ある晴れた春の日の午後。
紅魔館のテラスで紅茶を飲みながら本を読む二人の少女がいる。
魔理沙とパチュリーだ。
普段図書館の中にこもりがちなパチュリー。
だが、魔理沙の「春の日差しが気持ちいいんだ」という言葉に乗せられて久々に日の下に出たのだ。
それぞれ一冊ずつ本を持ち出し、読み終わったら外の読書についての感想を言う。
二人で決めたちょっとした遊び。
優しく流れる少し冷たい風。
けれども暖かい日のちょっとしたスパイスのようで、環境に飽きがこない。
庭を跳びまわる小鳥たち。
その囀りは心を落ち着かせるような音。
耳に刺激が伝わり、より本への集中を促してくれる。
そして天から降り注ぐ光。
とても暖かく柔らかで、生き物に活力を与えてくれる。
「ふぅ・・・」
先に本を読み終わった魔理沙は本をテーブルの上に置いた。
そして椅子から立ち上がって庭を眺めた。
春ですよ・・・
春の訪れを告げる者の声が聞こえる気がする。
姿は見えない。その者の声は聞こえているわけではない。
しかし五感でなくとも聞こえる。
否、伝わってくる。
妖精はきっと声でなくても伝えられるんだ。
その妖精はきっとそれでも春に気付かない人たちのために飛び回ってるんだ。
春に気付いて欲しいから。
冬を乗り越えた生き物や新しく芽を出した命に感動して欲しいから。
魔理沙はそう思った。
「ふぅっ。」
パチュリーも本を読み終えた。
疲れたとでも言うように溜め息をするが、日課なので特にそんなこともない。
ただ、これは読み終えたという合図なのだろう。
「お、読み終わったか?で、どうだったんだ?」
ニヒヒと笑いながら魔理沙はパチュリーに聞く。
いつもとは違う環境での読書。
それは魔理沙にも同じで、家に篭って読書するか図書館に入り浸るというのが普通だからだ。
パチュリーは紅茶を少し飲んで喉を潤してから言った。
「悪くないわね。たまにならいいと思うわ。」
「ははっ、私もそう思ってた。」
魔理沙は再び席についた。
そこでタイミングよく小悪魔が紅茶を新しく注ぎ、お茶菓子を並べた。
ここからは春の風景を楽しみながらのお茶の時間。
庭の緑が本で疲れた目を癒してくれる。
「ねぇ魔理沙。」
「ぅん?なんだ?」
今回の事が余程気に入ったのか、いつもはなかなか見せない笑顔をする。
そんなパチュリーに少し胸の鼓動が速くなる魔理沙。
「私ね、思ったことがあるの。」
「お、思ったこと?」
なんの話をするのだろう。
この「思ったこと」の一言でどれだけの未来が予測されるだろう。
いつもとは違う彼女の笑顔。
春の陽気。
これらの要素から考えられることといえば・・・
「まぁ本のジャンルについての軽い話よ。」
なんだ本の話か、と魔理沙は少しがっかりした。
おもしろいことになるんじゃないかと期待したが、まぁいつも通りだった。
「なんだ?ここにはありとあらゆる本が揃ってるんじゃないのか?」
「そうね。でも、私が思ったジャンルは今までにないと思うの。」
「なんだ?」
「・・・笑わないで聞いてほしいの。」
笑わないで聞いてほしい・・・
さっきは軽い話とか言ったが、なんだか真面目そうだ。
魔理沙は耳を傾ける。
「エロ童話ってあるかしら?」
「ぶぅっ!!!!」
魔理沙の唾が飛んだ。
それは正に「唾液のシャワーだ!」とでも言わんばかりにテーブル上のほぼ全体にかかった。
パチュリーの紅茶やお菓子にもバッチリかかったが、本人は特に気にしない。
紅茶とお菓子は後でおいしくいただきます。
ついでにテーブルの上に載ってた本は後でキレイにする。
そのキレイにする方法は各人のご想像にお任せ。
