「ふあぁ…」
私の名前は、鈴仙・優曇華院・イナバ。
訳あって地上に住んでいる月のウサギです。
ウサギとはいっても、ほとんど人間に近い姿をしてますが…
でも、私が見た目で人間と違うのは、やはり耳があることですね。
特に私の耳は地上のウサギとは違うものだから、地上においてはこの耳さえあればかなり遠くからでも私が鈴仙だと見分けられます。
…だけど、今朝はこの耳があるという感覚がない…
取れた?
いや、触ってみると確かに耳はある。だけどいつものような触覚はなく…まるで髪の毛を触っているような感じ。
それに、なんか全身に違和感がある。よくわからないけど、とにかく違和感を感じる…
でも、悩んでいてもしょうがないので、とっとと着替えて朝ごはんを食べに行くことにした。
★★★
「師匠、おはようございます」
「あら、おはよううどんげ…って、ええぇ!?」
永琳が鈴仙を見たとたん、いきなり驚いた。鈴仙もびっくりした。
「あ、あの、どうしました?私の顔に何かついてました?」
「いや、そんなレベルの話じゃないわよ…とにかく、これは自分の目で確かめるほうが早いわね」
そういって永琳は、大きな鏡を持ってきた。
「え、いったいどうし…えええええぇ!?」
鏡に映っていたのは、いつも通りのブレザー姿、
いつもと同じ赤い瞳。
だけど、耳はへにょってない。
姿も人間にはとても見えない。
全身に白い毛を生やしている。
これって要するに…
「もろにウサギじゃないですかあああぁぁぁぁ!!!」
鈴仙の姿は、完全に文字通り「制服を着たウサギ」だった。
「…でもまぁ、もともとウサギだったんだし、そんなたいして変わらないねぇ」
「って一瞬で順応したああぁぁ!?口調も変わったし!」
「いやあ、まいったねぇー。
まいってるんだけどねぇ…小説だから、手フリや、困った表情もできなくてまいっちゃうねぇ」
「ぜんっぜん参ってるように見えない!ていうかそんなたいして変わらないって言ったのは何処の誰!?」
「あれ…永琳様に鈴仙様、何を騒いでるんですか?」
永琳がその声に振り向くと、そこにはとても可愛らしい少年がいた。
「あ…あなた、誰?」
「やだなぁ永琳様、私ですよ、てゐですよ」
「て…てゐ?」
てゐを名乗ってはいるが、どこからみても明らかに少年であった。
が、非常に可愛らしく、アブないお兄さんお姉さんにお持ち帰りされてしまいそうな外見であった。
そのうち、てゐを名乗る少年の視線は鈴仙を映していた鏡に向けられた。
「…あれ?見ない顔ね、お客様?……!!」
てゐはいきなり顔を赤らめると、永琳を部屋の外へ引っ張り出した。
「え、永琳様!あのウサギの男の子は誰ですか!?」
「えぇ!?」
「永琳様の知り合いですか?もしよければ、紹介していただけないでしょうか?
ああいう男の子…好みなんです」
…奇妙な事態になった。
てゐを名乗る少年が、鏡を見て、鏡に映った自分の姿に惚れている。
何が起こったのか、永琳にはよく理解できない。
とりあえず、この少年がてゐであることは認めざるを得ない。というか、この子が本当に男の子であることを否定したい。
鏡に映った自分の姿に惚れているこの子が男の子であることを。
「と、とりあえず落ち着きなさい、てゐ?」
「えっと、挙式は何処ですればいいんでしょう?」
「いや話飛躍しすぎだから!まず落ち着いて!」
「やっぱり、博麗神社でしょうか?」
言葉での説得は無駄だと判断した永琳は、とりあえずてゐに一撃を食らわせ、正気に戻した。
「…てゐ、見なさい…あなたが見ていたのは、鏡だったのよ」
「あ…」
てゐは非常に残念そうな顔でうなだれる。
「ほら…元気を出しなさい、この世にはまだまだ素敵な人はいっぱいいるわ…」
永琳がてゐにやさしく手を差し伸べる。
「…そうですね、私の初恋は破れましたが…でも、今新しい恋を見つけました!」
こんな恋が初恋だったのね、てゐ…可哀想に…
後半?もちろん、聞かなかったことにしたわ。
「永琳お姉さま…」
ええ私は何も聞いてない、お姉さまなんて言葉は聞こえてない。
「って、さっきのが鏡ってことは、あれが今の私の姿なんですね…」
って、今更気がついたの?
