鈴仙の想い人を知るべく部屋の調査をしたが、結果が得られなくて悲しいてゐ。
仕方が無いので彼女から直接聞き出す方法を考えていた。
そんな彼女の前に一人の女が現れた。
「他人の部屋に勝手に入るのは感心しないわね。」
(ぼたっ)
「おぅっ!?」
上から何か落ちてきた・・・永琳だ!!
「っていうか・・・上から!?」
「忍は裏の裏を読めってね。」
「忍!? っていうか倒れたまま話さないでくださいよ!」
「ふっ、私の写輪眼ばりの左目で見せてもらったわ。」
「左目だけ!?」
「で、何か見つかったのかしら?」
「べ、別にアタシは何も・・・」
「ちなみに二重底の下にあったエロノートは私のよ。」
「アンタのか!!!」
「やっぱりてゐちゃんは発見したか。 ウドンゲはまだみたい。」
「遅っ! っていうか鈍っ!」
「そんなことより・・・気になるのね、鈴仙のことが。」
「!! そ、それは・・・」
いきなりのシリアスモードに戸惑うてゐ。 それでも永琳は倒れたままだが・・・。
えーりんペースで話が進む。
「でもね、あなたのその行動は非生産的でどうしようもないわ。
鈴仙が誰かが好きという結果は変わらないもの。」
そしてそれは、前編の話の7割以上を否定する言葉だった。
「・・・何が言いたいのですか?」
「ふふっ、そんなに怖い顔しちゃだめよ? 折角の顔が台無し。
つまりね・・・ウドンゲがあなたに振り向くようにしなくちゃ解決しないのよ。」
永琳の考えは非常に簡単でわかりやすいものだった。
てゐが、とびっきりかわいい格好で鈴仙に好き好きアピールをするというものだ。
これは暇つぶしだということがよくわかる。
「で、なんで私がそんなことしなきゃならんのです?」
「だって、あなたウドンゲの部屋を出たあとに『あなたの1番は誰ですか?』って。
だ・か・ら、そんな内気なあなたを私が後押ししてあげようって言ってるの。」
「余計なお世話です。 私は自分でなんとかしますから。」
「そう・・・じゃあ、あなたが取った行動を誰かに言っていいのかしら?」
「・・・私がそんな安いエロ漫画みたいな脅しにかかるとでも?
第一、事実を知ってるのはあなただけ。
他の者に言ったとして・・・エリート因幡のこの行動を信じるとでも?」
「ウドンゲ・・・だったらどうかしらね?」
「!! クッ、あなたは卑怯だ!(こんな安いエロ漫画みたいな脅しに!)」
「ふっ、これであなたは私の言うことに従わざるを得ないのよ。(うわー、安いエロ漫画ね。)」
そして安いエロ漫画の如く話が流れる・・・
少女お洒落中・・・ in 永琳の部屋
「あらぁ、かぁわいいじゃなーい。」
まず最初に着せられたのはナースの格好。 確か前に鈴仙にも着させていた。
もしかして薬師をやっているのはこの格好が好きだからじゃないかと思える。
月の煩悩恐るべし。
「じゃあ次はねー・・・」
もはや着せ替え人形扱いだ。
その後もメイド、チャイナ、体操着、中忍ジャケットなどコスプレ三昧だった。
途中で「ご主人様って言って」や「操風車三の太刀をやって」など、無茶な注文もあった。
それでもやったけど。
できたけど。
特に後者の方をやると永琳様引いてたよ。
言っておいて引くなよ。
竜火で燃やすぞ。
「(でも、これで満足してくれるならいいか。)」
そう思ったが・・・
「でね、でね、一番着せたかったのがね・・・これなのぉ!」
「もぉう! 永琳様は童心返りすぎぃ・・・・・ってぇぇえええ!!?」
「つまりこれを着て、ウドンゲのハートをゲットするのだよ!!」
「な、なんだってーー!!!?」
「ウドンゲが帰ってきたらこれを着て、出迎えてきなさい。」
「で、でも永琳様!」
「大丈夫、月の頭脳を信じなさい。 悪いようにはならないから・・・ね?」
