※体験版より無駄に長いです。覚悟して読んでください。
元ネタについてですが、要望があればEXで公表します。
幻想郷の同人サークル、なないろすぱーくが開発した同人アクションゲーム、てぃんくる・まりさ。
予定発売日から延期に延期を重ね、そうして五ヶ月経ってようやく発売にこぎつけた。
「あぁもぉ、早く来なさいよね時間が無駄になっちゃうじゃない!」
時計を見て文句を言う蓬莱山 輝夜に、彼女の保護者である八意 永琳が微笑みかける。
「まあまあ。幻想郷のIWGPがそんな些事で騒いではいけませんよ」
「なにそれ?」
「見ていて面白くなる賢いプレイをする人の事です」
いつもの笑顔で永琳は言い、気を良くした輝夜は「ちょっと落ち着くわ」とその場に座った。
本来の意味は『著しく我侭なゲームプレーヤー』の略。全く褒めていない。
妹紅が来たのはそれから二十分後の事。
「遅れた理由があるんでしょ。言いたいなら言いなさいよね!」
言い方こそきついが座布団を勧めてくれたりコントローラーを渡してくれたり対応は丁寧だ。
「里の方でボヤがあったんだよ。幸いすぐに消えたしみんな無事だった」
慧音と救助を手伝ってきた、と妹紅は話を終わらせた。
それではゲームを始めよう。
と、その前に。
実は音声データも収録されており、音楽CDが聞ける媒体で再生すると警告メッセージが流れる。
内容は……聞かない方が良いって、けーねが言ってた。
それでは今度こそゲームを始めよう。
例のごとくオープニングをすっ飛ばし、メイン画面を見た二人は感嘆の声を上げた。
画面の中には最初から選べるメインゲームが三つ、ミニゲームが三つの超ボリューム。
協力してクリアするメインゲームと違ってミニゲームは対戦がメインで、
射命丸 文を主役とした連打命の『お前に足りないものは……』、
稗田 阿久メインの記憶系ゲーム『覚えたぞ!!』、
三月精が出るタイミング勝負の『黒い三月精』の三つ。
でもミニゲームは後回し。
なぜなら、勝負事を始めると引っ込みがつかない二人だからである。
‐はるのなべとともに むずかしさ:☆~‐
桜色のタイトル画面には全4ステージと書いてある親切設計になっていた。
タイトルで待つ事数秒。体験版より細かいバックストーリーが始まった。
―その日、巫女の住処から食べ物が消えた。
それも夕飯前。
この事態に朝しか食べていない彼女は狼狽する。
「……もぉらめぇ……おなかふいたぁ……」
「霊夢……。わかった。私が必ず取り返してやるぜ!」
こうして博霊神社を飛び出した、人呼んで“普通の魔法使い”霧雨 魔理沙だった―
演出面での変更は少なく、お供のバケバケに食材を持たせた満面の笑顔の幽々子に始まり、
博霊神社から箒で飛び立つ魔理沙で終わる。
変更点と言えば、間に空腹で生気の無い霊夢が出る位だ。
⇒ はじめから
を選ぶとチュートリアルへは行かず難易度設定画面になった。
最初から選べる難易度はEasy、Normal、Hardの3段階が用意されており、
サークルは体験版の難易度(NormalとHardの中間くらい)だけで発売するつもりだったが、
公式BBSに難しすぎるとの書き込みが殺到したため今のようになった。
なお、条件を満たすとさらに3つの隠し難易度が出現する。
「チュートリアる?」
できれば省略したい輝夜だが、妹紅は何ヶ月も触れていないため覚えていない。
「いちおう」
すぐにでも始めたい気持ちを抑えて渋々Ⅰコンを渡した。
では、掻い摘んで説明。
メインで操作するキャラは霧雨 魔理沙。幻想郷随一のパクリ魔。
方向キーで移動、素早く同じ方向に二度押せばダッシュできる。下はしゃがみで上は扉に入る。
Bボタンでジャンプ。空中にいる時にBボタンを押すと箒で飛べる。
下とBを同時押しする事でスライディング。ボスには効かないが少しだけ攻撃力がある。
Yボタンを押すとミニ八卦炉で敵を吸い付け、もう一度Yボタンで前方に投げ捨てる。
投げ捨てはジャンプと組み合わせる事ができる。吸い付けたまま移動はできるが飛べないので注意。
