Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

とげとげの木 せかんど

2007/04/27 07:17:52
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※せかんどです。一応。

前書き:ぼろいかさ すてた むめいのおか









「ってええーーーーー!?」



私が住処にしている太陽の畑は、その名前に違わない程の輝きを見せる向日葵の名所であって、陽の気を好む妖精が集う場所でもある。
年中暇で何も考えてないような妖精が集まっていたら、悪戯を始めるのは当たり前の事で。
現に、私の愛用する傘がどっかいった。お昼寝の間に妖精が隠したのかな。
そういう時は近くに居た妖精に笑顔で傘を見かけなかったかと聞くと、大抵快く教えてくれるか、探してきてくれる。
頼んだ相手の笑顔が引きつってるように見えるのはただの照れ隠しでしょう。
うん、人徳。私人間じゃないから妖徳?まぁどっちでもいいや。
ま、そんな訳で今回もその辺の妖精を恫か…じゃなくてお願いをしたら、その子は慌てて私の足元を指差した。
足元を見ると、何か四角くて薄い物を踏んでいる。拾い上げてみるとそれは天狗がぶん投げて行った新聞に挟まってたチラシ。
あー、これ人里の花屋さんでリリーホワイトが花を咲かせたら特売しますって記事が載ってて、見に行こうと思ってたのに結局行けなかった奴ね。思い出してちょっとがっかり。
新聞自体は『怪奇!毒霧立ち込める鈴蘭畑で謎の生物の影!』などと実にワイドショー臭のする字体で一面が飾られて居たので、腐葉土の代わりにでも成るかと思って埋めておいたけど。
それをよく見ると、その裏面にやたら達者な毛筆で、こう書かれていた。


―― 無名の丘に旅立ちます。探さないでください。 貴方の傘より ――




至る、冒頭。

とりあえずまずお前は探してほしいのか探して欲しくないのかどっちだ。
そしてどうやって字を書いてどうやって丘に向ったんだ。
更に空きスペースにそのまま毛筆で勢い良く描かれているイラスト。傘が三つ指着いてる姿を描こうとしたのかどうかは知らないが、どう見ても地面に突き刺さってます。
真に勇気のある者にしか抜けない伝説の某スタイル。
手の込んだ悪戯かと思ってそこら辺で遊んでる妖精を尋も…じゃなくて尋ねて回ってみると、そのうちの何匹かから、傘が無名の丘の方に向ってひとりでに移動してたという話を聞けた。
基本的に妖精は嘘をつくほどの智慧を持ち合わせてないから、彼らの言う事は事実だと思って間違いない。
流石に人里の方まで行くとは思えないし、私の傘は手紙通り無名の丘にある可能性が高い。
それにしても、何が悲しくて傘に三行半を突きつけられなきゃならないのよ…。
私だってやったことないのに…はいいとして。やっぱ、原因はあれなのかなぁ…。
何となく溜息。
少し前にちょっとした騒動を起こして、そのときに傘を盾代わりに使って穴が開いちゃったのを直していなかった。
とは言っても放置してた訳じゃなくて、ちゃんとした修理が出来なかったのだ。
何しろ私の傘は特別性で、使用者の妖力やら魔力と同調しやすい生地を使っている。だから弾幕を防いでも、武器として使っても簡単には壊れず、劣化もほぼしない。
だから修理する為の予備の布なんて用意してなかったのね。
まぁ、無ければ手に入れればいいだけな訳で、幻想郷でも魔力を持つような特殊な品物を扱ってて、特殊な取引なしに手に入れられそうなのは香霖堂くらいしかない。
で、行ってみたらあったんだけど…。

おかねがたりません。

かなり恥ずかしかった。多分顔真っ赤だったと思う。
仕方ないから上目遣いで見つめながら、値引きして欲しいなーって言ってみたら、
「君がそういう行動を取ると、霊夢が同じことをするくらいの違和感があるね」
とか言われた。
私だって恥ずかしいの我慢してやったんだから、もうちょっと気の利いたことくらい言ってもいいじゃない、あの不感症店主めー!
腹たったので彼が席を外した隙に、読んでいた本の重要な部分を片端から引き抜いて、勇気があっても抜けない伝説の本にしておいた。
何が抜けないのかはご想像にお任せします。

