紅魔館。
その名の通り外観を赤く染めた悪魔の済む館だ。
実際には目に悪いという理由で薄紅程度なのだが、薄紅魔館では格好が付かないのだろう。
太陽が燦々と光る主人も起きぬ昼休み。
お気に入りのベランダの手すりに座るのは緑色の長髪を揺らすメイド服を着た妖精だ。
「ねぇ、一〇〇三二号」
「なぁに、一〇〇三三号」
足をパタパタと振りながら、隣に座る黒いショートヘアの妖精メイドは羽根を揺らす。
「私達ってさぁ」
「うん」
抱くようにして持っているクッキーを一口。うむ、美味也。
「メイドさんなんだよねぇ」
「メイドさんだねぇ。兼サンドバック」
「嫌な副職ねー」
「サンドバックが本職よ?後、クッキー美味しいけど食べる?」
一〇〇三三号は半分にしたクッキーを喜んで受け取って口に運んだ。
「はむはむはむ。でね、そんな状況を打開するために動こうと思うの」
「ほうほう、はむはむ」
一〇〇三三号はクッキーを片手に持ったまま拳を握り、空を見上げる。
「そう、これは正しいろーどーを求めるためのすとらいきーなのよ!」
「すとらいきー?」
「うん。なんか人間は職場で困った時は働かないぞー!ってお祭り騒ぎを起こすんだって」
「……」
想像してみる。
紅魔館の中で神輿を担いだ自分達が騒いでいた。
『働かないぞー!』
『働かないぞー!』
『働きなさい!』
『あべしっ!』
「ひでぶっ!」
鎮圧されるのがすぐさま想像出来たので思わず半目になってしまった。
「真っ二つだぞ!」
「なにいきなりワナワナとし始めてんのよ。いざいかん、敵は紅魔館にありー」
「バカヤロウ!」
「やまとっ!?」
平手一閃。命の大切さを知らない馬鹿を叩き飛ばした。
「命は無駄にするもんじゃあないぞ!」
「いつもいつも遅刻して咲夜様に八つ裂きにされてるアンタに言われたくない!」
「あれは趣味だから別腹!」
「趣味!?」
○
「でさぁ、最近お嬢様が色んな食材に挑戦してるみたいなのよ」
「へぇ」
一〇〇三三号が言い、一〇〇三二号が相槌を返す。
あの後散々暴れてから、再び二匹の妖精はベランダの手すりに腰掛けていた。
「例えば?」
一〇〇三二号が首を傾げると、一〇〇三三号は頬に人差し指を当てて考える。
「そうねぇ……」
暫くの間が空き、彼女が唸る声が響く。そして、それから数分。
「ホウサン団子。にんにく。鰻。巫女。鉄の塊。人参。ピーマン」
「ほほぅ」
これは驚きだ。
あのお嬢様がにんにくにまで手を出しているとは、何か思うところがあったのだろうか。
「でねぇ、昨日お嬢様が他に何かない?って聞いてきたから特別製を口に放り込んであげたわ」
「おー、で、何を?」
「銀の十字架」
風が吹いた。
「……」
「……」
暫し顔を合わせたままの状態で固まる。
そして、二人して空を見上げ、
「良い天気だねぇ」
「あおいそらー、しろいくもー、まるで私達の心みたい」
○
一〇〇三三号は手すりに腰掛けたまま足を揺らす。
「巫女とどっかの店主が結婚だって」
「へえー」
「今日は四月二日」
「へえー」
「寒いねー」
「へえー」
「隣の家に新しいものが出来ました。それはなんでしょう?」
「へえー」
「正解」
「へえー」
○
「夜ねぇ」
一〇〇三三号は満月の光を浴びながら隣の妖精を見る。
手すりに仰向けになって倒れつつ寝ていた。良くこんなところで眠れるものだ。
「でも、今夜はこんなにも良い夜だから私の気分は良いのよねぇ」
満月の日だけ力を得る一〇〇三三号は笑顔で足と羽根を揺らす。
幸せだ、と思うが、そんな感想は一分と続かなかった。
「あら、私はとてつもなく気分が悪いんだが?」
「そりゃ銀の十字架食べましたからー」
「うー殺法!其の二万三千五百六十二の技――強奪品御祓い棒くらっしゅ!」
「ぺっしっ!?」
悲鳴が響いて一〇〇三三号は星になった。
「んー?どうしたのー?」
「ついでにうー殺法!」
「りふじんっ!?」
○
「咲夜様ー」
「あら、何。一〇〇三二号。今日は珍しく遅刻じゃないのね、仕事しろ」
「後でやりますー」
笑顔で答える妖精に銀のショートヘアの下に鋭い目を持った少女は手を組んで、
「全く……で、何?」
「あのですねー?」
妖精は首を傾げる。
「私達ってメイドですよねー?」
「思いっきりメイドね。あとサンドバック。でも私はメイド長」
「やっぱりですかー」
「やっぱりよー?」
二人して笑顔で首を傾げる。
「で、あんたの顔見てたら友人の結婚式を思い出してストレスが溜まったから発散しようかしら」
「そんな、咲夜様生き遅れたからって。気にする事ないですよ」
「――あはは、細切れにするわ」
「あーれー」
レベル1デス。
その名の通り外観を赤く染めた悪魔の済む館だ。
実際には目に悪いという理由で薄紅程度なのだが、薄紅魔館では格好が付かないのだろう。
