弾幕ごっこは難しく、そして奥が深いと紅美鈴は思う
相手の弾幕を避け、こちらの弾を相手に当てる
そして切り札にスペルカード
たったそれだけの事なのに、いざやってみると難しい
たった一つの弾を避けるにしても右か左か、それはどれくらいの幅で避けるかの、どれくらい近づいたら避けるのか
前に出てその弾へと近づいた後に避ける事も出来れば、その弾から逃げるように後ろへと下がり避ける事も出来る
そんな風に考え、避けて、なおかつ自分でも相手に向かって弾を撃たなければならないのだ
時々やって来る、近くの湖によくいる氷精との相手ならば勝てる
避けるのが下手だったりあんまり考えずにスペルカードを使ったりするからだとも言えるが、純粋に耐久力の差であった
撃ち合いになり、どちらも同じ程度の弾幕を放ち、どちらも同じ程度の弾をその身に受ける
さらに稀だが館へと侵入し、主を害さんと殺気を撒き散らす物騒な侵入者にも勝てる
避けるのが上手な侵入者もいればスペルカードを持っている侵入者もいたが、純粋に攻撃力の差であった
侵入者は弾幕を放つ者も武器を持っている者も、近づいた美鈴の拳や蹴りをその身に受ける
そんな美鈴の前に現れたのが、巫女と魔法使い
人間である博麗霊夢と霧雨魔理沙の二人だった
元より博麗の巫女を止めるなんて考えは無く、殺気も害する気もない魔法使いを殴る気にもなれず
けれども一応門番であるからと言って弾幕を使い立ちふさがって見れば、見事なまでに惨敗
まずこちらの放つ弾幕がかすりもしない、かすったかと思えばグレイズしていて当たっていない
次に相手の撃つ弾が避けれない、避けた先には弾がありそれを避ければさらに弾がありそれを避ければと繰り返して結局は当たる
止めのスペルカードも笑えるほどに強力で、自分の放ったスペルカードは蹴散らされたり貫き通されたり
その後は主であるレミリア・スカーレット様やその妹君であるフランドール・スカーレット様をも倒したとか
勝てるわけが無かったのだと、ちょっと焦げ気味の自分を慰めてもうこんな事は滅多に無いだろうと安心していたのだ
図書館を訪れるべく、霧雨魔理沙が現れるまでは
図書館の入り口を紅魔館の門の外に繋げて設置して欲しいと切に思いつつ美鈴は今日も焦げながら、見回りと本人は言うけれども実は暇潰しなのではないかと美鈴が思う十六夜咲夜の説教を受けていた
それは説教と言うよりもアドバイスに近く、あの弾幕はこう避けるべきだとかスペルカードはこう使った方が良いと言う内容である
実際そんなアドバイスが出来る=美鈴が苦労していた場面を主と一緒に観戦していた、となるのだが美鈴は気付かなかった
「うぅ、ちょっとは上達している筈なんですけど」
「本当にちょっとじゃないの。相手だって腕を上げてるんだから差は開くばかりだわ」
「・・・パチュリー様に、本は100年後ぐらいに回収しましょうと言って置いてください」
「魔理沙の職業・魔法使いが、種族・魔法使いになったらブチ切れそうな意見ね」
本が全部持って行かれた時、果たして紅魔館の奥深くにある空の本棚が並ぶ大きな部屋と膨大な本が所狭しと置かれている一軒家はどちらが図書館と呼ばれるべきなのか
「それにしたって変ね、私の予想だともっと避けきれるはずなんだけど」
そう言って、咲夜は美鈴にナイフを投げる
投げられたナイフが額に突き刺さり情けない悲鳴を上げようとして美鈴は、左足を軸足として右足で地面を蹴り時計の針のようにぐるりと4分の一回転
すると美鈴が先ほどまでいた場所を鋭い光、咲夜の振り下ろした左手に持つナイフが通り過ぎた
美鈴がそれに対して疑問の声を上げる前に咲夜は右手のナイフを美鈴の顔へと真っすぐに突く、美鈴の視点からでは見る事は出来ないが咲夜の眼は紅く光っていたりする
そして美鈴がそのナイフを避ける為に首を横へと振ったと同時に、咲夜はくるりと手首を回し突き出した筈のナイフを逆手に持ち振り下ろした
しかし振り下ろした場所に美鈴は既に居らず、咲夜が振り下ろす勢いで回転し背後に蹴り上げた左足の踵を避けて距離をとろうとし、投げられたナイフが側頭部に突き刺さって倒れる
「ひ、酷い」
