薄暗い部屋の中、私がペンを取ると、銀髪女性は何所からとも無く巻物を取り出した。彼女が一振りすると巻物は音も無く動き、私の前に何も書かれていない白色の中身を曝け出す。彼女は軽く手を掲げた。乾いた音が響く、するとどうだろう、何も書かれていないはずの巻物に鮮やかな、写真と見間違うような繊細な絵が浮かび上がったでは無いか、しかもその絵は刻々と変化している。それを見ながら彼女は口を開いた。
「永夜異変のことか?
ああ知っている
発端は長い そう 古い話だ
巻物に映るのは歪な月、そして夜空
知ってるか?ルナシューターは3つに分けられる
絵は刻々と変化していく、視界がぐるりと下を向き、幻想郷全体を映し出す。
ハイスコアを求める奴
巻物が映すは雲上にそびえる巨大な扉。その上から何者かが飛び出してきた。月を睨むのは 半人半霊の魂魄 妖夢、周囲を見渡すは 華胥の亡霊 西行寺 幽々子。
周囲の喝采を浴びたい奴
次に映るのは紅魔館、 紅い悪魔 レミリア・スカーレットが優雅に夜空を駆ける。彼女が館を離れるとやはり優雅な仕草で紅魔館のメイド 十六夜 咲夜 がそれを追った。
一面の弾幕に酔いしれる奴
絵はまた変る。次に移るのは魔法の森上空だ。木々の間から二人の少女が飛び出してきた。七色の人形遣い アリス・マーガトロイドと(自称)普通の黒魔術師 霧雨 魔理沙 口論しているにも係らず、楽しそうなのは気のせいではあるまい。
この3つだ 奴等は――
最後に映るのは博麗神社、上機嫌な 境目に潜む妖怪 八雲 紫の後ろを、対象的に不機嫌な 楽園の素敵な巫女 博麗 霊夢が続いた。
場面は一瞬で切り替わる。映るのは大きなお屋敷、永遠亭に少し似ているか?だが、様子がおかしい、皆来ている服が古風で、周囲に空飛ぶ牛舎が何台も浮いている。これは一体
……不意に巻物から声がした。
『永林 逃亡はできないわ 迎撃して』
絵の視点は牛舎の中央に集中する。其処に居るは、間違いない、月の頭脳 八意 永琳 と永遠と須臾の罪人 蓬莱山 輝夜 衣装こそ違えど顔や体つきは全くの同じである。
『でしょうね これでお尋ね者ですね』
永林は溜息をつくと微笑んだ。
数十年――月面が巻き込まれた戦争があった
突然、摩天楼が視界を遮った。間を飛ぶのは軍服を纏い、人の姿をしたうさぎ達、先頭のうさぎには、見覚えがあった。
」
「てっ一寸!一寸!」
私は我に返って彼女、歴史喰い こと上白沢 慧音に食って掛かった。私の名前は射命丸 文、今日は幻想郷一のデバ……情報収集能力を誇る我々、天狗達の間ですら真相が謎に包まれている永夜異変の核心に迫るべく、彼女の家に訪れたのだ。正直、彼女にだけは頼りたくなかったと言うのが本音である。事件の考察に彼女の知識を頼るのならともかく、今回のように事件その物を彼女に聞く事は、新聞記者としての責務の放棄であると同時に、自分が発行する新聞が、彼女の能力に屈服した事を意味するのでは無いかと思うのだ……だが、今、目の前に在るのはそう言う事とは別次元の問題だった。
「何なんですかこれは層々たる面子ですよ!
