※このお話はキャラが壊れています。
そういった話が苦手な方は無理をしないようお願いします。
ある晴れた日の朝・・・
小鳥がさえずる庭に新たに萌ゆる命。
そんな春の訪れを感じられる時期になった。
ここは白玉桜・・・
亡霊の姫君と冥界の盾が暮らす場所である。
朝食とも思えぬ朝食を終えた幽々子は縁側で茶をすすっていた。
「ふう・・・のどかねぇ。」
まだ少し冷たい風が吹いている。
けれども心地よさを感じる。
胸がキュッと締まるような気持ちはロマンを感じさせる。
「? いかがなさいました、幽々子様?」
いつもとは違う、切なそうな主人の顔を見て妖夢は聞いてみた。
この切なそうな顔はきっと重大なことなんだ、と真剣になる。
あの春集めの時もこんな顔をしていた。
「ねぇ、妖夢。」
「はい、なんでしょう?」
「あなたは恋をしているのかしら?」
「はあ?」
予想していなかったその言葉に思わず失礼な言葉の返しをしてしまう。
「・・・あとでおしおきね。」
「みょん。」
「それより、私の質問に答えなさい。」
ふうっと一息ついて、改めて妖夢は幽々子の質問に答える。
「恋ですか・・・私にはそういった話は無いですね。」
「そう・・・。 妖夢、もうじき春よね。」
「春ですね。」
「出会いと別れの季節でもあり、胸トキメク季節でもあるのよ。」
「はぁ、そうなのですか。」
「というわけで、今日は恋を探しにいくわよ。」
「えぇっ!?」
主人の気まぐれに半ばというかほぼ強制的に付き合わされることになった妖夢。
「紅魔館とかもきっとそんな感じなんだろうな」と自分と同じ立場にある者たちのことを思うのだった。
そんなわけで・・・
「というわけで、おねが~いゆかり~ん。 スキマで恋してる人を見せてぇ。」
「・・・大妖怪の私にそんなことをしろと?」
友達という関係ではあるが、いかにも暇つぶしみたいなワガママに付き合いたいとは思わない。
しかも紫は、春間近のまだ寝ていたいよあと5年のところで起こされた。
はい、年単位で言ったら季節関係無いですね。
「あなたのスキマはなんのためにあるのか、本当にわかってるの?」
「少なくとも覗きをするためにあらず。」
「バカ野郎!」
(どぅくしっ)
幽々子は無限の正義が如く運命を蹴るように紫の足を蹴った。
「い、痛い! ふくらはぎが痛い! 何するのよ!?」
「アス・・幽々子様!?」
このとき式である藍と橙は出かけているため、紫を守る者は誰もいなかった。
いたとしても友人との戯れと見て、放っておいたかもしれないが。
「見損なったわ、紫! そんなことで紅白の巫女と一緒になれるわけないじゃない!」
「なる気ないし! 月の異変で手を組んだだけで、なんでそんな飛躍して ルブシャァっ!?」
「ゲムっ!」
「ゆ、幽々子様、それは流石にやめてください!」
「手を放しなさい妖夢! この行動にどれだけの意味があるのか、まだわからないの紫っ!!?」
「あ、アンタ、殴って何か言えば自分の言葉が正論になると思っ ヘブシっ!!?」
「いいからスキマ見せろよ! (ギルっ!)」
「「ひぃっ、本性出た!?(そしてなんか続いてるっ!)」」
とまぁ、妖夢と同様(?)強制的にスキマを出すことになった紫。
友達はちゃんと選ばなきゃと痛感した。
季節は春・・・そろそろ縁を切った方がいいのかなとスキマを出しつつ思うのだった。
とりあえず居間に座って、みんなが見れるように隙間を作る。
「で、誰を覗きたいのかしら?」
「まずは恋の魔法使いかしら。 その呼び名の如く、かなりのプレイガールらしいわね。」
「いきなり汚い部分から見るのですかぁ。」
「じゃあ、ほいほいっとな。」
まず映し出されたのは魔理沙の家。