「斬ったり蹴ったりはそうやって避けれるのに、何でこう投げたナイフが突き刺さるのかしら? 」
「格闘は得意ですからー」
「それよ! 」
「ナイフですか? 」
さらにもう一本のナイフが、ついさっきナイフを抜いたばかりの額へと正確に突き刺さる
咲夜の説明は分かりやすく簡単だった
『相手の撃つ弾を、相手の打つ拳と思えば良いのよ』
無茶苦茶である
大体そこまで手が伸びる人間なんていと思うけれど、いないと言い切れないのが幻想郷のつらいところだ
ヨガー
「弾は拳、弾は蹴り、弾は拳、弾は蹴り、拳は弾、蹴りは弾」
そんな訳でパチュリー・ノーレッジ経由の怪しい催眠香なんて借りてまで自己暗示、だんだんと自分の手が普段放つ弾幕のように様々な色がついて見えて気持ち悪くなる
まわりへと視線を移せば、ベッドのシーツが青かったり窓から見える太陽が黄色かったり空が赤かったり世界はなんだかカラフルになっていたと言うか狂っていた
「・・・・・・・うん、とりあえず門番しよう」
まるで異世界に迷い込んだようだった
青いメイド達に橙色の紅魔館、赤い湖など血の池にしか見ないのに清涼感が漂っていて逆に怖い
食事時は、見る勇気が持てずに目を瞑って食べたと言うか既に耐え切れず現在目隠し中
メイド達には気配を深く読む修行中と説明したが、ひそひそとメイド達が囁く声には『目隠しプレイ』だとか『新たな属性』だとか『調教』等と意味の分らない単語が聞こえて普通に身の危険を感じた
初めて、普段やってこないで欲しいと思っていた霧雨魔理沙の到来が待ち遠しいと思う日だったが無情にもその日は来なかった
けれどもその夜、十六夜咲夜が(略
そうして次の日、待ち望んでいた霧雨魔理沙はやって来た
「・・・・・・・なぁ中国。誰に言われたかは知らないが、私の経験では心の目で見ても弾幕は避けきれない事が判明しているぞ? 」
「誰もしませんよ、そんな馬鹿みたいな事」
「おいおい、普段の『中国じゃありません』ってお約束の前口上はどうしたんだ? 」
「大体、ちょっと考えれば心に目があるわけ無いなんて馬鹿でも分かります」
目隠しをしている美鈴は見る事は出来ないが、魔理沙の口元が少し引き攣る
ちなみにこの美鈴、普通に思った事を言っているだけで他意は無い
弾幕ごっこの始まりは魔理沙の割と本気で放った弾幕と、美鈴が目隠しを外す事で始まりを告げた
美鈴の眼に映ったのは、拳と蹴りの群れ
それらの隙間を、普段の弾幕ごっこのように避けようとして気がつけば体が勝手に避けていた
避ける避ける避ける
体が勝手に動いて避ける、それはまるで格闘の時のように
避けて避けて避けきれて
弾幕のつもりだった美鈴の意識は切り替わる
構えが変わる
目つきが変わる
雰囲気が変わる
口元に笑みが浮かぶ
こんなに遅く、真っ直ぐな拳に当たる筈もない
手の届かない範囲で避けて、次は手の届く範囲で避けて、次はもっと近くで避けて、次はもっともっと近くで避けて
チッチッチッと言う何かが擦れる音が飛んでくる拳を避けると聞こえる、それが楽しくて私は前に出た
チッチッチッチッチッ、半円を描くように今度は蹴りが来たけれどこれも簡単に避けれる
チッチッチッチッチッチッチッチッ、前だけではなく上下左右に後ろからも拳や蹴りが飛んで来るけどこんなものなら目を瞑っても避けきれる
チチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチ、避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて
「マスタースパーク! 」
今日は緑と青の魔理沙が、まるで巨人のような拳を放ち
「彩光乱舞」
その拳をいなす様に放った彩符で、くるくると舞いながら巨人の拳をそらした己の姿を見た
「それで、途中で自己暗示が解けて負けたと」
「うぅ、今日は勝てそうな勢いだったのに~」
所詮は付け焼刃の自己暗示だった
しかも変に残っていたのか後遺症なのか、メイド服がちらちらと青く見えたり
「で、次は勝てそう? 」
そんな咲夜の問いに
「はい! がんばります! 」
美鈴は笑顔で答えたのであった
相手の弾幕を避け、こちらの弾を相手に当てる
