展開される弾幕。
我々の主である少女は、その中を一直線に突き進んでいく。弾が掠り血を流しても決して臆することなく、むしろ不敵な笑みさえ浮かべながらさらに速度を上げる。
それは無謀と言わざるを得ない選択だった。あっという間に主は回避不能な状況に追い込まれる。
迫る妖弾。
誰が放ったかは知らないが、例え妖精のものであれ、直撃すれば人間にとっては致命傷である。
だが、主にとってそれは命を脅かすものとはなり得ない。
なぜなら、そのために我々を連れているのだから。
主は我々のうちの一つを手に取る。それは、私よりも一日後に入荷され、兄弟の契りを交わした弟分だった。
《――兄者! 俺は……俺はまだ死にたくない!!》
俺に助けを求め、叫んでいた弟は光と共に消え去った。
《心配するな弟よ……私もすぐに逝く》
弟の死がもたらした一瞬の静寂。その後、再び弾幕が展開される。
しかし、主はまた無茶な特攻を続け、逃げ場を失い、ついに俺を手に取った。
主が何かを叫び――俺の意識は光と共に消え去った。
「貴方は立派に役目を果たしました。四季映姫・ヤマザナドゥの名において、新たな生を歩むことを許可します。来世でも、これまでと変わらぬ善行を積むことを期待していますよ」
そう言って、小さな閻魔様はにっこり笑った。
何とも可愛らしい笑顔だ。柄にもなく、俺も笑顔で答えようとした。
――スペルカードとして。
涙が止まらなかった。
俺が喜んでいるように見えたんだろうか。閻魔様はにこにこ笑っていた。
ただ、俺をここまで連れてきてくれた死神の姐さんだけが「頑張んなよ」と優しく肩を叩いてくれた。
ありがとう、死神の姐さん。アンタはいい人だ。
――人間に転生した弟さんの分もな。
涙は血に変わった。
世の中には「名前で呼んで欲しい」なんてことを宣う奴がいると聞いた。
俺はそいつに言ってやりたい。
――名前で呼ばれるのも、良いことばかりじゃないんだぜ、と。
あと、何か某肉体言語のジャガイモ殿を思いだしたりした。
ところでスペルカードって使い捨てなん?