Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

霊夢の特別な時間

2007/03/03 18:49:46
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幻想郷の境にある博麗神社、その境内で霊夢が夕焼けに染まる空を少し疲れた顔で見上げている。

「………………………………」

霊夢が見上げている間に、段々と夕焼けの茜色から夜の闇色に変わっていく。
今日は新月なのか、空には月は無く他に光源となる物も無く神社の周囲は暗闇に閉ざされた。
ちらほらと瞬く星以外闇に閉ざされた空を見上げ霊夢は……

「………………………ツ………」

口の端を吊り上げ暗い笑みを浮かべた。
しばらくそのまま月の無い星空を見上げていたが、星が一つ流れたのを見て踵を返した。





数分後、霊夢は暗い笑みを浮かべたまま目を瞑り、炬燵を置いてある居間にいた。
何故か炬燵に座るでもなく、両手に玉串を持ち佇んでいる。

「……………チ………ッ…………」

やがて片方の玉串を持った手をゆっくりと頭上に持ち上げ、もう片方を腰から横に水平に離し構えを取る。
足を肩幅に開き、目は瞑ったまま霊夢は何事かを呟いている。

「……私……苦労……し悩…………嫌…………」

奇妙な構えを取ったまま暫く呟き続け、やがて一つ深呼吸をすると閉じていた目を開き叫び声を上げた。

「博麗霊夢式ストレス発散法!! 其の弐百五拾五『身体を動かし大声を出せばスッキリするよ』!!」

意味不明なことを叫び、霊夢は玉串を振りながら狂ったように踊り始めた。
その踊りは、テンポもリズムも関係無しに玉串を振りまくり足を残像が見えるほどのスピードで蹴り上げ、時には宙返りをしながら足と玉串を同時に回転させヘリコプターの様に空を飛んだりもした。 もう無茶苦茶だった。
それだけでも正気を疑いそうになるのに、霊夢は踊っている最中「キエエエェェーーーッ!!」だの「ヒヤァァァァァーーーーーーーッ!!!!!」だの叫び声を上げている。
もはや飄々としながらもどこか泰然としたいつもの霊夢の面影は何処にも残っていない。
霊夢は、暫くその奇怪な踊りを舞い続けた。
やがて踊り始めて十分程経過した頃か、踊りと叫び声に変化が現れ始めた。
叫び声は歌と化し、踊りはリズムに乗り、緩やかにテンポ良く舞い始めた。

「レイレイレイ♪レレレイレイレイ♪レイムのレイはレイのレイ~♪」

意味不明なのは変わりなかったが……
その後も霊夢は、三十分程狂乱じみた踊りを続けた。 無論珍妙な歌も一時も休む事無く歌い続けている。
流石に疲れたのか足元が少しふらついている。 霊夢はそろそろ限界と思い目を瞑り両手と左足を頭上まで持ち上げクルクルと右足を軸に回転を始めた、この回転が止まった時『博麗霊夢式ストレス発散法 其の弐百五拾五』は終わりを告げる。
やがて回転は段々と勢いを無くし、歌の方も終わりを告げた。

「レイムはカ~ワイイミィコサン♪レイムはステキナヒロイン~~♪ハ・ク・レ・イ……レィイムゥゥ~~ゥ!!!!」 ピタッ

パシャッ

霊夢の回転が止まった瞬間、カメラのシャッター音が響き、そのカメラのフラッシュと思われる光が霊夢を襲った。

「なっ!!?」

霊夢は驚き、瞑っていた目を見開いた。
するとそこには、カメラを構えた姿で固まっている鴉天狗の新聞記者『射命丸 文』と、手に持つ扇子で口元を隠し目を限界まで見開いて凝固しているスキマ妖怪の幻想郷一の覗き魔『八雲 紫』、この性質の悪い二人が中空に開けたスキマから上半身だけ出して呆然と立ち尽くしている。

「あ……あんた達……何時からソコに……?」
「「い……いや……その……」」

霊夢が両手と左足を上げた状態のまま詰問するが、二人は霊夢のあまりの惨状を目にした為か視線も合わせる事が出来ず答える事ができない。

「正直に答えろ!!!!」
「「は、はい!! 『私だって苦労しているし悩みだって……』って所からです!」」

(ほ、ほとんど最初から……わ、私の秘密の(注:恥かしいから)ストレス発散法を……今まで生きてきた十数年間誰にも、魔理沙にも話した事も無いのに……)

霊夢の恫喝に、文と紫の二人は姿勢を正し声をそろえて答える。
それを聞き、霊夢は頭を抱え恥かしいからか床を右へ左へ転げ廻る。

(は、恥かしい!!!!! いっその事、誰か殺して!!)

