Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

不死と妹紅と蓬莱人。

2007/01/31 13:11:13
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さて、ここまで続くといくら鈍感な私でも気付くと言う物だ。
しかし、対処法は一向にわからない、と。
「どうしたものか」
と、口に出してみるも当然答えが返ってくるわけでもない。
とりあえず片っ端から知り合いに当たってみる事にしよう。





「ふむ、面妖だな」
まず上白沢 慧音の場所へと足を運ぶ。
私はわからない事があったら大抵彼女の所へ赴く。
そして大半は解決される。なんと博識な友人をもったものか。
「いや、すまないが私では力になれそうにないな」
何でもわかると思っていた彼女にもわからない事があったのか。
妙なところで親近感が沸くというものだ。
「そんなつれない事言うなよ、私はどうすればいいんだよ」
「そうは言うがな妹紅。私だって万能じゃないんだ。すまないが他を当たってみてくれ」

何でもこれから塾を開く時間だそうだ。
まだ1月の始めだというのにご苦労なこった。
慧音の力を借りれないとなると、ここに居ても無駄だろう。
私は慧音に礼を言うと、里を離れた。

「他を当たるって言ってもなぁ」
何人か頼りになりそうな奴を頭ん中でリストアップしてみる。
「手土産でも持っていくか、折角だし」


初めて見たが予想を裏切らないな、本当に。
風情がある。といえばいいのかこの神社は。
日本語とは便利なものだな。
外の寒さのせいか、4分の1程、申し訳程度に開いている窓から中を覗き込む。
縁側に履物が置いてあったから何処かには居るだろう。
「おーい、誰か居ないかー?」
しばしの静寂の後。
スッと乾いた音を立て、ふすまが開く。
そこから霊夢が、いや正確には頭のみが姿を現した。
「何よー、賽銭以外は受け付けてないわよ」
言い方が悪かった。
恐らくコタツにでも入って寝そべっているのだろう。廊下の気温は外のそれと変わらないので、必要最低限を客に見せてきたと、そういう事だ。
「よう」
「あらま、珍しい人が来たわね。何、初詣?」
「残念だがウチの近所で済ませてきた」
軽い溜め息と共に頭部が部屋に入っていく。
何かのゲームのボスキャラみたいだな・・・。それもレトロな。
「代わりと言ってはなんだが、土産を持ってきたぞ」
土産と聞いて、上半身が廊下に出てくる。第二形態か。
外から話すのも面倒なので、勝手に中に入る。
と言うか地味に寒いんだ、外は。
「ほらよ」
霊夢に土産を手渡し、部屋の中に入る。
案の定コタツと火鉢で暖を取っていたと。
「換気しないと身体に悪いぞ」
「いいわよ~、寒いもの。・・・て、これ何?」
「見て分からないか?西瓜だ」
「わかるけど・・・、何でこんな季節に」
「驚く無かれ、今しがた収穫してきたばかりだ」
「・・食べられるの?」
「あぁ、食える」
霊夢が怪しむのも無理はない。こんな真冬に、真夏の風物詩とも言える物を手土産に渡されたら多分私だって怪しむ。
「ふむ、何だか引っかかるけどまぁいいわ。ここに来たのもどうせコレが関連してるんでしょ?」
するどい。
「あぁ、そうなんだ。実は、」


私は霊夢に一連の事件の説明をしたが、やはり霊夢も首を横にふるだけだった。
「んー、ごめんね、役に立てなくて」
「いやなに、他を当たってみるよ」
そうそう簡単に行く話でも無さそうだ。私は次の訪問先をあれこれイメージし始めた。
「他にアテとかあるの?」
「うーん、幾つか考えてはいるが」
「なら、白玉楼は?」
白玉楼というと、確かあの幽霊達の。
「その根拠は?」
「ええと、ほら。庭師が居るくらいだし、そういう事にも詳しいかな、なんて」
ようするにただの思いつきか。まぁ、特に断る理由も無い。
「そうだな、行ってみるか。じゃな」
火箸を灰に差し込み、博麗神社を後にした。


「果てしない空と大地~そして未来を旅してく~♪」
果てしないとまで感じる石段をしばらく登ると、ホウキで掃除をする音と共に、歌を口ずさむ声が聞こえてきた。
「よう」
「おや珍しい。妹紅さんじゃないですか」
やっぱりと言うか当然というか、屋敷の掃き掃除をしているのは妖夢であった。
「と、要件の前に少し休ませてくれ・・・」
柱にもたれて座り込み、息を整える。
「飛んでくればよろしかったのでは?」
「まぁ、そうだが・・・。一体何段あるんだ」
「一週間くらい前は百八段でしたけど」
「百八段ねぇ。神社じゃあるまいし、何でまた」
「さぁ・・・、紫様は考えてる事がよくわからないお人ですから」
あの「肝試し」の時に霊夢と一緒に居た奴か。
「暇なときや、それこそ気分次第でよく色々な境界を伸び縮みさせているんですよ・・・」
深い溜め息をつく。妖夢もどちらかと言えば困っているクチなのだろう。

