「橙ーご飯だよー」
いつも橙が猫たちと戯れている廃屋。橙はここに行くといって出かけていったのに。
「ちぇーん」
藍の呼び声には猫たちだけが答え、橙はいないようだ。
少し遠くへ行っているのかもしれない。
「ならそのうちご飯を食べに戻ってくるか」
口に出してそう確認し、藍は家路に着いた。
そうして、家に着いた藍が彼是とやっていても橙は帰ってこない。
既に日も落ちかけている。おかしい。いつもならちゃんと日が落ちる頃には戻ってくるのに。
「おはよう。藍」
紫が起きてくる頃合になっても橙は戻ってこなかった
「紫様。大変です」
「あら、どうしたの藍」
「橙が帰ってくるのが遅いんです」
紫が口を出そうとすると、藍はそれをさえぎるように次の言葉を発した。
「ちょっと探してきます」
言うが早いか藍は家を出て行く。
紫は起き抜けの茶を一杯すすりながら呟いた
「可愛がってるわねぇ」
そうして藍は幻想郷を疾駆する。
「橙を知らないか?」
知らないな。と魔法使い1。
見たこと無い。と魔法使い2。
見て無いわねとメイド。
ここには来てないわ。と魔女。
知らない。と吸血鬼。
なにそれ美味しいの?と亡霊。
見てないですね。と庭師。
兎なら一杯いるけど。猫は、ね。と永遠亭組
しらなーい。と鬼。
知らないわねぇ、と、巫女。
「ダメだ。こいつら当てにならない」
こいつら、に含まれる霊夢の前で思わずそう言ってしまった。
「萃香も分からないの? 幻想郷中に在るんでしょうに」
神社で狐様が暴れていた。とか村人に見られたらただでさえ少ない参拝者が絶えてしまうと危惧した霊夢は藍を助けてやる事にした。
「んーわかんない。昼前ぐらいはいつもの猫屋敷にいたみたいだけど、そっからはよくわかんないなぁ。大体あんた達は」
萃香は瓢箪から目を離して藍のほうへ言った。
「紫のせいで色々分かりにくいからねぇ。突然あっち行ったりこっち行ったりでさ」
「それじゃ、紫に聞いてみたら?」
「ああ、そうだな。ありがとう」
藍はそのまま境内を飛び出して自邸へと向かった。
「どう考えても最初に聞くべき相手じゃない」
霊夢はため息混じりにそういうと萃香がついでくれたのでとりあえず酒をあおった。
「というわけで紫様。橙知りませんか」
「ああ、やっと帰ってきたのね」
紫は呆れた。といった風である。
「全く貴方ってば人の話を聞こうともしないんだから」
「橙は何処にいるんですか」
だから、と紫は自分の入ってるコタツを捲った。
「橙ならここで寝てるわよ」
「何で最初に教えてくれなかったんですか!」
「だって話を聞かなかったのは藍じゃない。」
「なら後からでも教えてくれれば・・・」
「藍が飛び回ってるのが面白くて」
ああ、この方はこういう方だった。藍は落胆しつつも橙が無事でよかったと、そう思った。
「ああ、それで橙がこれ、貴方にですって」
紫は油揚げを藍に差し出した。
「何かね。人間がくれたんだって。で、貴方は主人の夕食抜きにした罰で今日はそれだけね。ああ、橙と私は食べたから心配要らないわよ」
紫はそうして笑うと、ほら、橙を運んであげなさい。と藍を急かした。
「あ、はい」
言われるままに藍はコタツから橙を引き釣りだし、布団へと運んだ。
「それじゃ私は幽々子のところ行ってくるから留守番よろしくね。晩御飯はそのお揚げよ」
「分かりました。行ってらっしゃいませ」
散々飛び回ったおかげで空腹だったので、油揚げを一口食べた。
橙がくれた油揚げは格別に美味しかった。
橙が起きたら、まずありがとうと言おう。そしたら次はしからなきゃな。
この油揚げはそれまでとっておこう。
そう心にしたのだった。
ちなみにその油揚げは藍が寝ている間に夜明け前に帰ってきた紫が食べてしまった。
その日は紫が食事抜きになった。
ナ
サ
ナ
サ サ
ルナサ
ルナサ
ルナサ