ただ家の中に魔理沙がいたとしても客がくることは少ないため、あまりいい展開は期待できないのだが。
「やっぱりいないみたいね。 そうじゃないと楽しめないだろうからむしろいいけど。」
「ふふっ、止まらぬが恋ね。」
「違うと思いますが。」
「あの子の行き先を考えて・・・じゃあ次は神社に行くわよ。」
博麗神社が映し出された。
そこには白玉桜と似たような静けさがあった。
鳥は囀り、ツクシが頭を出していた。
近いうち素敵な巫女に食べられることも知らずに。
外には人の姿は見当たらなかった。
ひょっとしたら中にいるのかもしれないと思い、家の中を映す。
すると霊夢が畳の上で横になっていた。
「あら、霊夢はいるけど・・・魔理沙はいないみたいね。」
「なんか部屋の中で寝転がってもぞもぞ動いてますね。」
よく見ると袴の中に右手を突っ込んで中で動かしている。
左手部分は着物の上から塗り薬でも塗るような動きで手と指を動かしていた。
そして耳を澄ませば少し苦しそうだが、本能を刺激する声が聞こえてくる。
「霊夢は何をしているのかしら、紫?」
「わかってて聞いてるんじゃないの?」
「あの子も春よね・・・。」
「じゃ、じゃあ次は人形遣いの家にでも行ってみましょうか。」
アリス邸が映し出された。
魔法の森・・・魔理沙の家と同じように暗い場所にある。
ただ、魔理沙の家よりも暗く見えるのは気のせいだろうか。
そしてさっきと同様に中を覗いてみた。
「あら、アリスはいるけど・・・魔理沙はいないみたいね。」
「なんかベッド上でもぞもぞ動いてますね。」
よく見るとスカートの中に右手を突っ込んで(略)。
左手部分はブラウスの上から(略)。
そして耳(略)。
「アリスは何をしているのかしら、幽々子?」
「さっきと同じ展開の臭いがしますよ、紫様。」
「それはね紫・・・あの子はオ「っぱーい!!」して、ってうっさいわね!!」
「アンタは一体何を言おうとしてるのよ!? 危ないわね!」
「アンタは言葉の消し方間違ってるっ! 結局アウトよ!」
「な、何をぅっ!?」
「え、えと、あとは図書館ですね。 まぁ一番出現率が高いので期待できますよ。」
ヴワル図書館が映し出された。
知識の海とも言えるほどの本、本、本。
これほど大規模な情報は整理、検索どころか本棚に目を通すだけで数日は使ってしまいそうである。
「いたわ! ついに見つけたわよ、恋する乙女! 紫、どう思う!?」
「この図書館の主と恋しちゃってるのかしらね!? そうなのかしらね!?」
いつの間にか恋の魔法使いは恋する乙女にされていた。
まるで中学生の恋話のように盛り上がる二人。 結局これがやりたかったのだろうか。
スキマに映る僕らのゴキ・・・白黒魔法使いこと霧雨魔理沙は静かに本を読んでいた。
その近くには一緒に静かに本を読むパチュリーがいた。
「今日は随分と落ち着いてるわね。
霊夢の話では魔理沙は本を盗んだり、その被害者のハートを盗んだりで忙しいらしいけど。」
「色々ちゃっかりものね。 あら、なんか動いたわよ。」
パチュリーは小悪魔を呼んだようだ。
小悪魔はすぐに来て、用件を聞くとまたすぐに飛んでいった。
と、何か聞こえてきた。
「魔理沙、何読んでるの?」
「おぉ、これか? これはな、ドラゴンなんとか、っていう漫画だ。
人が空を飛んで弾を撃ってるシーンがあってな、ひょっとしたら弾幕の参考に・・・」
「ならないわよ。 マスタースパークの参考になるかもしれないけど、力押しでの話じゃない。」
「お前にはこれの良さがわからんのか?」
「誰よりも分かってるわ。 特にフリ「あぁいい何も言うな」って人の話は最後まで・・」
「お前がコレが好きなのはわかったから・・・じゃあ、別の本読むか。」
