霧雨魔理沙の死体は朝霧の中、紅魔館の庭で発見された。
「…ふぅん、それで?」
博麗霊夢はお茶を飲みながらそう言った。
「驚かないんですか?」
その情報を霊夢の元に伝えに来た文は呆れた口調で言った。
「だって嘘なんでしょ?」
「はい」
あっさりと首肯する文。
「実は外の世界の…あれ、なんて言うんですか?ややこしく人を殺す類の本…」
「推理小説ね」
「それです。それを読んでひどく感銘を受けました。だから私も一つ作り上げてみたんですよ」
霊夢は煩そうに手を振る。
「そういう面倒なのはパス」
「まぁまぁ、そう言わずに聞いてくださいな。…で、霧雨魔理沙の死体の近くには霧雨魔理沙の記したであろう…えぇと…ダ…ダイニングメッセージ?…があったのです!」
「台所ではないぜ」
「ん?」
「あら、魔理沙」
文が声のした方に目をやると、話題の本人霧雨魔理沙が居間の入り口に立っていた。
「ダイイングだダイイング」
「なるほど」と文は頷く。
「そのダイビングメッセージがあったのです」
「飛び込んでるのか。っつーか、普通に話を進めるな。お前推理小説をぶつにしたって何で私を殺すんだよ」
魔理沙は呆れながら霊夢の隣に座った。
「特に人選に関して意味はありません。どうも通例に従えば人を殺すものらしいですから」
澄ましていう文。魔理沙はやれやれと首をふる。
「まぁいいや。私も非常に暇だったんだ。聞いてやるから話を続けろよ」
「言わずもがなです。霧雨魔理沙は死の直前犯人の名前を記そうと、地面に『中』という文字を書き、息絶えていたのです」
「中?中って…真ん中とかの中でしょ?」
霊夢はテーブルに書き示しながら文に尋ねた。文は首肯する。
「そうです。つまり、四角を貫くように縦線が入ってる図形…ということですね」
「やっぱり『中』じゃないか」
「ふぅん…それって~…」
霊夢がしらけた目を文に向ける。
「おっと、早計は身を滅ぼしますよ!話はまだ続きます。霧雨魔理沙が殺された晩に、紅魔館をうろついていた妖怪は数体いたのです」
「数体?そんなことはないでしょ」
文は唇を窄める。
「そこは、フィクションですから。容疑者が絞れているのは推理小説の基本です」
「それで?その容疑者ってのは?」
「まずは当然紅魔館の館主、レミリアさんですね。続きメイドの咲夜、門番の美鈴…」
「…美鈴?」
霊夢が眉を顰める。
「?何か?」
「…読者には不親切ね」
「何の話ですか?」
とうぜんこちらの話。
「どうでもいいから続きは?」
「はぁ…えぇと、次いでたまたま来ていた妖怪ミスティアさん。それからたまたま来ていた妖怪ルーミアさん。更にたまたま来ていた妖精チルノさん最後にたまたま来ていた式神橙さん…とまぁそんなところで」
「何々?まとめてレミリア、咲夜、美鈴、ミスティア、ルーミア、チルノ、橙…」
魔理沙は指折り数えていく。
「え?」
文は何を不審に思ったのか、一瞬不思議そうな顔をした。
「ん?どうかしたのか?まだ誰かいるのか?」
「…いえ、それで全員ですよ?」
霊夢はお茶を一口飲んだ。
「一つ、確認しておくけど…『中』の文字は確実に魔理沙が書いたってこと…さらにそれは直接犯人を示すもので良いのね?」
「そこは、OKです。そういう話ですから」
ふむ、と少し考える霊夢を見て文は満足そうに頷いた。
「さ、犯人だ~れだ!」
《ここで無謀にも読者への挑戦!はたしてダイイングメッセージが示すのは一体誰なのだろうか!?霊夢がぽつりと漏らした通り、これは非常に読者に対し不親切なメッセージである!東方に対する事前知識も必要である!しかし、三秒は考えてほしい!考えが纏まった方は解決編へGO!》
「さ~どうですか~?犯人解りましたか~?」
文がにやにや笑いながら言う。
「ふっふっふ…私には解ったぜ!」
魔理沙が不敵に笑う。
「ずばり!犯人は中国だっ!」
「中国というのは美鈴さんですね?」