結局、売ってもらえなかったからそのまま人里に行って、防水処理を施しただけの布を買ってきた。
それでも割と貴重品らしくて、出費としては痛かったけど・・・。
そういえば、人里をうろうろとしてる間、私に向けられる意識というか、私を見る目とういか、そういった物が少し変わっているように感じた。
具体的に言うと、私が力のある妖怪であることが信じられないって視線、私の力を知ってて恐れを抱く意識に混じって、
「罵って欲しいハァハァ」
とか言う囁きが聞こえる事がある。
あれか、これが人間と妖怪の新しい関係ってやつか。
勘弁してください。
そんなに被虐心に溢れてるのなら、満月の夜にあのハクタクの家にでも押しかければいいと思う。
まぁ、言葉が心に突き刺さる前に、頭が床に突き刺さるだろうけど。
でもそれくらいならまだいい。私が宴会で彼女にちょっかいをかけたときは、気づいたら首から下が石畳にめり込んでました。
その上、誰かが引き抜こうとしながら言った、
「まだまだ幽香は抜けません!」
という台詞のせいで、そのまま『おおきなかぶ』の寸劇が始まった。私かぶ扱い。というかほんとに抜けなくて、数人がかりじゃ抜けない伝説の風見幽香になりそうだったし。
恥ずかしくて、帰ってからこっそり泣いたのは私だけの秘密。

それはさて置き。
私があの傘を使い始めてから相当経ってるし、私の妖力を受けて性質が変化してる部分もあるから、仮修理した程度じゃヘソを曲げて付喪神と化してもおかしくはない。
ほら、私って繊細だから。

…うん、誰も突っ込んでくれないのが分かっててボケるとちょっと切ない。

とにかく、無名の丘に行ってみるしかないわね。









幻想郷は元々狭い世界で、太陽の畑から無名の丘へは、飛ぶのがそれほど早くない私でも十数分もあれば着く。
と思っていた時期が私にもありました。
ちょっと折れ曲がった向日葵片手に、目の前の鈴蘭畑を疲れた気分で眺める。
普段から出かけるときは傘を持っていたせいか、いざ手ぶらで出かけようとすると手持ち無沙汰で適わなくて、ついその辺の向日葵を一本抜いて持ってきたんだけど、それが不味かったらしい。
何をどう間違ったのか、私を向日葵妖精と勘違いする奴が続出したのだ。
あからさまに妖精釣りをしようとしていた人間を向日葵でどついたのを皮切りにして、偶然会ったリリーホワイトが、
「貴様はいい!そうやって、季節感がない花が咲いていることを喚いていれば気が済むんだからな!」
と、いきなり中弾をばら撒き始めたので引っぱたき。
今度は黒い方のリリーが、
「出てこなければやられることもなかったのに!」
とか言いながらやっぱり中弾をばら撒き始めたので引っぱたき。
後ろを見たら、いつの間にか妖精たちが色々な花を抱えて、アヒルの子宜しく付いて来ていたのを引っぱたいたら私まで連爆した。
もうちょっとで弾幕開花宣言まで連鎖するところだったわ。
それにしても何か、向日葵抱えながら飛んでたら向日葵妖精か。
普段は概ね撃墜されて、エキストラでは概ね無視されても頑張る彼女らにアイデンティティーはないって言うの!?


