Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

あっきゅんがしんじゃった。

2007/05/01 12:01:02
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「というわけで、お久しぶりです閻魔様」
「お久しぶり。大きくなりましたね」

三十路に入る前にその一生を終えた阿求。
かつて幻想郷縁起を世に送り出した頃の幼い少女の面影を残しつつも、
手足がスラリと伸び、顔立ちは美しく整った「大人の女性」に成長していた。
そして何より目立つのは、ぶっちゃけた話、胸である。
でかい。やばい。ハンパない。

「閻魔様の方は、相変わらずのようで」
「嫌味ですか。転生をあと495年ほど先延ばしにしますか?」
「ええっ!?わたし何か悪いこと言いました!?」

うろたえる阿求のハンパない部分をにらみつけながら、映姫は答える。

「冗談ですよ…まあ、あなたが巨乳属性持ちだった時点で罪状一つ追加ですが」
「ええっ!?」

映姫は、見た目に関しては、阿求が子どものころとほとんど変わりない。
小柄で童顔、そして貧乳で貧乳で貧乳。
関係ない話だが、この「495年」発言について、

『495年なんてあっという間でしょ?ホントに人間は気が短くてダメねえ』

というコメントをつけたレミリア・スカーレット(相変わらず幼女)さんは、
3日間妹さんに口をきいてもらえなかったということです。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!理不尽にも程が…」
「ま、これも冗談ですが」
「本気で言ってたら訴えるところでしたよ…」
「わたしを誰に訴えるつもりなのかしら。…っと、それはいいとして」

映姫は少し優しげな顔になると、阿求の目を正面から見つめた。
そして、普段の「地獄の裁判長」からは想像もつかないような柔らかい口調で尋ねる。

「…どうでしたか。あなたが…九代目の阿礼乙女が見た、幻想郷は」
「素晴らしい所でした。ここ数百年の間で、一番かもしれないくらいに」
「……」
「妖怪も人間も、みんな平和に、楽しく暮らして…ちょっと気が抜けてるんじゃないの?なんて思ったりもしました」

なんて言ったら、人知れず苦労してた巫女さんに失礼かしら。
着物の袖で口元を隠しつつ、阿求はひどくおかしそうに笑う。
ちなみに人知れず苦労してた巫女さんも、今では阿求に負けず劣らずの美女である。

『三十近い女の腋巫女コスチュームはイタい(18歳で捨虫の魔法を修得した白黒魔法使い)』
『今の霊夢の血は濁ってそうで飲みたくない(妹と仲直りしたい吸血鬼)』
『そろそろドモホ○ンリンク○使ったら?(薬師@見た目はあなたより年下よねニヤニヤ)』

阿求が言う「素晴らしい幻想郷」の立役者の一人。
彼女はこれからも、幻想郷の平和のために戦い続けるのだろう。主に小皺やシミなんかを相手に。

「大丈夫。わたしが見たところ、この平和は決してそんなものではないわ」

映姫は静かに微笑み、告げた。

「妖怪も人間も、昔と変わらず一生懸命に生きてる。変わったのは一つ」
「一つ…それは?」
「ほんの少し、仲良しになっただけ。ただそれだけですよ」

映姫は事も無げに告げたが、それがひどく有り難い事実であることは阿求にもよくわかる。
妖怪と人間はそもそも敵対する者、それを「ほんの少し仲良く」させるために尽力している者がいるのだ。
人知れずその危うい境界を守る者達を、阿求は知っている。
願わくば、この儚い均衡の上に成り立つ平和が少しでも長く続きますように。

「そうですね…わたしは幸せだったと思います。自信を持って、言えます」
「ええ。わたしの浄玻璃鏡も、あなたの幸せな笑顔をたくさん知ってるわ」

閻魔様は今度から『楽園のミラーマン教授』とか名乗ってはどうでしょうか。
喉まで出かかった言葉を、阿求は必死で飲み込む。

「…さて。あなたには、今日から早速転生のためにここで働いてもらうことになるわ」
「承知してます。そのために来たんですから」
「覚えてますか?前にここで働いていた頃のことを」
「いえ…」

阿求が先代の御阿礼の子から引き継いでいる記憶は、幻想郷縁起に関することだけである。

「ふふ。それもそうでしたね…いいわ、今からあなたを案内します」
「大丈夫なんですか?閻魔様が席を外してしまって…」
「そろそろ小町がサボリ始める時間帯ですから。ちょっと行ってお灸をすえるついでです」