しかも最後に映ったアレ……あれは一体……」
確認を取るように目をやると、彼女は平然と答える。
「ああ、そうか、貴方はぎりぎりアレより後に生まれた者か……なら知らないのも無理は無い……
まあいい、それも含めて話していくか」
ここで彼女は少しの間を置いた。
「だが、その前に何故止めたのか教えてくれないか?」
咎める様な、真面目とも冗談とも取れない表情でこちらを見る彼女を睨む、自分は試されているのだろうか、関係者一同が口を紡ぐ事件の真相に迫ってよい存在かを……だとしたら、ここで引き下がる分けには行かない、
「私は永夜事件の真相を知りたいのです」
そう、私が知りたいのは飽くまでその一夜のみ、彼女達の昔の事ではない、あの夜に何が起こり、何故、関係者一同が口を紡ぐのか……、私の強い意志に彼女は溜息交じりで頷き。
「背景は知っておくべきだと思うがな……まあそれも考え方の一つか……」
再び彼女は指を鳴らす。今度は少し落ち着いた模様が移る。そして、勢いのある声が巻物から聞こえ出す。
『永夜事件の真相を知りたいかーーーーッ』
年老いた男の叫びが聞こえる。それに答える者達の雄叫びも
『オーーーーーーーーーーーーーー!!!!』
『ワシもじゃ ワシもじゃみんな!!』
『関係者入場!!!』
『全関係者入場です!!!!』
最初に現れたのは、幻想郷に唯一残った蟲の妖怪
『蟲の妖怪は生きていた!! かつての栄光を求め蟲の力が蘇った!!!
闇に蠢く光の蟲!! リグル・ナイトバグだァ――――!!!
蛍と戯れる彼女は恭しく一礼すると、手持ちのカードから蟲の嵐を迸しらせる。
次に映るのは白玉楼の庭師
総合剣術はすでに我々が完成している!!
半人半霊 魂魄 妖夢だァ――――!!!
絵の中で彼女は二本の刀を抜き放ち、華麗に舞って見せた。
太い木の枝に腰をかける者が居る。夜雀の人の形だ
人に会いしだい鳥目にしてやる!!
夜雀の怪ミスティア・ローレライだァッ!!!
彼女は飛び立つと、左手を胸にあて、右腕を大きく広げる。そして胸を張ると声高らかに謡い出した。
見事な桜の下に人影が見える。亡霊だ
命の奪い合いなら私の力がものを言う!!
白玉楼の令嬢 華胥の亡霊 西行寺 幽々子
彼女が扇子を振るうと、それに合わせて紫の蝶が舞い踊った。
次に登場したのは半獣だった。
真の歴史を知らしめたい!! 歴史喰い 上白沢 慧音だァ!!!
彼女の背後から無数の巻物が現れる。それらはあっと言う間に視界を多い尽くした。
絵が真紅に染まる。椅子に座るのは、まだ幼い少女
住居は紅魔館だが運命なら全てが私のものだ!!
紅い悪魔 レミリア……』
「ストップ!」
思わず叫ぶと、絵がまた霧散する。
「今のは苦しいです!じゃ無くって、どう言うことですかこれは!」
私の問いは、こちらは真面目な話をしていると言う事なのだが、問われた彼女はそう受け取らなかったらしい、相変わらず、真面目とも冗談とも取れない表情で少し考えるような素振りをする。
「そうか、先に関係者をはっきりさせておこうと思ったのだが……まあ好みの問題だしな
人の紹介は後にするか……先ずは重要な所だけ」
三たび乾いた音が響く、巻物に映ったのは 夜の竹林、そしてそこに佇む大きな屋敷視界はその戸を潜り長い廊下を進む、聞こえるのは少し落ち着いた声だ。
『あらゆる異変が弾幕ゴッコで解決するこの平穏な時代
映ったのは。地上の兎 因幡 てゐ、彼女の弾幕を掻い潜り銀のナイフが突き刺さる。そのナイフの持ち主を映さぬ内に視界は奥へと進む
幻想郷の夜を引き伸ばす人間と妖怪が存在していた
そこに居るのは狂気の月の兎 鈴仙・優曇華院・イナバ 彼女が放つは大量の弾丸、だが彼女の弾幕は周囲を埋め尽くす紫の蝶に圧倒されていた
並以上の妖怪でさえどうしょうも出来ない
行き成り空に出た。いや、既にそこは宇宙だった。余裕を崩さずに永琳がスペルカードを発動させる。しかし、そこに信じられない破壊力を持った砲撃が突き刺さる。この砲撃を一人で撃つ事は出来まい……
その強大な輩にたちむかう どうしようもなく 捉え所が無い姫が1人
最後に、狭い通路を飛ぶ二人、紫と霊夢、そして、それに相対する人影が映る。
その名は 蓬莱山 輝夜
視界が動き、最後の一人をはっきりと映し出した。彼女は微笑を浮かべると5枚のカードを翳す。
そう 人は彼女を 永遠と須臾の罪人と呼ぶ』
場面は急激に切り替わる。
『永夜返し!永夜返し!