…ないか、だって妖精だし。


まぁ、そんな事があったせいで、到着まで三十分強。うち三分の二ほどが無駄な時間だったと思うとしんどさ倍増。
これでもし無名の丘に何もなかったら暴れてるところだったけど、そこまでは色々と見放されてなかったみたい。
今私の目の前には、傘がある。
って言うか傘を差してる奴がいる。
むしろ、そいつが傘に差されてる?
「あら、久しぶりね。えー…と、風見シローだっけ?」
「誰がV3か。私の名前は幽香よ」
そう、無名の丘に来た時点で、こいつとの遭遇は避けられないとは思ってた。小さな毒人形、メディスン・メランコリー。
「どう?この傘。気がついたらここに捨てられてたんだけど、似合うでしょ」
彼女をは傘を差したままくるっと…とはいかずフラフラと一回転してから、そう言った。本人としては優雅なつもりなのかもしれないけど、子供が背伸びしてるみたいでどっちかと言えば微笑まし
い。
「ええ、そうね。元々私の物だから、誰が持ってもそれなりには似合うのよ」
「ふーん」
流された。いい度胸ね。
「あんなこと言ってるけど、どうなの?かーさん」
かーさんて誰よ。今この場に私と貴方以外に喋れそうな奴なんて…。
「うむ、彼女は確かに私の所有者だった」

…居た。ンなバカな。
ひとりでに動き出したり、所有者を傷つけたりするって事はあるけど、さすがに喋る付喪神なんてのは初めてだ。
呆気に取られる私をよそに、彼(だろう、声が妙に渋いし)はメディスンの会話を続けている。
「だが私が破損しているにも関わらず、いつまでもちゃんとした修理をしてくれないのではな。所有者としての自覚が足りないのではないかと思って、こうやって一時的に距離を置いてみた訳だ」
「酷い話よねー」
「まぁ、そのお陰でこうやって君と巡り合えたのだし、こうやって喋る事もできている。それに感謝するとするよ」
「ふふ、かーさんったら。おだてても何も出ないよ?」
「む、私は比較的本気で言っているのだが。メディスンにはかなわないな。はっはっは」

えー…。何だろうこの置いてけぼり感と、激しい脱力感は…。一世代前のラブコメか何かか。
どうも、私の傘も毒の影響で喋るまでになったらしい。ほんとかどうかは知らないけど。
「あー…。勝手に盛り上がってるところ悪いけど、その傘は返して貰うわよ。私のだし」
そう言った私を、メディスンとかーさん(仮)は不思議そうに見つめてから、
「花畑に物を捨てる愚かな妖怪は何を考えてるのかしらねー?」
「ねー?」

ぶち。

「何が『ねー?』かッ!私の物は私の物!貴方の物も私の物って昔から相場が決まってるんだから、つべこべ言わずに返せーッ!」
叫びながら手に持った向日葵をメディスンに向ってぶん投げる。
槍投げの要領で放たれたそれは空気を裂き、瞬時に地面に突き刺さった。傍から見たらちょっと斜めに生えてるくらいにしか見えないくらい完璧である。
「危ないじゃない、いきなり仕掛けてくるなんて!」
まぁ、仮にでも相手も妖怪。そのくらいでしとめられるほど甘くはなかったみたいね。
少し横に避けた位置から抗議の声を上げるメディスンに向き直り、
「そっちが仕掛けて欲しそうなことばっか言うからよ。いきなりスペルカードとかじゃなかっただけ、私の優しさに感謝して欲しいくらいだわ」
そう言い放って両の掌に魔力を集中させ、弾幕を張る体勢を整える。実際のところは、下手に全力で攻撃して傘が壊れるのが嫌なだけなんだけど。
あの娘が傘を盾代わりにするとは思えないけど、さっきのかーさん(仮)の喋ること自体が死亡フラグみたいな語り口だと、自分から盾になったりしそうなのが怖いわ。
まぁ、殺し合いをするならともかく、弾幕ごっこである以上弾の威力にこだわる必要はない。被弾さえさせれば、それで私の勝ちだ。

