Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方兎弾奏3

2007/03/23 08:01:55
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3.名医でも治せない病

「ん―――」
目が覚めると既に私の周りには数々の人形がかしずいていた。
「上海はお料理、蓬莱はお掃除。
メイド長人形はお洗濯、霊夢人形は美味しいお茶をいれて。
ミスティアは・・・小骨が多いからいいや」
寝ぼけ眼で人形達に指示を出して、
私はまた布団の中でむにゃむにゃする。
別に何か変わりがある訳では無い、ただの日常。
ただちょっとだけ、いつもと違うこともあった。

「実は、誰なのかも解らない人が好きになったみたいなの」
「ここは神社であって人外のお悩み相談所じゃないんだけど・・・・」
ずずず――
起きてから少しして、昨日の事がどうしても忘れられなくて、
誰かに聞いてもらいたくて、
きっとこういうのは何の役にも立たないのは解っているけれど、
つい知り合いの巫女のところにきてしまった。
「いいじゃない、どうせ参拝者なんて居ないし」
「決め付けないでよ・・・・まぁ居ないけど」
ずずず――
二人でお茶を啜る。
「で、その誰なのかも知らない人って誰よ」
「それが解れば苦労しないわよ」
ずずず――
お茶を飲むまでに起こる会話の途切れ。
沈黙は、別に話しにくくての事じゃなくて、
「帰れ」
「いやよもう少し暖まらせなさい」
ずずず――
単純に二人、縁側でまったりしたくて、
ゆったりと、時間が経過しているだけだった。
「ていうかさー、人間相手だったらやめときなさいよ。
生きてる年月違うんだから」
「何よそれ、別にそんなの関係ないでしょ」
恋に年の差なんて関係ないわっ
「あんたはそうだろうけどね。
そもそも相手が誰なのか解らないと話にならない」
「それはごもっとも・・・」
確かにそれは痛く感じてる。せめて名前くらい聞けば良かった。
「あっ・・・」
「どうしたの?」
大変な事を忘れてた。
「あの人・・・私の事『アリス』って呼んでた・・・」
あの時はパニくっていて全然気づかなかったけれど、
確かに私の事を名前で呼んでいた。
「ふーん・・・・じゃ知り合いじゃないの?」
「んー・・・・・でもどうだったかしら・・・
私、男の知り合いなんて思い当たらないし・・・」
精々森の入り口の変なお店の店主位。
だけどあの人はあんなにかっこ・・・
良くなかったかどうかはともかく、
少なくとも私の好みじゃない。
「昔捕食した外の世界の人とか」
「食べないわよっ!!」
大体食べたら今居る訳無いじゃない。
「折角目の前の自称七色の魔法莫迦を退治できると思ってたのに」
「自称してないわよそんなのっ!
それにその時は神社もただじゃすまないのに気づいたら?」
本当につまらなさそうに舌打ちするんだからたまらない。
ずずず――
「残念ですがその病は私では治せません。手遅れです」
「貴方の腕に掛かったらどんな病も手遅れになるわねきっと」
「餅は餅屋って言うでしょ」
「解ってるけど専門家なんて居るの?」
「紫とか結構遊んでそう」
ゴゥッ
突如風が吹き抜け
「紫様はそんな軽いお方ではないっ!!」
ゴゥッ―――あぎゃっ
間抜けな悲鳴と共に過ぎ去っていった。
「・・・・何?今の」
「さぁ。狐が玄関口で頭でも打ち付けたんでしょ」
―――聞かなかったことにしよう。
「長く生きてそうだし、輝夜とかどう?」
「うーん・・・まぁ、どうせ暇人だろうしそうしようかしら」
そろそろお茶もなくなるし。
「あら、帰るの?」
「帰って欲しくないなら残りましょうか?」
「や、意外だったから・・・早く帰れ」
しっしっ
と手を振り私を追い出す様子でその場から動こうとしていない。
まぁ、気にしないけどね・・・


「こんにちわー」
竹林の永遠亭。
初めて一人できた時はすごく迷った竹林だけれど、
魔法なのか何なのか、今は道さえ覚えれば簡単には迷わなくなっていた。
「あ・・・アリスさん。昨日はすみませんでしたっすっ」
びしっ
と、昨日の
――うどんげって言ったかしら――
兎が謝りながら出てきた。
何故か毛並みが酷くぼろぼろな気がする。
何故か全身傷だらけな気がする。
何故か首筋とかモモの辺りとかに唇のあとがある気がする。
―――うん、見なかったことにしよう。
「ええ、気にしてないわ。輝夜は居る?」
「あ、姫は今トレーニング中です」
「トレーニング・・・?」
「妹紅様と弾幕ごっこみたいです。
何か最近太っちゃったらしくて」
太ってたほうが力があって強いのに――
なんて不思議そうな顔で言う。
そりゃ、動物はそうでしょうけど。
「そ・・・ならいいわ」
きびすを返し帰ろうとする。
「あ・ら・ら~?
そんな事言わずにぃ~」
「ひっ」
何時の間にそこに居たのか、
振り返るとすぐそこに永琳が居てびっくりする。
「そ・・・そんな、ひどいわ・・・
何もそんなに不気味がらなくても・・・ひっく・・・」
「お師匠様っ、大丈夫ですっ
薬作ってる時以外はそこまで不気味じゃないですからっ!!」
「ウドンゲ・・・・二日連続で夜の鍛錬したいのね?」
「ひぃぃぃぃぃぃっ!?」
「・・・・で、何の用よ?」
びっくりしたけれど、居たのは別に普通(?)の薬師だし。
それにこの二人のやり取りを見てたらびっくりした私が間抜けに思えた。
「あ、そうそう。昨日のこの子のお詫びも兼ねて、
私の製薬でも見せて差し上げようかと」
「いらないわ」
「そ、そ、そんな事言わずに~
お土産に月の品も差し上げますからぁ~」
ごめんなさい、かなり不気味です。
「ま・・・まぁ珍しい品物なら考えるわ」
「うふふっ、A卓に一名様ご案内~」
「「よろこんで~」」
どこから現れたのか、何匹もの兎達が私を出迎えた。
(続く)
初めましての方初めまして。小悪亭・斎田という者です。
全五話の三話目です。

永琳が変なのはきっと作者本人の第一印象の所為です。
うどんげが不幸なのもきっと作者本人の第一印象の所為です。座薬なんて知りません。

次もありますのでとりあえず今回はこのくらいに、ではでは。
小悪亭・斎田
http://www.geocities.jp/b3hwexeq/mein0.html
コメント



1.名無し妖怪削除
>永淋
永琳です。
2.小悪亭・斎田削除
うぉ・・・失礼しました。間違って覚えてました。訂正しておきます。