「今生最後の流れ星だ。何もお祈りしねえのか」
――平野耕太『彼らの週末』より
* * *
――ねえ魔理沙。
「なんだ、私は忙しいんだ」
――うそ。あんたが忙しいなんてのはどうせ暇を潰すのに忙しいとか、そんなんでしょう。
「ごろごろするのに忙しいのさ」
――大して変わんないわ。
「そんなこたーない、暇なのはなんともすることがないが、ごろごろするのはすることがあるのだ」
――ちょっと言い換えただけでしょうに。
「ああ一々五月蝿い奴だな。五月蝿い五月蝿い」
――何よ。
「良いじゃないか。最後の日ぐらい、ごろごろしたって」
――そりゃあんまり非生産的じゃないの?
「じゃあ何か、お前は何か生産的な諸活動を送ろうって言うのか」
――悪いの?
「そりゃあんまり虫が良すぎる。いいかアリス、ある古典的SFにだな、こんな台詞がある――
『きみはここにいるんだ、レスペア。すべては終ったんだ。すべては、なかったも同然だ。そうじゃないか?』
『ちがう』
『どんなことでも、終ってしまえば、なかったとおなじだ。今という今、きみの人生はおれの人生よりも楽しかったと言えるか? 問題は今なんだ。どうだい、きみの人生は、おれの人生より楽しかったか。え?』
『そうさ、楽しかったとも!』
『なぜ!』
『なぜって、おれにはおれの思うことがある。思い出がある!』
――とな」
――だから何よ。
「ふふん、人生が終わろうという時、その人間の人生の価値というものは何かといえば、思い出にあると云うことだよ、アリス君」
――もう遅いっていうの?
「まあ遅いんじゃないかと思うぜー?」
――遅かないわよ。今から作りに行こうっていうのよ。
「今から?」
――そう。
「行ってらっしゃあい」
――あんたも行くの!
「そんな面倒な」
――いいから行くったら行くの!
「あ、ちょっと引っ張るなって、分ったって、分ったから!」
* * *
「お、ここだぜここ」
――なによ。
「ここじゃあないかここ」
――だからどうしたのよ。
「なんだ覚えてないのか」
――?
「記念すべき場所だぜ」
――勿体付けないでよ。
「ちっとは考えて見なよ」
――時間がないのよ。
「ああ今日ばかりはそんな胡散臭い言い訳も説得力があるな、ウン」
――何なのよ。
「本当に覚えてないのか」
――先に行くわよ。
「お前と会った場所じゃないか、初めて」
――?
「ここで」
――ああ。
「ここだろ」
――そうね。
「懐かしいだろ」
――よく覚えてたわね。
「何だ、お前さんは忘れちまったのかい」
――そんなことはないわよ。
「忘れちまったって顔してるぜ」
――そんなことはないわ。あの頃のあんたが全然小さかったの、覚えてるもの。
「へえ」
――あなた小っちゃくて、可愛かったわよ。
「ふうん。今は可愛くないみたいな言い草だな」
――何言ってんのよ。
「どうなんだよ」
――何よ。
「今は?」
――……
「気の利かない奴だ」
――可愛いわよ。
「お」
――行くわよ。
「聞えなかったなあ。もう一ぺん言ってくんない?」
――一度きりしか言わないわ。
「顔赤くなってるぜ」
――うるさいわね。
「もう一ぺん言ってよ」
――うるさいわ。
* * *
「おお見ろアリス。我らが霊夢の奴はこんな日だってのに呑気に境内の掃除をしているぞ」
――そうね。
「ついでだから邪魔してやろう」
「邪魔するんなら帰ってくんない?」
「良いじゃないか、どうせ邪魔できるのも今日で最後だ」
――最後だから良いって訳じゃないでしょ。
「お堅い事を言いなさんな……時に霊夢」
「何よ」
「喉が渇いたな」
――私も。
「あんたらに茶を入れるのも最後だわ」
「ふむ、やはり霊夢の入れる茶は甘いぜ」
「飲んだらさっさと出て来なさいよ」
――厭に急くじゃないの。
「あんたたちにも言っておいたでしょ。今日はこれから宴会よ」
「ああ」
――そういえば。
「だから掃除も済まない前にマッタリされても困るのよ。ほら出てった出てった」
「良いじゃないかもう少しゆっくりしてっても。今生の別れだぜー?」
「何よ、あんたたち来ないの?」
「あー私は出る積りだったんだがなー。こいつがどうしても『二人っきりじゃなきゃ嫌ー!』 っていうもんだからー」
――誇張すんじゃないわよ。
「似たようなものじゃないか」
「あー分ったわよ。別に今すぐ出てけとは言わないから、掃除の邪魔すんじゃないわよ」
――怒ってったわ。
「気の短い奴だ」
――あんたが迷惑を掛けるからでしょ。
「気にすんなって。どーせ今夜でチャラよチャラ」
――チャラだったら何しても良いわけじゃないでしょ。
「説経すんのは無しだぜ、アリス」
――別にしないわよ。
「それにしてもなー。霊夢の奴もよく掃除なんてする気になるわ」
――どうして?
