※ 注 意 ※
登場するキャラクターの性格、言動等に一部脳内設定が加わっている為、読み進めると違和感を感じる事があるかもしれません。
御容赦いただければ幸いです。
「うーん・・・・」
「あら、どうしたのかしら?よーむ?」
白玉楼。その庭先で、半霊庭師のみょん侍こと魂魄妖夢がなにやら難しい顔をしている
ところに、彼女の主人である西行寺幽々子が通りかかった。
妖夢「あ、ゆゆ様。・・・!も、申し訳ありません、幽々子様!」
幽々子「別にいいのよ~?ふたりの時はゆゆ様って呼んでくれても」
妖夢「いえ、主人と従者ですから、そういうわけにはいきません!」
幽々子「そう・・・私は別に気にしていないのに・・・・。
ところでよーむ?さっき難しい顔して何か考えていた様だけど・・・」
妖夢「あ・・・いえ、夕御飯は何にしようかなと・・・・」
幽々子「・・・よーむ?本当にそんなこと考えていたのかしら?」
妖夢「え・・・それはどういう意味で・・・・」
幽々子「よ・う・む?」
妖夢「・・・ううっ」
この亡霊の姫君、普段からあまり物を考えていないような雰囲気があるが、その眼力は鋭い。
妖夢が物事を最後まで隠し通せることは殆ど無い。
尤も、これには妖夢がすぐに顔や態度に出てしまう、というのもあるのだが・・・・。
幽々子「よーむが私に隠し事をするなんて・・・。そうやって私の元から離れていってしまうのね・・・・」
妖夢「ゆ、幽々子様!そんなことはありません!ですから・・・・!」
幽々子「・・・なんていう冗談はこのくらいにして、なにを悩んでいたのか聞かせてくれる?」
妖夢「え・・・えーと・・・その・・・・」
幽々子「? どうしたの?言い辛いことなの?」
妖夢「は、はい・・・恥ずかしいというか・・・・」
幽々子「笑わないから話してみて?」
妖夢「はい・・・、どうして自分だけこうなのかなと思いまして・・・・」
幽々子「? どういう事かしら?」
妖夢「西行妖を咲かせるために春を集めてから、いろいろな方達に会いましたよね?」
幽々子「そうねえ。それまでは生きている人達に会うことはほとんどなかったものね~」
妖夢「それで、その中に何名か、私と同じ立場の方がいまして・・・・」
そこまで妖夢が話したとき、なにか頭に浮かんだのか、幽々子が笑い出した。
幽々子「・・・うふふっ、なるほどね。そういうことだったのね~」
妖夢「え・・・・」
幽々子「みんな綺麗で大人の女性、って感じだったものね~」
妖夢「・・・みょん」
そう。妖夢は自分が『子供っぽい』ことを気にしていたのである。前々から気になっていたところに、
最近あった人達、特に自分と同じ『従者』と自分を比べてしまい、悩んでいたのである。
幽々子はそれに気が付いたのだ。
幽々子「紅の吸血鬼のメイド、竹取の姫付きの薬師、あと紫の所の藍ちゃんもそうよね~」
眼力の鋭い幽々子だが、妖夢が自分のことをコンプレックスに近い状態にまで思っている最大の原因が
幽々子自身にあることには気付いているのかいないのか・・・・。
普段はのほほんとしているが時折見せる凛とした表情や立振る舞い、そして同性ですら思わず見惚れてしまう、
均整のとれた素晴らしいプロポーション・・・・。
幽々子「そんなことで悩んでいたの。よーむってば可愛いっ」
妖夢「!! わ、わぷっ、や、やめてください幽々子さ・・・・」
幽々子が妖夢を抱きしめる。幽々子は、事あるごとにこうして妖夢に抱きついていた。
妖夢も幽々子に抱きつかれるのが嫌いではなかった。気恥ずかしさというものはあるが、幽々子の腕の力はちょうど良く、
その豊かな胸に頭を埋められていると何とも言えない心地好さがあるのだ。だが・・・・。
妖夢「(そんなことって・・・。ゆゆ様には私の気持ちは解らないだろうな・・・・)」
幽々子「? 何か言った?」
