「パチュリーさま、また本の追加ですか?」
「ええ、そうよ」
よいしょっと、などと言いながら本をおろす小悪魔に私は言った。
追加の魔導書が28冊…うん、なかなかいいのが手に入ったわ。
「…はぁ、悦にはいるのはいいんですけどねパチュリーさま。そろそろ本棚がいっぱいいっぱいになってきていて、あちこちの本棚から苦情が来ているんですよ。重いだの詰めすぎだだのパチュリーさまは話が長いだの…」
本棚を話せるようにしたのは問題だったかしら?自走式本棚や自衛式本棚あたりでやめておくべきだったわ。でも…
「最後のを言っているのはあなたでしょう、大体私の話はただ長いのではなくて…」
私は言いかけたが…
「それでですね、図書館司書たる私としましては、そろそろあまり読まない本の閉架への移転を提案したいわけなのですよ」
小悪魔聞く気ナシ。全くもう。
「いや、だから話を聞きなさい…」
ですよ、と言葉を重ねる小悪魔に私はため息をつく。
「いえいえ、パチュリーさまのお話は途中で切り上げないと終わらないというのが定説になっているわけでして…それはともかく、早急なる閉架への移動を要求したいのですよ」
いつの間にか『提案』が『要求』になっているあたりとかにはつっこみたいのだけれど、それはひとまず置いておこう。
「どういう定説よ。まぁ前向きに善処するわ、そのうち…」
そうしなければならないのは分かっているのだけれど、どうしても閉架にしまう…すぐに読めなくなるというのは抵抗がある本ばかりなのだ。
開架の方から下げても、その気になれば読むことははできるのだけど、ふと読みたいなと思ったときに、開架に本がないというのは気分的に寂しいし、現実問題早く本が読みたいのにという気分になってしまうのだ。
「いえいえ、パチュリーさまの『前向きに善処』とか『そのうち』があてにならないのは私がよ~~~~~っく分かっておりますから、下げますよ?下げませんか?下げましょうよ~」
「もう…」
そう言いながら抱きついてくる小悪魔の頭を撫でながら、私は言う。
「そうね…でも苦労して集めた本をむざむざ閉架にしまうのも…」
そう、簡単に手に入る本も多いのだけれど、そうじゃない本も多いのだ。
遠方への買い付け、相手との交渉、果ては弾幕勝負なんてものまでしなければならないものまであるのだ。
例えば、私が今持っている本などは、十年間にわたって探し求めたあげく、とある妖怪との激闘の末に確保したものだ。その際には、腕が一本とんでいる…治したけど。
探してもないものもある、絶版書、外の世界の本…それらを探し、確保するには並々ならぬ労力と時間、そして対価と時には犠牲までもが必要とされるのだ。
「苦労って…なんてパチュリーさまに似合わない言葉…」
「失礼ね」
まったく、なにそんな呆れ顔で言っているんだか…本当にもう。
「私だって苦労はしているわ、どうやってレミィに買いに行かせるか…とか」
そう、「またなのパチェ」とか言い出すレミィを送り出して、そして帰ってきた時の憔悴しきったレミィの表情を楽しみ、ついで誉めてあげた時の満足げな笑顔を楽しむ。その為の苦労は厭わないのだ。
無論、腕の二,三本がとんでもしっかり治してあげられるし…
「やっぱり…あれ、そういえば一昨日からレミリアさまの姿が見えないんですけどもしかして…」
あきれ顔の小悪魔が何かに気がつく、さすがね。
「…本を買う為に並んでいるわ。ちなみに天候は晴れのち暴風雪、レミィが出た一時間後位から猛烈な吹雪になっているはずよ」
占いによれば、今頃外は数年来の暴風雪のはず、私は絶対に出たくはないわね。
「何でそんな日にわざわざ…」
小悪魔、あきれ顔。一方私は楽しげにこう言い返す。
「本はね、一度買い逃したら次に買える機会はそうそう巡ってこない…本を買うには『一期一会』の信念を持たなければならないの。寒いだの暑いだの言っていては本は手に入らないわ」
そう、一年の特定の時期しか手に入らない本だってあるのだ。その為には寒風酷暑を気にしてなどはいられない。
「じゃあ何でパチュリーさまが行かないんですか?」
あら?そんなこともわからないのかしらこの子は…
