―パチュリー・ノーレッジの研究手記―
ただの好奇心。
研究など、えてしてそんなものだ。
携わる者に必要なのはまだ見ぬ知識への渇望であり、使命感や生活のためにするようではいい結果は得られない――というのが、研究というものに対する私の持論である。
今回もそうだった。
なんとなく気になって、数えてみたら三百九十七匹いた。
レミィが蝙蝠に化けたときの話だ。
吸血鬼は、自らの体を無数の蝙蝠に変化させる能力を持つ。
体の大きさや姿形を変えられる妖怪はさして珍しくもないが、複数の独立した個体に化けるとなると話は別で、私の知る限りでもあまりいない。
そんな希少種がせっかく身近にいることだし、研究の価値があると思い立った次第である。
―○月×日―
一部の蝙蝠に加えた変化が、吸血鬼本体にどう影響するかを検証する。
まずは前提としてレミィが蝙蝠に変化する状況が必要になるわけだが、これは割合あっさりと解決した。
巫女に好かれる体質になる体操と称し、吸って吐いて背筋を伸ばしくるっと回ってはい蝙蝠、というのを伝授したら毎朝するようになった。
物陰に隠れてレミィのほほえましい体操を見守り、変身した隙に蝙蝠の一匹を捕獲。
まずは簡単に、サインでも書いてみることにする。
助手の小悪魔がこういうときは「肉」と書くのが作法だと言うので、そのようにしてみた。
サインした一匹を放し、三百九十七匹の蝙蝠が吸血鬼の姿に戻った。
噴いた。
レミィは珍しく朝から姿を見せた私に少々驚いていたものの、サインに気付いた様子もなく、そのまま二人で一緒に朝食に向かった。
テーブルの脇に控えていた咲夜と挨拶を交わした直後、レミィのサインは忽然と消えていた。
流石は完璧な従者である。
肩が少し震えていたけど。
―○月×日―
蝙蝠の個体数の変化が吸血鬼本体に与える影響を検証する。
まずは数を減らす方向でいってみよう。
レミィの愛くるしい体操を隠れて観察し、変身を確認。
出現した蝙蝠のうち二十匹を捕獲し、魔力で隔離された特製の籠に入れて戻れないようにしてみた。
隔離した分を除いた三百七十七匹の蝙蝠が、吸血鬼の姿に戻った。
理性が揺らいだ。
研究結果はその場で書きとめるのが信条なので、溢れる情熱をなんとか抑えてペンを取る。
字が多少震えているが、判読には問題あるまい。
レミィは相変わらず気付く様子もなく、おはよぱちぇ、と私に笑いかける。
ガクガク震えながら、レミィと一緒に朝食に向かった。
噴いた。
咲夜が。
鼻血を。
しかし鮮血のアーチが床に達するよりも早く、それは虚空に消えていた。
流石は瀟洒なメイド長である。
その後、隙を見てレミィを愛でようとしたが、咲夜が攻撃色を発して威嚇するので近づけなかった。
仕方がないのでその情熱は小悪魔にぶつけた。
―○月×日―
蝙蝠の個体数をさらに減らしてみることにする。
レミィのラブリー体操を見届け、蝙蝠になったところで半分ほどを一気に捕獲、隔離した。
……うろうろと群れ飛ぶ蝙蝠の様子をしばらく見るが、吸血鬼の姿には戻らない模様。
「双子の吸血幼女れみ&りあ」になるかと思っていたのだが、それなりの数が揃わないと駄目なのかもしれない。
仕方なく一匹づつ籠から解放して観察を続けると、蝙蝠の数が二百六十五匹になったところでレミィに戻った。
三分の一以上が欠けると個体とは見なされないらしい。
あんたは日本銀行券か。
ちなみに、予想はできていたが、吸血鬼に戻ったレミィは先日よりもさらに縮んでいた。
その乳臭さといったら、もう、ばんじゃ(血で汚れていて判読不能
―○月×日―
貧血がひどくてしばらく実験ができない。
とりあえず、隔離中の蝙蝠はこっそりレミィに返しておいた。