太陽が燦々と光る主人も起きぬ昼休み。
お気に入りのベランダの手すりに座るのは緑色の長髪を揺らすメイド服を着た妖精だ。
「ねぇ、一〇〇三二号」
「なぁに、一〇〇三三号」
足をパタパタと振りながら、隣に座る黒いショートヘアの妖精メイドは羽根を揺らす。
「私達ってさぁ」
「うん」
抱くようにして持っているクッキーを一口。うむ、美味也。
「メイドさんなんだよねぇ」
「メイドさんだねぇ。兼サンドバック」
「嫌な副職ねー」
「サンドバックが本職よ?後、クッキー美味しいけど食べる?」
一〇〇三三号は半分にしたクッキーを喜んで受け取って口に運んだ。
「はむはむはむ。でね、そんな状況を打開するために動こうと思うの」
「ほうほう、はむはむ」
一〇〇三三号はクッキーを片手に持ったまま拳を握り、空を見上げる。
「そう、これは正しいろーどーを求めるためのすとらいきーなのよ!」
「すとらいきー?」
「うん。なんか人間は職場で困った時は働かないぞー!ってお祭り騒ぎを起こすんだって」
「……」
想像してみる。
紅魔館の中で神輿を担いだ自分達が騒いでいた。
『働かないぞー!』
『働かないぞー!』
『働きなさい!』
『あべしっ!』
「ひでぶっ!」
鎮圧されるのがすぐさま想像出来たので思わず半目になってしまった。
「真っ二つだぞ!」
「なにいきなりワナワナとし始めてんのよ。いざいかん、敵は紅魔館にありー」
「バカヤロウ!」
「やまとっ!?」
平手一閃。命の大切さを知らない馬鹿を叩き飛ばした。
「命は無駄にするもんじゃあないぞ!」
「いつもいつも遅刻して咲夜様に八つ裂きにされてるアンタに言われたくない!」
「あれは趣味だから別腹!」
「趣味!?」
○
「でさぁ、最近お嬢様が色んな食材に挑戦してるみたいなのよ」
「へぇ」
一〇〇三三号が言い、一〇〇三二号が相槌を返す。
あの後散々暴れてから、再び二匹の妖精はベランダの手すりに腰掛けていた。
「例えば?」
一〇〇三二号が首を傾げると、一〇〇三三号は頬に人差し指を当てて考える。
「そうねぇ……」
暫くの間が空き、彼女が唸る声が響く。そして、それから数分。
「ホウサン団子。にんにく。鰻。巫女。鉄の塊。人参。ピーマン」
「ほほぅ」
これは驚きだ。
あのお嬢様がにんにくにまで手を出しているとは、何か思うところがあったのだろうか。
「でねぇ、昨日お嬢様が他に何かない?って聞いてきたから特別製を口に放り込んであげたわ」
「おー、で、何を?」
「銀の十字架」
風が吹いた。
「……」
「……」
暫し顔を合わせたままの状態で固まる。
そして、二人して空を見上げ、
「良い天気だねぇ」
「あおいそらー、しろいくもー、まるで私達の心みたい」
○
一〇〇三三号は手すりに腰掛けたまま足を揺らす。
「巫女とどっかの店主が結婚だって」
「へえー」
「今日は四月二日」
「へえー」
「寒いねー」
「へえー」
「隣の家に新しいものが出来ました。それはなんでしょう?」
「へえー」
「正解」
「へえー」
○
「夜ねぇ」
一〇〇三三号は満月の光を浴びながら隣の妖精を見る。
手すりに仰向けになって倒れつつ寝ていた。良くこんなところで眠れるものだ。
「でも、今夜はこんなにも良い夜だから私の気分は良いのよねぇ」
満月の日だけ力を得る一〇〇三三号は笑顔で足と羽根を揺らす。
幸せだ、と思うが、そんな感想は一分と続かなかった。
「あら、私はとてつもなく気分が悪いんだが?」
「そりゃ銀の十字架食べましたからー」
「うー殺法!其の二万三千五百六十二の技――強奪品御祓い棒くらっしゅ!」
「ぺっしっ!?」
悲鳴が響いて一〇〇三三号は星になった。
「んー?どうしたのー?」
「ついでにうー殺法!」
「りふじんっ!?」
○
「咲夜様ー」
「あら、何。一〇〇三二号。今日は珍しく遅刻じゃないのね、仕事しろ」
「後でやりますー」
笑顔で答える妖精に銀のショートヘアの下に鋭い目を持った少女は手を組んで、
「全く……で、何?」
「あのですねー?」
妖精は首を傾げる。
「私達ってメイドですよねー?」
「思いっきりメイドね。あとサンドバック。でも私はメイド長」
「やっぱりですかー」
「やっぱりよー?」
二人して笑顔で首を傾げる。
「で、あんたの顔見てたら友人の結婚式を思い出してストレスが溜まったから発散しようかしら」
「そんな、咲夜様生き遅れたからって。気にする事ないですよ」
「――あはは、細切れにするわ」
「あーれー」
レベル1デス。
こーりん殺す
それはともかく、この子達は何のために生きてるのやらww
ラストは懐かしいSFシナリオですな
妖精ってたまに凄い事平気でしなさるww
レベル1デスは酷すぎるw
俺もミサカだと思った
お嬢様の趣味がブッ飛びすぎw
>生き遅れ 行き遅れでは?
いや、何と言うかもう楽しそうに生きてるなー、紅魔館住人。