スカーレット一家の旅行作者: グランドトライン

　ある日、ゲーム画面の前で悩む鈴仙を永琳は見かけた。

「うーん…難しい……」
「あらどうしたの、うどんげ？」
「このゲームがものすごく難しいんですよ」
「どれどれ…」

　永琳がゲーム画面を覗き込む。そこには大きな湖を中心に、左側に洋館、右側に神社が描かれた風景が映っていた。
洋館のある左側には２頭身のキャラクター達と湖に浮かぶジェットボートがあった。

　鈴仙から聞いたゲームのあらすじはこうだ。

あるところに紅魔館があり、そこにはスカーレット一家がいました。
スカーレット一家は７人一匹家族です。

コウリン＝スカーレット（お父さん）
ユカリン＝スカーレット（お母さん）
エイキ＝スカーレット（お兄さん）
リグル＝スカーレット（弟さん）
レミリア＝スカーレット（お姉さん）
フラン＝スカーレット（妹さん）
サクヤ＝ムーンライト（メイドさん）
ルーミア（ペットの犬）

スカーレット一家は博麗神社へ遊びに行くことになりました。
ところが『さくやさん』は困ってしまいました。

博麗神社に行くには妖精の湖を渡らなければなりません。
移動する手段は二人乗りのジェットボート１台しかありません。
さらにジェットボートを操縦できるのは『こうりんお父さん』と『ゆかりんお母さん』、『さくやさん』の３人だけです。

これだけなら問題はないのですが、『こうりんお父さん』と『ゆかりんお母さん』は困った人物で…
『こうりんお父さん』は『ゆかりんお母さん』とラブラブしないと『れみりゃお姉ちゃん』と『ふりゃんたん』を食べてしまいます。
『ゆかりんお母さん』は『こうりんお父さん』とラブラブしないと『えーきお兄ちゃん』と『りぐるきゅん』を食べてしまいます。
そしてペットの『るーみゃ』は『さくやさん』が躾けないと家族を食べてしまいます。

さあ、『さくやさん』はどうやって家族全員を博麗神社に渡すのでしょうか？

注意：『るーみゃ』も一人のしてカウントします。
　　　ジェットボートは操縦できる人物なら一人でも移動できます。
　　　ジェットボートで移動中はみんなおとなしくしています。
　　　ジェットボート以外の移動手段はなしとします。

「なるほどね。ちなみに食べるのは食欲的な意味で？」
「『るーみゃ』はそれもありますが、基本的に性欲的な意味で食べます。
　あと、そのときだけ８頭身のイラストになります」

　永琳は「やっぱり…」と思った。
　どうやらこのゲームは成功することよりも失敗したことを楽しむタイプのゲームのようだ。
そしてミニゲームの癖にちゃっかりイラスト鑑賞モードがあった。

「それで何度もやってるんですけど。すぐにお父さんとお母さんが食べちゃうんですよ」
「ああ、このゲームはこう解くのよ…」

↓ネタバレ防止のためあぶり出し↓

１ターン目『さくやさん』『るーみゃ』→
２ターン目『さくやさん』←
３ターン目『さくやさん』『れみりゃお姉ちゃん』→
４ターン目『さくやさん』『るーみゃ』←
５ターン目『ゆかりんお母さん』『ふりゃんたん』→
６ターン目『ゆかりんお母さん』←
７ターン目『こうりんお父さん』『ゆかりんお母さん』→
８ターン目『こうりんお父さん』←
９ターン目『さくやさん』『るーみゃ』→
１０ターン目『ゆかりんお母さん』←
１１ターン目『こうりんお父さん』『ゆかりんお母さん』→
１２ターン目『こうりんお父さん』←
１３ターン目『こうりんお父さん』『りぐるきゅん』→
１４ターン目『さくやさん』『るーみゃ』←
１５ターン目『さくやさん』『えーきお兄ちゃん』→
１６ターン目『さくやさん』←
１７ターン目『さくやさん』『るーみゃ』→

クリア

「とまあ、こんな具合よ。これは一例だから、順番や男女、兄弟を入れ替えれば別パターンも出来るわよ」

　こうして鈴仙と永琳は無事スカーレット一家全員を博麗神社に渡すことに成功した。
　なお、移動中はコミカルなアニメで楽しませてくれる反面、時々『さくやさん』が『るーみゃ』を躾けるシーンや、『こうりんお父さん』と『ゆかりんお母さん』がラブラブするシーンなどが、嫌がらせのように流れることがあった。（当然これらのシーンも８頭身のイラストでイラスト鑑賞モードの対象）

「さすが師匠！頭いいですね！！」
「永遠亭の天才薬師は伊達じゃないわよ♪」

　尊敬の眼差しで見つめる鈴仙に永琳は「もっと褒めて♪」と言いたげに仁王立ちした。

「あ、エンディングが始まりましたよ」

「ありがとう、さくやさん。君のおかげで楽しい家族旅行が出来たよ♪」
「うふふ… これは家族全員からのご褒美よ♪」

時は消し飛ぶ…

そして結果だけが残る…

「いやあああああああああああああああああああああああ♪♪♪♪」
「わはー♪♪♪♪」

「よかったわねハッピーエンドで♪」
「何処がですか…？」
「さ、仕事に戻るわよ」