2月14日 セント・バレンタインデー
人はこの日に希望を乗せ
人はこの日に絶望を噛締めるという
正にニ極端な日である
幻想郷にもまた、その流れが立ち込めていた
漢達は、何時チョコを貰えるのだろうかとソワソワし
女達は、何時チョコを渡せば良いかとソワソワしている
しかしまぁ、そういった事に興味が無い方もちゃんと居るわけでして……
~ 博麗神社 ~
「ズズズズ……はぁ、やっぱ冬はお茶よねぇ」
博麗 霊夢はお茶を啜りながら呟く。
そのまま外を見る。僅かながら雪が降っていた。
「ま、冬以外でも『やっぱお茶よねぇ』とか言ってる気がするけどね」
誰も居ない空間に、自分への的確なツッコミが吸い込まれていく。
それは、ただ只管に虚しかった。
「積もるなー、積もったら雪かきが微妙に面倒だー」
そう祈りながらお茶を啜る。無理な話だが、祈るだけなら無料なのだ。
そんなこんなで、どれだけぐうたらしていただろうか。
ガンガン
と、窓を叩く音がする
誰かと思い、窓の外を見てみると、一人の妖怪が居た
「……」
「……」
「……いや、何か喋りなさいよ」
「え、あ、うん、本日はお日柄も良く」
「うん、外は少し吹雪いてきたみたいね」
「……」
「……」
「OK幽香、まず何をしに来たのか話してくれないかしら」
新しいお茶を注ぎながら、雪の中訪ねてきた風見 幽香に話しかける。
しかし当の幽香と言うと、顔を赤らめたり、モジモジしているだけで、一向に目的を言おうとはしない。
コタツを挟んで向かい合ったまま、時間だけが過ぎていく。
「……」
「……あー、トイレなら廊下に出て右手の方よ?」
「……」
とりあえずお約束っぽい事を言ってみるも、幽香は反応しない。
むしろ霊夢が見えて無いかのように、下を向きながらボソボソと独り言を言っている。
良く聞いてみると、「でもやっぱり恥ずかしい」とか「でもここまで来ちゃったし」とか「がんばれ私」とか色々聞こえてくる。
霊夢がコタツの暖かさに、ついつい欠伸を一つした所で、幽香が顔を上げた。
「れっ、霊夢!」
「ふぁ……。あ、うん、それで何の用?」
「こ、これっ!」
そう言って幽香が綺麗なラッピングのされたハート形の物を差し出した。
「んー?何これ?」
「な、何って……その……ば、バレンタインチョコ……」
「ふーん。……良く分からないけど、くれるって言うなら貰っておくわ」
「それっ、私のっ、気持ちっ、だからっ!それじゃっ!」
霊夢がチョコを受け取ったのを確認するや否や、幽香は意味深な台詞を残して、凄い勢いで去って行った。
「ハートの形……黒い色……気持ち……ハッ!まさか!」
霊夢はこのチョコと言葉に意味に
「『貴女の心臓を真っ黒に染め上げて悪の道に進ませてあげる』って事!?」
……気付かなかった。
「まぁ冗談は置いといて、親愛の情ってのだけは確かでしょうね」
早速ラッピングを剥がし、一口食べてみる。
甘い味がした。
幽香が去って程なく。霊夢はふと窓を開け放ち、外を見る。
何処か遠くから自分を呼ぶ声が近づいて来ていた。
「……ぇぇぇええええいむ!!霊夢霊夢!んるぇぇぇぇぇい「二重結界」ぶふっ!」
その声の主であるレミリア・スカーレットは、霊夢の二重結界に阻まれ、情け無い声を出しながら地に落ちた。
「んで、神社を壊す様な勢いで何をしに来たのよ」
「ンーッフッフッフッフ。霊夢、今日が何の日か知ってる?」
レミリアが怪しく笑いながら問いかける。
「え、確か今日って確か2月14日でしょう?えーと……あぁ、聖武天皇が国分寺建立を命じた日ね」
「ちょ、そんなマニアックな事柄じゃなくて!」
「んーと、それじゃあ藤原時平が左大臣、菅原道真が右大臣に就任した日?」
「霊夢。私、霊夢の事大好きだけど、その冗談はいただけないわ」
「うーん、それくらいしか思い当たらないわよ?」
「はぁ、本当に知らないのね」
レミリアは大きく溜め息を吐いた。
「良い?霊夢。今日はセント・バレンタインデーなのよ」
「せんとばれんたいんでー?」
「そう!好きな人にチョコレートを渡し、その代償に渡した相手の自由を永遠に束縛できる権利を持つことが出来るのよ!!」
「そーなのかー!?」
レミリアはコタツの上に足を乗せ、何処だか良く分からない場所を指差して自慢げに叫ぶ。
霊夢も思わず、十進法を採用した妖怪の生霊を降ろしてしまったらしいが、特に問題ではなかった。
「そういう訳で霊夢、チョコレートを作ってきたわ!大丈夫、私は霊夢を束縛しようだなんて思わないわ!愛する者の自由を認め、それを愛するのも恋した乙女の宿命なのよ!さぁ霊夢、私のチョコで人馬一体となるような愛の契「はい、そこまで」ホギャァァァア!!」
チョロチョロと動き回りながら自らの愛を語っていたレミリアを自分の方におびき寄せ、そのままレミリアの勢いだけを使って針に刺す。
どこかで「迎撃!!」と聞こえたような気がしたが、気にしないことにした。
「あぅぅ、霊夢の愛が痛いわ……」
「あのね、誰がそんな魂の契約みたいな事するのよ。その知識もパチュリー辺りから仕入れたんでしょ?」
「ビクッ!」
「そんな信憑性の無いものに付き合う暇は無いの。ほら、帰った帰った」
そう言いながら霊夢はレミリアを敷地の外へと引き摺っていく。
「あ、待って、霊夢、私まだ、愛の全てを、語って無いの!」
「あーあー、聞こえなーい」
「ごめんなさ、謝るから!謝るから、そんな長い階段から落とそうとしないで!」
その言葉を聞いて、霊夢はパッと手を離す。
「はぁ、全く。最初から素直にそうしなさいっての」
「ぅー……」
「ま、とりあえずただのプレゼントって意味でなら貰ってあげるわよ。それ以外は却下」
「ぅー……仕方ないわね、それで妥協する」
そう言ってレミリアは霊夢にチョコを手渡した。
「今日の所はこれくらいにしてあげるけど、絶対霊夢は私の物にするんだからね!」
「はいはい、今度はちゃんと咲夜を連れて遊びに来なさい」
レミリアは羽根を広げ、紅魔館のある方角へと飛んでいった。
咲夜、カンカンだろうなぁと、心の中で霊夢はレミリアに合掌した。
その後も、博麗神社を訪れる者は後先を断たず。
「霊夢ー、バレンタインデーだぜー!ほら、チョコだ!」
「はい霊夢、スキマから直接輸入した高級チョコよ」
「日頃お世話になっている礼だ、受け取ってくれないか」
「偶には私から誰かに食べ物を渡すのも面白いわよねぇ~」
「れーむれーむ!大ちゃんと一緒にチョコっての作ってみたから食べてみて!」
「私の気持ちを受け取り、真摯になって受け止める事。それが貴女にできる善行ですよ」
博麗神社ではハートの形をした、カカオの香りがする茶色い山ができていたそうな。
これは本命とみてよろしいのですか?
この発想は なかったw
ホワイトデーを霊夢が知ったらどうなるやら
>この順位はまさかむn…
いやそれはない、だって咲夜さんg(殺人ドール
ゆうかりんかわいいよ!!!!