「おう!『中』なんてのはそれ以外考えられない!」
「っぶ~~~~っ!」
文は嬉しそうに目の前で腕を交差させ大きく×を作った。
「なっ…なにぃ!?」
が~ん!となる魔理沙。
「まんまと嵌りましたね…私は言ったはずですよ?犯人の名前を記そうとしたって!」
「な…名前じゃないかっ!」
「それは、通称ですよ~、名前じゃないですから駄目です」
にやにや…
「っく~…じゃあ一体誰なんだよ?『中』なんて名前の奴居ないぜ?」
「ふふふ…降参ですか?」
文は嬉しそうに二人の顔を見る。
「…犯人はミスティアね」
霊夢がぽつりとそう呟いた。
「…!?なんだって!?」
魔理沙が驚いて霊夢を見る。文は不敵に笑う。
「ほうほう、それがご自慢の勘じゃないのなら、理由をお聞かせ願いたいですね」
「面倒ね」と、一言置いてから霊夢は説明を始めた。
「そもそも、魔理沙が書いた『中』という文字…これは『中』じゃないのよ」
「?…うん?読み方が違うのか?」
文はぎょっと目を剥く。
「そういう話じゃないのよ。この文字はそもそも二文字なの。『ロ』と『―』が混じってしまったのよ」
「ロー…?ローって…あぁ!ミスティア・ローレライのローか!」
「そう。死に際だったあんたは、『ロ』と『―』を混ぜてしまった…それが偶然にも『中』という文字を生み出したのよ」
「実際私が書いたわけじゃないけどな…でもそれって不自然だぜ?『ロー』までしか書けなかったのはまぁ肉体的限界として理解できるとして…普通なら『ミスティア』の方で書くだろ」
霊夢は薄く笑う。
「それが、この推理小説の破綻してるところなのよ」
「破綻?」
文は少し眉根を寄せる。
「どういう意味ですか?」
「魔理沙、あんたはさっきからスルーしてるけど…文の美鈴の呼び方、おかしいと思ってたでしょ?」
「え?それはどういう…」
文はたまげる。
「ん?あぁ、こいつずっと『みすず』って呼んでるな。私は別にそれでも誰のことを言ってるか解ったし…わざとかと思ってスルーしてたんだが…」
文は急にわたわたし始める。
「え!?えぇ!?『みすず』じゃないんですか!?」
「はぁ!?」
魔理沙が呆れる。
「美鈴は『メイリン』って読むぜ?お前…それ、素かよ…そう言えば私が『メイリン』って言ったとき変な顔してたもんな」
霊夢が言う。
「そう、これが最大のポイントなの」
「え?『みすず』って呼んでるのが?」
「文は『メイリン』のことを『みすず』だと思っていた…さて、この違いがもたらすものは何かしら?」
「さぁ…?何かあるか?」
「さっきのダイイングメッセージの話に戻すわよ?魔理沙は死に際、せいぜい二文字程度を書く体力しか残っていないかった。…犯人はミスティア。さぁ、なんて書く?」
「『ミス』?」
「よね?でも文は『メイリン』を『みすず』だと思っていた。つまり、当然作中の魔理沙も『メイリン』のことを『みすず』だと思っていることになる。つまりダイイングメッセージは同じく…」
「『ミス』になるのか」
「そう、『ミス』だけでは犯人の特定は出来ないと判断した作中の魔理沙は苗字の二文字、『ロー』と記した…つもりだったけど…」
「『中』になったと!あぁ、なるほどな!」
「実際なら美鈴は『みすず』ではいし、魔理沙はそのことを知ってるからダイイングメッセージは素直に『ミス』となるわよね。…だから、私はこの推理は破綻していると言ったの」
「ふぎゅ~…参りました…」
文は項垂れる。
「これで、お茶っ葉一年は安泰ね」
「えぇ!?そんな賭けした憶えはないですよ?」
「まさに『中』の悲劇だぜ」
《終わり》
《特別おまけ推理小説!白玉楼の悲劇》
「きゃーー!」
「どうした妖夢!?」
「いま、凶悪な変態が…っ!」
「なにぃ!?どんな奴だった!?」
「眼鏡の…男でした」
《推理材料は十分に出揃った!読者諸兄、是非犯人を推理に挑戦してくれたまえ!》
解決編、省略。
《!?》
「…ふぅん、それで?」