「でも、むしろ好都合ね…こうやって堂々とお姉さまといちゃつけるんだから…
お姉さま…老後はどのように過ごしましょう?」
あー、まーたものすごい飛躍してる。ってか私は不老不死だから老後もへったくれもないのよてゐ。
脳内で突っ込むのが面倒になった永琳はとりあえずてゐをぶっ飛ばし、気絶させておいた。
あー、うどんげがまだそのままだったわ。まあ害もなさそうだし、いっか。
★★★
鈴仙とてゐの姿は、翌日には戻っていた。
「まあ、二人が元に戻ってよかったわ…結局原因はわからなかったけど…」
「えっ、あれって師匠の仕業じゃないんですか?」
「いや…さすがにあそこまで悪趣味なことはしないわよ…」
「あ!永琳お姉さまおはようございます!」
「あらおはようてゐ…ごふっ!」
「ああっ!何してるのよてゐ!師匠にいきなり飛びついて抱きつくなんて!」
「す…すごく説明的な注意をありがとう…」
「ふふ~離しませんよお姉さま♪」
「ちょっと、助けてうどんげ!私にそういう趣味は…」
「…ずるい」
「へ?」
「わ、私だって、師匠のこと……女同士だから、いけないことだから、ずっと我慢してきたけど…」
「え、ちょっと、何よこの展開」
「そっか…じゃあ鈴仙様はライバルなのね…」
「私、絶対負けないわ!」
「それはこっちの台詞です!」
「あらあらえーりん、モテモテなのね」
「えちょっと姫!そんなところで生暖かく見守ってないで助けてください!」
「え~、でもやっぱり同じ趣味を持ってる人はなんか応援したくなるじゃない?」
「って姫もですか!?初耳ですよ!?」
「何言ってるのよ、妹紅に対してあれだけ愛情を表現してるのに?」
「あれは愛情表現だったんですか!?回りくどすぎてわかりませんよ!?」
「え?妹紅は気づいてくれて、私と同じくらい愛情表現を返してくれるけど?」
「いやそれは多分違います!明らかに憎しみによる攻撃です!」
「師匠、てゐとの話し合いの結果、『三人で仲良くする』ということで和解が成立しました」
「ちょっと!私ぬきで話を勝手に進めないで!」
「というわけで、よろしくお願いします、お姉さま…」
「あの、私も…お姉さまって呼んでいいですか?」
「ちょ、誰か、そこのウサギ、助け…ってダメだ、こいつらも女同士でいちゃついてやがるうぅ!!」
そんな中、永遠亭に開いているスキマが。
「あらあら…二つの世界の『イナバ』の境界を一日だけいじったら、大変なことになっちゃったわね…
まあ面白いし、いっか」
一方、もう一つの世界の『イナバ』はというと…
「やあイクラちゃん、おはよう」
「ん?誰だお前…まさか因幡!?」
「え、どうしたのイクラちゃん?」
「間違いない、そのしゃべり方…お前因幡なのか!?」
「え、えぇ?そりゃもちろんぼくは因幡浩だけど…いったいどうしたんだよぉ?」
「因幡…お前、自分の姿見てみろ」
「どれどれ…ってえぇ!?なんでぼく女の子になってるの!?」
「そんなのこっちが聞きたいよ!」
「いやあ、まいったねぇー」
「でもやっぱり因幡は因幡だな…」
ちなみにその一日、因幡の友人は因幡のほうから女の子になったことを言うまで何も言わなかったという。
「あれ?因幡くんちょっと背縮んだ?」
「え?そ、そうかな…?」
「まあ私の気のせいかも。気にしないで」
「うん…」
「みんな…もうちょっと違和感感じてよ…」
因幡晃は、もともと女顔で黒髪なので、服さえちゃんと着替えていればあんまり差はないのであった。
私の名前は、鈴仙・優曇華院・イナバ。
訳あって地上に住んでいる月のウサギです。
ウサギとはいっても、ほとんど人間に近い姿をしてますが…
でも、私が見た目で人間と違うのは、やはり耳があることですね。
特に私の耳は地上のウサギとは違うものだから、地上においてはこの耳さえあればかなり遠くからでも私が鈴仙だと見分けられます。
…だけど、今朝はこの耳があるという感覚がない…
取れた?