と言っても、複数の弾幕ごっこがダイジェストで流れていくだけだが、
腋巫女、泥棒、困った時は
そこに軽快な歌が流れていて、なんともシュールな世界を映し出す。
助けて! エーリン! 助けて!エーリン!
と言うか、よく聞くとこれ、紫さんの声だ……なにやってるんだあの人(妖怪)は……
直ぐに呼びましょ月の頭脳 レッツゴー!』
「もう良いです!」
歌が一段落した所で私はようやく我に返った。そして一つの結論を出す。
「貴方が、永夜事件の真相を語る気がないのは良く分かりました」
つまりはそう言う事だ。私は勢い良く立ち上がると窓に手を掛けた。少し考えれば分かりそうなものだ。彼女が妖怪である私の為に力を使うかどうかなど、私はなんて馬鹿な選択をしてしまったのだろう、
「はっきり言って不愉快です。が、ご安心ください、
私も貴方の立場は分かっているつもりです」
それだけ言うと飛び上がった。最初から全力などと言う無粋な真似はしない、それは本当に未熟な者がやる事だ。少しずつ加速していきながら、自分が憤りを通り越し安堵している事に気が付いた。そうだ、これで良かったのだ。私は新聞記者として大切な物を失わずに済んだ。彼女の力に頼れば私の新聞は私の新聞では無くなってしまう、彼女の新聞になってしまう、そして私は彼女の代弁者に成り下がってしまう、
もう一度自分で追ってみよう、そう思うと妖怪の山に進路を変え全力で羽ばたいた。手がかりならある。用は彼女の見せた物を避ければ言いのだ。先ずは自分が知っている事の選別から始めよう……
私は彼女、射命丸 文が出て行った窓を見ると溜息を一つ付いた。そして視線を変えずに言い放つ
「もう隠れる必要はないだろう?」
「あら、分かってたのね」
そう言って自分の予想とは120度ほど離れた所から八雲 紫が顔を出す。そして面白そうに笑って見せた。
「彼女はもう自力で真実にたどり着けないでしょうね、真実を虚実と誤認してしまったから、
貴方なかなかやるわね、本当に嘘を一切言わずに騙しちゃったわ」
「ふん、白沢を何と心得る気だ、そして歴史とはそう言うものだ。
虚実を交えず虚言を成す。すなわち、真実を虚実と誤認させる事こそが虚言の極意だ。
虚実と認識された真実は自然と抹消されていく、こうして歴史上の事件が消えるのだ」
「真実のもう一つの使い方、見させて貰ったのは久しぶりよ、面白かったわ、
萃香が知ったら激怒しそうだけど」
「だろうな、私は永遠亭の素兎にこそ言ってやりたい言葉なのだが……
所で、覗いていたと言う事はお前も気になったと考えてよいのか?」
「そう言うことよ、彼女は勘が鈍くても、嗅覚は鋭いから」
「そこまで気にするのなら、肝試しの時ぐらい、私に会って満足すれば良かったのではないか?
私はちゃんと言ったぞ、この先に居るのは人間だと」
「ああ、ごめんなさい、聞き逃してたの」
「仕事を放りだしてまで出て行った私は何なんだ……」
そうだ。今回の事件の関係者が口をつむぐのは月の異変と永夜異変を互いに起こしあったから、ではない、
あの事件、そして肝試しは幻想郷の根幹さえ揺るがす事件だったのだ。
二人の目が合うと殆ど二人で同時に口を開いていた。
「「妖怪は人を食べる、 人間は妖怪を退治する
妖怪は異変を起こす、人間は異変を解決する」」
「確かに色々変ったわ、でも超えたくても超えてはいけない一線がある。
これは幻想郷に最後まで残すべきルールよ、そして、結界を維持する二人の合意でもあるわ」
「百も承知だ。そしてそれ故にあの事件は隠さねばならない」
月の異変は人間が起こし、妖怪が人間と共に解決を試みた異変、
永夜異変は妖怪と人間がお起こし、人間が解決を試みた異変
肝試しは結局の所、妖怪と人間による妖怪を襲う人間退治だった……
人も妖も入り乱れての異変合戦、
だから関係者が隠すのだ。永遠亭の住人もその事を理解してくれた。
人間と妖怪の関係は今のぐらいで丁度良いのだから
「永夜異変のことか?