「じゃあこれがオススメよ。」
「お、なになに? 死の帳簿?」
「この話は私達魔法使いのバイブルとも言える作品よ。」
「ほほぅ、では読んでみるか。」
そんなちょっとほのぼのとした光景にギャラリーは退屈を隠せない。
「ねぇ妖夢・・・あの子たち、漫画読んでばっかで全然話がおもしろくならないわ。」
「まぁ図書館では静かにするのが一般の常識ですけどね。」
「図書館が漫画喫茶みたいに使われていることにツッコミはないのね。
じゃあ別の人を見てみましょうか。 誰がいい?」
「紅魔館の住人はなんかなぁ・・・いい恋が見れそうにないわ。」
「永遠亭はどうですか?」
「兎と怪しい薬師とニート姫しかいないわ。 恋とは無縁そう。」
「じゃあ不死の女の子と歴史の半獣でも見てみる? 確かそんな疑惑が・・・」
「それは先週見てきたわ。 不死鳥は闇の中で蘇ったわ。」
「若いっていいわね。」
「恋・・・ですか・・・。」
とりあえずお茶を飲みつつ一息つく3人。
誰か恋していそうな人はいないか一生懸命考える。
マジ狩るバナナ! 恋といったら下心! 下心といったら腹黒! 腹黒といったらてゐ!
てゐといったら因幡! 因幡といったら物置! 物置といったら因幡・・あれぇ?
因幡といったら物置・・あれれぇ? 物置といったら因幡・・・因幡・・・物置・・・。
二人で言い合う幽々子と紫。
笑顔が素敵なナースが見たら「どこか悪いのですか? 頭ですね。」と言われんばかりだ。
そんな中一人で黙々と考える妖夢。
そういえば恋において重要な人物を一人忘れている気がする。
恋、恋、恋・・・そうだ!
「おてんば恋娘!」
「おてんば恋娘ぇ?」
「あぁ、チルノね。」
つまり、おてんば恋娘といったらチルノ。 チルノといったらおてんば恋娘である。
が、実際にチルノが誰かに恋しているのかはわからない。
なんせ見た目も中身も子供で like と love の違いなどわからなそうである。
「でもチルノが恋をしたら、それはおもしろいことだとは思いませんか?」
「なるほど、恋をしてないものにさせるのね。
なかなかイメージできない相手なら尚いいわね。」
「それはとてもおもしろそうだけど・・・誰に恋させるの?」
「「「うーーーーん」」」
決して駅のトイレの個室でうなっているオッサンの真似ではない。
3人寄って、文殊の知恵を頼って考えているのだ。
しかしなかなかいい相手が出てこない。
レティや大妖精という考えが浮かんできたが、ありきたりな気がしてイマイチである。
「この恋に求める主なことはなんでしょうか?」
「恋に求めること?」
「例えば、意外性だったり純愛だったり欲望だったりですよ。」
「私としては欲望がおもしろいけどね。 幽々子は?」
「私は意外性がいいかな。」
「意外性ね。」
「じゃあ意外性で考えてみましょう。」
「「「うーーーーん」」」
決してこの後「ワンダフル!」とか言うジングルの前フリではない。
またしばらく時間が経った。
いい加減考えることに飽きた紫はこっそり炬燵へと向かおうとするが、
幽々子がどこかから持ってきた豆腐でできた両足60トンの鉄下駄を使い、見事にブロックした。
「まさかお前は努力か!?」
「よい子の町星は伊達じゃない!」
「そーなのかー!!」
ドライブシュートに吹っ飛ばされるキーパーが如く紫は吹っ飛んだ。
キーパーはどちらかと言えば幽々子の方だが、この際どうでもいいことだ。
ぼろぼろになった紫に肩をかしながら幽々子が言った。
「あなた、恋してみない?」
「(いきなり何を言い出すんだこの人は。
私にそういう話が無いって最初に言ったから無理矢理させようとしてるワケ?
