注:この作品は東方創想話(プチでもミニでもない方の作品集その37)に投下したSS「夏の巫女と魔法使いと妖精と変態」のおまけです。
「うぁっ!」
「あら、もう終わり?」
霊夢の弾を受け、チルノの体力が無くなった。今回の弾幕ごっこも、チルノの敗北である。
チルノは、あの日以来霊夢に勝負を挑み続けているのだが、すべて敗北している。
「うぅ…ま~た~ま~け~た~…」
「さ、今日もよろしくね♪」
「…勝手にしろー!」
霊夢がチルノに抱きつく。チルノは氷の妖精なので、夏は冷たくて気持ちいいらしい。
「あ~♪気持ちいい~♪」
「霊夢~、それ毎回言ってない?」
「いいじゃない、気持ちいいんだから」
「まあそんなことはどうでもいいけど…あーつーいー…」
暑がるチルノを尻目に、霊夢はお茶をすする。もちろん、湯気が立っている。
「って、霊夢…それ飲んでるから暑いんじゃない?」
「だからあなたで涼んでいるのよ」
「飲まなかったら涼む必要も無いんじゃない?」
「お茶が飲みたいから涼んでいるのよ」
だめだ。微妙に話がかみ合っていない。
チルノは説得をあきらめた。
「ねぇ霊夢~…いつまで続けるの?」
「日が落ちて涼しくなるまでよ」
何日も繰り返して暑さに慣れてきたとはいえ、やっぱり暑いので早く帰りたい。
でも霊夢はそれを許してくれない。
悔しい。
毎日こんな感じに、何もできずにただ抱きしめられているだけ。
――最近は少しドキドキしてきたりするけど。
チルノは、何かしかえしの方法はないかと思ってあたりを探す。
右を見る。
だけど何も無い。
左を見る。
だけど何も無い。
前を見る。
――あった。妖怪はどうか知らないが、人間は大切にしているものが。
「…ねぇ、霊夢…」
「なに?」
霊夢が振り向いたとたん、
…ふたりの唇が合わさった。
「…!?」
「…ふふ、どう?」
チルノはニヤリとして霊夢を見る。
「…初めてだったのに…」
「あれ、てっきり魔理沙とかとしてると思ったのに…」
「魔理沙は友達よ、普通友達とする?」
「…あたい、友達としたことあるけどな~?」
「えぇっ!?」
霊夢は、チルノのその一言に驚いた。
自分より子供――実年齢は知らないけど、少なくとも精神年齢は――なチルノに、先を越されていたなんて。
「…あたいが小さいとき、あたいとしたことが溺れちゃって、そのとき大妖精が人工呼吸してくれたの」
「…なんだ」
霊夢は安心した。
だけど、チルノは勝ち誇ったような顔をしている。
なんだかそれがひどく悔しい。悔しくてたまらない。
かといって『そんなのキスのうちに入らない』などと言っても、負け惜しみにとられるのが落ちだろう。
それならば。
今度は霊夢から顔を寄せ、唇を触れ合わせた。
…しかも、唇だけでなく、舌まで触れ合わせた。
「!?」
「どう?驚いた?
大人のキスって言うのは、こうするものなのよ」
チルノは驚きでしばらく硬直していたが、やがて口を開き言い返す。
「さっきまでちゅーしたこと無かった人が、何言ってるのよ」
「あなたこそ、さっきの話のなんてキスのうちに入らないわよ。
大体、『ちゅー』って何よ、子供の言い方じゃない」
「むー、バカにしたなぁ!