「いくわよ…!それっ!」
魔力で大量の花弁を生み出し、それを放射状に放つフラワーシューティング。多少の溜めが必要なのは難点だけど、私が宣言なしで放てる攻撃ではこれが一番広範囲をカバーできる。
「うわわわ、危ないってばー!」
間抜けな声を上げながら、それでもきっちり回避はしているメディスンに対して、私は短い魔力のチャージを挟んで大量の花弁を放ち続ける。
相手が疲れてミスをするのを待つ…つもりもないけどね。
「っもぅ!スーさん、力を貸して!」
いい加減痺れを切らしたらしいメディスンが声を上げると、足元の鈴蘭から辺りがかすんで見えるほどの毒が舞い上がり、そしてメディスンの周辺に停滞する。
花弁の弾丸は、その霧の壁に突っ込んだ瞬間に枯れ落ち攻撃力を失った。
「どう?これで手が出せないでしょ」
毒霧の向こうから勝ち誇ったようなメディスンの声が聞こえるが、私はかまわず二の矢を放つ。ただし、今度はフラワーシューティングじゃない。
「行きなさい!幻想春花ッ!」
掛け声とともに、巨大な花弁が私の頭上に現れる。この大きさなら、枯れ落ちる前に届く!
果たして、私の放った巨大花弁は霧に突っ込んでもその勢いを失わずに進み、視界を自分で悪くしたメディスンにこの攻撃を避ける術はない…と思ったけど。

「回避するんだメディスン!」

渋い声が響き、一瞬のタイムラグの後に霧の中からメディスンが飛び出してきた。
ちっ、かーさん(仮)め。余計な事を。
「ふぅ…ありがとうかーさん」
「自分の能力に自信を持つのはいいことだが、慢心はよくないぞメディスン」
「うん、気をつけるわ」
どこの師弟だあんたらは。
しかし、タイミング的にかーさん(仮)は私が放つ攻撃を読んでいた感がある。元とは言え、私の持ち物である事は変わりない…か。
ちょっと厄介かも。
内心臍をかむ思いの私をよそに、メディスンは体勢を建て直してから何やら相談を始めている。
「ねぇ、かーさんやっぱあの人強いわね」
「うむ、元とはいえ流石は我が主、全力を出さずとも怖気がするほどの力を感じるな」
「このままじゃ勝てないと思うんだけど…どうしようか」
「やはり、ここはアレしかあるまい」
何よアレって。そんな微妙な含み要らないわよ。
相談が終わったらしいメディスンはこちらに向き直ってから、
「見せてあげるわ!かーさんとスーさんの協力で編み出した、私が人形だからこそ出来る新しい技を!」
と吼えて。
「三位一体…!」
「『合身グガーデン』とか言ったら張り倒すわよ?」
「…」
メディスンは片手を上げた宣言のポーズのまま硬直した。図星か。
「で、するの?合体」
「…えーと、えーと…」
そのまましばらくメディスンは「えーと」を連呼してから、
「あー!もう何でもいいや!スーさん!かーさん!合体だーーー!」
ガッタイダーに合体だー…ってまぁそれは置いといて。傘を掲げたポーズをとったメディスンの周囲を、またも鈴蘭からあふれ出た毒の霧が包み込む。
ただ、先ほどと違い毒の霧は球状を形作り、その中からは何故かガキーンだのガチョーンだのと機械的な(?)音が聞こえてくる。まぁ、きっと合体してるんでしょう。
ある意味状況が見えない方が解説しなくて良い分楽かも。
ものの十秒ほどで音は止み、球を保っていた霧が崩れ始め、その中から合体メディスンが姿を現す。

えー…?
姿を現したメディスンは、なんというか原型を留めてないというか、質量保存の法則すらぶっちぎってるわね。
サイズが約二メートル半ほどまでになっており、姿形は…まぁ、あれよ。メガマリのラスボスに足が生えたような感じを思い浮かべてください。
手がドリルになってるメカ沢でもいいかもしれない。
で、その堂々たる姿を現した合体メディスン…メディ沢でいいや。
メディ沢の少しノイズが掛かったような声が当辺りに響く。
「待たせたわね!これが新しい力を手に入れた私の姿よ!」
「大変お待たせされました、どーでもいーからさっさとかかってきなさい」
私としては、合体されたところでなんて事はない。むしろ的が大きくなったし、傘に直接攻撃を当てちゃう心配がなくなった分、全力が出せるってもんである。
「なら、行くわよ!ポイズンビーッ!」
確か、ポイズンビーは彼女の周囲に弾幕を停滞させる、いわゆる『待ち』の技のはず。合体してどうなったか知らないけど、そんなもので…ッ!?