そういうお節介って恋人がいらないと思ってるときに限ってかけられるからホンマきついわ。
なんだか人間関係に疲れてしまったでんがなー。 あ、これは関西弁じゃない。
風になりたい走れゴールまでー・・・ん? ゴールってどこだろ?
あぁ、地底勢力の帝王? あぁ、ゲッター? 何それシンジラレナーイ。)」
妖夢の思考もやや壊れてきた。
「ふっ・・・ゆゆ様、ご飯にしましょうか?」
「ご飯につられて私が忘れるとでも思って? でもご飯は作りなさい。 あと、私は幽々子よ?」
「いやいや、ゆゆ様。 恋なんてしたら料理も手につきませんよ?」
「あら、それは困るわね。 またゆゆ様って言った。」
「ですから、私は恋とは無縁の方がいいのです。」
「なるほど、確かに・・・。」
「それに私にはゆゆ様がいます。 あなた以外の人など考えられませぬ。」
「あらあら・・・うふふっ、今夜はいい夜になりそうね。 あと、もうツッコまないわよ。」
「あんっもうっ、ゆゆ様ったら。」
「ふふっ、その生意気な唇を黙らせてやるわよ?」
幽々子は紫を放して、妖夢とイチャつき始める。 そして本当に妖夢を黙らせてる。
どうやって黙らせたかは読者のご想像にお任せするとして、紫は困った。
そんな二人の生暖かい光景で自分の家にいるはずなのに、いづらさを感じていたのだ。
っていうか妖夢はそんなキャラだったっけ?
メイド長の壊れバージョンと似てきたのは気のせいじゃないハズ。
「あー、イチャつくなら他でやってちょうだい。 私は寝るわ。」
「「ちょっ、待てよ!」」
自室に戻ろうとする紫をキムタ・・・とあるイケメン口調で止める幽々子と妖夢。
フザケなのか、真面目なのかイマイチよく分からない言葉である。
散々見せつけた挙句、睡眠の妨害をしているので紫をイラつかせていた。
「誰の・・・いえ、なんのつもりかしら?」
「「あなた、恋しなさい!」」
声をハモらせるな。 っていうかなに?
従者には勧誘で友達には命令ってそれなんて作法?
っていうかいつの間にか妖夢にまでこんなこと言われてるし。
紫の怒りゲージはボタン3つ押しした状態が如く上がった。
格闘ゲームに興味の無い方にはわかりずらい表現でごめんなさい。
「好きでもない相手を好きになれっていうのはどうかと思うわね。
あの子と話したことないから、実際どんなのかわからないし。」
「「だったら、会ってみればいいじゃない!」」
「だから別に興味無いって言ってるじゃない。」
「「どうして逃げようとするの!?」」
「逃げるってなにが? 意味不明なんだけど。」
「「この意気地なし!」」
「あー、なんでそんなに声がハモるのよぉ。」
もはや怒りを通り越して頭が痛くなってくる。
これでハゲができたらこいつらの仕業だ。
人の眠りを邪魔するやつは馬に蹴られてスキマに落ちてしまえ。
「「もう、はっきりしないわね!」」
「あーもう、うるさいなぁ。 何が言いたいのよ。」
「「チルノちゃんに好きってどうして言えないの、ゆかりん!!??」」
(ガサッ!)