そんなに言うんだったらあたいも『大人のキス』とやらをやってやるー!」
チルノが舌を入れてキスをする。
今度は霊夢もそれを受け入れる。
自然と二人は床に倒れこむ。
…こういう時、漫画とかでは必ず邪魔が入るものである。
「よう霊夢、またやって…」
霧雨魔理沙。なんと基本に忠実な少女であろうか。
とりあえず、前回と違って今回は本当に変なことをしているし、しかも真っ最中なので弁解の余地は無い。
「…ああ、悪い。邪魔した」
「ま、魔理沙!いつからそこに!?」
「今さっきだぜ。安心しろ、今白玉楼にいる人形師とかそれを取材しているブン屋みたいに騒いだりはしないから。じゃ」
そういって箒にまたがると、すごいスピードで去っていった。魔理沙の自己新記録となるほどのスピードだが、誰も気付く者はいない。
「あー…逃げられた…まあ魔理沙なら大丈夫だと思うけど…」
「うぅ…恥ずかしい…でもあの新聞カラスじゃないだけマシね…」
二人とも、顔を赤らめている。勢いによる行為だったために、後から恥ずかしさが来るようだ。
しばらく二人とも何も話せなかったが、やがて霊夢が口を開いた。
「…ねぇ」
「…なに?」
「…さっきのこと、後悔してる?」
「…ううん、…恥ずかしかったけど…後悔はしてない」
「そう…」
「霊夢は?」
「私も後悔はしてない」
「…よかった」
自然と二人は寄り添っていた。
今のチルノには霊夢の体温が温かく感じられた。
★★★
季節が巡り、冬が来た。
地上のほとんどの生物の活動が鈍くなる季節である。
それは幻想郷でも同じ。
違うのは、黒幕と氷精だけは元気になる季節でもあるということである。
…だが、今年の氷精は様子が違った。
「…ねぇ霊夢、寒くないの?」
チルノはまだ霊夢に抱きつかれていた。
「ううん…むしろ暑いぐらいよ?」
「暑いって、そんなはずは…って熱い!すごい熱だよ!」
「へ~?」
「ほら、早く暖かくして寝ないと!布団布団!」
「え~ちるののえっち~」
「な、何でそうなるの!?今日の霊夢本格的におかしいよ!頼むから寝て!」
霊夢は強制的に布団に寝かされた。
薬を飲んだ後、霊夢は眠りについた。
「…かわいい寝顔」
ぷにぷに。
指で寝顔をつつく。
「ほんと、こうしていると幻想郷最強のはずのあたいが勝てない相手には見えないわ」
…誰もチルノのセリフに突っ込むものはいない。
「…だーれが、最強ですって?」
…いた。
「あ、霊夢、起きてたの?」
「そりゃ、ほほつつかれればね。
まったく…普通立場逆じゃないの?私が風邪引いてチルノに看病されるなんて…
まあでも、バカは風邪ひかないって言うしね~」
「む~、なんであたいがバカなのよ!」
「愛情表現がいっつもキスばっかりだからよ。そういうのを『バカのひとつ覚え』って言うのよ」
「それを言ったら霊夢だっていっつも抱きついてくるじゃない」
「あら、私はキスもするわよ?」
「…じゃあ…
…霊夢、大好き」
「え?」
「…言葉で伝えたのは初めてだよね?
どう?これでバカのひとつ覚えなんていわせないよ!」
「…バカね」
「なんでよ!」
「言葉なんて当てにならないもの。だから…」
「…うん」
二人はまた、深い口付けを交わした。
END
「うぁっ!」
「あら、もう終わり?」
霊夢の弾を受け、チルノの体力が無くなった。今回の弾幕ごっこも、チルノの敗北である。
チルノは、あの日以来霊夢に勝負を挑み続けているのだが、すべて敗北している。
「うぅ…ま~た~ま~け~た~…」
「さ、今日もよろしくね♪」
「…勝手にしろー!」
霊夢がチルノに抱きつく。チルノは氷の妖精なので、夏は冷たくて気持ちいいらしい。
「あ~♪気持ちいい~♪」
「霊夢~、それ毎回言ってない?」
「いいじゃない、気持ちいいんだから」
「まあそんなことはどうでもいいけど…あーつーいー…」
暑がるチルノを尻目に、霊夢はお茶をすする。もちろん、湯気が立っている。
「って、霊夢…それ飲んでるから暑いんじゃない?」
「だからあなたで涼んでいるのよ」
「飲まなかったら涼む必要も無いんじゃない?」
「お茶が飲みたいから涼んでいるのよ」
だめだ。微妙に話がかみ合っていない。
チルノは説得をあきらめた。
「ねぇ霊夢~…いつまで続けるの?」
「日が落ちて涼しくなるまでよ」
何日も繰り返して暑さに慣れてきたとはいえ、やっぱり暑いので早く帰りたい。
でも霊夢はそれを許してくれない。
悔しい。
毎日こんな感じに、何もできずにただ抱きしめられているだけ。
――最近は少しドキドキしてきたりするけど。
チルノは、何かしかえしの方法はないかと思ってあたりを探す。
右を見る。
だけど何も無い。
左を見る。
だけど何も無い。
前を見る。
――あった。妖怪はどうか知らないが、人間は大切にしているものが。
「…ねぇ、霊夢…」
「なに?」
霊夢が振り向いたとたん、
…ふたりの唇が合わさった。
「…!?」
「…ふふ、どう?」
チルノはニヤリとして霊夢を見る。
「…初めてだったのに…」
「あれ、てっきり魔理沙とかとしてると思ったのに…」
「魔理沙は友達よ、普通友達とする?」
「…あたい、友達としたことあるけどな~?」
「えぇっ!?」
霊夢は、チルノのその一言に驚いた。
自分より子供――実年齢は知らないけど、少なくとも精神年齢は――なチルノに、先を越されていたなんて。
「…あたいが小さいとき、あたいとしたことが溺れちゃって、そのとき大妖精が人工呼吸してくれたの」
「…なんだ」
霊夢は安心した。
だけど、チルノは勝ち誇ったような顔をしている。
なんだかそれがひどく悔しい。悔しくてたまらない。
かといって『そんなのキスのうちに入らない』などと言っても、負け惜しみにとられるのが落ちだろう。
それならば。
今度は霊夢から顔を寄せ、唇を触れ合わせた。
…しかも、唇だけでなく、舌まで触れ合わせた。
「!?」
「どう?驚いた?