「だって寒いのいやだもの」
そう、誰が好きこのんで寒い中外出しようなどと思うのだ。苦労を避けられるのなら避けるのが一番なのだ。
さっきと言っていることが違う?違わないわ、だってだれも『自分の』苦労などとは言っていないし。
「うっわさすがは『The外道』の名を欲しいままにするパチュリーさまですね。友人を利用する対象としてしか見ていないじゃないですか、レミリアさま可哀想…」
さて、そう言ってジト目で私を睨む小悪魔に、私はにっこり笑ってこう言った。
「あら?私が頼んでもいないお菓子を『パチュリーさまが食べたがっていた』とか言って、いつもレミィに買いに行かせているのは誰かしら?」
しかし、私の言葉にも小悪魔は表情を変えない。
「いえいえ、不肖この小悪魔、未熟とはいえパチュリーさまが食べたがっているお菓子とかは以心伝心伝わりますから。ほら、レミリアさまとパチュリーさまの仲をとりもっているわけなのですよ、ああ、なんて優しい小悪魔なんでしょう」
だめね、誰に似たのかやたらと口達者になって…これじゃあレミィなんていちころだわ。
「はぁ…まあいいわ。それじゃあそろそろレミィが帰ってくるころだし、紅茶を用意してちょうだい。冷え切ったレミィの心と体をしっかり暖めてあげないと…」
この話題での小悪魔への勝利を諦めた私はそう言った。満足げな表情が憎らしい、レミィに八つ当たりしておくことにしよう。
「もちろん、唐辛子をたっぷり入れたやつをね」
「はい♪」
数時間後、雪だるま状態のレミリアが、口から火を吹きながら紅魔館を駆け回ることになるのだが、それはまぁ別な物語である。
台所
「あー!?話題すり替えられたっ!?」
勝利は諦めたわ『あの話題』ではね…まだまだ甘いわね、小悪魔。
『おしまい』
「ええ、そうよ」
よいしょっと、などと言いながら本をおろす小悪魔に私は言った。
追加の魔導書が28冊…うん、なかなかいいのが手に入ったわ。
「…はぁ、悦にはいるのはいいんですけどねパチュリーさま。そろそろ本棚がいっぱいいっぱいになってきていて、あちこちの本棚から苦情が来ているんですよ。重いだの詰めすぎだだのパチュリーさまは話が長いだの…」
本棚を話せるようにしたのは問題だったかしら?自走式本棚や自衛式本棚あたりでやめておくべきだったわ。でも…
「最後のを言っているのはあなたでしょう、大体私の話はただ長いのではなくて…」
私は言いかけたが…
「それでですね、図書館司書たる私としましては、そろそろあまり読まない本の閉架への移転を提案したいわけなのですよ」
小悪魔聞く気ナシ。全くもう。
「いや、だから話を聞きなさい…」
ですよ、と言葉を重ねる小悪魔に私はため息をつく。
「いえいえ、パチュリーさまのお話は途中で切り上げないと終わらないというのが定説になっているわけでして…それはともかく、早急なる閉架への移動を要求したいのですよ」
いつの間にか『提案』が『要求』になっているあたりとかにはつっこみたいのだけれど、それはひとまず置いておこう。
「どういう定説よ。まぁ前向きに善処するわ、そのうち…」
そうしなければならないのは分かっているのだけれど、どうしても閉架にしまう…すぐに読めなくなるというのは抵抗がある本ばかりなのだ。
開架の方から下げても、その気になれば読むことははできるのだけど、ふと読みたいなと思ったときに、開架に本がないというのは気分的に寂しいし、現実問題早く本が読みたいのにという気分になってしまうのだ。
「いえいえ、パチュリーさまの『前向きに善処』とか『そのうち』があてにならないのは私がよ~~~~~っく分かっておりますから、下げますよ?下げませんか?下げましょうよ~」
「もう…」
そう言いながら抱きついてくる小悪魔の頭を撫でながら、私は言う。
「そうね…でも苦労して集めた本をむざむざ閉架にしまうのも…」
そう、簡単に手に入る本も多いのだけれど、そうじゃない本も多いのだ。
遠方への買い付け、相手との交渉、果ては弾幕勝負なんてものまでしなければならないものまであるのだ。