博麗霊夢はお茶を飲みながらそう言った。
「驚かないんですか?」
その情報を霊夢の元に伝えに来た文は呆れた口調で言った。
「だって嘘なんでしょ?」
「はい」
あっさりと首肯する文。
「実は外の世界の…あれ、なんて言うんですか?ややこしく人を殺す類の本…」
「推理小説ね」
「それです。それを読んでひどく感銘を受けました。だから私も一つ作り上げてみたんですよ」
霊夢は煩そうに手を振る。
「そういう面倒なのはパス」
「まぁまぁ、そう言わずに聞いてくださいな。…で、霧雨魔理沙の死体の近くには霧雨魔理沙の記したであろう…えぇと…ダ…ダイニングメッセージ?…があったのです!」
「台所ではないぜ」
「ん?」
「あら、魔理沙」
文が声のした方に目をやると、話題の本人霧雨魔理沙が居間の入り口に立っていた。
「ダイイングだダイイング」
「なるほど」と文は頷く。
「そのダイビングメッセージがあったのです」
「飛び込んでるのか。っつーか、普通に話を進めるな。お前推理小説をぶつにしたって何で私を殺すんだよ」
魔理沙は呆れながら霊夢の隣に座った。
「特に人選に関して意味はありません。どうも通例に従えば人を殺すものらしいですから」
澄ましていう文。魔理沙はやれやれと首をふる。
「まぁいいや。私も非常に暇だったんだ。聞いてやるから話を続けろよ」
「言わずもがなです。霧雨魔理沙は死の直前犯人の名前を記そうと、地面に『中』という文字を書き、息絶えていたのです」
「中?中って…真ん中とかの中でしょ?」
霊夢はテーブルに書き示しながら文に尋ねた。文は首肯する。
「そうです。つまり、四角を貫くように縦線が入ってる図形…ということですね」
「やっぱり『中』じゃないか」
「ふぅん…それって~…」
霊夢がしらけた目を文に向ける。
「おっと、早計は身を滅ぼしますよ!話はまだ続きます。霧雨魔理沙が殺された晩に、紅魔館をうろついていた妖怪は数体いたのです」
「数体?そんなことはないでしょ」
文は唇を窄める。
「そこは、フィクションですから。容疑者が絞れているのは推理小説の基本です」
「それで?その容疑者ってのは?」
「まずは当然紅魔館の館主、レミリアさんですね。続きメイドの咲夜、門番の美鈴…」
「…美鈴?」
霊夢が眉を顰める。
「?何か?」
「…読者には不親切ね」
「何の話ですか?」
とうぜんこちらの話。
「どうでもいいから続きは?」
「はぁ…えぇと、次いでたまたま来ていた妖怪ミスティアさん。それからたまたま来ていた妖怪ルーミアさん。更にたまたま来ていた妖精チルノさん最後にたまたま来ていた式神橙さん…とまぁそんなところで」
「何々?まとめてレミリア、咲夜、美鈴、ミスティア、ルーミア、チルノ、橙…」
魔理沙は指折り数えていく。
「え?」
文は何を不審に思ったのか、一瞬不思議そうな顔をした。
「ん?どうかしたのか?まだ誰かいるのか?」
「…いえ、それで全員ですよ?」
霊夢はお茶を一口飲んだ。
「一つ、確認しておくけど…『中』の文字は確実に魔理沙が書いたってこと…さらにそれは直接犯人を示すもので良いのね?」
「そこは、OKです。そういう話ですから」
ふむ、と少し考える霊夢を見て文は満足そうに頷いた。
「さ、犯人だ~れだ!」
《ここで無謀にも読者への挑戦!はたしてダイイングメッセージが示すのは一体誰なのだろうか!?霊夢がぽつりと漏らした通り、これは非常に読者に対し不親切なメッセージである!東方に対する事前知識も必要である!しかし、三秒は考えてほしい!考えが纏まった方は解決編へGO!》
「さ~どうですか~?犯人解りましたか~?」
文がにやにや笑いながら言う。
「ふっふっふ…私には解ったぜ!」
魔理沙が不敵に笑う。
「ずばり!犯人は中国だっ!」
「中国というのは美鈴さんですね?」
「おう!『中』なんてのはそれ以外考えられない!」
「っぶ~~~~っ!」
文は嬉しそうに目の前で腕を交差させ大きく×を作った。
