Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

図書館小話~じめじめの原因は?~

2007/03/02 14:38:06
最終更新
サイズ
7.38KB
ページ数
1
 この世に存在するものには、大体のものに天敵というものが存在する。それは、本の場合にも言えるのだ。
 例えば、大体のものが紙でできている本は、基本的に火や水には非常に弱い。
 もっとも、我が図書館においては、全属性に対応する、非常に強力な魔法障壁を持つ本棚により、マスタースパーク級の攻撃ならばはじき返せるし、火符、水符も問題なく運用できるように、図書館全体に完全なる防火防水対策がなされていたのだけど、一つだけ苦手なものがあった。
 全ての魔法障壁を透過し、本棚による防御をいともたやすく突破する無形の強敵、それは湿気と、その使者たるカビである。





「パチュリーさま、またです!また本にカビがっ!!」
 静かな館内に、点検と掃除をさせていた小悪魔の声が響き渡る。もう…あれほど図書館内では叫ばないように注意していたというのに…
「…今行くわ」
 私は、読みかけの本を机に置くと立ち上がった。



「…これはまたひどいわね」
 ため息をついて私は言った。
 T-34区画にある本棚、その最下段にあった本が壊滅的な打撃を受けていた。貴重書があまり含まれていないため、巡回する回数が少なかったのもまた原因の一つだろう。
「ええ、もうこの区域でやられたのは76冊…あわわ、上段までっ!?ひのふの…9冊で…しめて85冊もやられました~」
 小悪魔は、下段の本を次々と引き出しながら情けない声を出す。
「はぁ」
 小悪魔の声に、私はため息で応じた。貴重書が少ないとはいえ、本を愛し、その力を借りる私にとっては、蔵書をカビにやられるなどとは屈辱以外の何ものでもなかった。
 たびたび襲来し、貴重書ばかりを強奪していく黒い悪魔にも困ったものだけど、本を本として奪われていくだけまだ救いがあった。
 何の思考もない湿気に、無意味にその存在を傷つけられ、下手したら失いかねないという事態…なんたることか。
 まして、数でいけば黒い悪魔による被害よりも、湿気による損害の方が格段に多いのである。
「…小悪魔、被害に遭った本は速やかに移動、乾かすのよ」
「了解です、パチュリーさま」
 しかし悩んでもいられない、私は本の被害を最低限に留めるべく、善後策を講じた。





「これで三日連続ね」
 私はため息と同時に言葉をはき出す。
 本を取り出し、なし得る最大限の努力を行った後、私と小悪魔はお茶会兼会議を開き、湿気に対する防御計画を検討していた。
「…最近とみに湿気が多い気がするのですよ」
「そうなの?」
 やはりため息混じりに返された小悪魔の言葉に、私は問い返す。湿気による被害が増加しているということは、確かにそれは増加しているのだろうけど…
「はい、それはもうじめっと湿度100%なパチュリーさまと同じ位湿っておりまして、本以外にも各所にカビさんが大発生なさっておられるのですよ。私としましては、いつかパチュリーさまが座ったまんまカビの固まりにならないかどうか危惧している次第なのです。ほら、私みたいな明るくひまわり満開な素敵美少女と違って、パチュリーさまは陰湿根暗な密室少女なわけですし、服は服でカビがはえようがはえなかろうがわかったようなものじゃないわけで。最初はパチュリーさまが湿気の原因であると思っていて、それは間違いなく事実なわけなのですが、パチュリーさまは前から置いてあるわけですから、最近急増した原因とは思えないのですよ」
「…お菓子は没収ね」
「あ、いえいえ間違いでした。明るく優しくこれ以上ない素敵なご主人さまにあられるパチュリーさまには似合わない位の湿り具合でして、そのまさしくパチュリーさまの為に作られたような美しい服に、水と油ほどにも似合わないカビなどという俗物が付着するのを、パチュリーさまに負けずとも劣らない美しさを持つ私は非常に心配しているわけで…ってちょっと!人が心にもないほめ言葉を必死に笑いをこらえながら紡いでおりますのに、なんでお菓子をこともなげに口にしてるんですかっ!わ…わ…待って!!冗談です、ほんの0.1%ほど冗談ですからその口を止めて下さいっ!!あ…最後の…最後のクッキーっ!!」
 実に忠実な僕が伸ばす手を振り払いながら、最後のクッキーを食した私は、話を元に戻す。
「で、こうなった原因はなんなの?」
「うう…クッキー…」
「だから原因がはなんなのよ?」
「パチュリーさまがクッキーを食べちゃったのが原因です」
「いや、あなたが不機嫌な理由じゃなくて…」
「クッキー…」
「あ~もう、わかったわ、まだ缶に入っているから持ってきなさい」
「わーい!」
「もう」
 泣き顔から頬を膨らませ、続いて拗ねた顔、最後は花咲く笑顔でしめくくった小悪魔を、私は苦笑いしながら見送った。
 正直、あれだけ豊かな表情を持てるというのは羨ましい。私自身は表情の変化はあまりないしね…別に、それが悪いとは思わないけれど。