「どうしてって、明日から一体誰がこんなチンケな神社に参拝しに来れると思うんだ?」
――そう? 別に良いじゃない。
「何でさ」
――「『わたし、もうひとつ、したいことがあるの』とメアリーはいった。」
「……ん?」
――「『ここんところに、花の咲く、ゴムの木を植えるのよ。夏になると、きれいだと思うわ』
『花が咲くまでには五年かかるよ』と、ピーターはいった。
『いいじゃないの。ゴムの木の向こうに、海の青い色が見えるのはすてきだわ。寝室の窓から眺めることができてよ』」
「……何それ」
――昔のSFの話よ。
「それで何が言いたいんだよ」
――霊夢は信じてるって話をしたかったのよ。
「何を?」
――さあね、自分で考えて御覧なさいって話よ。
* * *
――一番高いところよ。
「何でこんなとこまで来るんだ?」
――ここなら見えるでしょう。
「見えるっちゃあ見えるだろうけど……」
――何よ。
「寒いぜ」
――私だって寒いわ。
「何とかしろよ」
――これぐらい我慢しなさい。
「何だ気の利かないやつだな」
――?
「こうすりゃ寒く無いだろ」
――。
「……な?」
――うん。
「驚いたか?」
――うん。
「急に大人しくなったな」
――恥ずかしいのよ。
「別に恥じるこたないだろう」
――……。
「最後ぐらいな」
――うん。
「……」
――ねえ。
「……ん?」
――私……
「……待った」
――え?
「それどういうタイプの台詞?」
――どういうって?
「いや、死ぬ前っぽい台詞?」
――悪いの?
「悪いね」
――どうして。
「未練が残っちまうじゃないか」
――でも。
「どうせなら後腐れも無くがいいね」
――私は……
「分かってるよ、アリス、言わないでも分かる」
――……
「言いたい?」
――うん。
「仕方ないな、いいぜ、真面目に聞いてやる」
――ほんとに?
「ほんとだ」
――じゃ、じゃあ、言うわよ。
「どーぞ」
――わ、私は……
* * *
――空が。
「大分明るくなって来たな。ああ、あれがそうかな、シュワスマン何とか彗星」
――そうね。
「あれが落ちてくんのかね」
――そうでしょ。
「景気のいい話だな」
――ちっとも良か無いわよ。
「そうかー? 随分いい話だと思うけどな」
――何で。
「だってさ、多分、天地開闢以来、死んだ人間は幾らでも居ただろうけど……、みんなと一緒に死ねる奴は、今日生きてた奴だけだぜ? 盛大ここに極まれりだぜ」
――ああ。
「心中だぜ、心中。中々ロマンのある」
――ないない。
「無いの?」
――無いわよ。心中なんて、死んだらお終いじゃない。
「そっかなー」
――そうよ。
「でもロマンを感じるんだけどなー」
――そりゃあんたのものの感じ方がおかしいのよ。
「いつぞやまではロマンがあったじゃないか、天国に結ぶ恋」
――知らないわよ。
「……なんだ。私と死ぬのがそんなに嫌か」
――いや別に私は魔理沙と一緒に居るのがイヤだって言ってるわけじゃ……
「そーなんだそーなんだ、ガッカリだな」
――ううう。
「霊夢んとこ行って騒いでようかな」
――イヤよ。
「ふふん、矢っ張りそうなんじゃないか」
――うるさいわね。
「最後ぐらい素直になれよ」
――……。
「素直じゃないな」
――アイデンティティよ。
「どうだか」
――素直になるといいことあるの?