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日が暮れる頃に鈴仙は帰ってきた。
「今日はイマイチだったなぁ。 ノルマ達成できなかったし。」
落ちていく夕日に照らされ、哀愁が漂った。
「まぁだけど、今回はおもしろいものが手に入ったから個人的にはすごくうれしんだけどね。」
竹林の中を歩いていくと大きな屋敷に辿り着く。
兎妖怪と元月の住人の住処・・・永遠亭。
「お帰りなさいませ、鈴仙様。」
永遠亭の門番が鈴仙に挨拶をする。 当然のことながら中国にあらず。
「ただいま。 お勤めご苦労様。」
「はっ!」
門を抜け、永遠亭内へ入っていく。 多くの部下達が鈴仙の帰りを迎えた。
『お帰りなさいませー!』
「うん、ただいま。」
進んでいくと向かい側から小さなシルエット。
鈴仙がいるほうよりも暗いのでよくわからないが、それでも判断できる。
「てゐちゃん、ただいま!」
「お、お帰りなさいませ、鈴仙様。」
「どうしたの、てゐちゃん? いつもの元気が・・・あっ。」
そこには鈴仙と同じ格好をしたてゐがいた。
永琳が実現させたかったのは二人のペアルック。
てゐは、肩を震わせた永琳から「二人で私の部屋に来るように。」という指示も受けていた。
身の危険を感じます。
「は、はは、どうですか?(はずい!はずいって!)」
「てゐちゃん・・・」
「あ、う、ごめんなさい。(やっぱりダメだよね。)」
「すごく似合ってるよ! かわいいね!」
「え、え? あ、ありがとうございます。(鈴仙様にかわいいって言われた・・・)」
「ところで、てゐちゃんは今手は空いてる?」
「え、えぇ、一応。(あ、格好についてはもうつっこまないのね。)」
ホッとしたけど、ちょっと残念なてゐだった。
「じゃあちょっと私の部屋に来なさい。」
「は、はい。(あ、あれ、ひょっとして怒ってる!?)」
笑顔が逆に怖いと感じられた。
少女対談中・・・ in 鈴仙の部屋
「てゐちゃん、お茶いる?」
「あ、じゃあいただきます。」
ちょっと前にも入った鈴仙の部屋。
しかし部屋の主がいるかいないかで部屋の中も雰囲気が変わったようだった。
実際はてゐの前に鈴仙がいることによって変わったように見えるだけだが。
「でね、こっからは二人だけの秘密だよ?」
「秘密?(え、え、秘密ってなに!? 何する気!?)」
期待と興奮ができる限り表情に出ないように隠す。
長年の腹黒キャラのポーカーフェイスは伊達じゃない。
「なんか顔赤いけど、大丈夫?」
隠しきれてなかった。
「だ、大丈夫です。 さっきまで仕事してたので暑くて暑くて。」
「そう。 今日薬を買った常連さんからこんなのをいただいたの。」
鈴仙は白い包み紙を取り出して、包みを開く。
見てみるとそこには小さなクッキーが数個あった。
「おいしそうなクッキーですね。」
「ふふっ、評判ではあるけど味は普通のクッキーだよ。」
「味は? じゃあ別の理由で評判ということですか。」
「そう。 これはね、恋の占いができるの。」
楽しそうに話す鈴仙だが、てゐのは胸のあたりが苦しくなった。
永琳から「知っても意味がない」と言われたものの、やはり鈴仙の好きな人が気になるのだ。
「こ、恋の占いですか・・・どのように?」
「これはね、クッキーを割ったときに左右が同じ大きさだったら両想いになるんだって。」
「大きさが違えば片想いってことですか。」
「そういうこと。 ね、おもしろいでしょ?
まぁ占いなんてあまり信じる方じゃないけど、これで少しでも勇気が出たらいいなって思うの。」
「勇気?」
「うん、好きな人に想いを伝える勇気・・・だから秘密なんだからね。
でね、てゐちゃんと一緒にやろうと思ってね。
こういうのは誰かとやったほうがおもしろいでしょ?