「・・・ゆ、紫様?」
そこにいたのは買い物袋を落とした紫の式の式こと橙。
そしてもう一人・・・
「い、今の・・・本当なの?」
何故かそこにいたのは話題の中心、チルノだった。
「えっ!?」
ハッとして紫は幽々子と妖夢の方に向く。
すると「勝った・・・計画通り!」な顔をした『さわやか冥界組』がいた。
・・・全然さわやかじゃないやい。 教育番組にごめんなさい。
「(ち、ちくしょう・・・。)」
妖夢と幽々子がイチャついてるとき、彼女らは偶然にも発見したのだ。
窓から見える位置に橙とチルノが飛んでやってくるのを。
そこから二人は念波で伝え合って、この計画が実行された。
幽霊と半分幽霊だからできるカテゴリーFな技である。
さて、どうしてチルノがマヨイガに来たのかというと・・・
最近橙と仲良くなったチルノと橙なわけで・・・。
今日は偶然にも買い物の途中に会って、藍の粋な計らいなわけで・・・
先に橙を帰らせ、チルノを家に招待したというわけで・・・
春に近い出来事だった・・・。
「ゆ、ゆかり・・・あ、あの、私のこと・・・好きなの?」
「え!? え、それは・・・その・・・。(っていうか、ゆかりって・・・)」
正直困った。 見た目と同様に中身も子供な氷精チルノをどうやってうまく誤魔化そうか悩んだ。
like と love の違いがわからない。 それが非常に厄介だ。
子供の『人としての好き』は、それを言葉にせずに態度でわかってくるものが多い。
しかし子供が『言葉で言う好き』は、それは特別な関係を求めることになるだろう。
もし、ここで紫が好きと言えば love と捉えられてしまうのだ。
「「さて、橙ちゃん。 私達は向こうへ行こうか?」」
「え、でも・・・」
「「彼女達も色々言うことがあるだろうからさ。 私達がいたら邪魔になっちゃうよ。」」
「う、うん。」
「(いつまでハモってるんだコイツらは!? なんで橙はツッコまないの!?
っていうか行くな! ここにいろお前らっ!!)」
目で訴えても3人は別の部屋へ移ってしまう。
友達は散々私をこき使って、最後には無情にもポイしてくれました。
今度は私が異変起こしてやろうかな、白玉桜に。(涙)
「ゆかり、大丈夫? 緊張してる?」
「あぁ、うん。 大丈夫よー。(ってなんで私が心配されてるの!?)」
「深呼吸して・・・そうそう、ゆっくりね。」
「すーーーはーーーーすーーーーはーー---。」
「落ち着いたら・・・その・・・改めて聞かせてよ。」
「あ、あのね。 私が言った好きは、人としての好きで、恋愛のとは違うのよ?」
「もうっ、照れなくていいよ。」
「(馬鹿・・・そこは肯定するところだ。
しかしチルノの頭の程度も予想の範囲・・・ってそうじゃないよ!!)」
頬を赤らめながら視線を斜め下に向けるチルノ。
まずいまずい、完璧に勘違いされている。
「(だけど、この子・・・)」
紫は今自分が非常に大人げない気がした。
こんなにも小さいチルノにこんなに気を遣わせて、言葉を待っている。
そしてこの子は思ったより大人だったんだな、と少し感心する。
でも勘違いされてることに変わりはない。
困った。
「・・・えーと、なんて言ったらいいのかしら。」
「・・・わかったよ。 言葉はまた今度でいいよ。 もう気持ちはわかったしね。
じゃあ今度は私が返事をする番だよね。」
「(え、この私が妖精にリードしてもらってる!?)」
チルノは凄かった。
紫に好かれてると思ってるにしても、ここまでの綱渡りみたいな会話ができるのはバカだからか。
これでもし「別に好きでもなんでもない」と言えばチルノが心に大きな傷を負ってしまうのがわかる。
そこまで自分にすごい自信を抱いているからなのだろうか。
「私はね、すごくびっくりしてるよ。
今日はただチェンの家に遊びにきたつもりだったんだけど、こんなことになるなんてね。」
「(私もびっくりしてるわよ。 偶然にもアンタが遊びにきたことに。)」
「ゆかりの気持ちはすごく嬉しい。 だけど、いきなりで正直惑っているの。
私は氷の妖精で、ゆかりは噂に聞くスキマの大妖怪でしょ?