レミィの姿は問題なく元に戻ったが、それを見た咲夜は大層がっかりしていた模様。
落ち込みきった顔で食事を運ばれても気が滅入るので、だるい体に鞭打ち、魔法で門番を小さくしておいた。
咲夜はまだ少々不満そうだったが、顔にもそれなりにツヤがもどったようである。
―○月×日―
久しぶりに実験を再開する。
今度は蝙蝠の数を増やしてみよう。
レミィの蠱惑的な体操を堪能しながら待機し、無数の蝙蝠に変じるのを待つ。
それらが再びレミィの姿に戻る前に、あらかじめ捕らえておいた蝙蝠二十匹を籠から放った。
水増しされた蝙蝠もろともに吸血鬼へと戻ったレミィだったが、その姿はいささか予想とは違っていた。
大人びた容姿になるかと思いきや、そうではない。
確かに、大きくなってはいた。
体の一部が。
……私よりも。
それなりに重みもあるだろうに、身体能力の高さゆえかレミィは気付かない。
そんなレミィを見た咲夜はとても複雑な表情をしていたが、総体的にはなにかを悲しんでいるように感じられた。
おおむね不愉快な実験結果だったので、あのけしからん蝙蝠は明日にでも回収しよう。
とりあえず、この憤りは小悪魔にぶつけることにする。
―○月×日―
門番が縮んで弱体化したため侵入者が増えるかと思われたが、むしろ最近はあまりネズミを見ない。
小悪魔の話によれば、門番はあの小さいなりで門にしがみつき、侵入者をじっと見つめるだけなのだが、それで相手は戦わずして帰ってしまうのだという。
話を聞いただけでは判然としないが、縮んだショックでなにか新しい力に目覚めたのかもしれない。
なんにせよ、研究の邪魔が入らないのはいいことだ。
――といったものの、今日の実験は失敗だった。
蝙蝠の群れに小悪魔を投げ込み、レミィとフュージョンさせたらどうなるかを検証しようとしたのだ。
だが蝙蝠たちは何事もなく元の姿に戻り、無視された小悪魔はレミィの足元にそのまま突っ伏していた。
レミィに怪訝な顔で睨まれる小悪魔だったが、そこはメガネを探すふりをして切り抜けたようである。
弱小とはいえ、いきなり小悪魔のような知的生命体で試したのは勇み足だったかもしれない。
羽根生えてるし似たようなものかと思っていたのだが。
―○月×日―
猫はどうか。
使い魔として一般的な動物であるし、吸血鬼との親和性も高いだろう。
レミィの幼い体操をねぶるように鑑賞し、蝙蝠に化けたところで捕獲しておいた猫を投入した。
今度は首尾よく、猫と蝙蝠は混然一体となって吸血鬼の形をとってゆく。
噴き(血
(血血
噴きそうになったが、なんとか押しとどめた。
これまでの研究で多少なりとも免えきがついていなかったら、ま違いなくやられていただろう。
レミィはきづかずにぴこぴこうごかしてるけど、そのみみとしっぽははんそくだとおもう。
ふたりであさごはんに行き、咲夜とかおをあわせた。
彼女もここさいきんで鍛えられたためか、どうにか平静を保っているように見えた。
食後、今度こそレミィを愛でようと思っていたのに、レミィは通りすがりの毛玉にじゃれつき、そのまま外に飛び出してしまった。
咲夜は大慌てで日傘を手にレミィの後を追ったが、私はちょっとあの動きにはついていけそうにない。
やむを得ず、そのやるせない気持ちは小悪魔にぶつける。
いつのまにか攻守が逆転していた。
最近は小悪魔もなかなか侮れない。
―○月×日―
今になって気付いたが、レミィの蝙蝠をあらためて数えたら三百九十六匹しかいない。
一匹足りないのである。
魔力籠の中を確認してみるが、空っぽだった。
捕らえたものを解放し忘れたということではないようだ。
問題の一匹はどの段階で消えたのだろうか?