また、能力を持つ敵を吸い付けた時に下かAボタンを押すと相手の能力を吸収できる。
能力を持っている時にAボタンでヘルパー誕生。この時Ⅱコンのボタンを押せば二人プレイができる。
ちなみにAボタンでヘルパーを能力アイテムに戻す事もできるが、協力中にやりすぎると嫌われる。
Xは特殊な能力時のみ使える秘密ボタン。
Lでガード。Rでグレイズ。スタートで一時停止。セレクトボタンで決めポーズ。
グレイズは結構癖のあるシステムだから使って覚えるべし。基本操作は以上。
チュートリアルも終わり、軽快なBGMで始まったステージ1。
体験版では雪景色だった背景には桜が咲き誇り、マイナーチェンジってレベルじゃない事が伺える。
「もっと煮詰めてから体験版にしなさいよね」
……ごもっとも。
体験版では早々にボムが取れたが、製品版で始めに出てきたのはチルノだった。
中ボスを降格され単なる雑魚に成り下がったもののむしろ待遇は良い。
二人が同時に回復できる“口移し”で攻撃力が下がるという欠点を持つため、
初期攻撃力に大きな上方修正がかけられ、特に空中からの攻撃力が別キャラと感じるほど高くなった、
結果あれだけ「使えない」と言われていた彼女はもう居ない。
反対に『ボム』能力とアリスの性能は下げられ、威力の高い上海&蓬莱人形が出る確率も下がった。
さらに口移しでの攻撃力アップも5%に下げられたが、やはり愛好者は多いようだ。
春爛漫の中にレティが出られるはずが無い、とは輝夜の言葉。
だがそれではファンが困り、そのための救済措置が“能力のもと”だ。
能力のもととは触れればそのキャラの能力をコピーでき、何度でも使えるお助け要素にして、
その場の雰囲気にそぐわないキャラを無理矢理出してしまえる最終兵器。
レティの能力は『アイス』から変更されて『プレス』。
氷像になって相手を押し潰す能力で、威力は高く発動時は無敵と使い勝手が良い。
また、口移しの回復量が他のキャラと比べて若干高いのはまんざらでもない証拠のようだ。
―「相変わらず凄い結界だぜ」―
冥界の入り口を塞ぐ巨大な桜花結界の前に出た。
セリフを入れる事により直感的にボスだと分かるようにしてあるが、
直前の扉の上に“BOSS”とあるため嫌でもボスだと分かる。
―「めるぽ」
「「ガッ」」―
現れたのは名演奏家として名高い、騒霊のプリズムリバー三姉妹。
―「相変わらず騒々しい連中だぜ」
「あなたもお呼ばれ?」
「何の話だ?」
「今夜の鍋パーティ。参加資格は一人一品の持参」
「ちなみにルナサお姉ちゃんは椎茸、メルランお姉ちゃんは長ネギ。
そして私が赤唐辛子」―
「春に鍋は無いわよね」
「昨日食べた」
―「ともかく一曲どう? 友達のよしみで」
「黙って通してくれよ。友達のよしみで」
「騒霊の名にかけて、そーれーだけはできないわよ!」
「気圧が……下がる」―
気圧よりプレイヤーのテンションの方が下がる。
初心者はここでやる気を抜かれた挙句に波状攻撃で落とされるが、輝夜は初心者ではない。
体力ゲージも兼用のため結構楽に攻略できたのだった。
―「せっかくだから、私はこの赤いキノコを持っていくぜ」―
変化が激しいステージ2。白玉楼三大名物の一つ大階段がメインになっていた。
ちなみに、後二つの名物が西行妖と西行寺 幽々子である事に議論の余地は無い。
「何でこんなに変わったのかしらね。シナリオ担当の変更?」
「出番削っても大丈夫なキャラだったから、とか」
「……さりげなく酷い事言うわね」
さて、ひたすら階段を上っていくため上に攻撃できる能力が大活躍するこのステージ。
「強くて役に立つチルノって、なんか間違ってると思うわ」
ここに来て大活躍中の、通常攻撃が上下斜め45度の『アイス』能力&チルノ。
『ボム』&アリスや初登場となる『ビーム』&ルーミアも使えない訳では無いが、
ここでのチルノの使いやすさの前には霞んでしまう。
体験版での使いにくさのギャップから見直し、新たなファンになる人も多いそうだ。
「何やってんのよピンチじゃない!」