「う~ん、最近はお掃除の回数も増やして、湿気やカビの排除に努めているのですが…」
 ぽりぽりとお菓子を頬張りながら、小悪魔は言う。クッキー以外にも色々と増えている気がするけどまぁいい。
「そうね」
 カビの被害をくい止めるべく、最近は掃除も増やしているのだけれど、その被害は一向に減らないばかりか、むしろ順調に増加していた。
「呪いでもかけられたんじゃないでしょうか?ほら、パチュリーさまって陰湿だから恨み買いそうですし」
 そう言って最後のプティングに手を伸ばした小悪魔から、私はそれを奪い去り、続ける。
「呪いなら、かけられた事位はわかるわ。それ位の魔法防御は全体にかけているから」
 まぁかけられたことはないけど。
「う~いつか私がかけてやる…と、それはさておき、あとは考えられるとすれば…」
 小悪魔は一息ついて言った。
「やはりレミリアさまでしょうか?」
「は?」
 もったいぶって言った小悪魔の声に、私は疑問をぶつける。レミィがなんで湿気と関係あるのかしら?
 そんな私に、小悪魔は自信を持って言った。
「はい、ほら最近パチュリーさまが遊んでくれないせいで、レミリアさま柱の陰からこっちを構って欲しげに見ているんですよ。いや、ホントもう周囲の空気がじめじめじとじとと…あれじゃあナメクジさんだって逃げちゃいます」
 言い切ったあと、周囲をきょろきょろと見回して…多分レミィがいないのを確認しているのね、先にやりなさいよ…小悪魔は続けた。
「なので、原因としてはそれが最も可能性が高いと思うのですよ!ええ、間違いありません、あの根暗吸血鬼のストーキング行動が原因だと私は思うのですよ!!」
 そう言って、どん、と机を叩いた小悪魔に私は考える。この子も相当失礼ね…誰に似たのかしら?
 それはさておき、一見荒唐無稽な意見に思えるのだけど、人の気持ちというものは色々なものを呼び寄せる。暗い気持ちが災厄を呼び込むことだってあるのだ、まして湿気位ならば呼び寄せたとしても不思議ではない。
 よくよく考えてみれば、最近面白い本を見つけて、そればっかり読んでいたせいでレミィで遊んでいなかったわね。
「だからほら、あんなネガティブ吸血鬼は図書館出入り禁止にしちゃってですね、明るくてよく気がつき、ヴァルハラよりも高く地獄よりも深いパチュリーさまへの思いを持つこの小悪魔と遊ぶ時間を増加していただきましたら、この図書館がヴワル陰湿図書館と名を変える時が来るのを避けることができると思うのですよ」
 そう言って私に抱きついてくる小悪魔を撫でながら、私は思う。
 出入り禁止にするとつまらないからやらないけど…でも、そう言ってみた時のレミィの顔は見てみたいわね、うん、解除と引き替えに蔵書の増加を要求するというのも妙案…いいわ、レミィの泣き顔も見られて本も増える、一石二鳥じゃない。
「…わかったわ、期間限定でやってみましょう」
 深謀深慮をめぐらした私は、しばしの沈黙の後にそう言った。
「さすがはパチュリーさまっ!期間限定と言わずに、いっそ無期限にしちゃっていいような気がするのですけど…でもまぁいいです」
 それを聞いて喜び、でも若干不服そうな小悪魔だけれど…無期限にしたら私がつまらないじゃない、おもちゃが一人減るもの。
「…あ、そういえばまだお掃除の方、準備が終わりましたので仕上げをお願いしますね♪」
 その時、小悪魔が言った。そういえば途中だったわね…
「わかったわ」