「な、何よ。笑わないでって言ったじゃない。」
「ごほごほっ・・・な、なんでそうなんだよ。それより、なんだよそれ?」
さっき唾を吹き出す際に少し気管に入ってしまったようだ。
魔理沙は涙目になりながらパチュリーを見る。
「だって、童話というジャンルはあるじゃない?」
「うむ。」
「エロ本。つまり成人向けの本もあるじゃない?」
「うむ。」
「でも何故かエロ童話はないじゃない。」
「アホか。」
「いいえ、パチェの言うことも一理あるわ。」
レミリアと咲夜が屋敷の中から現れた。
念のためなのか、咲夜は屋内でもレミリアに日傘を差していた。
「咲夜、言っておやり。」
「は、お嬢様。」
「メイド任せかよ。」
「いい?幻想郷では法は無い。だからこそモラルというものが必要になってくるの。」
「勝手に進めるなよ。しかもなんか話がズレてないか?」
「最後まで聞きなさい。で、性欲が暴走したら襲うなんていう人や妖怪はいっぱいいるわよね?」
「うん。」
「そしてエロ本は性欲を発散するものと考えていいわ。」
「ふむ。」
「しかしその性に関して教えるものは何もない!性行為の危険性も何もわからないの!
思春期を迎えてどうしていいかわからない子供たちに魔の手が伸びる!
そう、お姉さんが優しく教えてア・ゲ・ル的な悪女とかさぁ!いるじゃない!?」
「う、うん?」
「そこでエロ童話を作成し、子供に性について教える!これきっと重要!」
「は、はぁ。」
なんだか辻褄が合わないというか何を言ってるのかわからない。
とにかく咲夜さん的にはエロ童話を激しく推進しているようである。
「そう、咲夜の言うとおりよ。私と全く同じ考えだわ。うん、マジで。」
「お嬢様、そこまで言うと嘘みたいです。」
魔理沙は内心「嘘だろ?」と思ったが、あえて何も言わなかった。
どうせ言っても切りが無いということがわかっていたから。
「レミィ、咲夜、そして魔理沙・・・私達でやってみない?」
パチュリーは何かを決断したかのように口を開いた。
その顔は本気であった。真剣であった。
「やるって・・・何をだ?」
「エロ童話を作るのよ!」
「えぇ、いいわ。望むところよ。」
「早っ。」
「私も協力させていただきますわ。」
「わ、私は遠慮させていただくぜ。」
「お帰りのお土産はカードでいいかしら?」
「あぁ、子供向けのエロい話が浮かんできそうだ!」
それはきっと子供向けじゃない・・・。
そんな訳で急展開・・・
紅魔館3トップ with 魔理沙による新ジャンル本制作が始まった。
いかにわかりやすく子供に性教育ができるようにするか。
そしてエロを尊いものとし、イヤらしさ消していくかが課題となった。
体育の教科書や、童話の元となる本を図書館から引っ張りだし、研究を重ねた。
その研究に費やした時間は約二日間。しかもぶっつづけ。
さらに読む対象となる子供に近い者たちを集めて研究をする。
協力者の一部にチルノやミスティアもいた。
その者たちは最初は断った。
しかし咲夜やレミリアの必死の願い(脅迫)が通じたのか、涙を飲んで協力してくれた。
そんな協力者たちに二人は「始めからそう言えばいいのよ、バカ」と感謝の気持ち・・・かな。
制作開始から1週間後。
思いのほかメンバーの意見が上手くまとまり、大体の話が完成した。
本の内容は『思春期を迎えた氷の妖精の話』である。
誰かをモデルにしているが、あえて言わない。
どうしても知りたい方の為のヒント・・・協力者。以上です。
幻想郷にはコピー機は無い。
そこで、版画を使って絵本を作ることになった。
細かい仕事は咲夜に任せられた。