いや、触ってみると確かに耳はある。だけどいつものような触覚はなく…まるで髪の毛を触っているような感じ。
それに、なんか全身に違和感がある。よくわからないけど、とにかく違和感を感じる…
でも、悩んでいてもしょうがないので、とっとと着替えて朝ごはんを食べに行くことにした。
★★★
「師匠、おはようございます」
「あら、おはよううどんげ…って、ええぇ!?」
永琳が鈴仙を見たとたん、いきなり驚いた。鈴仙もびっくりした。
「あ、あの、どうしました?私の顔に何かついてました?」
「いや、そんなレベルの話じゃないわよ…とにかく、これは自分の目で確かめるほうが早いわね」
そういって永琳は、大きな鏡を持ってきた。
「え、いったいどうし…えええええぇ!?」
鏡に映っていたのは、いつも通りのブレザー姿、
いつもと同じ赤い瞳。
だけど、耳はへにょってない。
姿も人間にはとても見えない。
全身に白い毛を生やしている。
これって要するに…
「もろにウサギじゃないですかあああぁぁぁぁ!!!」
鈴仙の姿は、完全に文字通り「制服を着たウサギ」だった。
「…でもまぁ、もともとウサギだったんだし、そんなたいして変わらないねぇ」
「って一瞬で順応したああぁぁ!?口調も変わったし!」
「いやあ、まいったねぇー。
まいってるんだけどねぇ…小説だから、手フリや、困った表情もできなくてまいっちゃうねぇ」
「ぜんっぜん参ってるように見えない!ていうかそんなたいして変わらないって言ったのは何処の誰!?」
「あれ…永琳様に鈴仙様、何を騒いでるんですか?」
永琳がその声に振り向くと、そこにはとても可愛らしい少年がいた。
「あ…あなた、誰?」
「やだなぁ永琳様、私ですよ、てゐですよ」
「て…てゐ?」
てゐを名乗ってはいるが、どこからみても明らかに少年であった。
が、非常に可愛らしく、アブないお兄さんお姉さんにお持ち帰りされてしまいそうな外見であった。
そのうち、てゐを名乗る少年の視線は鈴仙を映していた鏡に向けられた。
「…あれ?見ない顔ね、お客様?……!!」
てゐはいきなり顔を赤らめると、永琳を部屋の外へ引っ張り出した。
「え、永琳様!あのウサギの男の子は誰ですか!?」
「えぇ!?」
「永琳様の知り合いですか?もしよければ、紹介していただけないでしょうか?
ああいう男の子…好みなんです」
…奇妙な事態になった。
てゐを名乗る少年が、鏡を見て、鏡に映った自分の姿に惚れている。
何が起こったのか、永琳にはよく理解できない。
とりあえず、この少年がてゐであることは認めざるを得ない。というか、この子が本当に男の子であることを否定したい。
鏡に映った自分の姿に惚れているこの子が男の子であることを。
「と、とりあえず落ち着きなさい、てゐ?」
「えっと、挙式は何処ですればいいんでしょう?」
「いや話飛躍しすぎだから!まず落ち着いて!」
「やっぱり、博麗神社でしょうか?」
言葉での説得は無駄だと判断した永琳は、とりあえずてゐに一撃を食らわせ、正気に戻した。
「…てゐ、見なさい…あなたが見ていたのは、鏡だったのよ」
「あ…」
てゐは非常に残念そうな顔でうなだれる。
「ほら…元気を出しなさい、この世にはまだまだ素敵な人はいっぱいいるわ…」
永琳がてゐにやさしく手を差し伸べる。
「…そうですね、私の初恋は破れましたが…でも、今新しい恋を見つけました!」
こんな恋が初恋だったのね、てゐ…可哀想に…
後半?もちろん、聞かなかったことにしたわ。
「永琳お姉さま…」
ええ私は何も聞いてない、お姉さまなんて言葉は聞こえてない。
「って、さっきのが鏡ってことは、あれが今の私の姿なんですね…」
って、今更気がついたの?