「とっとと終わらせてしまいましょう」
 図書館を見た私は、そう言って準備にかかる。この図書館の重防御を利用した、理想的で合理的な掃除…
「はい…あ、扉を開けるの忘れてました。危ない危ない…」
「また水浴びするのはごめんよ、早くあけてきてね」
「はい、パチュリーさま」
 扉の方へと飛んでいく小悪魔を見ながら、私は準備にかかる。魔法陣が浮かび上がり、呪文の詠唱はいつでも可能だ。
「やってきましたっ!準備万端、いつでもどこでもどんとこいっ!です♪」
 そう言って魔法陣内に退避した小悪魔を見て、私は『掃除』の仕上げにかかった。






































「ベリーインレイク!!」


 
大切な本が湿気にやられたりしたことってありませんか?本に湿気は天敵です。
追記、図書館内は完全防御なわけですが、扉の先は…?
アッザム・de・ロイヤル
[email protected]
http://www.rak2.jp/town/user/oogama23/
コメント



1.名など捨てた削除
それが原因かw
2.悠祈文夢削除
面倒くさがらずに雑巾もしくはモップで乾拭きもしましょう。
3.名無し妖怪削除
そ れ だ 。
そしてとばっちりを受けるだろうれみりゃ様に合掌…。
4.89式削除
こちらでは初めまして。
さりげ(?)に本音を言いまくりな小悪魔がいいです。こやつはパチュリーが好きなのか嫌いなのか・・・(汗)。
T34区画の76冊と85冊って例のアレですか?。そういう小ネタも好きです。それでは
5.名無し妖怪削除
こぁかわいいな。レミ様哀れ・・・
6.名無し妖怪削除
ちゃんとロイヤルフレアで乾かそうよw
7.SETH削除
こいつらは・・・どうにかしている・・・w
8.蝦蟇口咬平削除
レミ様哀れ。パチュリー様苛めっ子ですね
9.名無し妖怪削除
魔法障壁あるのに湿気に弱いのかw
10.アッザム・de・ロイヤル削除
ご感想ありがとうございますww

>名など捨てた様
>>それが原因かw
イエスww

>悠祈文夢様
>>面倒くさがらずに雑巾もしくはモップで乾拭きもしましょう。
手間を惜しんではいけませんね。

>名無し妖怪様
それです♪

>89式様
>>T34区画の76冊と85冊って例のアレですか?
いえいえ、赤い☆つけた中戦車とかけたなんてそんなことは…ありますorz

>二人目の名無し妖怪様
>>こぁかわいいな
こぁですからww

>三人目の名無し妖怪様
おおっ!これで湿気対策もばっちりですww
でも、作業中立ち入り禁止を徹底しないと不幸な犠牲者が…

>SETH様
ぱちぇこぁですから(えー?)

>蝦蟇口咬平様
ノンノン♪いぢめっこです…ごめorz

>四人目の名無し妖怪様
湿気を止める手立てはないそうですww
11.ドライブ削除
小悪魔かわいいですね~。こんな小悪魔大好きですよ。
12.はむすた削除
これはちょっと腹黒くて実に可愛い小悪魔!!
しかし、どう考えても無限ループ……!
13.アッザム・de・ロイヤル削除
ご感想ありがとうございますww
>ドライブ様
そう言っていただけますとww

>はむすた様
ちょっと腹黒い彼女も、それはそれで魅力的かなとか思いましてww