ああ知っている
発端は長い そう 古い話だ
巻物に映るのは歪な月、そして夜空
知ってるか?ルナシューターは3つに分けられる
絵は刻々と変化していく、視界がぐるりと下を向き、幻想郷全体を映し出す。
ハイスコアを求める奴
巻物が映すは雲上にそびえる巨大な扉。その上から何者かが飛び出してきた。月を睨むのは 半人半霊の魂魄 妖夢、周囲を見渡すは 華胥の亡霊 西行寺 幽々子。
周囲の喝采を浴びたい奴
次に映るのは紅魔館、 紅い悪魔 レミリア・スカーレットが優雅に夜空を駆ける。彼女が館を離れるとやはり優雅な仕草で紅魔館のメイド 十六夜 咲夜 がそれを追った。
一面の弾幕に酔いしれる奴
絵はまた変る。次に移るのは魔法の森上空だ。木々の間から二人の少女が飛び出してきた。七色の人形遣い アリス・マーガトロイドと(自称)普通の黒魔術師 霧雨 魔理沙 口論しているにも係らず、楽しそうなのは気のせいではあるまい。
この3つだ 奴等は――
最後に映るのは博麗神社、上機嫌な 境目に潜む妖怪 八雲 紫の後ろを、対象的に不機嫌な 楽園の素敵な巫女 博麗 霊夢が続いた。
場面は一瞬で切り替わる。映るのは大きなお屋敷、永遠亭に少し似ているか?だが、様子がおかしい、皆来ている服が古風で、周囲に空飛ぶ牛舎が何台も浮いている。これは一体
……不意に巻物から声がした。
『永林 逃亡はできないわ 迎撃して』
絵の視点は牛舎の中央に集中する。其処に居るは、間違いない、月の頭脳 八意 永琳 と永遠と須臾の罪人 蓬莱山 輝夜 衣装こそ違えど顔や体つきは全くの同じである。
『でしょうね これでお尋ね者ですね』
永林は溜息をつくと微笑んだ。
数十年――月面が巻き込まれた戦争があった
突然、摩天楼が視界を遮った。間を飛ぶのは軍服を纏い、人の姿をしたうさぎ達、先頭のうさぎには、見覚えがあった。
」
「てっ一寸!一寸!」
私は我に返って彼女、歴史喰い こと上白沢 慧音に食って掛かった。私の名前は射命丸 文、今日は幻想郷一のデバ……情報収集能力を誇る我々、天狗達の間ですら真相が謎に包まれている永夜異変の核心に迫るべく、彼女の家に訪れたのだ。正直、彼女にだけは頼りたくなかったと言うのが本音である。事件の考察に彼女の知識を頼るのならともかく、今回のように事件その物を彼女に聞く事は、新聞記者としての責務の放棄であると同時に、自分が発行する新聞が、彼女の能力に屈服した事を意味するのでは無いかと思うのだ……だが、今、目の前に在るのはそう言う事とは別次元の問題だった。
「何なんですかこれは層々たる面子ですよ!
しかも最後に映ったアレ……あれは一体……」
確認を取るように目をやると、彼女は平然と答える。
「ああ、そうか、貴方はぎりぎりアレより後に生まれた者か……なら知らないのも無理は無い……
まあいい、それも含めて話していくか」
ここで彼女は少しの間を置いた。
「だが、その前に何故止めたのか教えてくれないか?」
咎める様な、真面目とも冗談とも取れない表情でこちらを見る彼女を睨む、自分は試されているのだろうか、関係者一同が口を紡ぐ事件の真相に迫ってよい存在かを……だとしたら、ここで引き下がる分けには行かない、
「私は永夜事件の真相を知りたいのです」
そう、私が知りたいのは飽くまでその一夜のみ、彼女達の昔の事ではない、あの夜に何が起こり、何故、関係者一同が口を紡ぐのか……、私の強い意志に彼女は溜息交じりで頷き。
「背景は知っておくべきだと思うがな……まあそれも考え方の一つか……」
再び彼女は指を鳴らす。今度は少し落ち着いた模様が移る。そして、勢いのある声が巻物から聞こえ出す。
『永夜事件の真相を知りたいかーーーーッ』
年老いた男の叫びが聞こえる。それに答える者達の雄叫びも
『オーーーーーーーーーーーーーー!!!!』
『ワシもじゃ ワシもじゃみんな!!』
『関係者入場!!!』
『全関係者入場です!!!!』
最初に現れたのは、幻想郷に唯一残った蟲の妖怪
『蟲の妖怪は生きていた!! かつての栄光を求め蟲の力が蘇った!!!