その大妖怪に好かれているのはすごく『こうえい』なことだと思ってるよ、うん。」
「(あら、うれしいこと言ってくれるじゃない。)」
光栄とはまた子供が使わないような言葉を使ってくる。
しかも馬鹿とは思えないような喋りをしてくる。
もしかしたら紫と会話を合わせるために大人びてみせようとしているのだろうか。
そんな女の子に胸がキュンとなる。
「どうしてゆかりが私のことを好きになったのかはわからないよ。
でも、きっとゆかりもわからないんじゃないかなぁ。」
「そ、それはどうしてかしら?」
もし、自分の恋ならば好きになった理由ぐらいわかるハズだ。
物事の始まりには必ず理由があって、自分が感じるものなら尚更なのでは、と思う。
そんな疑問を抱く紫にチルノはふふんと鼻を鳴らして答える。
「恋はするんじゃなくて落ちるものなんだよ。
だから、理由なんてきっと些細なことなんだ。
大事なのはその人が好きかどうかってことなのよ。」
物事の理由を些細と言いきった。
この子の考える恋の前ではそんなにも理由は無力なものなのか。
それともただ単に考えてないだけなのか。
「(そ、それにしても・・・かっこいいこと言うじゃない。)」
紫の心はグラグラ揺れ始めていた。
チルノの言葉一つ一つが威力を持っており、なかなか流せないのだ。
それは幻想郷一の馬鹿のギャップによるものなのか、場の空気によるものかはわからない。
「だ、だからさ・・・その・・・」
「(あら、どうしたのかしら?)」
急にチルノが口ごもり始めた。
さっきは弾幕の嵐が如く話していたのに。
「わ、わた、私は・・・」
「私は?」
紫はそう言って、表情を伺おうとして覗き込んだ。
「わ、私は!!」
「ぅわっ!」
するとチルノは急にバッと顔を上げた。
そのとき目線はバッチリ合い、今まさに見つめ合った。
「わ、私はおてんば恋娘! ゆかりの恋はちゃんと私が受け止めたわよ!」
「(な!!!!???)」
チルノはやっぱりバカだ。
何がバカかと言うとこんな恥ずかしい台詞を面と向かって言えることが、だ。
しかしそんなバカも貫けばとんでもない強さにも変わる。
紫は心の中で頭を抱えていた。 今の一言で落ちかけてたのだ。
心臓もバクバクと鳴り、周りにも響いてるような感覚を覚えている。
スキマの大妖怪たる八雲紫がこの弱くて小さな妖精にここまで追い詰められるとは思ってなかった。
このまま言葉を投げかけられ続けたら確実にヤバイ。
このままチルノと一緒にいたらヤバイ。
「こ、恋を受け止めたとは・・ぐ、具体的にどういうことかしら?」
紫は意味無く言葉の意味を確かめようとしてしまう。
本当はもう言ってることは誰だってわかってる。
そこまで紫の心には余裕が無くなっていた。
「だ、だから・・・あ、あなたの好きが私に伝わって・・・
私は・・・だから・・・あなたに・・恋を・・したのょ・・・」
「つ、つまり・・・あなたは・・・」
頭で理解しても心が理解しようとしない。
今の状況が信じられない。
どうしてこんなことになったのかを考えられない。
まずい、これ以上は・・・これ以上は・・・
「・・・っだ、だから言ってるでしょ! 私もあなたが好きになったのよ!」
貫かれた。
ここまで真っ直ぐな目で好きって言われたら、逃げられやしない。
完璧にやられた。
この小さな氷精のストレートな言葉の弾に撃ち抜かれた。
「ふっ・・・」
「ゆ、ゆかり?」
「ふっふっふっ・・・あっはっはっはっ!」
「あ・・・あ、あは、あははは!」
二人は何故だか笑った。
何もおかしいことはないのに笑った。
おかしいことがないのに笑ったことがおかしいのだろうか。
二人の笑い声が部屋に響く。
「「あははははっ!」」
「あははははぁぁああああああああああああああ!!」
(ぐぱぁっ)
「え!? な、なんっ!? なんでぇぇええええぇぇぇ!?」
紫の暴走により、チルノはスキマに放り込まれてお引取りされてしまった。
どんどん言葉が小さくなり、消えた。
最後に「このままでは終わらんぞぉ」と言ったのが少々気になるが。
「な・・なに!? なんなのあの子!? わ、私を!? 私が!? なんで!?
