ミルキー恋道作者: yura

「魔理沙・・・付き合って」
「Σ」

顔を赤くするアリス。
ある日訪ねてきて突然の告白。
辺りの時間が完全に止まってしまっている。
ただ台所からの夕食の揚げ物の音がやけに大きく聞こえる。
魔理沙はとても動揺した。

「（こ・・・これは・・・アリスルート直行か！？
　　今まで散々多股野郎と言われた私にもついに春が来た！！）
　わ、私なんかでいいのか？」
「魔理沙じゃなきゃ・・・ダメなの」
「（キターーーーーー！！）」

照れながら途切れ途切れに話すアリスに魔理沙の心は鷲づかみ。そろそろ握りつぶされそうである。

「それじゃあ・・・行きましょ？」
「行くって・・・何処へだ？」
「人里にあるお店なんだけど」
「なっ・・・あ、あそこはちょっと！」
「駄目・・・？」
「う・・・わかった。行こう」
「ありがとう」

「（ま、間違いない・・・！
　　私の親に会いに行くつもりだ！！
　　そして『魔理沙を私にください』だ間違いない！
　　いくら決別していようと親は親・・・！
　　幸せを伝えるのは子として当然のこと！！
　　そしてその後魔界にも行って
　　ルーミアみたいな弾撃つピンク髪やあんたはオープンテラスで紅茶でも飲んでいてくれな奴とか
　　一見仲良さそうなのにいざ戦闘になると互いを盾に使う二人組みや
　　どうでもいい曲芸メイドなんかを尻目に
　　アホ毛の創造主に・・・
　　いや、これからは神綺お母様と呼ばねば・・・！！）」

魔理沙絶好調。

だが魔理沙よ、アリスは「恋人になってほしい」なんて一言も言っちゃあいない。

霧雨百貨店。
女口調（性格は普通の男。）なオーナーが経営する「幻想郷最大級の全国チェーン百貨店」である。
ちなみに「全国チェーン」と書かれているが幻想郷に1店舗しかない。外の世界にももちろん存在しない。

「どうしたの、魔理沙？」
「い、いやちょっとな」

帽子で顔を隠しながら辺りを警戒する魔理沙。明らかに不審者である。

「（なんだ・・・買い物か。
　　そうだよな。さすがにいきなり両親は無いぜ・・・）」

内心ほっとした魔理沙。だがアリスが「ここ」と言って入った所を見て・・・

「え・・・男物の服屋・・・？」
「そうよ。」
「・・・なんで？」
「それは・・・霖之助さんがどんなのが好きなのかわからなくて・・・
　魔理沙・・・小さい頃から知ってるんでしょ？
　だったらわかるかなと思って・・・。
　・・・聞いてる、魔理沙？」
「ああ・・・褌でも作ってやれ。」
「なるほど・・・それなら一番愛情が伝わりｓ」
「香霖殺す！！」
「ひゃあぁ！？何よ魔理沙、いきなり大声出して！って何処行くの魔理沙ァー！？」

一体どれだけ走っただろうか。
それもわからないくらい魔理沙は夢中で走った。
途中毛玉につまずいて転倒してしまったところで大疾走は止まった。
汗で塗れた帽子がぱさりと地面に落ちる。
魔理沙はもう起き上がることが出来なかった。

「はぁ・・・はぁ・・・このままじゃ・・・。
　まずい・・・香霖は絶対・・・12年前の約束を覚えている・・・！」

～12年前～
「香霖！どっちが先に恋人を作るか勝負しましょう！」
「へぇ、勝ったらご褒美はもらえるのかい？」
「負けたら罰ゲーム！」
「どんな罰ゲームだい？」
「ひげダンスで幻想郷1周！！」
「・・・それは負けられないな」

「くそ・・・！私は・・・私はどうすれば・・・っ！！」
「どうしました？　こんな道の真ん中でうつ伏せになって。
　頭のてっぺんの髪が赤いですよ。ちゃんと染めてますか？」

顔を上げるとそこにはリリーホワイトが屈み込んで見ていた。

「頼む・・・。私に・・・私に春をくれ！！」

リリーホワイトと言えば春の妖精だ。
もしかしたら自分に春をくれるかも知れない！
魔理沙は必死に頼み込んだ。
そうするとリリーホワイトはにっこりとほほえみ、

「無理です。
　現実はしっかりと受け止めましょう。」