はい、コレあげるから。」
クッキーをてゐに手渡す鈴仙。 この時てゐは不安に包まれていた。
鈴仙は占いなんてと言っていたが、幻想郷では大きな意味がある。
科学を捨て、非現実を得た世界・・・幻想郷。
人の想いが具現化しやすく、ある意味では怖い世界である。
つまりこのクッキーが鈴仙が勝手に「占いができる」と言い始めたのでは意味がないが、
多くの人の意思が「占いができる」と判断した場合、占いが実現されるのだ。
それもその人の望んだ近いカタチで、である。
月出身である鈴仙はまだこのことを知らないのであるが。
「(もし、鈴仙様のクッキーが左右同じだったら・・・私の想いはずっと伝わらないのかな。)」
そんな気がして怖かった。
「じゃあ割ってみるね。 左右が同じになりますように!」
(ぱきっ)
結果は・・・
「あぁぁ・・・」
「あぁ・・・真っ二つだ! やったー!」
占いを信じないと言っていたのに鈴仙は喜んでいた。
自分にうれしい結果だったので、まぁ当然といえば当然かもしれないが。
「・・・・・」
そしててゐはそれを見て複雑な気持ちになっていた。
占いの結果が出たということは、少なくともかなりの確率で鈴仙と相手が両想いだからである。
「じゃあ、てゐちゃんもやってみなよ!
てゐちゃんもきっと真っ二つになるんじゃないかなぁ!」
なんでそんな無責任なことを言うのか。
私の気持ちも知らないくせに、なんでそんなことが言えるのか。
今手の中にあるクッキーがとても硬くて重たかった。
目から込み上げてくる熱いものを必死に抑えようとした。
「・・・うっ・・うっ・・ひっく・・」
でも堪えきれなかった。
今ある現実を認めたくなくて。
鈴仙がどこかに行ってしまう気がして。
クッキーを割った結果が自分を殺してしまう気がして。
「てゐ・・ちゃん・・・?」
「うっ・・・ひっく・・・」
「・・・・てゐちゃん・・ほら・・・」
そう言って、泣いているてゐの手を開いてクッキーを両手で持たせる。
「ぇ? れ、鈴仙様?」
「いい? 割るよ?」
「ちょっ、だ・・・」
(ぱきっ)
「ずっと前から好きだったよ。」
「うっ、うっ、うぁぁあぁん!」
鈴仙の胸に飛び込んで泣くてゐ。
目から零れるものは悲しみから喜びへと変わっていた。
家族のように暮らしてはいても、本当の気持ちを伝えることがなかなかできなかった。
いや、むしろ家族のようにだからこそ不安だったのだ。
本当の気持ちを伝えればそこで二人の関係に隔たりができてしまうという恐怖があったからだ。
でも、クッキーによって二人の気持ちが繋がっていることを確かめることができた。
分かれていたと思われた想いはしっかりと一つになっていた。
「鈴仙様、私も大好きです。 ずっと離さないでください。」
「大丈夫・・・絶対離さないよ。」
これからも二人は一つであり続ける。
舞台の裏側
「ねぇ、永琳。」
「なんでしょう、姫?」
「因幡にあんな格好させる必要ってあったのかしら?」
「いえ、私が見たかっただけです。」
「ねぇ、永琳。」
「なんでしょう、姫?」
「因幡も恋をするのね。」
「しますね。」
「それにしても本当に世話が焼けるわねぇ。」
「えぇ、本当に焼けてますね。(あなたが)」
「まぁでも、うまくいってくれてよかったわね。 熱いわねぇ。」
「えぇ、本当に熱かったでしょうね。(あなたが)」
「でも、永琳は始めからわかっていたのかしら。 両想いだってことが。」
「まぁ普段の二人を見ていればわかりますよ。 本当にわかりやすい。」
「で、半分に割れやすいクッキーを作って、慧音に協力してもらって、鈴仙に渡したのね。」
「まぁ弟子のためですから。」
「ねぇ、永琳。」
「なんでしょう、姫?」
「私にもクッキー作って。」
「・・・・ダメです。」
「なんで!?」
「あなたのためです。」
永琳には言えなかった。
慧音にも同じクッキーをあげて、妹紅とうまくいっているなんて。
>かなりの確立で これは確率ですね。