「私が喜ぶ」
――あんたが喜ぶの?
「そりゃあそうさ」
――じゃあ素直になってあげる。
「素直じゃねえな」
――何よ。堂々巡りじゃない。
「ふふん」
――笑ってんじゃないわよ。
「ははは」
――もう素直になってやんないわよ。
「そうか」
――いいの?
「私はアリスの本音が聞きたいな」
――じゃあいいわよ言ってやるわよ。
「ははは」
――何よ。
「いやいや」
――何よ。
「私と一緒に死にたいか、アリス」
――あんたと一緒に死にたいわ、魔理沙。
* * *
――魔理沙。
「なに?」
――落ちてくるよ。
「ああ、落ちてくるな」
――きれいね。
「あと何秒で落ちてくるかな」
――分かんないわよ。
「あと何秒生きてられるかな」
――分かんないわよ。
「曖昧だねえ」
――いいじゃない。
「そうだな」
――そうよ。
「ああ落ちてくるぜアリス」
――落ちてくるわね魔理沙。
「眼を閉じるなよアリス」
――閉じないわよ魔理沙。
「手、離すなよ」
――離れないわよ。
「本当か」
――本当よ。もう、ずっと。
「そうだな、ずっとだ」
* * *
――さようなら魔理沙。
「何、ちょっとだよ、きっと」
――そうだといいわね。
「そうだよ」
――さようなら魔理沙。
「さようならアリス。また」
――またどこかで。
「またどこかで。さようなら」
――さようなら。
――平野耕太『彼らの週末』より
* * *
――ねえ魔理沙。
「なんだ、私は忙しいんだ」
――うそ。あんたが忙しいなんてのはどうせ暇を潰すのに忙しいとか、そんなんでしょう。
「ごろごろするのに忙しいのさ」
――大して変わんないわ。
「そんなこたーない、暇なのはなんともすることがないが、ごろごろするのはすることがあるのだ」
――ちょっと言い換えただけでしょうに。
「ああ一々五月蝿い奴だな。五月蝿い五月蝿い」
――何よ。
「良いじゃないか。最後の日ぐらい、ごろごろしたって」
――そりゃあんまり非生産的じゃないの?
「じゃあ何か、お前は何か生産的な諸活動を送ろうって言うのか」
――悪いの?
「そりゃあんまり虫が良すぎる。いいかアリス、ある古典的SFにだな、こんな台詞がある――
『きみはここにいるんだ、レスペア。すべては終ったんだ。すべては、なかったも同然だ。そうじゃないか?』
『ちがう』
『どんなことでも、終ってしまえば、なかったとおなじだ。今という今、きみの人生はおれの人生よりも楽しかったと言えるか? 問題は今なんだ。どうだい、きみの人生は、おれの人生より楽しかったか。え?』
『そうさ、楽しかったとも!』
『なぜ!』
『なぜって、おれにはおれの思うことがある。思い出がある!』
――とな」
――だから何よ。
「ふふん、人生が終わろうという時、その人間の人生の価値というものは何かといえば、思い出にあると云うことだよ、アリス君」
――もう遅いっていうの?
「まあ遅いんじゃないかと思うぜー?」
――遅かないわよ。今から作りに行こうっていうのよ。
「今から?」
――そう。
「行ってらっしゃあい」
――あんたも行くの!
「そんな面倒な」
――いいから行くったら行くの!
「あ、ちょっと引っ張るなって、分ったって、分ったから!」
* * *
「お、ここだぜここ」
――なによ。
「ここじゃあないかここ」
――だからどうしたのよ。
「なんだ覚えてないのか」
――?