大人のキスって言うのは、こうするものなのよ」
チルノは驚きでしばらく硬直していたが、やがて口を開き言い返す。
「さっきまでちゅーしたこと無かった人が、何言ってるのよ」
「あなたこそ、さっきの話のなんてキスのうちに入らないわよ。
大体、『ちゅー』って何よ、子供の言い方じゃない」
「むー、バカにしたなぁ!
そんなに言うんだったらあたいも『大人のキス』とやらをやってやるー!」
チルノが舌を入れてキスをする。
今度は霊夢もそれを受け入れる。
自然と二人は床に倒れこむ。
…こういう時、漫画とかでは必ず邪魔が入るものである。
「よう霊夢、またやって…」
霧雨魔理沙。なんと基本に忠実な少女であろうか。
とりあえず、前回と違って今回は本当に変なことをしているし、しかも真っ最中なので弁解の余地は無い。
「…ああ、悪い。邪魔した」
「ま、魔理沙!いつからそこに!?」
「今さっきだぜ。安心しろ、今白玉楼にいる人形師とかそれを取材しているブン屋みたいに騒いだりはしないから。じゃ」
そういって箒にまたがると、すごいスピードで去っていった。魔理沙の自己新記録となるほどのスピードだが、誰も気付く者はいない。
「あー…逃げられた…まあ魔理沙なら大丈夫だと思うけど…」
「うぅ…恥ずかしい…でもあの新聞カラスじゃないだけマシね…」
二人とも、顔を赤らめている。勢いによる行為だったために、後から恥ずかしさが来るようだ。
しばらく二人とも何も話せなかったが、やがて霊夢が口を開いた。
「…ねぇ」
「…なに?」
「…さっきのこと、後悔してる?」
「…ううん、…恥ずかしかったけど…後悔はしてない」
「そう…」
「霊夢は?」
「私も後悔はしてない」
「…よかった」
自然と二人は寄り添っていた。
今のチルノには霊夢の体温が温かく感じられた。
★★★
季節が巡り、冬が来た。
地上のほとんどの生物の活動が鈍くなる季節である。
それは幻想郷でも同じ。
違うのは、黒幕と氷精だけは元気になる季節でもあるということである。
…だが、今年の氷精は様子が違った。
「…ねぇ霊夢、寒くないの?」
チルノはまだ霊夢に抱きつかれていた。
「ううん…むしろ暑いぐらいよ?」
「暑いって、そんなはずは…って熱い!すごい熱だよ!」
「へ~?」
「ほら、早く暖かくして寝ないと!布団布団!」
「え~ちるののえっち~」
「な、何でそうなるの!?今日の霊夢本格的におかしいよ!頼むから寝て!」
霊夢は強制的に布団に寝かされた。
薬を飲んだ後、霊夢は眠りについた。
「…かわいい寝顔」
ぷにぷに。
指で寝顔をつつく。
「ほんと、こうしていると幻想郷最強のはずのあたいが勝てない相手には見えないわ」
…誰もチルノのセリフに突っ込むものはいない。
「…だーれが、最強ですって?」
…いた。
「あ、霊夢、起きてたの?」
「そりゃ、ほほつつかれればね。
まったく…普通立場逆じゃないの?私が風邪引いてチルノに看病されるなんて…
まあでも、バカは風邪ひかないって言うしね~」
「む~、なんであたいがバカなのよ!」
「愛情表現がいっつもキスばっかりだからよ。そういうのを『バカのひとつ覚え』って言うのよ」
「それを言ったら霊夢だっていっつも抱きついてくるじゃない」
「あら、私はキスもするわよ?」
「…じゃあ…
…霊夢、大好き」
「え?」
「…言葉で伝えたのは初めてだよね?
どう?これでバカのひとつ覚えなんていわせないよ!」
「…バカね」
「なんでよ!」
「言葉なんて当てにならないもの。だから…」
「…うん」
二人はまた、深い口付けを交わした。
END
GJ!
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