[読む前に注意書き]
旧作キャラが出てきます。
以下が本編です↓
―幻想郷に春の気配が迫る頃。
博麗神社の桜も今か今かと開花を待つこの時期にあっても・・・
「あーいい天気ねぇ。」
楽園の素敵な巫女さん・博麗霊夢の頭の中だけは既に春爛漫だった。
「あら、里の人から妖怪退治の依頼が来てる。どうせならお賽銭の方が良かったなぁー」
賽銭箱に突き刺さっていた神社宛に送られた手紙を読みながら、霊夢が呟いた。しばらく考えた後は即断即決、悩まないのが霊夢クオリティ。
「あーもう、掃除がはかどらないわ。さっさと終わらしましょう。」
かったるそうにお祓い棒を右手で掴む。左手で御札と針、スペルカードの存在を再確認。そして、大地を蹴って、大空を舞う。重力から解き放たれた霊夢には、もうかったるそうな表情は無い。彼女を縛る物も無く、春風のように軽やかで爽やかな表情が全てを代弁してくれる。
「さっさと終わらせて、ご飯にしようっと。」
里から少し離れた獣道、手紙に記されていた地点はここである。
「確かこの辺だと聞いたけど・・・」
可愛い目を見開いて、サーチ&デストロイ!物騒だけど、お仕事だからそんなもの。その辺にいた雑魚妖精なども蹴散らしつつ、目標を探します。
「出たなっ、博麗の巫女!今日こそ決着を・・・」
「うるさいなぁ、夢想封印っ!」
「ぎゃああ!」
サーチ完了、問答無用で夢想封印、妖怪退治もこれにて解決!満足そうな霊夢であったが、倒した妖怪もまた得意気であった。
「安心するのはまだ早いわ・・・・・」
「なに、まだ抵抗しちゃったりする?」
「いや、もう私は抵抗しないけど・・・ね。実は私の仲間が今頃神社を狙って行動しているころよ・・・」
「ふーん・・・って、ええっ?」
パタッと倒れた妖怪、クルッと振り向く霊夢。ちょっと悩んでから、答えを出す。
「ま、大丈夫かな。とりあえず里に報告にいこっと。」
のんきなのが霊夢クオリティ、細かい事は気にしない気にしない。
―だってねぇ。
「しめしめ、狙い通り博麗神社はお留守!容赦なくやっちゃいますか!」
意気揚々と接近する妖怪さん。しかし、そうは問屋が下ろさない。
「そこまでぢゃあ!」
「誰!?」
「貴様のような無礼者に名乗る名前などない!」
そこに現れたのは、やたらと大きな年老いた亀。万年級の年季が入った渋い声で不届き者を威嚇する。
「主の留守時に、神社を荒らそうとする不届き者めっ!!覚悟するのぢゃ!」
大きな亀は、手足を引っ込めて高速回転し、体当たり攻撃を敢行する!亀の甲羅は固いので、勢いさえあれば破壊力満点。
「ほぶっ!」
激しい体当たり攻撃を受けた妖怪は、怯みたじろぐ。それを見た亀はさらに追い討ちをかけるように宣言した。
「とくと見よ!ご主人様の借りてきた本をヒントに編み出したスペルカードと言うものをっ!」
頭を出し、口を開く亀、そしてー
「亀符・究極陽電子火球っ!!」
「ちょ、それはガ・・・うわぁあああああっ」
玄爺の妖術(超高温の火球)をまともに食らった妖怪は切りもみ回転で吹っ飛び、玄爺の寝床となる池に見事着水・・・一打罰はありません。
「あー疲れた。やっぱり妖怪退治は後始末がしんどいわね・・・」
「お帰りなさいませ。」
年期の入った渋い声を出した亀が霊夢の前に降り立った。
「お疲れ様、玄爺。なんか変わった事は無かった?」
「不届き者を成敗しましたが。どうなさいますか?」
先程の妖怪が言っていた仲間だろう。玄爺の攻撃によって完全に気を失った妖怪が境内に転がっていた。
「それは私に任せて。」
結界を展開して、妖怪を閉じ込める霊夢。ついでに先ほど自身が成敗した妖怪も、その隣に座らせる。
「後でお灸をすえておくわ、それでいい?」
「仰せのままに。」
「はい、これでよしっと。留守番ありがとね。」
玄爺をナデナデ、勿論そのまま飛んでったりはしない。
「玄爺のお陰で安心して出かけられるわ。」
「ありがたき幸せです。」
主人思いの玄爺は、深々と頭を下げる。そんな態度に霊夢の目尻も下がっちゃう。
「さあ、ご飯にしましょ、玄爺。」
霊夢が微笑みながら、玄爺を呼ぶ。もさもさした黒いウェーブ髪をたなびかせる、美しさに溢れた主の姿を見た玄爺はのっそりと。
「はい、ご主人様。」
とだけ答える。
「今日はお礼として、里の人から川魚をもらってきたのよー」
「それはそれは、ありがたいことで。」
飛べるようになった霊夢の後ろをふよふよ飛んでついて来る玄爺、かつて上に乗って必死(?)に戦っていた霊夢の成長っぷりを喜ぶ彼の表情は、とっても明るかった。
「ご主人様、お料理の腕前も上がりましたね。」
「ありがと、玄爺♪おかわりあるわよ。」
春っぽい雰囲気が、博麗神社をゆっくりと包んだ時のなんでもない日常。
―幻想郷は今日も平和である。
そして周りがめちゃくちゃでもいつもどおり。それが博麗クオリティ