「記念すべき場所だぜ」
――勿体付けないでよ。
「ちっとは考えて見なよ」
――時間がないのよ。
「ああ今日ばかりはそんな胡散臭い言い訳も説得力があるな、ウン」
――何なのよ。
「本当に覚えてないのか」
――先に行くわよ。
「お前と会った場所じゃないか、初めて」
――?
「ここで」
――ああ。
「ここだろ」
――そうね。
「懐かしいだろ」
――よく覚えてたわね。
「何だ、お前さんは忘れちまったのかい」
――そんなことはないわよ。
「忘れちまったって顔してるぜ」
――そんなことはないわ。あの頃のあんたが全然小さかったの、覚えてるもの。
「へえ」
――あなた小っちゃくて、可愛かったわよ。
「ふうん。今は可愛くないみたいな言い草だな」
――何言ってんのよ。
「どうなんだよ」
――何よ。
「今は?」
――……
「気の利かない奴だ」
――可愛いわよ。
「お」
――行くわよ。
「聞えなかったなあ。もう一ぺん言ってくんない?」
――一度きりしか言わないわ。
「顔赤くなってるぜ」
――うるさいわね。
「もう一ぺん言ってよ」
――うるさいわ。
* * *
「おお見ろアリス。我らが霊夢の奴はこんな日だってのに呑気に境内の掃除をしているぞ」
――そうね。
「ついでだから邪魔してやろう」
「邪魔するんなら帰ってくんない?」
「良いじゃないか、どうせ邪魔できるのも今日で最後だ」
――最後だから良いって訳じゃないでしょ。
「お堅い事を言いなさんな……時に霊夢」
「何よ」
「喉が渇いたな」
――私も。
「あんたらに茶を入れるのも最後だわ」
「ふむ、やはり霊夢の入れる茶は甘いぜ」
「飲んだらさっさと出て来なさいよ」
――厭に急くじゃないの。
「あんたたちにも言っておいたでしょ。今日はこれから宴会よ」
「ああ」
――そういえば。
「だから掃除も済まない前にマッタリされても困るのよ。ほら出てった出てった」
「良いじゃないかもう少しゆっくりしてっても。今生の別れだぜー?」
「何よ、あんたたち来ないの?」
「あー私は出る積りだったんだがなー。こいつがどうしても『二人っきりじゃなきゃ嫌ー!』 っていうもんだからー」
――誇張すんじゃないわよ。
「似たようなものじゃないか」
「あー分ったわよ。別に今すぐ出てけとは言わないから、掃除の邪魔すんじゃないわよ」
――怒ってったわ。
「気の短い奴だ」
――あんたが迷惑を掛けるからでしょ。
「気にすんなって。どーせ今夜でチャラよチャラ」
――チャラだったら何しても良いわけじゃないでしょ。
「説経すんのは無しだぜ、アリス」
――別にしないわよ。
「それにしてもなー。霊夢の奴もよく掃除なんてする気になるわ」
――どうして?
「どうしてって、明日から一体誰がこんなチンケな神社に参拝しに来れると思うんだ?」
――そう? 別に良いじゃない。
「何でさ」
――「『わたし、もうひとつ、したいことがあるの』とメアリーはいった。」
「……ん?」
――「『ここんところに、花の咲く、ゴムの木を植えるのよ。夏になると、きれいだと思うわ』
『花が咲くまでには五年かかるよ』と、ピーターはいった。
『いいじゃないの。ゴムの木の向こうに、海の青い色が見えるのはすてきだわ。寝室の窓から眺めることができてよ』」
「……何それ」
――昔のSFの話よ。
「それで何が言いたいんだよ」
――霊夢は信じてるって話をしたかったのよ。
「何を?」
――さあね、自分で考えて御覧なさいって話よ。
* * *
――一番高いところよ。
「何でこんなとこまで来るんだ?」
――ここなら見えるでしょう。
「見えるっちゃあ見えるだろうけど……」
――何よ。
「寒いぜ」
――私だって寒いわ。
「何とかしろよ」
――これぐらい我慢しなさい。
「何だ気の利かないやつだな」
――?