この数十年間で、あの死神のサボリ癖だけはついに治らなかったようだ。
阿求は椅子から降り、自分の前に立った映姫を見下ろす。

「なでなで」
「やっぱ馬鹿にしてるんだろてめー!!」

その光景はまるで、年の離れた妹の頭を撫でる姉のようだったと言う。



******



地獄である。
二人が最初にやってきたのは、相撲の稽古場のような場所であった。
ただし土俵はなく、力士の代わりに大勢の鬼がいた。
あちこちに巨大な角材を十字に組み合わせた、横倒しの風車のような物が置いてある。
鬼達はそれを両手で押して回していた。

(何かの工場?それとも井戸水でもくみ上げているのでしょうか…)

鬼達が押している棒はやたらと重そうだ。
皆額に汗を浮かべ、顔を赤くしながら必死で棒を押している。

「あなたには、ここで働いてもらいます」
「あれを押すんですか?」
「そうです」

何のために、と尋ねようとしたところで、一匹の鬼が二人のところまで駆けて来た。
それは阿求の知った顔、生前に幻想郷で何度か会ったことのある鬼だった。

「お久しぶり、でいいのかな?」

伊吹萃香は少し照れ臭そうに、阿求に右手を差し出す。
死にたての亡者に対し、どんな態度をとっていいのかわからないという感じだ。

「ええ。お久しぶりです、萃香さん」

意外な再会だったが、何となく阿求は嬉しかった。
生前の知り合いとこうして話せることはほとんどないと思っていたからである。

「彼女は今日からここであなたたちとともに働くことになります。色々教えてあげてね」
「ええーっ!?人間が鬼の仕事を!?」
「ああ、あなたはこっちに来て短いから、まだ知らないんでしたね」

萃香は幻想郷に残った最後の鬼である。
いつも幻想郷のどこかで酒を飲んで暮らしていたが、ある時急に地獄に姿を見せるようになった。
仲間が恋しくなったのか、何か職に就きたかったのか、それともただの気まぐれか。
理由はともかく、萃香は数年前から、他の鬼と共に地獄で働いていた。
もっとも家は幻想郷にあるらしく、毎朝小町の船で地獄まで通っているらしいが。

「わたしたち御阿礼の子は、転生するまで地獄で働くことになってるんです」
「そうなんだ…」

かつては吸血鬼姉妹と並んで「乳臭さに定評のある萃香」と呼ばれていた彼女も、大きくなった。
ただしその成長速度は人間よりはるかに遅く、「幼女」が「少女」になった程度だ。
それでも、身長は映姫より僅かに高く、胸は映姫より結構大きい。

「いちいちわたしと比べるな!!」

すいません。

「とにかくそういうことなので。彼女の指導はあなたにお任せします」
「ん、そういうことならオッケー。仲間にも紹介しないとね」
「よろしくお願いします、先輩」

地獄で働くということに対し、当然のことながら阿求は恐怖を感じていた。
罪人として行くわけではないのだから、恐れる必要はそれほどないのだが、やはり地獄は地獄。
特に、残酷な拷問シーンを毎日見せられるような仕事は絶対に嫌だ、そう思っていた。
しかし、ここでやっている仕事ならば自分にも続けられそうだ。

「へへへ、鬼の仕事は厳しいよ?その細腕でちゃんとできるかな~っと」
「大丈夫ですよ」

阿求は傍らに落ちていた酒の一升瓶を拾う。おいおい、仕事場に酒瓶転がってていいのか。
わずかに呆れつつも、阿求は一升瓶を地面に立てる。

「何をするんですか」

映姫が聞いた。

「まあ、見ててください。わたしが生前から、転生の準備を怠ってなかったところをお見せします」

阿求は、映姫と萃香の目の前に、右手の人差し指を一本、突き出した。
細く、しなやかな、優しさを感じさせる指であった。
阿求の腰が、深く沈んだ。
無造作に、本当に無造作に、阿求の右手が動いた。
予備動作も、気合いを込める動作も何もない。
ふっ、
と動いた。

びきっ、
と、音がして、一升瓶の頭部が消失していた。
こん、
と、壁に、固いものがぶつかる音が響いてきた。
それが、何の音であるか、映姫と萃香にはわかっていた。
今、目の前から消失した、一升瓶の頭の部分が、宙を飛んで、壁にぶつかったのだ。
阿求が、右手の人差し指一本で、一升瓶の頭部を切断したのである。

「わたし、鍛えてますから」

稗田家に伝わる「転生のために死ぬ前にしておく準備」は、その大半が筋トレだとか何とか。
強さとは何かと聞かれて「わがままを通す力」と答えてしまいそうな笑顔で、阿求は萃香に向き直った。