妹紅操るチルノの体力が危ない。
やはり初心者だから敵に突っ込んだり突っ込まれたり、無駄に弾に当たったりと事故は多い。
「こっち来なさい。急いで!」
この“強制カップリングシステム”である口移し。
両方の体力が回復するだけでなく、キャラによって様々な影響を及ぼす。
「あ、全回復」
「そりゃそうよ。マキシマムキノコだもん」
体力が全回復する“M”と書かれた魔法のキノコ。魔理沙と言えばキノコだ。
余談だが、永琳にその事を話したら「はしたない」と早口に呟きすぐに話を変えた。
おなじみBOSS扉をくぐり抜けた先、白玉楼の門の前に辿り着く。
―「鍋を食べに来たぜ」
「生きている人間は呼んでいない」
「半死人が受け付けやってる時点で大した問題じゃないだろ?」
「私は半霊! ……ともかく、ちゃんと死んでから来るのね」―
「参考までにだけど、あんたは何鍋が好き?」
「えーと……んー……いきなり言われてもなぁ。
昨日食べたすき焼きも良いけど、私は水炊きね」
この一言に輝夜は立ち上がり襖を全開にして「誰か」と叫び、
小走りでやって来た因幡に今日の晩ご飯は水炊きにするよう告げた。
「その……せっかくだから食べてきなさいよ! 分かったわねっ!?」
「うん、良いけど……そんな大迫力で言わなくても……」
―「鍋はともかく、死人嬢に尋ねたい事があるんだ。
潔くここを通してくれ、鍋はともかく」
「護衛の私が、お前みたいな危険人物をむざむざ通すと思っているの?」
「あぁ、そうか。言い方が悪かった。押し通るぜ!」
「……妖怪が鍛えた楼観剣に。
斬れぬものなど、殆ど無い!」―
ステージ2ボスの魂魄 妖夢は庭師にして剣術指南役。剣を使って挑んでくる。
ボス戦になると一気に弱く感じる『アイス』&チルノのため、ⅡコンのAボタンを連打して暴走モードにして突っ込んでみた。
暴走モードとは2P専用の技であり、暴走中に能力が吸収できる敵に触れると全回復して能力変更ができる荒技だが、
一定時間経過で消滅してしまう他、同系統の能力だと吸収できない。
なによりキャラのファンには使いにくい。
ともかく妖夢になり、適当に動かしてみて「良い」と一言。
上下への攻撃は無いが、武器から飛ぶ衝撃波的なものの攻撃範囲が広く、
連続攻撃もできるため使いやすい。
「ここで全然使えないのが来たら面白いと思わない?」
「それは嫌だ」
さっきから出てくる能力が使いやすい系統だがそれは導入部分だから。
ちなみに最も使いにくい能力は……あ、ネタバレは禁止ですよね。
―「そうそう。食材ならキノコを持ってきたぜ。
この通り、大きくて見た目が派手で美味しそうなやつだ」
「それは毒キノコだっ!!」―
ここから未踏峰、なのだが、輝夜には凄い違和感があった。
「幽々子を倒してめでたし、ってノリじゃ無いわよね」
「空腹で狂った巫女が―――」
「それは無いわ」
ステージ3。背景には咲き誇る桜が見えるが無音のためどことなく不気味。
しかし扉一つで雰囲気は一変する。
背景には準備で忙しそうに走り回る幽霊たちが映り、
祭囃子をアレンジしたようなBGMに強制スクロールで画面全体が忙しいムードに包まれた。
そのテンションのまま中ボスのリリーホワイト&リリーブラックを難なく撃破。
何でこんなに扱いが良いのか、という疑問はさておき、肝心の能力は『スカ』。
「中ボスに能力が無いってふざけてんの!?」
今にもコントローラーを投げ捨てそうな輝夜。さすがIWGPである。
さて、某掲示板の攻略スレによればリリーを単体で吸収しても意味は無く、
他の敵と一緒に吸収する事で『春爛漫』の能力が発動し、
ルーレットで全ての能力を得られるチャンスが手に入る。
春は芽生えの季節だから、という理由らしい。
大変便利な能力だが、その弊害としてリリーを2Pで扱えず口移しもできない。
それでもマリ×リリの需要は無さそうなので省いたと製作サイドは公表している。
しかしその後、リリーファンから苦情が来たのは言うまでも無い。
―「あら、あなたはお客さん?
