メルラン・プリズムリバーにとって今日は普通の日だった。
起きだして、姉妹と談笑をしてソロライブへ。何の変哲も無い普通の日の話だ。
向日葵畑で、ひとしきり演奏を終え、次の場所へ赴こうとしているときにメルランは声をかけられた。
「貴方に頼みたい事があるのです」
「あら、閻魔様。珍しい」
メルランの前に立ったのは映姫だった。
「何の用かしら?」
「まぁ。簡単といえば簡単なのですが」
映姫は苦そうに言った。
「この間、うちの小町が仕事をサボっていて」
「いつもの事じゃない」
「いつもではありません。多分」
小さく付け加えた後軽く咳払いをして話を続けた。
「どうも川をわたりたがらない霊がいるのです」
「やましい事でもしたんじゃないかしら」
「無謬な人間なんていないのです。生きてきたという事は一つや二つは誰もが何か罪を犯している筈です」
「人類は十進法を発明したのね」
にこにこと笑顔でメルランは相槌を入れた。映姫は無視し話を戻す。
「それで貴方に頼みたいのは」
「その陰気な霊をハッピーにして彼岸にかどわかせばいいのね!」
「違います。死者が彼岸に至るのは当然の事。あんまり長い事こちらにとどまっても罪が増えるだけです」
「ほら、同じじゃない」
「違います」
「それで、です」と、映姫は話を脱線させたがる相手ばかりなのだろうか。と悲嘆しながら話を戻した。
「貴方の演奏でその霊達を陽気にして川辺まで案内して欲しい。という事です」
「ほら、やっぱり同じじゃない」
「それではお願いしましたよ」
映姫は話を打ち切り飛び上がる。頭の中で小町をどうしたら働かせられるかを考えたが、いつものように方法が見当たらないのでそのうち考えるのをやめた。
「まー。要するにいつもと一緒よね。場所が指定されただけでー」
メルランはそんな事を思いながら言われた場所――中有の道辺りのどこかにいるでしょうから。としか言われて無いのだが――に向かう。
考えてみれば。そう、何で映姫が自分のところの手下を使わないのかを考えてみれば、分かる事だった。
「あーこれは無理ねー」
目の前では霊が行きかい、露天が賑わっている。
この中から恐らくは一つである霊を探すなんて、無理なんじゃないかしら?
「どうしたものかしらね」
頼みを断るという選択肢は取りたくないし、取れない。ちんどん屋が一度受けた演奏依頼を撤回してはダメだ。
「ああ、そうね」
メルランは思い付いた。とりあえず演奏して皆ハッピーになって考えるのはそれからでいい。
「それじゃあ」
メルランは声を上げ獲物であるトランペットを鳴らし始めた
「メルラン・プリズムリバーのソロライブはっじまーるよー!」
「小町」
「はい、映姫様」
「これはどういうことか説明できるかしら?」
映姫の前にはとんでもない量の霊が列を成していた
「さぁ?どういうことでしょ。あたいは運んできただけなんで。でもお客さん皆楽しそうに話してくれて久々に仕事のしがいがありました」
「そういうことではありません!それじゃいつもは仕事のし甲斐がないんですか!大体貴方は」
そこまで行ったところで小町が既に次の霊を運ぶため戻ってしまった事に気づいた。
映姫はため息を一つつき、裁判を始めた。罪状を読み上げるときに気づいた。
「なんでテキヤの貴方達がここに来てるのですか!」
「いい事をするって気持ちいいわね、姉さん」
自邸に戻り、ルナサとリリカに事の次第を教えた後、メルランはこう漏らしたのだった
「でも、いくら何でも見分けが付かないからって全部送り込むのはダメなんじゃないかな」とリリカ
「大雑把すぎるわね」とルナサ
「良いのよぅ。ちゃんと何時までも川に行かない霊だって中にいたはずなんだから。きっとね」
満面の笑みで仕事の成果を誇るメルラン。
「さて、明日も皆をハッピーにするわ!」
メルラン・プリズムリバーにとっては今日も変哲の無い普通の一日であった
>そこまで行ったところで
言ったところで じゃないですかね。
めるぽが主役なのにそれはwww