闇に蠢く光の蟲!! リグル・ナイトバグだァ――――!!!
蛍と戯れる彼女は恭しく一礼すると、手持ちのカードから蟲の嵐を迸しらせる。
次に映るのは白玉楼の庭師
総合剣術はすでに我々が完成している!!
半人半霊 魂魄 妖夢だァ――――!!!
絵の中で彼女は二本の刀を抜き放ち、華麗に舞って見せた。
太い木の枝に腰をかける者が居る。夜雀の人の形だ
人に会いしだい鳥目にしてやる!!
夜雀の怪ミスティア・ローレライだァッ!!!
彼女は飛び立つと、左手を胸にあて、右腕を大きく広げる。そして胸を張ると声高らかに謡い出した。
見事な桜の下に人影が見える。亡霊だ
命の奪い合いなら私の力がものを言う!!
白玉楼の令嬢 華胥の亡霊 西行寺 幽々子
彼女が扇子を振るうと、それに合わせて紫の蝶が舞い踊った。
次に登場したのは半獣だった。
真の歴史を知らしめたい!! 歴史喰い 上白沢 慧音だァ!!!
彼女の背後から無数の巻物が現れる。それらはあっと言う間に視界を多い尽くした。
絵が真紅に染まる。椅子に座るのは、まだ幼い少女
住居は紅魔館だが運命なら全てが私のものだ!!
紅い悪魔 レミリア……』
「ストップ!」
思わず叫ぶと、絵がまた霧散する。
「今のは苦しいです!じゃ無くって、どう言うことですかこれは!」
私の問いは、こちらは真面目な話をしていると言う事なのだが、問われた彼女はそう受け取らなかったらしい、相変わらず、真面目とも冗談とも取れない表情で少し考えるような素振りをする。
「そうか、先に関係者をはっきりさせておこうと思ったのだが……まあ好みの問題だしな
人の紹介は後にするか……先ずは重要な所だけ」
三たび乾いた音が響く、巻物に映ったのは 夜の竹林、そしてそこに佇む大きな屋敷視界はその戸を潜り長い廊下を進む、聞こえるのは少し落ち着いた声だ。
『あらゆる異変が弾幕ゴッコで解決するこの平穏な時代
映ったのは。地上の兎 因幡 てゐ、彼女の弾幕を掻い潜り銀のナイフが突き刺さる。そのナイフの持ち主を映さぬ内に視界は奥へと進む
幻想郷の夜を引き伸ばす人間と妖怪が存在していた
そこに居るのは狂気の月の兎 鈴仙・優曇華院・イナバ 彼女が放つは大量の弾丸、だが彼女の弾幕は周囲を埋め尽くす紫の蝶に圧倒されていた
並以上の妖怪でさえどうしょうも出来ない
行き成り空に出た。いや、既にそこは宇宙だった。余裕を崩さずに永琳がスペルカードを発動させる。しかし、そこに信じられない破壊力を持った砲撃が突き刺さる。この砲撃を一人で撃つ事は出来まい……
その強大な輩にたちむかう どうしようもなく 捉え所が無い姫が1人
最後に、狭い通路を飛ぶ二人、紫と霊夢、そして、それに相対する人影が映る。
その名は 蓬莱山 輝夜
視界が動き、最後の一人をはっきりと映し出した。彼女は微笑を浮かべると5枚のカードを翳す。
そう 人は彼女を 永遠と須臾の罪人と呼ぶ』
場面は急激に切り替わる。
『永夜返し!永夜返し!
と言っても、複数の弾幕ごっこがダイジェストで流れていくだけだが、
腋巫女、泥棒、困った時は
そこに軽快な歌が流れていて、なんともシュールな世界を映し出す。
助けて! エーリン! 助けて!エーリン!