それとも食材かしら?」
「ただの泥棒だ。義賊ってやつだぜ」
「食材の方ね。嬉しいわぁ」
「話を聞いてるのか?」
「聞いてるわよ。
死ぬ時は誰かの役に立って死にたい、ってことでしょ」
「ノーだ。ドナーになる意思は無いぜ」―
BGMが止まる。一瞬バグかと思ったが演出のようで安心。
ちなみにこの会話により、幽々子でも人は食べないだろう、という旨の苦情が来た。
―「じゃあ本題だ」
「でも、折角だし」
「なけなしの食料を返して貰うぜ、死人嬢!」
「鍋に入れて美味しくいただくわ、黒い魔!」―
妖々夢でのやりとりをパロディ化したセリフでボス戦が始まった。
BGMも幽々子のテーマのアレンジと凝っているが聞いている暇は無い。
常に浮いているため攻撃が当てにくく、よく消えてその間は無敵、反魂蝶はグレイズで回避できないため邪魔と前2ステージと比べて別世界の難易度。
しかも暴走させて突っ込んでも強ボスから能力は得られず、あえなく消滅してしまう。
気をつけよう。
メインゲームの強ボスは(一部例外あり)スペルカードを使用し、
難易度Normalでは体力が50%と25%になった際に2回使ってくる。
先に使ってきた蝦夷「石狩」は弾幕が波しぶきのように移動し、
次の天保「柳川」は弾幕の軌道がほぼランダムであるため結局どっちも避けにくい。
「これ、どっちも鍋の名前だね」
「んな事よりちゃんと攻撃しなさいよ!」
「勝った! ステージ3完ッ!」
最後の一撃を当てた輝夜は思わずガッツポーズ。
しかし画面が暗くなり、ひどく嫌な予感がしてコントローラーを握り直して一言。
「……Normalでラストスペルって」
強ボスは体力ゲージが無くなると同時にラストスペルが発動し、
体力が一定値まで回復するようになっている。
そして幽々子のラストスペル、反永「月光絶好蝶」は虹色に輝く蝶の羽を生やした幽々子が画面全体をゆるやかに飛び回り、
彼女の通った所が一定時間虹色になって触れると徐々に体力が減っていくという恐ろしい技だ。
「「ユニヴァース!!」」
二人のシンクロした叫びが永遠亭に響き渡る。
「何事ですか!?」
「あ、何でもないの。ごめんね永琳」
「何事も無ければ良いんです。けど、仕事の邪魔はほどほどにしてくださいね」
この時の永琳は怖かった。
初心者殺し、幽々子を三回のアウトを経てようやく倒し、お茶を手に一息。
―「さて、霊夢の食べ物を返してもらうぜ」
「おかしいわねぇ。神社には寄ってないわよ?」
「しらばっくれたって無駄だぜ。一番怪しいのはお前だ」
「じゃあ、その事は鍋を食べながら話しましょうか」―
会話が終わり、鍋パーティの様子が映し出されるエンディングが始まった。
―「材料を買い回ってただけだったのか。疑って悪かった。
おわびと言っちゃなんだが、このキノコをくれてやるぜ」
「あらぁ、美味しそうなキノコねぇ」
「それ毒キノコ―――って言ってるそばから生で食べないでくださいよ!」
「あらあら妖夢。いつの間にそんな大きくなったの?」
「って幽々子様ぁ!? 違いますよ幽々子様が縮んでしまって―――」
「お。コンサートが始まるみたいだぜ」
「見に行かなくちゃね」
「動くと服が脱げますって! 待ってください幽々子様ぁー!!」
こうして白玉楼の夜は騒がしく更けていき、
魔理沙はとてもとても楽しい時間を過ごせましたとさ
めでたしめでたし―
この一文が表示されて暗転。本当に終わりっぽい。
―「怪しさだったら私より紫じゃない」―
偽エンディング終了後、真っ暗な画面に現れたセリフがまだ終わらない事を示していた。
二人の他、ホッとしたプレイヤーも多い事だろう。
何だか騙された感に包まれて始まったステージ4。
