撃が激化し始め、
偽兎「いなば☆ゆあー」で一旦治まり、
ラストスペル、讃歌「ゆかりんファンタジア」でEXボスの威光を見せつける。
「けど、やっぱりテンコーより弱いのよねぇ」
 ぶっちゃけるとSテンコーが強すぎるだけで、
いかに本気の紫と言えども集中した輝夜の敵ではなかった。


 ―「さて、食べ物を奪った理由を聞かせて貰うぜ」
  「今月の家計が苦しいのよ」
  「そりゃまた随分現実的な理由ですこと。
   でも不思議だな。金には困らないんだろう?」
  「普段はそうなのよ。けど、今月使いすぎちゃったのよねぇ。
   P○3の大容量とX36○と○iiをソフト10本ずつ込みで買ったのよ」
  「どんな大人買いだよ」
  「そうそう。藍ってば主人の私に内緒で貯金なんかしてたのよ」
  「では、その貯金が知らない内に尽きていた原因は紫様ですか」
  「そうよ。何に使うか聞かなかったけど、パーッと使った方が景気のためよ」
  「えーと……水を差すようで悪いんだが、私は霊夢の様子を見に行くぜ」
  「あらそう。それじゃ、霊夢によろしくね」―


 それは魔理沙が画面から消えた直後の事。


 ―「紫様」
  「ら、藍ね。どうしたのかしら? 顔が怖いわよ?」
  「そうでしょうか。そんな事はありませんよ。
   ところで紫様。今まで隠していましたが、私に少しばかり蓄えがあるんですよ」
  「へぇ、そうなの。殊勝な心がけだと思うわ」
  「そう言って頂けると報われますよ。
   八雲家の今後のために、と思って貯めていたのです」
  「……藍」
  「はい。覚悟は決まりましたね?」
  「ふふふ。この私を捕まえられ……え、ちょ、スーパー化は無し!」
  「聞けません。今日と言う今日は言わせて貰いますよ」
  「うぇ~ん、藍のいぢわるぅ」
  「全っ然可愛くありません。と言うか見ていて辛いから止めてください」
  「藍様はぁ、紫のこと嫌いなんですかぁ?」
  「声真似しても……ってか次に真似したら本気で殴ります」―


  こうして、紫は藍にこっぴどく説教されたのでした。


「狐ってこんなキャラだったかしら?」
「どうだろうね。主人より強いなんて話は聞いた事無いけど」


  そして博霊神社もマヨイガも、この日の夕食は奮発したのでした。


「それにしてもドット絵にも手が込んでるわよね。
 この黒猫なんてボスでもない癖に表情とセリフあるのよ」
「単に作者が好きなんだと思う」


 ―「橙の回復祝いだ。好きなだけ食べて良いんだぞ?」
  「紫様が……」
  「橙は本当に優しい子だなぁ。
   でも大丈夫。紫様はかすみを食べて生きられるお方だからな」
  「で、でも今「突撃霊夢の晩ご飯~」とか言って……」
  「紫様なりのスキンシップだよ。ほら、料理が冷めて―――」
  「あ、あの……。一人前……なれなくて、ごめんなさい……」
  「ああ、その事だが橙が焦る必要は無い。
   いつか一人前になるという思いを忘れず、日々努力し、時には失敗し、
   それでも立ち上がって進み続ければ、いつの間にか一人前になれているものさ」
  「……藍様も?」
  「ああ、そうだ。でもそのためには健康で丈夫な体が必要だ。
   だから今の橙がしなきゃならない事は、嫌いな物も残さず食べる。好き嫌いはいけないぞ」
  「はい! 私、頑張ります!」―


「……どうして無駄に良い話で終わらせようとするのよ」
「いや、どうだろう。博霊神社は全然良い話になってない気がするね」
 笑顔で食事をする藍と橙の一枚絵がセピア色になり、
右下に~END~の文字が表示された事で本当に終わったと実感できた二人。
 流石の輝夜も疲れたのか背中を大きく伸ばし、そのまま畳に寝そべった。
「ところで、全然関係無い話なんだけどね」
 語る表情は真剣そのもので、妹紅も思わず真顔になる。
「M○ther2のラストバトルあるじゃない」
「あれは怖いね」
「主人公の名前を“オカア”にしてみたのよ。そうしたらダブルトラウマで怖さ三倍増し」
「ダブル?」
「東方○○○のラストシーン」
「あぁ……あれね」
 妹紅も納得の怖さで、思い出して少し背筋が寒くなった。



 一段落ついた頃にはすでに丑三つ時。
 とある少女が神社でごっすんする時間帯だが、そんな事よりも強烈な眠気に襲われる。
「あ、布団の用意を忘れてたわ」
「別にいいよ。私は畳の上でも眠れるし」
 寝巻きの上に布団まで借りるのは忍びないと遠慮して畳の上に寝転がるが、
無理矢理引っ張られて布団の中に引きずり込まれた。
「お、思い出して怖くなったのよ!」
 “思い出して怖くなる”のがトラウマゲーのトラウマたる所以である。
「ムーンサイドへようこそ。
 ムよーンサうイこドそへ」
「なっ、殴るわよ! それもグーで、本気で!」
 軽く涙目になっているのは“あの町”が心底怖かった証拠に他ならない。


「あのさ、くっつかれると眠れないんだよね」
 怖さのあまり隣の妹紅を抱きしめる形になっていて、
「あんたの責任よ」と言われて半分はそうだから特にどうするでもなく、
ようやく静かになった輝夜に少し遅れて眠りについたのだった。



「姫、今日の新聞に興味深い記事がありますよ」
「んー……? 眠いから後にしてぇ」
「マニマニはマニマニにいつもすべてのマニマニ―――」


「いぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」
 飛び起きて見た外はまだ暗い。
 太陽が昇っていれば二度寝も楽なのだが、真っ暗だと眠るのは難しい。
「あ、妹紅……」
 しかし隣に誰かが居れば話は別で、
例えようの無い安堵感と感謝の気持ちが浮かぶものだ。
 自分の方を向き、安らかな寝息で眠る彼女の規則正しく動く胸に顔を埋め、
再び目を閉じると体全体が暖かさに包まれる。

 意識が消える直前、次の夢はきっと良いものだと予感がした輝夜だった。
これで三度目の投稿になる正午です。
前回よりテンポアップを目指したものの、付きまとうグダグダ感は払拭できず……

なにはともあれ。


読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。
ご意見、ご感想などを聞かせていただけると大変嬉しいです。
正午
コメント



1.卯月由羽削除
仲のいい二人が可愛かったですw

ゆかりんファンタジアはHARD以上だとものすごい難しくなりそうな印象がw
つい最近聞いたけどアレは高破壊力だ…

あと俺も女優のモモーイが分かりませんでした…モモーイっつったら声優だよね?
2.名無し妖怪削除
次からは、あの申し訳程度のちんまい星を「スターダストレヴァリエー!」と叫びながら発射しよう。
3.nama-hane削除
任○堂の名作ですねー。
主人公の名前をオカアにすると確かに恐いのは納得です。w
そして輝夜様がかわいい!!w
4.名無し妖怪削除
モモーイ・・真っ先に女性自衛官が浮かぶ俺はドウスレバイインダ・・orz

ほのラブなもこてるは良い。大好物です。次回も期待してます。