Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方雑煮模様 -白玉楼のうみょん餅-

2007/01/02 20:34:31
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 あらすじ:食べ物で遊んじゃいけないぞ





 新春の日差しもうららかな白玉楼。
今日も、いつもの主従が食卓を囲んでいるが――今日はいつもと違っていた。





「ようむぅ~、お雑煮おかわりぃ~」
「……またですか、幽々子さま……」

 漆塗りの超特大の汁椀を、満面の笑みで突き出す主に、妖夢はため息をついた。
お正月恒例の食卓といえば、やっぱりお節にお屠蘇にお雑煮のスリーオーのセット。
幽々子の胃袋は、食べ始めから容赦が無かった。

「妖夢のお雑煮はぁ、やっぱりおいしいわね。ついつい箸が進むわ」
「ものには程度ってものがありますよ」

 優勝力士の酒盃のようなサイズのお椀に、妖夢の顔より大きな鏡餅(高層5階建て)を
放り込んだ、白玉楼の特性お雑煮。
それをカパカパと、噛んだり飲んだり詰まらせながら、既に何杯目か――。

「ねぇ、おかわりぃ~」
「はいはい、少々お待ちくださいね」

ため息と共に超特大椀を受け取り、妖夢はお勝手に下がろうとした。



「あ、ちょっと待ちなさい」
「は?」
「お正月だっていうのに、妖夢はお節もお雑煮もまだ食べていないわね」
「まぁ、お台所がありますから」
「お座りなさい。まずは、お雑煮の一杯も食べなさいな~」

 冥界の姫は、柔らかな笑みを浮かべ、従者の座布団を、ポンポンと叩いた。
単なる食欲魔人と思われているが、実は気配りも忘れない。それがカリスマ幽霊クオリティ。

「で、ですが……主のお膳を先に――」
「その主の望みは、あなたが座ってお雑煮を食べることよぉ」

さぁと、更に座布団をポンポンと幽々子は叩いた。



「では、失礼致します」

 妖夢はお膳に向かい、いそいそと箸を取った。先程作ったお雑煮は、まだ暖かった。
品良く端に焦げ目をつけた餅をつまみ、一口噛み切り――



うみょん



噛み切り――



うみょ~ん



餅を噛み切り――




うみょ~ん うみょ~ん
















「……妖夢? 一体どこまで伸びるのかしら?」


 可愛くついばみ、箸で引っ張った餅はどこまでもどこまでも伸びていく。
それは、白く引き伸ばされた地上の天の川か、トルコアイスか……。
とにかく、餅は妖夢の腕の分まで伸びて、まだまだ伸びる気満々だった。

「う゛びょーん?」

 食事中、口を開けて話すのは品が無い。
そのいいつけを守らなくても、口を開けば餅の端は落ちてしまう。
妖夢は、進退窮まっていた。



「……てぃ」
「びゅびゅござばーっ!? (幽々子様ーっ!?)」

 何を思ったか、幽々子は妖夢の手から箸を奪い、つまんだ餅ごと引っ張った。



うみょ~ん うみょ~ん うみょ~ん



餅は伸びるよどこまでも。
妖夢の背丈程の距離を伸びた餅は、まだまだ切れる気配が無かった。



「どこまで伸びるかしらね」
「やべでぐばはひ! (やめてください!)」



 次の瞬間、幽々子は座敷を飛び出し、庭へと飛んでいった。



「う゛びょーん!?」

 慌てて、妖夢も食卓を越えて飛び上がる。
だが、幽々子の飛行速度の方が速く、どんどん距離が開いていった。

 もちろん、餅も引き伸ばされていった。


「びゅびゅござばーっ! ばぢなざーい゛っ! (幽々子様ーっ! 待ちなさーい!)」

 涙を浮かべつつ、それでも口を閉じて餅をホールドしたまま、妖夢は幽々子を追いかけた。





二人の追いかけっこは幻想郷を縦断し、幻想郷中にその微笑ましい主従を披露し、
妖夢の顎が疲れて餅を離すまで続いた。











餅が切れたかどうかは、幽々子しか知らない。
 あけましておめでとうございます、PAL-BLAC[k]でゴザイマス。
新年早々、餅は伸びるよどこまでも。餅のうみょんを幻視頂ければ幸いです。
PAL-BLAC[k]
http://www.smat.ne.jp/~pal
コメント



1.名無し妖怪削除
うみょ~ん
2.ユートピア削除
人生は長いようで短い、短いようで永い。まるでこの餅のように。
3.名無し妖怪削除
凄い和んだ
4.なぞ削除
餅は伸びるよどこまでも^^w
5.変身D削除
よくよく考えれば物凄い怪奇現象なのかもしれないのにこの二人がやるとほのぼのするから不思議(w