と言うか、よく聞くとこれ、紫さんの声だ……なにやってるんだあの人(妖怪)は……
直ぐに呼びましょ月の頭脳 レッツゴー!』
「もう良いです!」
歌が一段落した所で私はようやく我に返った。そして一つの結論を出す。
「貴方が、永夜事件の真相を語る気がないのは良く分かりました」
つまりはそう言う事だ。私は勢い良く立ち上がると窓に手を掛けた。少し考えれば分かりそうなものだ。彼女が妖怪である私の為に力を使うかどうかなど、私はなんて馬鹿な選択をしてしまったのだろう、
「はっきり言って不愉快です。が、ご安心ください、
私も貴方の立場は分かっているつもりです」
それだけ言うと飛び上がった。最初から全力などと言う無粋な真似はしない、それは本当に未熟な者がやる事だ。少しずつ加速していきながら、自分が憤りを通り越し安堵している事に気が付いた。そうだ、これで良かったのだ。私は新聞記者として大切な物を失わずに済んだ。彼女の力に頼れば私の新聞は私の新聞では無くなってしまう、彼女の新聞になってしまう、そして私は彼女の代弁者に成り下がってしまう、
もう一度自分で追ってみよう、そう思うと妖怪の山に進路を変え全力で羽ばたいた。手がかりならある。用は彼女の見せた物を避ければ言いのだ。先ずは自分が知っている事の選別から始めよう……
私は彼女、射命丸 文が出て行った窓を見ると溜息を一つ付いた。そして視線を変えずに言い放つ
「もう隠れる必要はないだろう?」
「あら、分かってたのね」
そう言って自分の予想とは120度ほど離れた所から八雲 紫が顔を出す。そして面白そうに笑って見せた。
「彼女はもう自力で真実にたどり着けないでしょうね、真実を虚実と誤認してしまったから、
貴方なかなかやるわね、本当に嘘を一切言わずに騙しちゃったわ」
「ふん、白沢を何と心得る気だ、そして歴史とはそう言うものだ。
虚実を交えず虚言を成す。すなわち、真実を虚実と誤認させる事こそが虚言の極意だ。
虚実と認識された真実は自然と抹消されていく、こうして歴史上の事件が消えるのだ」
「真実のもう一つの使い方、見させて貰ったのは久しぶりよ、面白かったわ、
萃香が知ったら激怒しそうだけど」
「だろうな、私は永遠亭の素兎にこそ言ってやりたい言葉なのだが……
所で、覗いていたと言う事はお前も気になったと考えてよいのか?」
「そう言うことよ、彼女は勘が鈍くても、嗅覚は鋭いから」
「そこまで気にするのなら、肝試しの時ぐらい、私に会って満足すれば良かったのではないか?
私はちゃんと言ったぞ、この先に居るのは人間だと」
「ああ、ごめんなさい、聞き逃してたの」
「仕事を放りだしてまで出て行った私は何なんだ……」
そうだ。今回の事件の関係者が口をつむぐのは月の異変と永夜異変を互いに起こしあったから、ではない、
あの事件、そして肝試しは幻想郷の根幹さえ揺るがす事件だったのだ。
二人の目が合うと殆ど二人で同時に口を開いていた。
「「妖怪は人を食べる、 人間は妖怪を退治する
妖怪は異変を起こす、人間は異変を解決する」」
「確かに色々変ったわ、でも超えたくても超えてはいけない一線がある。
これは幻想郷に最後まで残すべきルールよ、そして、結界を維持する二人の合意でもあるわ」
「百も承知だ。そしてそれ故にあの事件は隠さねばならない」
月の異変は人間が起こし、妖怪が人間と共に解決を試みた異変、
永夜異変は妖怪と人間がお起こし、人間が解決を試みた異変
肝試しは結局の所、妖怪と人間による妖怪を襲う人間退治だった……
人も妖も入り乱れての異変合戦、
だから関係者が隠すのだ。永遠亭の住人もその事を理解してくれた。
人間と妖怪の関係は今のぐらいで丁度良いのだから
ちょっと、えーりん呼んでくるわ ノシ
遺影!
とりあえずえーりんだけじゃなくて橙も呼んでもらっていいですか?