雪景色が美しく映える幻想郷、季節は冬真っ盛り
肌に突き刺す様な風が吹くこの時期に、マヨヒガではとある妖怪が冬眠していた
その妖怪の名は、八雲紫
とある閉め切られた部屋の中、柔らかく暖かいであろう布団と毛布に包まれながら紫は寝ていた
部屋では一切の音が無く、ただ静かに彼女の深い眠りを守っている
そんな部屋の襖を開け、そっと入ってきた妖獣が居た
妖獣の名は八雲藍、八雲紫の式である九尾の狐
出来る限り音を立てぬように入った藍は襖を後ろ手に閉め、静かに平伏した
「紫様の、御髪を整えさせて頂きます」
床の畳に頭を触れるか触れないかの位置まで下ろし、藍はまるで誰かに囁く程度の声で呟く
勿論返事は無い、言った本人も聞かせる為に呟いた訳ではない
頭を上げた藍は音を立てぬ様に立ち上がり、緊張した面持ちで寝ている紫に近づこうと浮き上がる
けれども紫の布団まで歩いて後三歩分の位置に来た藍の動きが止まり、まるでこれ以上前に進めないのだと言わんばかりに眉間に皺を寄せた
視線を己の主人へとあわせ、藍はは口惜しそうに歯を強く噛み締めながら静かに後退する
「・・・・・失礼を」
何の事を謝っているのかは不明だが、藍は出口の前で平伏する事も無くただ腰を折って頭を下げるに留め、静かだが素早く襖を開けて外に出る
音を出すような無作法な真似はしないが、部屋へと入る時に比べると明らかに雑かつ速くの行動に藍の気持ちが現れていた
息を止めていたのか、まるで何かを我慢していたかのように深呼吸を始めた藍は空に浮かぶ眩しい太陽を見詰めながら目を細めた
「これは無理、絶対に無理」
何が無理なのかは言わず、藍は両手でその顔をそっと覆う
「紫様の匂いに、私の理性が」
両手の隙間から、紅い液体がとろりと流れ落ちた
再度、部屋へと静かに入った藍は先程と同じ行動を取り主人へと近づく
それでも後三歩分の距離で、やはりその動きを止めた
「しょうじょしゅうめ、わたしのじゃまをするな」
何故か虚ろな目で何も居ない場所に向かって呟く藍は、そっと手を伸ばす
そして伸ばした手で何かを掻き混ぜているかのように手を動かし、ぱたりと倒れた
その程度の音で冬眠中の紫は起きなかったが、倒れた際に頭を打った衝撃で正気に戻った藍はズリズリと這いずりながら主人の寝る布団へと近づく
後三歩分、けれども所詮は三歩分
あっという間にその手が柔らかい布団へと届き、勢い余ってその右手が布団と毛布の隙間に飲み込まれた
「っ!? ぅぁっ!? 」
そっと、出来る限り静かに右手をその隙間から抜いた藍はまだ何かに触れた感触の残る手を顔に近づきようとして正気に戻る
正気に戻り、その瞳に静かな決意の光を灯した藍は右手を口に入れた
右手を口に入れた藍は、左手でほんの少しずれた毛布を掛けなおそうと持ち上げたところで何かを考え直し、布団を剥ぎ取って己の尻尾を被せる
続いて布団にも何か納得できない事があったのか、ふわりと主人を尻尾で持ち上げた後に尻尾を敷いて主人をその上に寝かせる
己の尻尾に包まれた主人に何を思ったのか
右手を口に突っ込んだまま左手で髪の解れを元に戻し、続いて服の乱れを直そうとして伸ばした左手を何故か持ち上げ、振り下ろす
「をっふぁい(あぁ紫様、私はあと1000年は闘えます)」
感極まったかのように呟き、その左手を頭の上にまで持ち上げ
「をっふぁい(なんと美しい、時よこのまま止まってしまえ)」
静かに、何かを抱きとめるように振り下ろす
「をっふぁい(貴女の式である事実が、私に取って無上の喜び)」
そんな行動を何百回と繰り返し満足したのか、紫のくずれた寝巻きを元に戻した
最後は藍の式である橙が、回転しながら放った蹴りで藍を吹き飛ばした後に紫を元の布団へと戻してマヨヒガの一日が終わる
無論、これは八雲紫が冬眠と言う永い眠りから覚めるまで毎日続くのであった
肌に突き刺す様な風が吹くこの時期に、マヨヒガではとある妖怪が冬眠していた
その妖怪の名は、八雲紫