妖夢は、立ち話も何なので。と白玉楼へ招き入れてくれた。
「それで、今日はどのようなご用件で?」
「うん・・、とりあえずコレ、土産だ」
「おや、ありがとうござい、ます?」
包みを広げた妖夢も霊夢と同じく固まる。
「あの、これは?」
「栗と松茸だな。さっき採ってきたばかりだ。勿論食えるぞ」
「新種の保存方法を編み出したとか?」
「それならそれでいいんだが・・・」
と、半ば恒例になりかけているが、実は・・・、と相談を持ちかける。

「うーん、植物が幽体化しているとか。そんなわけは無いか、ちゃんと実体はあるし・・・」
「ちなみに動物や生き物もそうだ。昨日は熊が出没したぞ」
「こんな時期にですか。普通なら冬眠してますよね」
妖夢にもわからない問題だろう。そうなると、
「そうだ、西行寺ならどうだ」
「幽々子様ですか?今日はお客様が見えてまして、」
「呼んだ?」
襖が数センチ開き、西行寺 幽々子が顔を出す。
「あら、妹紅さん、いらっしゃい。ゆっくりしてってねー」
片手をあげて軽く返事を返す。
「幽々子様、お客様は?」
「あらぁ、妹紅ー?」
思いがけない人物の声が会話に割ってはいる。
「チッ、何で貴様がここにいるんだよ!」
正直一番会いたくなかった人物だ。無論こんな場所では特に。
「ご挨拶ね。私はただ薬を届けに来ただけよ」
襖を勢いよく全開にすると、最も会いたくない二人が立っていた。
「やっほー」
蓬莱山 輝夜と、
「お久しぶりね」
八意 永琳だ。
「ふん、年中引きこもりの手前が珍しいなぁ?」
「アナタこそ、ね。あんまり他人と接する機会なんて自分からは作らなかったくせに。やっぱり私の真心のこもった肝試しがきいたかしら?」
おほほ、と皮肉を込めた含み笑いをする。
この人を小馬鹿にした様な態度。普段の私ならそれこそ即座に火球の一つや二つぶん投げているところだが。
「生憎、今お前らに構っている場合じゃねえんだ。西行寺、妖夢、邪魔したな」
「あら妖夢。珍しい物を持ってるわね?」
「はい。今しがた妹紅さんに頂いたんです」
幽々子が早速この季節には場違いな土産に気付く。
「あらぁ、松茸?・・・はっはーん」
意味深な笑みを浮かべる輝夜。
「これはアレね?永琳」
「恐らく」
二人して頷きあい、二人して視線をぶつけてくる。
「あんだよ」
「貴女の悩み事なんとなくわかっちゃった」
「あーそうかい」
踵を返し、屋敷を出ようとする。
「解決方法も、知ってるんだけどな?」



「や、やめろ!これ以上はもう無理だ!!」
「無理っスよ止めても…幻想郷一のパワープレイヤーになる為にここに来たんスから」
何やら賑やかな庭園in白玉楼。
「あらまぁ、何やってるのかしら?」
と、こちらに気付く彼女達。
「やほー、幽々子」
「何やってたの?」
「んー、テニス・・・?」
「藍まで一緒になって」
「あぁあの!その、私は・・・っ、紫様が無理やりっ」
ちょっと背が高めな少女が聞いても居ないのに弁解を始める。
「なによ、これからが良い所なのよ」
「わ、私まで巻き込まないでくださいよっ」
どうでも良いが、一見した所テニスには全く見えなかったわけだが。
そしてこういう時事ネタは力量が無いと非常に寒いと思う。あえて口に出して言わないが。
「それで?何の用かしら」
「ちょっと貴女の力を借りたいのよねぇ」
正確にはもう一人の力を借りなければならない事と、元々あまり外を出歩かない輝夜がぐずっている事を説明する。
「あのねぇ、私は某猫型ロボットじゃないのよ?」
「まぁまぁいいじゃないいいじゃない♪」
「仕方無いわねー・・・」


一方、所変わって紅魔館。
「つまり、これが一般的なスローイングナイフよ」
ヒュッ、とナイフが回転して飛び、壁に刺さる。
「ひぅっ」
「でもメイド長!メイド長が投げると真っ直ぐ飛ぶじゃないですか!」
「あぁ、これ?」
三本指の間に挟み、一度に放つ。
今度は回転せずに矢のように飛ぶ。
コン、コ、コン。と小気味良い音を立てて、壁に刺さる。
「ひいっ!」
「これは、重力制御を利用した一例ね。一般人がやろうとして出来る物じゃないわよ」
「BJとかも出来るじゃないですか」
「あー、あれはホラ・・・、漫画、だから?」
どっ、と笑いが起こる。
「で、これがブレードグリップで、」
「もぉー!いい加減にして下さいよぉ!!」
壁に磔にされている美鈴が泣き出す。
ちなみに先程からのナイフは全て彼女に向けて放たれている。
「あはは、大丈夫よぉ。これくらいなら目瞑ってても出来るわよ」
「そういう問題じゃないです!」
にゅ、と突然空間に切れ目が入り、そこから紫が出現する。
「休み時間かしら?」
「あら。えぇ、まぁそんな所です」
「丁度良かった。ちょっと一緒に来て頂戴」
「え?あ、ちょっ」
強引に腕を引っ張られ、そのまま紫と咲夜は空間の裂け目に消えていってしまった。
「さ、咲夜さんー!せめてこの鎖解いていってくださいよー!!!」