あの子、絶対変よ! 私もなんか変だ! どうしよ! 変よ! 変なのよぉぉ! 」
チルノが消えて胸に溜めていた言葉がどんどん吐き出される。
これが初めてだったのか、なにやら思春期の少女らしくなっている。
赤くなった頬に手を当て、やんやんと頭を横に振って熱を冷まそうとした。
頑張って頭で理解しようとして、落ち着かせようとした。
しかし、感情がどんどん膨れ上がって全く落ちつこうとしない。
頭の中は混乱を極め、結局布団の中に逃げ込んで現実逃避した。
この日からしばらく紫の布団から「どうしよ、どうしよ」という言葉が聞こえた。
襖の後ろに3つの影。
「ゴクリ。 まさかこんなことになるとはね。」
「自分から仕組んでおいてよく言いますね。」
「いいえ。 確かに私たちは干渉したけれど、ここまで偶然が重なることはそうないわ。」
「つまり、これが運命であると?」
「だとしたらロマンチックじゃないかしら?」
「うわぁ・・・なんか紫様が・・・変だ。」
「変ではない。 これが恋なのよ、橙。」
「そうなの?」
「あなたにもいつかそんな日がくるわ。」
「げっ、本当? ちょっとやだな。」
「まぁ、この素晴らしさはいずれ分かるわ。 知りたければ、早く大人になりなさいな。」
「う、うん。 頑張る。」
橙は適当に返事をするしかなかった。
というよりも今のこの状況があまり理解できず、しかも主の主があの状態で困っていた。
そしてさわやか冥界組は、ただたださわやかな笑顔だった。
一方、湖に帰されたチルノはというと・・・
「いい女になる方法を教えなさい!!」
「まさか、そんな理由で門番と小悪魔を倒してここまできたの?」
「愛さえあれば弾 is OKよ!」
紫に帰されたのは、まだまだ幼いのがいけないのだと再び勘違いしたチルノ。
いい女になって戻るため、知識の宝庫へとやってきたのだ。
「・・・変な子ね。 帰ってちょうだい。」
「まぁまぁ、おもしろそうだから聞いてやろうぜ?」
魔理沙が本棚の影から現れる。
「あ、お前は三股魔法使い! なんでここにいる!? 」
「ちょっ、おまっ!!wwwwwwwww」
「なんですってぇぇぇええええ!?」
紅魔館周辺に恋とその他諸々の、諸々した嵐の旋風が、諸々巻き起こるのだった・・・。
>よい子の町星
正しくは”良い子が住んでる良い町星”じゃありませんでしたっけ? いやでもこの場合はむしろ正しいとマズい…?w
>いずらさ
居るのがつらいという意味なので”いづらさ”です
>話ていた
”し”の脱字かと
これはこれで・・・よし!
もっとやれ!
シンジラレナーイ!もっとやれ!
>「このままでは終わらんぞぉ」
ってちょっと待てぃ
この二人今後どうなるんだろう…?GJです。
ときめくゆかりんにやられました
チルゆか・・これはこれで!