「鍛え足りなければ、さらに鍛えるだけですが?」
「あ、じ、十分じゃないかな、あはは…」

萃香は目を丸くしながら、何とか作り笑いで平静を装っていた。
そのまま頭のない一升瓶に手を伸ばそうとしたところで、映姫に腕をつかまれた。

「仕事中ですよ」
「ぐっ…ばれたか…」

萃香は溜息をつくと、阿求の方を見て言った。

「力の方は大丈夫そうね。仕事は実際にやって覚えた方が早いと思うけど…今から働ける?」
「もちろん!」

阿求は胸を張って答える。
その拍子に、着物の胸元が少し破れた。

「いけない、また新調しないと」
「死んでも成長してる…」
「何で!?何でこんなに世の中は不平等なのよおおおおおおお!?」

地獄の底から響くような、というか実際に地獄の底から、映姫の悲痛な叫び声が響いた。



******



早速阿求は、萃香に教えてもらいながら仕事を始めた。
教えてもらうといっても、要は木の棒を押して回すだけである。
阿求はすぐに仕事を覚え、仲間の鬼達からも歓迎されることになった。
そして、お昼休み。

「は~いみんな集合~」

それぞれ昼食をとろうとしていた鬼達を、萃香が一箇所に集める。
萃香は若くしてこの場の現場監督を任されているらしい。理由はかわいいからだとか。

「今日は新しい仲間を紹介するからね~」

ぞろぞろと集まってきた鬼達の前に、阿求が立った。

「どうも初めまして…になるのかな?つい先日死にました、九代目阿礼乙女の稗田阿求と申します」
「短い間ですが、よろしくお願いします」

一言一句丁寧に言葉を並べ、最後にぺこりとお辞儀。
鬼達は一瞬シン…と静まり返った後、すぐに大きな歓声を上げた。

「おおおお来たああああああ!!今度の阿礼は美人のねーちゃんじゃねえかあ!!」
「しかも巨乳だ!まさに粉砕!玉砕!大喝采!!」
「すごいぞー!かっこいいぞー!!」

よく見ると、ここにいる鬼たちはほとんどが男だ。
つーか女は萃香だけだ。

「嬉しいね~、ウチの職場はどうも色気が足りなかったから…」
「ちょっとそれどういうことよ!?わたしじゃ不満だってーの!?」

鼻の下を伸ばす一人の鬼の胸倉を、萃香が掴む。

「ははは、萃香ちゃんもあと50年くらいしたら色気の一つや二つ…」
「むきー!!いたいけな少女の魅力がわからないやつらは幻想郷から放逐してやるー!!」

今明かされる新事実!
幻想郷から鬼がいなくなったのは、少女臭を理解できなかったから!?

「皆さん、今までの御阿礼の子をご存知なんですか?」
「ここは随分昔から働いてるのもいるからねー…」

萃香が集まった鬼達をぐるりと見回すと、すぐにいくつもの手が上がる。

「俺!歴代の阿礼の中で最大の怪力を誇った阿未と酒飲んだことあるぜ!」
「若造が!わしは全阿礼中最強の発勁使い・阿爾の親友だった男ぞ!」
「僕が出会った阿礼は百八人までいるよ!」

阿求の記憶にこの者達の顔はないが、これまでの阿礼の何人もが彼らと出会い、共に過ごしてきたのだろう。
そう思うと、初めて出会った相手にも、不思議と親しみが湧いてきた。

(うん、これなら地獄も悪くない)

これまでの阿礼に、そして目の前の、陽気で気さくな鬼達に感謝。
萃香は阿求の肩に手を回し、顔を近づけてきた。

「どう?みんないいやつらでしょ?」
「はい。いつかきっと萃香さんの魅力にも気づいてくれますよ」
「言ってくれるなあ~!!よっしゃ、みんな聞けえ~い!」

萃香の叫びが響き渡る。

「今日は阿求の歓迎会やっちゃうけどいいかな!?答えは聞いてないけど!!」
『いぇーい!!!』

新しい、そして懐かしい仲間と、酒を飲む理由。
これだけ揃ってテンションが上がらない鬼などいるものか。

(こんないい仲間を覚えていられたら…死ぬのなんて怖くないのに)

阿求はたくさんの歓声と拍手の中、自嘲気味に笑った。
これから自分が地獄でどんな経験をしていくのかはわからない。覚えていない。
それでも、きっと笑って生きて(死んで?)いけると思った。
自分が愛した幻想郷には、もう戻れないけれど。

「そうだ!この勢いで霊夢たちも呼んじゃおっか!?」
「それは流石にまずいのでは…」

あの楽園の思い出を共有できる仲間がいる。
そして、ずっと昔から自分を知ってくれている、大勢の「旧友」達がいる。
幸せだ。それだけは自信を持って言える。

「あ…ありがとうございます!すごく嬉しい、で、っく…」

うわーい。
いやはや、まさかこのわたしが泣いてしまうとは。
いい年して情けない、鬼の目にも涙…いやいやこれは鬼の目の前で涙。

(別にいいでしょ!嬉しいものは嬉しいのよ!)