そして切り札にスペルカード
たったそれだけの事なのに、いざやってみると難しい
たった一つの弾を避けるにしても右か左か、それはどれくらいの幅で避けるかの、どれくらい近づいたら避けるのか
前に出てその弾へと近づいた後に避ける事も出来れば、その弾から逃げるように後ろへと下がり避ける事も出来る
そんな風に考え、避けて、なおかつ自分でも相手に向かって弾を撃たなければならないのだ
時々やって来る、近くの湖によくいる氷精との相手ならば勝てる
避けるのが下手だったりあんまり考えずにスペルカードを使ったりするからだとも言えるが、純粋に耐久力の差であった
撃ち合いになり、どちらも同じ程度の弾幕を放ち、どちらも同じ程度の弾をその身に受ける
さらに稀だが館へと侵入し、主を害さんと殺気を撒き散らす物騒な侵入者にも勝てる
避けるのが上手な侵入者もいればスペルカードを持っている侵入者もいたが、純粋に攻撃力の差であった
侵入者は弾幕を放つ者も武器を持っている者も、近づいた美鈴の拳や蹴りをその身に受ける
そんな美鈴の前に現れたのが、巫女と魔法使い
人間である博麗霊夢と霧雨魔理沙の二人だった
元より博麗の巫女を止めるなんて考えは無く、殺気も害する気もない魔法使いを殴る気にもなれず
けれども一応門番であるからと言って弾幕を使い立ちふさがって見れば、見事なまでに惨敗
まずこちらの放つ弾幕がかすりもしない、かすったかと思えばグレイズしていて当たっていない
次に相手の撃つ弾が避けれない、避けた先には弾がありそれを避ければさらに弾がありそれを避ければと繰り返して結局は当たる
止めのスペルカードも笑えるほどに強力で、自分の放ったスペルカードは蹴散らされたり貫き通されたり
その後は主であるレミリア・スカーレット様やその妹君であるフランドール・スカーレット様をも倒したとか
勝てるわけが無かったのだと、ちょっと焦げ気味の自分を慰めてもうこんな事は滅多に無いだろうと安心していたのだ
図書館を訪れるべく、霧雨魔理沙が現れるまでは
図書館の入り口を紅魔館の門の外に繋げて設置して欲しいと切に思いつつ美鈴は今日も焦げながら、見回りと本人は言うけれども実は暇潰しなのではないかと美鈴が思う十六夜咲夜の説教を受けていた
それは説教と言うよりもアドバイスに近く、あの弾幕はこう避けるべきだとかスペルカードはこう使った方が良いと言う内容である
実際そんなアドバイスが出来る=美鈴が苦労していた場面を主と一緒に観戦していた、となるのだが美鈴は気付かなかった
「うぅ、ちょっとは上達している筈なんですけど」
「本当にちょっとじゃないの。相手だって腕を上げてるんだから差は開くばかりだわ」
「・・・パチュリー様に、本は100年後ぐらいに回収しましょうと言って置いてください」
「魔理沙の職業・魔法使いが、種族・魔法使いになったらブチ切れそうな意見ね」
本が全部持って行かれた時、果たして紅魔館の奥深くにある空の本棚が並ぶ大きな部屋と膨大な本が所狭しと置かれている一軒家はどちらが図書館と呼ばれるべきなのか
「それにしたって変ね、私の予想だともっと避けきれるはずなんだけど」
そう言って、咲夜は美鈴にナイフを投げる
投げられたナイフが額に突き刺さり情けない悲鳴を上げようとして美鈴は、左足を軸足として右足で地面を蹴り時計の針のようにぐるりと4分の一回転
すると美鈴が先ほどまでいた場所を鋭い光、咲夜の振り下ろした左手に持つナイフが通り過ぎた
美鈴がそれに対して疑問の声を上げる前に咲夜は右手のナイフを美鈴の顔へと真っすぐに突く、美鈴の視点からでは見る事は出来ないが咲夜の眼は紅く光っていたりする
そして美鈴がそのナイフを避ける為に首を横へと振ったと同時に、咲夜はくるりと手首を回し突き出した筈のナイフを逆手に持ち振り下ろした
しかし振り下ろした場所に美鈴は既に居らず、咲夜が振り下ろす勢いで回転し背後に蹴り上げた左足の踵を避けて距離をとろうとし、投げられたナイフが側頭部に突き刺さって倒れる
「ひ、酷い」
「斬ったり蹴ったりはそうやって避けれるのに、何でこう投げたナイフが突き刺さるのかしら? 」
「格闘は得意ですからー」