実験ごとに正確な数を把握していなかったことが悔やまれる。
案外、そのあたりをふらりと飛んでいるのかもしれない。
元があの気ままなお嬢様なのだし、勝手にいなくなるというのも考えられることだ。
放っておけばそのうち戻ってくるかもしれないし、数日後にでも数えなおして
「パチュリー様ぁ。そろそろお茶にしませんか?」
「ん、そうね。……あら?」
「どうかしましたか?」
「小悪魔。なんだかあなた、羽根が少したくましくなったんじゃない?」
「そうですか? えへへ。最近なんだか調子がいいんですよー♪」
~おしまい~
ただの好奇心。
研究など、えてしてそんなものだ。
携わる者に必要なのはまだ見ぬ知識への渇望であり、使命感や生活のためにするようではいい結果は得られない――というのが、研究というものに対する私の持論である。
今回もそうだった。
なんとなく気になって、数えてみたら三百九十七匹いた。
レミィが蝙蝠に化けたときの話だ。
吸血鬼は、自らの体を無数の蝙蝠に変化させる能力を持つ。
体の大きさや姿形を変えられる妖怪はさして珍しくもないが、複数の独立した個体に化けるとなると話は別で、私の知る限りでもあまりいない。
そんな希少種がせっかく身近にいることだし、研究の価値があると思い立った次第である。
―○月×日―
一部の蝙蝠に加えた変化が、吸血鬼本体にどう影響するかを検証する。
まずは前提としてレミィが蝙蝠に変化する状況が必要になるわけだが、これは割合あっさりと解決した。
巫女に好かれる体質になる体操と称し、吸って吐いて背筋を伸ばしくるっと回ってはい蝙蝠、というのを伝授したら毎朝するようになった。
物陰に隠れてレミィのほほえましい体操を見守り、変身した隙に蝙蝠の一匹を捕獲。
まずは簡単に、サインでも書いてみることにする。
助手の小悪魔がこういうときは「肉」と書くのが作法だと言うので、そのようにしてみた。
サインした一匹を放し、三百九十七匹の蝙蝠が吸血鬼の姿に戻った。
噴いた。
レミィは珍しく朝から姿を見せた私に少々驚いていたものの、サインに気付いた様子もなく、そのまま二人で一緒に朝食に向かった。
テーブルの脇に控えていた咲夜と挨拶を交わした直後、レミィのサインは忽然と消えていた。
流石は完璧な従者である。
肩が少し震えていたけど。
―○月×日―
蝙蝠の個体数の変化が吸血鬼本体に与える影響を検証する。
まずは数を減らす方向でいってみよう。
レミィの愛くるしい体操を隠れて観察し、変身を確認。
出現した蝙蝠のうち二十匹を捕獲し、魔力で隔離された特製の籠に入れて戻れないようにしてみた。
隔離した分を除いた三百七十七匹の蝙蝠が、吸血鬼の姿に戻った。
理性が揺らいだ。
研究結果はその場で書きとめるのが信条なので、溢れる情熱をなんとか抑えてペンを取る。
字が多少震えているが、判読には問題あるまい。
レミィは相変わらず気付く様子もなく、おはよぱちぇ、と私に笑いかける。
ガクガク震えながら、レミィと一緒に朝食に向かった。
噴いた。
咲夜が。
鼻血を。
しかし鮮血のアーチが床に達するよりも早く、それは虚空に消えていた。
流石は瀟洒なメイド長である。
その後、隙を見てレミィを愛でようとしたが、咲夜が攻撃色を発して威嚇するので近づけなかった。
仕方がないのでその情熱は小悪魔にぶつけた。
―○月×日―
蝙蝠の個体数をさらに減らしてみることにする。
レミィのラブリー体操を見届け、蝙蝠になったところで半分ほどを一気に捕獲、隔離した。
……うろうろと群れ飛ぶ蝙蝠の様子をしばらく見るが、吸血鬼の姿には戻らない模様。
「双子の吸血幼女れみ&りあ」になるかと思っていたのだが、それなりの数が揃わないと駄目なのかもしれない。
仕方なく一匹づつ籠から解放して観察を続けると、蝙蝠の数が二百六十五匹になったところでレミィに戻った。
三分の一以上が欠けると個体とは見なされないらしい。
あんたは日本銀行券か。
ちなみに、予想はできていたが、吸血鬼に戻ったレミィは先日よりもさらに縮んでいた。
その乳臭さといったら、もう、ばんじゃ(血で汚れていて判読不能
―○月×日―
貧血がひどくてしばらく実験ができない。
とりあえず、隔離中の蝙蝠はこっそりレミィに返しておいた。
レミィの姿は問題なく元に戻ったが、それを見た咲夜は大層がっかりしていた模様。
落ち込みきった顔で食事を運ばれても気が滅入るので、だるい体に鞭打ち、魔法で門番を小さくしておいた。
咲夜はまだ少々不満そうだったが、顔にもそれなりにツヤがもどったようである。