舞台は宴が終了した後の西行妖の前で、4つの能力のもととBOSS扉があった。
そしてついに真犯人である八雲 紫と対峙する。
―「そうよ。私が真犯人」
「すぐに食い物を返してやってくれ。霊夢が危ない」
「私のサービスカットじゃダメかしら?」
「全年齢対象じゃなくても色々とキツイものがあるぜ」
「じゃあこうしましょう。あなたが勝ったら返してあげるわ。
もし私が勝ったら……あなたに全年齢対象じゃ見せられない事をしてあげる」
「上等だぜ」―
幻想郷でも屈指の実力を持つ妖怪だけに、多分、いや絶対に強いだろう。
二人の予想は的中した……かに思えたが全然強くない。
と言うかほとんど動かず、目は横線で上には「ZZZ」の文字。
彼女が使うスペルカードの
眠気「快眠アクセラレイト」と惰眠「フレキシブル二度寝ゾーン」は名前からしてやる気が無い。
さらにBGMのネクロファンタジア・アレンジもどこかへにょって迫力が無い。
「なによコレ。最後のセフィ○ス並に弱いわね」
「いや、あれはイベント戦闘だろうし」
愚痴る輝夜に苦笑いの妹紅。
やはり弱かったラストスペル、新境地「寝すぎっ娘」も簡単に破ってしまい、
メインゲームのラスボスを2分ちょっとで撃破してしまった二人だった。
―「約束どおり余った分は返しておいたわ」
「全部返してやれよ」
「無理よ。8割はお腹の中だし」
「……酷いな」
「鍋の残りでも持っていってあげればいいじゃないの。
それじゃあ、霊夢によろしくね」―
よろしくね、の言葉と同時に暗転し再び魔理沙が飛び立つシーンが入る。
最後は、鍋を持って神社に降り立つ魔理沙の一枚絵で幕を閉じるのだった。
「ふぅ、目が痛くなってきた。そろそろ休憩しようよ」
「生っちょろい目ねぇ。私なんか六十二時間ぶっ通しでやっても平気よ」
「大した自信だね。じゃあ、ちょっとばかし試してみようか」
そう言った妹紅はにぃっと笑い、輝夜に「まばたき禁止」と言った。
ドライアイの人は眼球を覆う涙の量が少ないため、
意識を集中していない状態で目を開けていられる時間が涙の量が正常な人より短い。
この測定では10秒間開けていられるかが目安で、
10秒以内にまばたきをしてしまった人はドライアイの疑いがある。ご注意を。
「はいダメ、4秒。完璧ドライアイだね」
「も、もっかいよ!」
蓬莱人でもドライアイになるらしく、輝夜は認めたくないのか何度もやり直している。
しかし繰り返しやってもドライアイが治る訳ではない。これは生活習慣から来る病である。
「ちょっとは外に出ないとね。軽い散歩でも良いみたいだし」
襖を開くと夕日が差し込んできた。
気の早い鈴虫はもう鳴き始め、遠くの空に数羽の鴉が見える。
「そ、そこまで言うなら行くわ! ほら、晩ご飯まで散歩するわよ!」
妹紅の服の袖を強く掴んで立ち上がり、早足に歩き出した。
「夕日が綺麗ね。明日も晴れると良いなぁ」
「(……このまま竹林に連れ出すのもアリよね)」
夕日に照らされる少女は二人、立ち止まって空を見ていた。
「あのさ。明日の夜、里で夏祭りがあるから一緒に……」
「(今の妹紅なら何してもあのcaved!!!!に言うような真似はしないだろうし)」
輝夜の様子が明らかにおかしい。ずっと空を見上げ、気のせいか軽くにやけている。
「遠くをじぃっと見てもすぐには治らないってさ」
「あ、あぁそうなの。そうなんだ。……と、ところで竹林の方に行ってみない?」
「ん、良いね。緑は目に良いって慧音も言ってたし」
当たり前だが永遠亭付近の竹林に人気は無い。
昼間なら薬になる薬草を採りに来る因幡たちに会う事もあるが、それが過ぎれば誰も居なくなる。
「そう言えば妹紅は何秒大丈夫なの?