「こうすりゃ寒く無いだろ」
――。
「……な?」
――うん。
「驚いたか?」
――うん。
「急に大人しくなったな」
――恥ずかしいのよ。
「別に恥じるこたないだろう」
――……。
「最後ぐらいな」
――うん。
「……」
――ねえ。
「……ん?」
――私……
「……待った」
――え?
「それどういうタイプの台詞?」
――どういうって?
「いや、死ぬ前っぽい台詞?」
――悪いの?
「悪いね」
――どうして。
「未練が残っちまうじゃないか」
――でも。
「どうせなら後腐れも無くがいいね」
――私は……
「分かってるよ、アリス、言わないでも分かる」
――……
「言いたい?」
――うん。
「仕方ないな、いいぜ、真面目に聞いてやる」
――ほんとに?
「ほんとだ」
――じゃ、じゃあ、言うわよ。
「どーぞ」
――わ、私は……
* * *
――空が。
「大分明るくなって来たな。ああ、あれがそうかな、シュワスマン何とか彗星」
――そうね。
「あれが落ちてくんのかね」
――そうでしょ。
「景気のいい話だな」
――ちっとも良か無いわよ。
「そうかー? 随分いい話だと思うけどな」
――何で。
「だってさ、多分、天地開闢以来、死んだ人間は幾らでも居ただろうけど……、みんなと一緒に死ねる奴は、今日生きてた奴だけだぜ? 盛大ここに極まれりだぜ」
――ああ。
「心中だぜ、心中。中々ロマンのある」
――ないない。
「無いの?」
――無いわよ。心中なんて、死んだらお終いじゃない。
「そっかなー」
――そうよ。
「でもロマンを感じるんだけどなー」
――そりゃあんたのものの感じ方がおかしいのよ。
「いつぞやまではロマンがあったじゃないか、天国に結ぶ恋」
――知らないわよ。
「……なんだ。私と死ぬのがそんなに嫌か」
――いや別に私は魔理沙と一緒に居るのがイヤだって言ってるわけじゃ……
「そーなんだそーなんだ、ガッカリだな」
――ううう。
「霊夢んとこ行って騒いでようかな」
――イヤよ。
「ふふん、矢っ張りそうなんじゃないか」
――うるさいわね。
「最後ぐらい素直になれよ」
――……。
「素直じゃないな」
――アイデンティティよ。
「どうだか」
――素直になるといいことあるの?
「私が喜ぶ」
――あんたが喜ぶの?
「そりゃあそうさ」
――じゃあ素直になってあげる。
「素直じゃねえな」
――何よ。堂々巡りじゃない。
「ふふん」
――笑ってんじゃないわよ。
「ははは」
――もう素直になってやんないわよ。
「そうか」
――いいの?
「私はアリスの本音が聞きたいな」
――じゃあいいわよ言ってやるわよ。
「ははは」
――何よ。
「いやいや」
――何よ。
「私と一緒に死にたいか、アリス」
――あんたと一緒に死にたいわ、魔理沙。
* * *
――魔理沙。
「なに?」
――落ちてくるよ。
「ああ、落ちてくるな」
――きれいね。
「あと何秒で落ちてくるかな」
――分かんないわよ。
「あと何秒生きてられるかな」
――分かんないわよ。
「曖昧だねえ」
――いいじゃない。
「そうだな」
――そうよ。
「ああ落ちてくるぜアリス」
――落ちてくるわね魔理沙。
「眼を閉じるなよアリス」
――閉じないわよ魔理沙。
「手、離すなよ」
――離れないわよ。
「本当か」
――本当よ。もう、ずっと。
「そうだな、ずっとだ」
* * *
――さようなら魔理沙。
「何、ちょっとだよ、きっと」
――そうだといいわね。
「そうだよ」
――さようなら魔理沙。
「さようならアリス。また」
――またどこかで。
「またどこかで。さようなら」
――さようなら。
こういう風に成れるんならこういう終わりもありかなと(いいかなと
足掻くべきなんでしょうけどね。
寂寥感がこみ上げてきました。よい雰囲気です。