びー。 ちゅどーん。

「ちょっと!ポイズンビーってそんなんじゃないでしょー!?」
後ろを振り向いて、メディ沢から放たれた何かが着弾した辺りを見ると、ちょっと大きな岩が不自然な形に消し飛んでいるのが目に入った。
一瞬目が輝いたのに違和感を感じて避けたからよかったような物の、直撃してたらただじゃ済まなかったわ。
「今のはポイズンビームよ。ちょっと発音が良すぎて最後のムが聞き取れなかっただけ!」
日本語で喋ってください。ここは幻想郷よ。
「続けて行くわよ!ポイズンビーーーーーーッ!」
「うひょわー!?」
咄嗟にしゃがんだ私の真上をビームが通り過ぎ、後方で爆音を轟かせる。撃つ前に目が光るのがまだ救いかも。
「ほらほら、逃げてばっかりじゃ勝負にならないよ!」
挑発的な台詞をと共に放たれた三発目の光条を横にステップして避けながら、両手に魔力を集中させる。やられっぱなしは私の性には合わない!
「あんま調子に乗るなッ!幻想春花!」
今度はさっきよりも更に巨大な花弁を生み出し、メディ沢に向って放つ。ドラム缶ぽいその体を真っ二つにしてやる!
目の前に迫ってくる、自らの体の倍以上ある幅の刃に相対してもメディ沢は避ける素振りすら見せない。避けれないのか、避ける必要が無いと思っているのか知らないけど、当たって無事で済むような生半可な攻撃じゃない!
とそこで、メディ沢の目が先程よりも一層怪しく輝く。

「掘削『イントゥドリリウム』ッ!」
「馬鹿なー!?」

両腕のドリルが唸りを上げて、花弁の刃が葬られました。
「無駄よ!かーさんが内蔵されたドリルはダイヤモンドすら砕くわ!」
メディ沢は両腕のドリルをぎゅんぎゅん回転させながら勝ち誇る。
しかし…相手のアホっぽさは別として、能力的にはかなり危険ね。何より、ほぼ全力で放った幻想春花が防がれるようだと、ピンポイントで放てる攻撃が殆ど通じないと言っていい。
それ以上の威力のスペルとなると、無差別攻撃になっちゃうし、私の巨大レーザーは黒歴史だから出したくないし。
そうなると、私に残されている手札は植物の召喚。私の攻撃が通じないのに僕の攻撃が通じるものかとも思うけど、現状を打開するにはやってみる他ない。
決まれば話は早い、即座に召喚する対象のイメージを固め始める。

少し前の騒動で、水分を補給できそうな植物を呼ぼうとしてうっかりでっかいサボテンを召喚して以来、呼ぶ物のイメージをしっかりと持つ事を心がけるようになった。
練習にと丸っこいサボテンを呼ぼうとしたら月下美人を召喚してしまって、勿体ないから咲くのを一日中眺めてたら、たまたま通りがかったらしい霊夢がやたら優しくしてくれた。
何の天変地異かと思ったけど、宴会でカブ代わりにされた次の日だったからかも知れない。
まぁ、それはさておき。対象として選んだのは、練習でも呼ぼうとした丸っこいサボテン。
手足があって、頭に花が生えてて、くりっとした瞳をしている愛らしい姿を思い浮かべ…イメージが固まった。あとは私の力でそのイメージに添う植物を呼び出すだけ。

おいで、ダニー!今日こそ体当たりだ!

片手を天にかざして、力を開放する。それと同時に、私の後方の地面が大きく裂けて…え?




BGM:Go!Go!巨大サボテン

― 今は昔の幻想郷 頭の花が天を突く
  異形の人形倒す為 怒りで針飛ばせ
  空気読まずに出てきます
  巨大サボテン 我とあり




どうして誰も歌ってないのに歌詞が出てくるの?