とある閉め切られた部屋の中、柔らかく暖かいであろう布団と毛布に包まれながら紫は寝ていた
部屋では一切の音が無く、ただ静かに彼女の深い眠りを守っている
そんな部屋の襖を開け、そっと入ってきた妖獣が居た
妖獣の名は八雲藍、八雲紫の式である九尾の狐
出来る限り音を立てぬように入った藍は襖を後ろ手に閉め、静かに平伏した
「紫様の、御髪を整えさせて頂きます」
床の畳に頭を触れるか触れないかの位置まで下ろし、藍はまるで誰かに囁く程度の声で呟く
勿論返事は無い、言った本人も聞かせる為に呟いた訳ではない
頭を上げた藍は音を立てぬ様に立ち上がり、緊張した面持ちで寝ている紫に近づこうと浮き上がる
けれども紫の布団まで歩いて後三歩分の位置に来た藍の動きが止まり、まるでこれ以上前に進めないのだと言わんばかりに眉間に皺を寄せた
視線を己の主人へとあわせ、藍はは口惜しそうに歯を強く噛み締めながら静かに後退する
「・・・・・失礼を」
何の事を謝っているのかは不明だが、藍は出口の前で平伏する事も無くただ腰を折って頭を下げるに留め、静かだが素早く襖を開けて外に出る
音を出すような無作法な真似はしないが、部屋へと入る時に比べると明らかに雑かつ速くの行動に藍の気持ちが現れていた
息を止めていたのか、まるで何かを我慢していたかのように深呼吸を始めた藍は空に浮かぶ眩しい太陽を見詰めながら目を細めた
「これは無理、絶対に無理」
何が無理なのかは言わず、藍は両手でその顔をそっと覆う
「紫様の匂いに、私の理性が」
両手の隙間から、紅い液体がとろりと流れ落ちた
再度、部屋へと静かに入った藍は先程と同じ行動を取り主人へと近づく
それでも後三歩分の距離で、やはりその動きを止めた
「しょうじょしゅうめ、わたしのじゃまをするな」
何故か虚ろな目で何も居ない場所に向かって呟く藍は、そっと手を伸ばす
そして伸ばした手で何かを掻き混ぜているかのように手を動かし、ぱたりと倒れた
その程度の音で冬眠中の紫は起きなかったが、倒れた際に頭を打った衝撃で正気に戻った藍はズリズリと這いずりながら主人の寝る布団へと近づく
後三歩分、けれども所詮は三歩分
あっという間にその手が柔らかい布団へと届き、勢い余ってその右手が布団と毛布の隙間に飲み込まれた
「っ!? ぅぁっ!? 」
そっと、出来る限り静かに右手をその隙間から抜いた藍はまだ何かに触れた感触の残る手を顔に近づきようとして正気に戻る
正気に戻り、その瞳に静かな決意の光を灯した藍は右手を口に入れた
右手を口に入れた藍は、左手でほんの少しずれた毛布を掛けなおそうと持ち上げたところで何かを考え直し、布団を剥ぎ取って己の尻尾を被せる
続いて布団にも何か納得できない事があったのか、ふわりと主人を尻尾で持ち上げた後に尻尾を敷いて主人をその上に寝かせる
己の尻尾に包まれた主人に何を思ったのか
右手を口に突っ込んだまま左手で髪の解れを元に戻し、続いて服の乱れを直そうとして伸ばした左手を何故か持ち上げ、振り下ろす
「をっふぁい(あぁ紫様、私はあと1000年は闘えます)」
感極まったかのように呟き、その左手を頭の上にまで持ち上げ
「をっふぁい(なんと美しい、時よこのまま止まってしまえ)」
静かに、何かを抱きとめるように振り下ろす
「をっふぁい(貴女の式である事実が、私に取って無上の喜び)」
そんな行動を何百回と繰り返し満足したのか、紫のくずれた寝巻きを元に戻した
最後は藍の式である橙が、回転しながら放った蹴りで藍を吹き飛ばした後に紫を元の布団へと戻してマヨヒガの一日が終わる
無論、これは八雲紫が冬眠と言う永い眠りから覚めるまで毎日続くのであった
ゆっかりんりん
しょうじょしゅうにはかてないな
これは多分、漢字で書かれていなかったら吹かなかった、そんな気がする。
ひらがなでかく『しょうじょしゅう』にこんなまりょくがあるなんて。
つうか橙ご苦労だね
犯人は私。
でもここまで壊れながらも最後の一線は超えない藍様は凄いと思う……