(目をつぶった所を事故のふりして……。これで完璧よ……くっくくくははははっ!)」
本心は隠して試してもらい、ひどく長く感じた19秒。
妹紅の目が耐え切れずに目をつむった瞬間、
「うおっ、まぶしっ」
カメラのフラッシュに邪魔され、輝夜は怒りを込めた視線をカメラに向けた。
視線の先に居た射命丸 文は悪びれる様子なく笑顔で尋ねてきた。
「やーどうも。失礼ですが、なに、なさっていたんですか?」
彼女の笑顔に、ここで隠せば尾ひれで終わらずキメラになるだろう予感が過ぎる。
「ドライアイの測定よ。それで、解消するには緑が良いからここに来たのよ」
「なるほど。……全っ然ネタにならない理由ですね」
スクープ命の彼女にしてみれば輝夜の行動後の方が望ましかったのかもしれないが、
二人の立場上未遂で終わって良かったというもの。
それから数分、ネタは無いかとしつこい文が居座っている。
さっきの出来事をキメラにされるのが心配な輝夜は妹紅に頼り、妹紅は意を決して話し始めた。
「そうそう。最近、慧音がさ」
「あの慧音さんが……何です?」
「今週に入ってから鏡の前でポーズを取ってる事が多いんだ。
紅魔館のメイド服を着て、こう、こんな感じ」
右手を頭、左手を腰に当て、体を揺らして満面の笑みを浮かべる。
「コスプレ、というやつですね。他には?」
「たしか……めっさ、とか何か言ってたはずだよ」
「『美人教師の知られざる一面』。良い記事になりそうです。ありがとうございました!」
早めの晩ご飯を終えた上白沢 慧音は家に一人。
つい先ほど「妹紅は永遠亭でご飯を済まします」と遣いの因幡・ナンバー32Fが言いに来た。
「……なぜナンバリングが十六進法なのだろうか。
いや、それより妹紅の帰りが遅れるのは好都合だ」
明日は里で夏祭りが開かれる。
手を借りたいと頼まれ、喜んで協力を申し出て売り子を担当する事になった。
しかし普段着だと不自然だし、浴衣では動きにくいだろうと考える。
そこで紅魔館からメイド服を借りた。
その時にメイド長が直々に、基本的な身振りと挨拶を教えてくれたのだった。
「む……。やはり作り笑顔は苦手だな……」
鏡を使っての練習を繰り返すが気がつけば仏頂面になっている。
あまり笑わないキャラクターとして、広く認知されているがための宿命だろう。
しかし彼女は、人のためなら自己犠牲に躊躇が無い性格をしていた。
「私のちっぽけな矜持で祭りを盛り下げる訳にはいかない!」
プライドを捨て去る覚悟をした慧音は凄いの一言。
見た者をうっとりさせる笑顔と完璧な対応を次々と見せつけていたが、
「ど」という言葉を言って急に動きが止まる。
次の瞬間、慧音は自身の頬を強く打った。その表情は厳しい。
「こんな簡単な事で躊躇してる場合じゃないだろう! 甘えるんじゃない、上白沢 慧音!」
胸に手を当て、ゆっくりと息を吸い込んで心を落ち着ける。
「大丈夫、私ならやれる。恥ずかしがる必要なんて無いんだ」
教えてもらった挨拶の中で群を抜いて恥ずかしく、唯一成功しないのは、深く知る相手に対する挨拶だ。
右手を頭に、左手を腰に当て、胸が揺れるほど体を振ってから満面の笑みを浮かべるというもの。
そして、その時に忘れてはいけないセリフがある。
「どっ、どうだいこの衣装。
めがっさ似合ってると思わないっかなぁ?」
‐はるのなべとともに‐EXに続く。
子供っぽいけれどもケンカはしない、心は大人な二人・・・ほのぼのしました。
そして因幡ナンバーが16進法なところで吹き出しました。
てるもこなシーンとかは読んでる最中終始ニヤニヤでしたよw
黄昏つくってくれないかなぁ
相変わらず初心者向けじゃない難易度だな。(輝夜がHardを選んだのかもしれないけど)
それにしても他のメインゲームも気になる。(特に逆襲が気になる)
最後に…
>もっと煮詰めてから体験版にしなさいよね
……ごもっとも。タイトル変わってるしw
はるのかぜよりだんご->はるのなべとともに