「でも、むしろ好都合ね…こうやって堂々とお姉さまといちゃつけるんだから…
お姉さま…老後はどのように過ごしましょう?」
あー、まーたものすごい飛躍してる。ってか私は不老不死だから老後もへったくれもないのよてゐ。
脳内で突っ込むのが面倒になった永琳はとりあえずてゐをぶっ飛ばし、気絶させておいた。
あー、うどんげがまだそのままだったわ。まあ害もなさそうだし、いっか。
★★★
鈴仙とてゐの姿は、翌日には戻っていた。
「まあ、二人が元に戻ってよかったわ…結局原因はわからなかったけど…」
「えっ、あれって師匠の仕業じゃないんですか?」
「いや…さすがにあそこまで悪趣味なことはしないわよ…」
「あ!永琳お姉さまおはようございます!」
「あらおはようてゐ…ごふっ!」
「ああっ!何してるのよてゐ!師匠にいきなり飛びついて抱きつくなんて!」
「す…すごく説明的な注意をありがとう…」
「ふふ~離しませんよお姉さま♪」
「ちょっと、助けてうどんげ!私にそういう趣味は…」
「…ずるい」
「へ?」
「わ、私だって、師匠のこと……女同士だから、いけないことだから、ずっと我慢してきたけど…」
「え、ちょっと、何よこの展開」
「そっか…じゃあ鈴仙様はライバルなのね…」
「私、絶対負けないわ!」
「それはこっちの台詞です!」
「あらあらえーりん、モテモテなのね」
「えちょっと姫!そんなところで生暖かく見守ってないで助けてください!」
「え~、でもやっぱり同じ趣味を持ってる人はなんか応援したくなるじゃない?」
「って姫もですか!?初耳ですよ!?」
「何言ってるのよ、妹紅に対してあれだけ愛情を表現してるのに?」
「あれは愛情表現だったんですか!?回りくどすぎてわかりませんよ!?」
「え?妹紅は気づいてくれて、私と同じくらい愛情表現を返してくれるけど?」
「いやそれは多分違います!明らかに憎しみによる攻撃です!」
「師匠、てゐとの話し合いの結果、『三人で仲良くする』ということで和解が成立しました」
「ちょっと!私ぬきで話を勝手に進めないで!」
「というわけで、よろしくお願いします、お姉さま…」
「あの、私も…お姉さまって呼んでいいですか?」
「ちょ、誰か、そこのウサギ、助け…ってダメだ、こいつらも女同士でいちゃついてやがるうぅ!!」
そんな中、永遠亭に開いているスキマが。
「あらあら…二つの世界の『イナバ』の境界を一日だけいじったら、大変なことになっちゃったわね…
まあ面白いし、いっか」
一方、もう一つの世界の『イナバ』はというと…
「やあイクラちゃん、おはよう」
「ん?誰だお前…まさか因幡!?」
「え、どうしたのイクラちゃん?」
「間違いない、そのしゃべり方…お前因幡なのか!?」
「え、えぇ?そりゃもちろんぼくは因幡浩だけど…いったいどうしたんだよぉ?」
「因幡…お前、自分の姿見てみろ」
「どれどれ…ってえぇ!?なんでぼく女の子になってるの!?」
「そんなのこっちが聞きたいよ!」
「いやあ、まいったねぇー」
「でもやっぱり因幡は因幡だな…」
ちなみにその一日、因幡の友人は因幡のほうから女の子になったことを言うまで何も言わなかったという。
「あれ?因幡くんちょっと背縮んだ?」
「え?そ、そうかな…?」
「まあ私の気のせいかも。気にしないで」
「うん…」
「みんな…もうちょっと違和感感じてよ…」
因幡晃は、もともと女顔で黒髪なので、服さえちゃんと着替えていればあんまり差はないのであった。
>もう一つの世界のの
いっこ多い、のかな?