霊夢は起き上がり、柱に頭をぶつけ始めた。 それも何回も何回も……

(大体なんであの二人が一緒に、しかもこんな時にスキマから現れるのよ!!?)

柱にぶつけた事で額が割れ血が吹き出すが、それに気づく事も無く柱に頭を押し付ける。 柱が霊夢から垂れる血で赤く、紅く染まる。
ちなみに文と紫が一緒にスキマから覗いていた訳は、文のネタ探しを紫が暇だったので、趣味(覗き)と実益(一ネタで酒瓶一つ)を兼ねて手伝っていただけである。

(よりによってあの二人に知られちゃうなんて、このままじゃあ明日にはあの痴態が幻想郷中に広まるわよね……そんな事になったら今まで築いてきた私の高潔で神聖なイメージが……)

一体この幻想郷の何処にそんな根も葉もないイメージを持った無知な世間知らずがいるのか不明だが、霊夢は高潔で神聖なイメージが自分にあると信じ込んでいるようだ。

(そ、それだけは何とか防がなくちゃ、ただでさえ少ない御賽銭が……こうなったらあの二人をここで亡き者に……)

霊夢は柱に額を押し付けている格好のままそんな考えに至り、両の目を大きく開き二人のいる方向に勢いよく振向いた。
その際に額からの出血で部屋の中を赤く染めると思われたが、どうやら柱に押し付けていたのが止血になったのか既に出血は止まっていた。 ただ着ている巫女装束は赤く血の色に染まり、その顔も額から流れた血の跡で凄惨な状態になっていた。 小さな子にはとても見せられない有様だ。

「あんた達!! 悪いけど地獄に……って、あれ?」

二人を滅っしようと目を怪しく光らせ戦闘態勢を取ろうとするが、振向いた先には既に文も紫もスキマさえ存在していない。
霊夢が辺りを見回すと、炬燵の上に見覚えの無い紙切れと御結びの載った皿と親指より少し大きい位の黒っぽい筒が置いてあった。

「何これ? ん? 何か書いてあるわね。 手紙?」

紙には短めの文章が書いてあり、その内容はどうやら霊夢宛の手紙のようだ。
その手紙には、



博麗 霊夢 様 へ 射命丸 文 八雲 紫 より

すいませんごめんなさいあやまります見た事は全力で忘れますカメラのフィルムは置いていきますどうか処分してください許してください。
           PS お腹が空きすぎると頭が変になりますよね今度からは食べ物が無くなったのなら相談してください



と書かれてあった。

「…………………………」

先程まで行われていた歌と踊りは、単に霊夢がストレス発散の為に定期的に行っている『運動』だったのだが……どうやら文と紫は霊夢のあまりの姿に勘違いをして『空腹になりすぎて気が狂った』と思われたらしい。 ……無理も無い

(……無理に始末するより、このまま無かった事にする方が後腐れないかしら……でも)

霊夢は手紙を破り捨て、フィルムと思われる筒を握り潰した。

「……そりゃぁ変な噂をばら撒かれるよりかマシだけど……素面であんな事をしていたと思われるよりマシだけど……」

そう呟きながら、霊夢は炬燵に裸足の足を入れ、御結びを手に取り、涙が混じった叫びを上げ、勢い良く齧りついた。

「ムシャ、何か胸の辺りがモグ、スッキリしないよぅ~~~ゴックン、おいしいよぉ~殺したいよぅ~忘れてしまいたいよぉ~うわぁぁああぁん!!!」

霊夢は、御結びを食べながら叫び続けた。
その後、霊夢は日付が変わり朝日が昇るまでそのまま泣き声を上げ続け、やがて泣き疲れて深い眠りについた。





ストレスが溜まった時に、お腹の底から大声出すとスッキリするよ。
リモコン
コメント



1.名無し妖怪削除
博麗霊夢式と書いてあるけど、実はリモコン氏式だったりしませんか?w

>周囲はは
>発散方!!
>射名丸(射命丸、二箇所)
>発散方を…
誤字?です。