それはね。貴方の歌は、貴方の内からでるのではなく幽かな声を歌にしているだけだからだよ。

そーなのかー。





「何よそのでっかいサボテンー!?」

メディスンの驚愕の声で、逃避に走っていた精神が現実に引き戻される。
うん、ちょっとくらい理不尽な現実から目を背けても罰は当たらないと思うの。

えっとね。サボテン様マジ自重。
完璧に固めた私のイメージと、鈴蘭畑の一角をぶっ飛ばして現れたのは、件の騒動で私の傘に穴を開けた埴輪面の巨大サボテンだった。
しかも以前に出て来たときよりでかくなってるし。

「ちょっと!貴方、花の妖怪なんでしょ!?スーさんたちに何て事するのよー!」
メディ沢が抗議の声を上げる。
「知らないわよ!私だってこんなモン呼ぶつもり無かったわ!」
というか、こいつは呼びたくなかった。
「それに!あんただって目視すら出来ないビームで辺りの物ぶっ飛ばしたんだからお相子でしょ!」
「いいのよ、ビーム系の弾幕は出始めに当たり判定が無いから!」
何の話よ。
ああもう!段々話が不毛になってきたし、もうこの際何でもいいから傘を取り返す方を優先しよう。
「取り敢えず、まず貴方を張り倒す!その上で鈴蘭畑を荒らした償いもしてもらうわ!」
「理不尽だ!?」
「行けッ、サボテン様!体当たりだー!」
どう考えてもヤケクソです、本当にありがとうございました。

どーん。 ―― Spell Card Attack of Little Girl... ――

どうみてもスペルカード発動テロップです。でもLittle Girlはないでしょうよ。せめて妖々夢バージョンにしてください。

って…へ?
一瞬、何が起きたのかまったく理解できなかった。
目の前を字幕が横断していった。物理的に。
それがメディ沢を撥ねた。
そして、目の前からもう一本の字幕が迫ってきている。

「うきゃぁー!?」

さっきも上げたような悲鳴と共に、またも地面に突っ伏してそれを回避。
横からのテロップに撥ね飛ばされたメディ沢は、何故か仰け反りながら真上にふっ飛んでいる。
というか、何でテロップが物理的に飛んでくるのよ!
え?何々?普段は空中戦だから分からないだけで、実は地表をテロップが横切ってた?

あー、そうね、花映塚でも地面に映ったカットインに見とれて被弾…するかッ!

何処からともなく聞こえてきた解説にノリツッコミを入れた辺りで、グシャァという音が響く。
伏せていた顔を上げてみると、お約束通りにメディ沢が顔面軟着陸していた。
ふと気づくと、空中で静止してる字幕があり、そこにはこう書いてある。

―― 倒潰『たおれるぞー』

うん、そういえばテロップで混乱してて気づかなかっただけで、まだ攻撃出てなかったね。
どうやらサボテン様、そこでダウンしてるメディ沢にボディプレスで止めを刺すつもりらしい。
いや確かに私体当たりしろとは言ったけどね?
今の位置関係だとね、私が間にね?

…。
後ろ向いたらサボテン様既に傾き始めてるし。
あ、今「困ったなぁ」みたいな表情した。

だったら、とまってよ。






「またこういうオチかアッ――――――――!!」
衝撃、轟音、あー…私の傘、完全に壊れてなければいいけど…。
そんなこと考えながら、私の視界は暗転した。


















「っつー…」
微妙な全身の痛みで目が覚まし、周囲を見渡す。
どうやら、日の傾き具合からして、四半刻も失神してなかったみたいね。
サボテン様は私が失神してる間に消えたみたいで、もう影も形も無い。
「まぁ…それにしても…」
鈴蘭畑は惨憺たる状態だった。
まず目に入ったのは、目の前で頭から地面に突き刺さってるメディスンと私の傘。
周囲もそこら中が禿げてるわ、地面が抉れてるわ、岩がいびつな形に吹っ飛んでたりと滅茶苦茶になっている。
全部放置して傘だけ取り戻してもいいんだけど、流石に私も花を操る妖怪として、自分で…というか自分が召喚したモンが鈴蘭畑を荒らしといて、何もしないのは沽券に関わるわね。