例えば、私が今持っている本などは、十年間にわたって探し求めたあげく、とある妖怪との激闘の末に確保したものだ。その際には、腕が一本とんでいる…治したけど。
探してもないものもある、絶版書、外の世界の本…それらを探し、確保するには並々ならぬ労力と時間、そして対価と時には犠牲までもが必要とされるのだ。
「苦労って…なんてパチュリーさまに似合わない言葉…」
「失礼ね」
まったく、なにそんな呆れ顔で言っているんだか…本当にもう。
「私だって苦労はしているわ、どうやってレミィに買いに行かせるか…とか」
そう、「またなのパチェ」とか言い出すレミィを送り出して、そして帰ってきた時の憔悴しきったレミィの表情を楽しみ、ついで誉めてあげた時の満足げな笑顔を楽しむ。その為の苦労は厭わないのだ。
無論、腕の二,三本がとんでもしっかり治してあげられるし…
「やっぱり…あれ、そういえば一昨日からレミリアさまの姿が見えないんですけどもしかして…」
あきれ顔の小悪魔が何かに気がつく、さすがね。
「…本を買う為に並んでいるわ。ちなみに天候は晴れのち暴風雪、レミィが出た一時間後位から猛烈な吹雪になっているはずよ」
占いによれば、今頃外は数年来の暴風雪のはず、私は絶対に出たくはないわね。
「何でそんな日にわざわざ…」
小悪魔、あきれ顔。一方私は楽しげにこう言い返す。
「本はね、一度買い逃したら次に買える機会はそうそう巡ってこない…本を買うには『一期一会』の信念を持たなければならないの。寒いだの暑いだの言っていては本は手に入らないわ」
そう、一年の特定の時期しか手に入らない本だってあるのだ。その為には寒風酷暑を気にしてなどはいられない。
「じゃあ何でパチュリーさまが行かないんですか?」
あら?そんなこともわからないのかしらこの子は…
「だって寒いのいやだもの」
そう、誰が好きこのんで寒い中外出しようなどと思うのだ。苦労を避けられるのなら避けるのが一番なのだ。
さっきと言っていることが違う?違わないわ、だってだれも『自分の』苦労などとは言っていないし。
「うっわさすがは『The外道』の名を欲しいままにするパチュリーさまですね。友人を利用する対象としてしか見ていないじゃないですか、レミリアさま可哀想…」
さて、そう言ってジト目で私を睨む小悪魔に、私はにっこり笑ってこう言った。
「あら?私が頼んでもいないお菓子を『パチュリーさまが食べたがっていた』とか言って、いつもレミィに買いに行かせているのは誰かしら?」
しかし、私の言葉にも小悪魔は表情を変えない。
「いえいえ、不肖この小悪魔、未熟とはいえパチュリーさまが食べたがっているお菓子とかは以心伝心伝わりますから。ほら、レミリアさまとパチュリーさまの仲をとりもっているわけなのですよ、ああ、なんて優しい小悪魔なんでしょう」
だめね、誰に似たのかやたらと口達者になって…これじゃあレミィなんていちころだわ。
「はぁ…まあいいわ。それじゃあそろそろレミィが帰ってくるころだし、紅茶を用意してちょうだい。冷え切ったレミィの心と体をしっかり暖めてあげないと…」
この話題での小悪魔への勝利を諦めた私はそう言った。満足げな表情が憎らしい、レミィに八つ当たりしておくことにしよう。
「もちろん、唐辛子をたっぷり入れたやつをね」
「はい♪」
数時間後、雪だるま状態のレミリアが、口から火を吹きながら紅魔館を駆け回ることになるのだが、それはまぁ別な物語である。
台所
「あー!?話題すり替えられたっ!?」
勝利は諦めたわ『あの話題』ではね…まだまだ甘いわね、小悪魔。
『おしまい』
>名無し妖怪様
はい、もちろん(←え?)です。
>二人目の名無し妖怪様
>図書館小話における咲夜さんのポジションってどんなんだろ
ご想像にお任せしますwwでもまぁ想像の通…サク
>CACAO100%様
へたレミィのカリスマはもはや図書館内では地に墜ち、紅魔館内でもストップ安を記録したとかしないとかww
ご意見ありがとうございます。
愛です…愛が暴走して…
…でも、最近はあんまりですねorz今度はもうちょっと幸せにしてやりたいなぁと思います。へたレミリアなのは変わらないでしょうが(こら)