―○月×日―
久しぶりに実験を再開する。
今度は蝙蝠の数を増やしてみよう。
レミィの蠱惑的な体操を堪能しながら待機し、無数の蝙蝠に変じるのを待つ。
それらが再びレミィの姿に戻る前に、あらかじめ捕らえておいた蝙蝠二十匹を籠から放った。
水増しされた蝙蝠もろともに吸血鬼へと戻ったレミィだったが、その姿はいささか予想とは違っていた。
大人びた容姿になるかと思いきや、そうではない。
確かに、大きくなってはいた。
体の一部が。
……私よりも。
それなりに重みもあるだろうに、身体能力の高さゆえかレミィは気付かない。
そんなレミィを見た咲夜はとても複雑な表情をしていたが、総体的にはなにかを悲しんでいるように感じられた。
おおむね不愉快な実験結果だったので、あのけしからん蝙蝠は明日にでも回収しよう。
とりあえず、この憤りは小悪魔にぶつけることにする。
―○月×日―
門番が縮んで弱体化したため侵入者が増えるかと思われたが、むしろ最近はあまりネズミを見ない。
小悪魔の話によれば、門番はあの小さいなりで門にしがみつき、侵入者をじっと見つめるだけなのだが、それで相手は戦わずして帰ってしまうのだという。
話を聞いただけでは判然としないが、縮んだショックでなにか新しい力に目覚めたのかもしれない。
なんにせよ、研究の邪魔が入らないのはいいことだ。
――といったものの、今日の実験は失敗だった。
蝙蝠の群れに小悪魔を投げ込み、レミィとフュージョンさせたらどうなるかを検証しようとしたのだ。
だが蝙蝠たちは何事もなく元の姿に戻り、無視された小悪魔はレミィの足元にそのまま突っ伏していた。
レミィに怪訝な顔で睨まれる小悪魔だったが、そこはメガネを探すふりをして切り抜けたようである。
弱小とはいえ、いきなり小悪魔のような知的生命体で試したのは勇み足だったかもしれない。
羽根生えてるし似たようなものかと思っていたのだが。
―○月×日―
猫はどうか。
使い魔として一般的な動物であるし、吸血鬼との親和性も高いだろう。
レミィの幼い体操をねぶるように鑑賞し、蝙蝠に化けたところで捕獲しておいた猫を投入した。
今度は首尾よく、猫と蝙蝠は混然一体となって吸血鬼の形をとってゆく。
噴き(血
(血血
噴きそうになったが、なんとか押しとどめた。
これまでの研究で多少なりとも免えきがついていなかったら、ま違いなくやられていただろう。
レミィはきづかずにぴこぴこうごかしてるけど、そのみみとしっぽははんそくだとおもう。
ふたりであさごはんに行き、咲夜とかおをあわせた。
彼女もここさいきんで鍛えられたためか、どうにか平静を保っているように見えた。
食後、今度こそレミィを愛でようと思っていたのに、レミィは通りすがりの毛玉にじゃれつき、そのまま外に飛び出してしまった。
咲夜は大慌てで日傘を手にレミィの後を追ったが、私はちょっとあの動きにはついていけそうにない。
やむを得ず、そのやるせない気持ちは小悪魔にぶつける。
いつのまにか攻守が逆転していた。
最近は小悪魔もなかなか侮れない。
―○月×日―
今になって気付いたが、レミィの蝙蝠をあらためて数えたら三百九十六匹しかいない。
一匹足りないのである。
魔力籠の中を確認してみるが、空っぽだった。
捕らえたものを解放し忘れたということではないようだ。
問題の一匹はどの段階で消えたのだろうか?
実験ごとに正確な数を把握していなかったことが悔やまれる。
案外、そのあたりをふらりと飛んでいるのかもしれない。
元があの気ままなお嬢様なのだし、勝手にいなくなるというのも考えられることだ。
放っておけばそのうち戻ってくるかもしれないし、数日後にでも数えなおして
「パチュリー様ぁ。そろそろお茶にしませんか?」
「ん、そうね。……あら?」
「どうかしましたか?」
「小悪魔。なんだかあなた、羽根が少したくましくなったんじゃない?」
「そうですか? えへへ。最近なんだか調子がいいんですよー♪」
~おしまい~
美鈴ww
今度はちょっと外出して、拡散する鬼を更に小s(ry
紅魔館には本当に変態しか居ないのかwwww
「あー…なんだ…今日はやめておくぜ」
日本銀行券噴いた。
幼女中国の一日みてぇ
ついでに妹様も体操に加わってくれるとめちゃ嬉しい
だめでした(鼻血
れみりゃは意図的に生産可能だったのか。
(゚∀゚)
…個人的には、どうせならネコミミモードかつ巨乳なれみりゃも見てみた(裁かれました
しかし、れみりぁにちび美鈴とは。咲夜さん血足りてるのか