意識を集中し、荒れる前の鈴蘭畑をイメージする。そして、力を解放する。
倒れたり焦げたりしていた鈴蘭は時間を逆転させたように元に戻り、剥げて何も無かったところは映像の早送りのように鈴蘭が生え、ほんの十数秒で鈴蘭畑は戦闘前の様相を取り戻した。
ふう…これでよしっと。
今度はうまく行ったみたいね。さすがにこれで訳の分からん物があふれ出したら花妖怪辞めるとこだったわ。
我ながら妙な部分に安堵感を抱きながら、メディスンの近くまで歩み寄って、傘を地面から引き抜く。
恐る恐る傘を開いてみたら、意外にも骨の部分の破損はまったくなく、まだ十分修理可能な状態だった。
メディスンが合体してた時は、ボディーの中に格納されてたみたいだし、それに感謝した方がいいのかしらね。
彼女に感謝…はするけど、遠い目をして真横に八ッ墓村スタイルで埋まってるのは無視する。
今引っこ抜いて目覚められても話がややこしくなりそうだし、抜いた瞬間毒とか吹きそうで嫌だしね。
鼻塞げば防げるわけでもないし、マンゴラドラより厄介かもしれない。
まぁ、幾ら致命的な破損はしてないとは言っても、布の部分はちょっとボロになってるし、前回の修理が半端だったのにも変わりはない。
「ごめんね…今度は、すぐちゃんと直してあげるから、もうちょっと我慢してて」
誰にでもなく、傘を胸に抱いて言う。

「うむ、分かってくれればそれでいいのだよ」

…そういえば変なのが憑きっ放しだったわね。
どうせ喋れるならちょっとくらい突っ込んでやろう。
「さっきは随分とメディスンに傾倒してるような事言ってたけど、そんな変わり身早くていいのかしら?」
「うむ、彼女は私を道具としてではなく同類として扱ってくれたがな、やはり道具である以上、持ち主が正しい扱いをしてくれるならその方がいいだろう」
まぁ…確かに私の自覚がないから離れたとか言ってたけど。何かうそ臭いわね。

「本音は?」

「無邪気な幼女というのもたまには良い物だが、やはり成熟した女性の体に触れられるというのは良い物なのだよ、ははは」





…取り敢えず、修理はコイツを祓ってからにしよう。
そう決意すると同時に、私は博麗神社に向けて飛び立った。



むめいのおかにいってみたら すずらんのはたけでにんぎょうのおんなのこがおどっていた
こんぱろ こんぱろ といっていたので まねしてみたらどくがあつまってきました
ぼくもどくまみれになってしまったので しばらくはどくのようにいきたいとおもいます

でろりあん とか



幽香の魅力を自分なりに書こうとしてたのに、どうみても道を外してます。
パロディネタは控えようと思ってたのに、気づいたらだだ漏れでした。
デロリアンって何となく毒々しい響きだと思いませんか?

4/29 どう見ても一部修正です、本当にありがとうございました。

>ブリキ大王
 です。
コメント



1.名無し妖怪削除
ちょwwwダニーてwダンスニードルwww
他にもネタが仕込まれていて笑えました
2.名無し妖怪削除
ゆうかりんのすることなすことが悉く可愛くてヤバいです


  傘  が  喋  り  始  め  る  ま  で  は  。


あぁ、突っ込み役になっちゃったなぁ、これじゃあんまり萌えられないなぁ…と残念に思ったんですが、ネタはネタで面白かったのでまぁいいや、という感じです。

>彼ら言う事
「の」が抜けているのでは?
>上目遣いで見つめながら、値引きして欲しいなーって言ってみた
こーりん殺s
3.名無し妖怪削除
いろいろ面白かったけど、とりあえずニュータイプなくせに弱いリリーで吹きました。
>埴輪面の巨大サボテン
さ、サボテンダー?!
4.流れる風削除
途中まで踏みとどまっていたのですが、ブリキ大王(ですよね?)で陥落しましたのでコメント。
5.名無し妖怪削除
大きな伝説のゆうかりん噴いたwやっべwwww
6.名無し妖怪削除
>埴輪面の巨大サボテン
デジモンアドベンチャーを真っ先に想像した
7.名無し妖怪削除
とりあえずこーりんころs