自分の中の自分に八つ当たり。
阿求は着物の袖で涙をぬぐい、呼吸を整え、言った。

「鬼の皆さん、本当にありがとうございます。今日から精一杯頑張りますので、よろしくご指導ご鞭撻の程…」
「な~んて、カタいこと言いっこなし!もう、泣いちゃったりしてかわいいんだから~」

萃香が背伸びして、阿求の頭を撫でる。
その光景はまるで、幼い妹に撫でられる姉のようで以下略。

「やっ…ちょっと、わたしは子どもじゃ…」
「照れるな照れるな。わかんないことあったらなんでも聞いてね。萃香先輩が何でも答えちゃうぞ!」

恥ずかしそうに萃香の手をはねのけた阿求だったが、すぐに表情を和らげた。

「それじゃ、早速なんですが…」
「おう!何かな?」

阿求は先ほどからずっと気になっていたことを尋ねた。

「あの木の棒って、何のために回すんですか?」

鬼達は声をそろえ、サムズアップしつつの最高の笑顔で答えた。
















『意味は、ない!!』













根本的なところで、阿求はここが本当に地獄なのか疑わしく思えてきた。
この時点でチルノの通り名は「氷の大妖精」とかになってます。
ではかつて大妖精だったあの子はなんと呼ばれているのか?
噂によれば、大妖精よりもさらに上のランクの「超妖精」と呼ばれているらしいです。
妖精たちは尊敬の念をこめて、彼女を「超先生」と呼ぶそうです。

>翔菜さん
ご指摘ありがとうございます。修正しました。5/1 22:54
ぐい井戸・御簾田
コメント



1.名無し妖怪削除
せっかくの巨乳あっきゅんなのに全然萌えねえwww
2.名無し妖怪削除
どこから突っ込めばいいのやらw
とりあえずあっきゅんが渺茫だということと大ちゃんが既に事故死してしまったことは把握した
3.名無し妖怪削除
あいもかわらずネタまみれですねw
この後はロープにぶら下がって焼き肉でもするんですか。
4.名無し妖怪削除
松尾象山なあっきゅんに噴いた。
あと、「三十近い女の腋巫女コスチューム」というフレーズ
が脳天に突き刺さった。
5.卯月由羽削除
オチで見事にとどめを刺されたwwww
6.名無し妖怪削除
超先生は待てwww
7.名無し妖怪削除
オチと萃タロスに吹いたwww
8.名無し妖怪削除
映姫の頭をなでなでしてる阿求を想像したら凄く和みました
そして、オチに爆笑…何故か爽やかさも伝わってきたり(笑)
9.翔菜削除
よくわからんが笑ったから負けだwwwオチもうまひwwww
しかし言いたい事はっ。
もっと活かせよ! 巨乳を! 乳で棒を押すくらいの勢いで!

あと誤字とか。
>「そうですね…わたしは幸せだったと思います。自身を持って、言えます」
自身→自信 かと。
10.名無し妖怪削除
ストレートとカーブの境で逝った大ちゃん哀れ。

>巨大な角材を十字に組み合わせた、横倒しの風車のような物
今でも、帆船の碇を上げる為に使われています。
11.ムク削除
流れ的に、晩御飯は逆さ吊りしながらの焼肉にちがいない。
12.ルドルフとトラ猫削除
あきゅうきょにゅう
……うん
あきゅうきょにゅう みそじ てまえ
……ふぁぁっぁぁぁぁぁ
あおおっしゃあああああ!!!
13.名無し妖怪削除
あっきゅんはビョウボウかwww人類最強だな
14.名無し妖怪削除
なんてカオスwww
てかえーきんwww

このあと歓迎会で、みんなで宙吊りになりながら焼肉を食べるんですね!
15.名無し妖怪削除
いかん、あの阿礼はわしの108人目よりも危険だぞ!!!
あと、その地獄には腰みのの親父が住んでいますか
16.削除
>あっきゅん+巨乳
いよッしゃあああああああああああぁぁ!!
17.名前が無い程度の能力削除
意味のない労働を延々やらされるのって、拷問の一つじゃなかったっけ。地獄だからそれもそうなのか。