「なっ…なにぃ!?」
が~ん!となる魔理沙。
「まんまと嵌りましたね…私は言ったはずですよ?犯人の名前を記そうとしたって!」
「な…名前じゃないかっ!」
「それは、通称ですよ~、名前じゃないですから駄目です」
にやにや…
「っく~…じゃあ一体誰なんだよ?『中』なんて名前の奴居ないぜ?」
「ふふふ…降参ですか?」
文は嬉しそうに二人の顔を見る。
「…犯人はミスティアね」
霊夢がぽつりとそう呟いた。
「…!?なんだって!?」
魔理沙が驚いて霊夢を見る。文は不敵に笑う。
「ほうほう、それがご自慢の勘じゃないのなら、理由をお聞かせ願いたいですね」
「面倒ね」と、一言置いてから霊夢は説明を始めた。
「そもそも、魔理沙が書いた『中』という文字…これは『中』じゃないのよ」
「?…うん?読み方が違うのか?」
文はぎょっと目を剥く。
「そういう話じゃないのよ。この文字はそもそも二文字なの。『ロ』と『―』が混じってしまったのよ」
「ロー…?ローって…あぁ!ミスティア・ローレライのローか!」
「そう。死に際だったあんたは、『ロ』と『―』を混ぜてしまった…それが偶然にも『中』という文字を生み出したのよ」
「実際私が書いたわけじゃないけどな…でもそれって不自然だぜ?『ロー』までしか書けなかったのはまぁ肉体的限界として理解できるとして…普通なら『ミスティア』の方で書くだろ」
霊夢は薄く笑う。
「それが、この推理小説の破綻してるところなのよ」
「破綻?」
文は少し眉根を寄せる。
「どういう意味ですか?」
「魔理沙、あんたはさっきからスルーしてるけど…文の美鈴の呼び方、おかしいと思ってたでしょ?」
「え?それはどういう…」
文はたまげる。
「ん?あぁ、こいつずっと『みすず』って呼んでるな。私は別にそれでも誰のことを言ってるか解ったし…わざとかと思ってスルーしてたんだが…」
文は急にわたわたし始める。
「え!?えぇ!?『みすず』じゃないんですか!?」
「はぁ!?」
魔理沙が呆れる。
「美鈴は『メイリン』って読むぜ?お前…それ、素かよ…そう言えば私が『メイリン』って言ったとき変な顔してたもんな」
霊夢が言う。
「そう、これが最大のポイントなの」
「え?『みすず』って呼んでるのが?」
「文は『メイリン』のことを『みすず』だと思っていた…さて、この違いがもたらすものは何かしら?」
「さぁ…?何かあるか?」
「さっきのダイイングメッセージの話に戻すわよ?魔理沙は死に際、せいぜい二文字程度を書く体力しか残っていないかった。…犯人はミスティア。さぁ、なんて書く?」
「『ミス』?」
「よね?でも文は『メイリン』を『みすず』だと思っていた。つまり、当然作中の魔理沙も『メイリン』のことを『みすず』だと思っていることになる。つまりダイイングメッセージは同じく…」
「『ミス』になるのか」
「そう、『ミス』だけでは犯人の特定は出来ないと判断した作中の魔理沙は苗字の二文字、『ロー』と記した…つもりだったけど…」
「『中』になったと!あぁ、なるほどな!」
「実際なら美鈴は『みすず』ではいし、魔理沙はそのことを知ってるからダイイングメッセージは素直に『ミス』となるわよね。…だから、私はこの推理は破綻していると言ったの」
「ふぎゅ~…参りました…」
文は項垂れる。
「これで、お茶っ葉一年は安泰ね」
「えぇ!?そんな賭けした憶えはないですよ?」
「まさに『中』の悲劇だぜ」
《終わり》
《特別おまけ推理小説!白玉楼の悲劇》
「きゃーー!」
「どうした妖夢!?」
「いま、凶悪な変態が…っ!」
「なにぃ!?どんな奴だった!?」
「眼鏡の…男でした」
《推理材料は十分に出揃った!読者諸兄、是非犯人を推理に挑戦してくれたまえ!》
解決編、省略。
《!?》
だがこんなんわかるか!
これはきっとメガネをかけた妖k(未来永劫斬
チュン(中)を書いたのかと思った。
俺、裏読みすぎだな。