妖夢「い、いえ・・・何も・・・。それよりも離して下さい!苦しいです!!」
幽々子「そんな~、せっかくひさしぶりによーむを抱けたのに~」
最近、妖夢は幽々子に抱きつかれると少々悲しくなってしまうときがある。主人の幽々子は
こんなにも女性的な魅力に溢れた方なのに、どうして自分は・・・と考えてしまうのである。
それ故、幽々子に抱きつかれそうになると何かしらの用事を作って逃げてしまっているのだ。
幽々子「それで、その中でも一番憧れているのは誰なのかしら?」
妖夢「はい・・・十六夜咲夜さんです・・・・」
幽々子「紅魔館のメイド長ね。どこに憧れているの?」
妖夢「・・・全部、です。外見的にも、内面的にも・・・・」
幽々子「・・・・」
妖夢「・・・咲夜さんに会う度に、咲夜さんの従者としての立ち振舞いを見る度に、自分との大きな差を感じてしまうんです。」
幽々子は何も答えない。ただ黙って妖夢の話を聞いていた。
妖夢「・・・そうしたら、自分は西行寺家、・・・いえ、幽々子様に仕える者としてふさわしいのか、
もしかして幽々子様はこんな自分を従者失格だと考えているのではないか、という思いが膨らんで・・・ぐすっ」
だんだんと妖夢の表情が崩れていく。妖夢本人にしても、最初は漠然と
「なぜ他の人達に比べて自分は子供っぽいのだろう」程度の考えだったのだが、
話をしている内に咲夜と自分を比べてしまった。こういう状況の場合、比較相手は輝いて見え、
自分は劣っているように見えてしまうものである。妖夢もその状況にはまり込み、
そして以前から心の奥底で常に持っていた不安、「自分は従者失格なのではないか」という思いが表に出てきてしまった。
幽々子「・・・そうね、確かに彼女は素敵だわ。よーむがそんな風に感じてしまうのも良く解るわ。」
妖夢「・・・う・・・ぐすっ、ぐすっ」
妖夢はすでに半泣き状態。幽々子の言葉も殆ど耳に入っていない。
マイナスの思いが頭の中を駆け巡り、どんどん悲しくなっていく。
このままでは心の最後の部分が折れ、大声で泣き出してしまうのも時間の問題。
そんな妖夢に対し、幽々子はゆっくりと近づき、そして、
ふわっ
という音が聞こえそうなくらいにやさしく抱きしめた。先程とは違いやさしく、やさしく・・・・。
妖夢「・・・? ゆ、幽々子様・・・・?」
突然のことにびっくりした妖夢が我に返る。妖夢からは見えないが、幽々子の表情もやさしいものに変わっている。
姉が妹に向けるように、母親が娘に向けるように・・・・。
幽々子「でもね、妖夢」
妖夢「・・・・?」
幽々子「彼女の姿だけが正しい従者の姿では無いのよ?」
妖夢「・・・え?」
幽々子「彼女の主人、つまりあの吸血鬼が従者に求めたのは『完全』だったのよ。
それを彼女の出来る範囲内で体現したのがあの姿なの。
でも、あのレベルにまで到達出来るのだから・・・・彼女の能力も人並み外れているのだろうけど、
本当に主人のことを敬愛しているのね」
妖夢「・・・・」
幽々子「それでね、今の私が従者に望んでいるのは『成長』なの。
少しずつ、少しずつ成長していく従者と一緒に過ごす事が、今の私にとって最高の喜びなのよ」
妖夢「そ、それでは・・・・」
幽々子「そうよ、妖夢」
そこまで言うと、幽々子は妖夢を離し、正面から見つめた。
幽々子「あなたは私にとって最高の従者よ」
妖夢「! ・・・あ、ありがとうございます!幽々子様っ・・・・!!」
妖夢は再び泣き出してしまった。だが、先程とは涙の意味が違っている。
そんな妖夢を幽々子は再びやさしく抱きしめた。そして、ただ黙って妖夢にやさしい
視線を向けていた。
幽々子「・・・落ち着いたかしら?妖夢?」
妖夢「はい・・・・」
幽々子「ごめんね、妖夢。あなたがそこまで思い詰めていたとは思わなかったわ」
妖夢「! 幽々子様が謝られることはありません! 悪いのは私です!