「フンフーン♪フンフフーン♪」
輝夜が鼻歌交じりで周りを散策している。
「あらぁ、綺麗ねぇ」
成り行きで付いてきた西行寺はあいかわらずのん気である。
「花だけでも桜にひまわり、キンモクセイに菊の花・・・」
誰が手入れしたわけでもないのに不思議と一面綺麗に整ったお花畑である。
「あらあら、妖夢見てー。桃に西瓜に苺に。果物も沢山あるわよ?」
「幽々子様、果物じゃない物も混ざっているようですが・・・」
ここ数ヶ月、かなり広範囲にわたって動植物に異常が発生していたのだ。
少し経てば元に戻るかな。と楽観していた私だが、ここまでの規模だと気が狂うかと思ったくらいだ。
「随分あるのねぇ」
永琳もこの広さには少々驚いているようだ。
「ちなみに私は外をほとんど出歩かなかったから、被害は少なめだったわっ!」
高らかにブイサインをかかげる輝夜。
威張れる事じゃないだろう。

「ちょっと待て」
「何よ?」
「私は。って何だ。私はって」
「私の時はって意味だけど」
「そうじゃなくてっ」
「あぁ、私も以前同じ経験をしたのよ」
コホン、と一つ咳払いをする輝夜。
「つまりね、不死がポイントよ。不・死」
「は?」
「んー、ほら。こんな経験無い?季節の変わり目に、他の人の着物を見て次の日から次の季節の着物を着てみたりとか」
「あ、あぁ」
「後は、そうね・・・。商店の「冷やし中華始めました」を見て、もう夏なんだなーって感じたり」
「それとどういう関係が?」
「つまりね、周りの動植物が勘違いをし始めたのよ。貴女を見てね」
ビシッと妹紅に向けて指を指す。
「そりゃどういう・・・」
「自分と一緒に居る人が何百年も変わらなかったらどう?ずっと一緒に居るのにその人はずっと老けないし、成長もしてないのよ?そりゃおかしくなって当然よ」
「・・・動物や植物でもか?」
「あら、動植物が人を見ていないなんて誰が決めたの?」
「そう、か」
「?妹紅・・・?」
「何か疲れた。治してくれるなら礼を言う。とりあえず先に帰って寝る」
登ってきた山道を下り、妹紅は自宅へと足早に帰っていってしまった。


「普段なら、元々は輝夜のせいだろー!とか言って突っかかってくるくせに」
何だか不満げな輝夜を制す永琳。
「その、姫。彼女は元々人間だったわけですから、それ故の苦労も色々あったと聞きます。恐らくは・・・」
「・・・つまんないのー」
自分にも少々落ち度があったと思ったのだろうか、それ以上は輝夜も何も言わなかった。
「それで?私は何をすれば?」
今まで傍観していた咲夜が口をはさむ。
「あぁ、じゃあ今から説明するわね」
「ご協力感謝します」
かくして、妹紅を悩ませた一連の事件は幕を閉じるのであった。


日も沈み、辺りが漆黒の闇に包まれる頃。
「妹紅、起きているか?」
明かりが点いていない小屋を覗く慧音。
「慧音か・・・」
布団に潜っている妹紅の返事を聞くと、
「勝手にあがるぞ」
と、布団の小脇にちょこんと座り込む慧音。
「なぁ、慧音・・・」
「何だ?妹紅」
背中を向けているので慧音には妹紅の表情はわからない。
「慧音は・・・・・・、いや、なんでもない」
慧音は、ふふっと軽く笑うと。
「妹紅が何を悩んでいるか知らないがな」
「・・・?」
「妹紅の事、私は好きだぞ」
「・・・・・・」
「さ、暖かくして。今日はゆっくり休め」
「慧音」
「何だ?」
「今日は、一緒に寝てくれないか?」
「・・・ああ、勿論いいとも」
それは強気な彼女が珍しく見せる弱気な一面。
誰にも見せたくない意外な一面を彼女達だけの胸に秘め、夜は更けていく。
二人分の寝息と共に。
やっぱり輝夜と妹紅は仲が良いと思うんですよ。
でも殺しあってるんですよね。
二人とも不器用なんですね。特に妹紅。
あくせす
コメント



1.名無し妖怪削除
どうやって解決するのかが気になる。
ぜひ続編を~
2.変身D削除
一読しただけでは話の筋が判らなかった私って一体OTZ
妹紅が妹紅してて(?)良い感じでした。