普段刃物を扱っているからか、咲夜は彫刻刀を器用に使って作った。
微妙なラインにも力を入れ、完璧とも言えるリアルな出来となった。
リアルというか、登場するキャラクターがモデルとなった本人そのものだ。
この時ばかりはレミリアも氷の妖精に悪いことをしたと思った。
咲夜はただただエロく彫った。
制作開始から2週間後。
いよいよ、版画を使って紙を印刷する。
咲夜が作った原版は黒く印刷される割合はかなり少なくなっている。
後からちゃんと色を付けて絵本にするためだ。
一部を刷り、咲夜がキレイに色を付けて、物語を書き、一冊目が完成である。
苦労の末完成した本に皆は感動した。
ちなみに絵本のタイトルは『ホワイトフェアリーズ ~私に降りかかる白はきっと雪じゃない~』。
読んだ者は皆、初めて読んだエロ本のような興奮を覚えた。
「いや、エロ本じゃん」というツッコミはスルーする。
「こ、これならいけるわ!」
「私もびっくりだぜ。ここまでいい本が出来上がるとは正直思ってなかった。」
「苦労したかいがあったわね。咲夜、メイド総動員で一気に刷るわよ!」
「了解です!お嬢様!」
普段は魔理沙やレミリアくらいしか来ない図書館にメイド達が集まった。
メイドたちは咲夜が刷った紙に流れ作業で色と物語を付けていった。
紅魔館のメイドたちは完璧に仕事をこなした。
ただ、「なんでエロ本を作ってるの?」程度の疑問を残しながら。
エロ本じゃねぇエロ童話だ。
そして500冊の絵本ができた。
紅魔館の連中 with 魔理沙はこの500冊を商売という考えで作ったのではない。
幻想郷の未来を繋いでいく子供たちに間違った道を歩まないで欲しいという願いで作ったのだ。
・・・きっと。
「汚い心の血は不味いんじゃねぇの?」というレミリア様のいい加減な考えはないだろう。
・・・たぶん。
ちなみに製作者達は道を踏み外しているつもりはない。
・・・つもりはね。
幻想郷の性問題は解決の一歩を踏んだかに見えたような気がしないでもない。
「これで私たち・・・英雄ね。」
「なんでだ!?」
そして500冊の絵本完成の夜・・・
聖夜に何かを配るおじさんが如く紅魔館の者達は人里の子供がいる家庭へ本を渡しに行く。
レミリア様曰く「今日は性夜よ!」とのこと。
その言葉に勘違いした咲夜さんは「エッチなのはいけません!」と、
レミリア様を押し倒したのこと。
倒されたレミリア様はそれに「言ってることが滅茶苦茶よ!」と、
咲夜さんを突き上げてウエットにさせたとのこと。
そして咲夜さんは「ハマらせて!バイブレーション!」とのこと。
そんなこんなで計画は実行に移された。
紅魔館の大きな門が開き、メイドたちは外に飛び出した。
その後、今回ばかりはバリ3の巫女アンテナで全てを理解した博麗の巫女が現れた。
博麗の巫女曰く「火に油を注ぐという言葉を知っているか?」とのこと。
白黒の玉と針が夜空を流れ、性夜は目的達成前に終わりを告げた。
それから数日後・・・
「前はエロが激しすぎたのが原因で、巫女が出たと思うの。」
「それだけじゃない気がするが・・・」
「でね、次はこれでいこうと思うの。」
「お前も懲りないなぁ。どれどれ・・・」
『インビジブルふれあい ~歌じゃないのにソプラノが出ちゃう~ 』
「今度は恋愛も含めてみたの。そしてエロは少し控えめだから安心して。」
「・・・いいんじゃないか?」
歴史は繰り返す・・・・
タイトルに鼻水噴いたwww
気管?では?
たまにアレのコミック読み返して感動してるのに・・
次に読んだら噴いてしまうではないか。どうしてくれる?!wwww
一冊読みたくはあるがなw