「それよ! 」
「ナイフですか? 」
さらにもう一本のナイフが、ついさっきナイフを抜いたばかりの額へと正確に突き刺さる
咲夜の説明は分かりやすく簡単だった
『相手の撃つ弾を、相手の打つ拳と思えば良いのよ』
無茶苦茶である
大体そこまで手が伸びる人間なんていと思うけれど、いないと言い切れないのが幻想郷のつらいところだ
ヨガー
「弾は拳、弾は蹴り、弾は拳、弾は蹴り、拳は弾、蹴りは弾」
そんな訳でパチュリー・ノーレッジ経由の怪しい催眠香なんて借りてまで自己暗示、だんだんと自分の手が普段放つ弾幕のように様々な色がついて見えて気持ち悪くなる
まわりへと視線を移せば、ベッドのシーツが青かったり窓から見える太陽が黄色かったり空が赤かったり世界はなんだかカラフルになっていたと言うか狂っていた
「・・・・・・・うん、とりあえず門番しよう」
まるで異世界に迷い込んだようだった
青いメイド達に橙色の紅魔館、赤い湖など血の池にしか見ないのに清涼感が漂っていて逆に怖い
食事時は、見る勇気が持てずに目を瞑って食べたと言うか既に耐え切れず現在目隠し中
メイド達には気配を深く読む修行中と説明したが、ひそひそとメイド達が囁く声には『目隠しプレイ』だとか『新たな属性』だとか『調教』等と意味の分らない単語が聞こえて普通に身の危険を感じた
初めて、普段やってこないで欲しいと思っていた霧雨魔理沙の到来が待ち遠しいと思う日だったが無情にもその日は来なかった
けれどもその夜、十六夜咲夜が(略
そうして次の日、待ち望んでいた霧雨魔理沙はやって来た
「・・・・・・・なぁ中国。誰に言われたかは知らないが、私の経験では心の目で見ても弾幕は避けきれない事が判明しているぞ? 」
「誰もしませんよ、そんな馬鹿みたいな事」
「おいおい、普段の『中国じゃありません』ってお約束の前口上はどうしたんだ? 」
「大体、ちょっと考えれば心に目があるわけ無いなんて馬鹿でも分かります」
目隠しをしている美鈴は見る事は出来ないが、魔理沙の口元が少し引き攣る
ちなみにこの美鈴、普通に思った事を言っているだけで他意は無い
弾幕ごっこの始まりは魔理沙の割と本気で放った弾幕と、美鈴が目隠しを外す事で始まりを告げた
美鈴の眼に映ったのは、拳と蹴りの群れ
それらの隙間を、普段の弾幕ごっこのように避けようとして気がつけば体が勝手に避けていた
避ける避ける避ける
体が勝手に動いて避ける、それはまるで格闘の時のように
避けて避けて避けきれて
弾幕のつもりだった美鈴の意識は切り替わる
構えが変わる
目つきが変わる
雰囲気が変わる
口元に笑みが浮かぶ
こんなに遅く、真っ直ぐな拳に当たる筈もない
手の届かない範囲で避けて、次は手の届く範囲で避けて、次はもっと近くで避けて、次はもっともっと近くで避けて
チッチッチッと言う何かが擦れる音が飛んでくる拳を避けると聞こえる、それが楽しくて私は前に出た
チッチッチッチッチッ、半円を描くように今度は蹴りが来たけれどこれも簡単に避けれる
チッチッチッチッチッチッチッチッ、前だけではなく上下左右に後ろからも拳や蹴りが飛んで来るけどこんなものなら目を瞑っても避けきれる
チチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチ、避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて
「マスタースパーク! 」
今日は緑と青の魔理沙が、まるで巨人のような拳を放ち
「彩光乱舞」
その拳をいなす様に放った彩符で、くるくると舞いながら巨人の拳をそらした己の姿を見た
「それで、途中で自己暗示が解けて負けたと」
「うぅ、今日は勝てそうな勢いだったのに~」
所詮は付け焼刃の自己暗示だった
しかも変に残っていたのか後遺症なのか、メイド服がちらちらと青く見えたり
「で、次は勝てそう? 」
そんな咲夜の問いに
「はい! がんばります! 」
美鈴は笑顔で答えたのであった
を詳しくかいてくれ
俺の予想では目隠しプレイを(略
何気にすっげーキショい表現です。想像して鳥肌モノでした。お見事です。