Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

名前で呼ばないでください

2007/04/03 12:16:30
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 展開される弾幕。
 我々の主である少女は、その中を一直線に突き進んでいく。弾が掠り血を流しても決して臆することなく、むしろ不敵な笑みさえ浮かべながらさらに速度を上げる。
 それは無謀と言わざるを得ない選択だった。あっという間に主は回避不能な状況に追い込まれる。
 迫る妖弾。
 誰が放ったかは知らないが、例え妖精のものであれ、直撃すれば人間にとっては致命傷である。

 だが、主にとってそれは命を脅かすものとはなり得ない。
 なぜなら、そのために我々を連れているのだから。

 主は我々のうちの一つを手に取る。それは、私よりも一日後に入荷され、兄弟の契りを交わした弟分だった。
《――兄者! 俺は……俺はまだ死にたくない!!》
 俺に助けを求め、叫んでいた弟は光と共に消え去った。
《心配するな弟よ……私もすぐに逝く》
 弟の死がもたらした一瞬の静寂。その後、再び弾幕が展開される。
 しかし、主はまた無茶な特攻を続け、逃げ場を失い、ついに俺を手に取った。

 主が何かを叫び――俺の意識は光と共に消え去った。







「貴方は立派に役目を果たしました。四季映姫・ヤマザナドゥの名において、新たな生を歩むことを許可します。来世でも、これまでと変わらぬ善行を積むことを期待していますよ」
 そう言って、小さな閻魔様はにっこり笑った。
 何とも可愛らしい笑顔だ。柄にもなく、俺も笑顔で答えようとした。

 ――スペルカードとして。

 涙が止まらなかった。
 俺が喜んでいるように見えたんだろうか。閻魔様はにこにこ笑っていた。
 ただ、俺をここまで連れてきてくれた死神の姐さんだけが「頑張んなよ」と優しく肩を叩いてくれた。
 ありがとう、死神の姐さん。アンタはいい人だ。

 ――人間に転生した弟さんの分もな。

 涙は血に変わった。







 世の中には「名前で呼んで欲しい」なんてことを宣う奴がいると聞いた。
 俺はそいつに言ってやりたい。

 ――名前で呼ばれるのも、良いことばかりじゃないんだぜ、と。
以上、ボム連打を生業とする初心者の物語でした。
aki
コメント



1.猫の転がる頃に削除
……スペルカードってこんなに切ないのね……そして、兄者の扱いが惨いぃー!
あと、何か某肉体言語のジャガイモ殿を思いだしたりした。
2.名無し妖怪削除
何の為に生きるかではなく、何の為に死ぬかを考えろ
ところでスペルカードって使い捨てなん?