私が未熟なのが原因・・・・」
幽々子「・・・妖夢」
妖夢「! は、はい・・・・」
幽々子「あなたは真面目なのは良い所なのだけど、たまには肩の力を抜いた方がいいわね。
さっきみたいに思い詰めてしまうわ」
妖夢「はい・・・申し訳ありません・・・・」
幽々子「そうしょげないの。元気がいいのもあなたの良い所なんだから」
妖夢「は、はいっ!!」
幽々子「理想の自分に向かって努力していけば、少しづつ近づいていって、いつの日か到達できるわ。
でも、そのためには今の自分をしっかりと見つめないと駄目。そこから目を背けると、
目標がただの憧れになってしまって、その輝きに目を奪われるだけになってしまう。
そしてそこから進めなくなってしまうのよ」
妖夢「確かに・・・。先程までの私はその状態でした・・・・」
幽々子の言葉を聞いて再び落ち込んでしまう妖夢。だが、幽々子はそんな妖夢を見つめてにこりと笑った。
幽々子「それでいいのよ。妖夢」
妖夢「えっ!?」
幽々子「あなたは今日そのことに気付いた。そしてもう二度と今の自分を見失ったりしないわ。あなたは今日また一つ成長したの」
妖夢「・・・は、はいっ!」
幽々子「そう、無理に背伸びする必要はないの。それに・・・・」
そこまで言うと、幽々子は再びにこりと笑う。だが、先程までとは雰囲気が違う。
今の笑顔は、面白い悪戯を思いついた、そんな少女のような笑顔だ。
妖夢「・・・・?」
幽々子「今のままのよーむが好きって言ってくれた娘がいたじゃない~。確かおいしそうな名前の・・・・」
それを聞いた妖夢の顔が一瞬で真っ赤に染まる。
妖夢「ゆ、ゆゆ様っ!?ど、どうしてその事をっ!?」
幽々子「私がよーむの事で知らない事があると思ったの~?」
妖夢「う、うぐぅ・・・・」
幽々子「? な~に? その羽の生えたリュックを背負っていそうな返事は?
・・・あら? もうこんな時間なのね~。お腹もすいてきたわ。
よーむ。御飯の支度お願いできるかしら?」
妖夢「は、はい!ただいま致しますので少々お待ちください!」
たったったったっ・・・・・・
いろいろとあったが妖夢は元気を取り戻したらしく、返事をした後に走って白玉楼の中へ消えていった。
そんな妖夢を見ながら・・・・。
幽々子「ふふふ・・・・。どういう風に成長するか楽しみにしているわね。妖夢。
それにしてもお腹すいたわね~」
と言うと、ふわふわと妖夢が食事を用意している部屋へと飛んでいった。
静かな冥界の中で、騒がしい白玉楼。その中でも特に賑やかな出来事でありました・・・。
その頃、亡霊の主従の話題に出てきた紅魔館のメイド長は・・・・。
咲夜「ああ、お嬢様お嬢様お嬢様おじょうさまおじょうさまおじょうさま
おぜうさまおぜうさまおぜうさまレミリア様レミリア様レミリア様
れみりゃさまれみりゃさまれみりゃさま・・・・!!!!」
自分の部屋で、洗濯前の主人の服に顔を埋めくんかくんかしつつ、なにやら人には言えないような内容の妄想の真っ最中だった・・・・。
ボリュームも丁度疲れないで読める感じ。
文章力等は何も言えないけれど、いけいけようむと言ってあげたい。
オチなど知らん(´・ω・`)
(オチ
・・・何も見てない、俺は何も見ていないっwwwwwwwwwww
パッド長?そんなの見てませんよ?w
優しい幽々子様、そして素直で真面目な妖夢・・・良い子でいっぱいです。
オチはおびっくりでした。 意外性の凄さを知りました。w
・・・冥土長(´・ω・`)