Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

図書館小話~おたがいさま?~

2006/12/31 11:20:59
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1
 図書館は静かであるべきところだ。
 静寂の中に、知識獲得への情熱を燃やす…そういう所。
 だから、大声で叫んだり、走りまわったり、あげく読書中の主人に飛びつくなんて事は許されない。





「わかった?小悪魔」
 私は、そう言って、突如大声で叫び私に駆け寄り、ついでカミカゼ小悪魔ライナーをかけてきた小悪魔を押しのける。
 だが、生意気な従者は、そんな私にこう言った。
「いやいや、脳内で語られてもわかりませんから」
 あ、口に出すのを忘れていたわ。まぁそれでも私の思考を読むとはやるわね小悪魔。
「…仕方がないわ、じゃあ今度は口に出して最初から」
 そう、この子にはしっかりと図書館でのマナーを教えてあげないと…二,三時間くらいかけて。
「あ、話さなくていいです、パチュリーさまの話は無駄に長いですし」
「失礼な…」
 即答!?私の話が長いのには理由がある。それは決して無駄なのではなく、事実を正確かつ合理的に伝達…
「要するに叫ぶな走るな飛びつくなって言いたいんですよね。はいはいわかりましたから、それでですねパチュリーさまぁ」
 話どころか思考さえも、あっさりばっさり途中で中断させるなんて…さすが小悪魔ね。
 っていうか、無理矢理相手の思考を中断させたあげく、いきなり甘えにかかるっていうのは一体どういう神経なのかしら?表情と口調が芸術的なまでに変化していくのが本当に面白かった…あれ?
「D61区画にナメクジが出たんですよ!!」
 そして、私の思考にかまわず、小悪魔は平然と続…ナメクジ?
 それまた図書館に似つかわしくないわね。騒々しい司書と同じくらい似つかわしくないわ。
「そうなんですよ!もうびっくり仰天して本棚の裏を見たんですけどね、本を詰めすぎて湿気がたまったみたいでもうじめじめじとじと、まるでパチュリーさまみたいな状態なんですよ!」
 沈黙を聞く姿勢と受け取ったのか、小悪魔は言葉を続ける。それにしても…
「誰がじめじめじとじとしてるのよ」
 ホント、失礼ね。皮肉にしても言い過ぎよ。
「パチュリーさま以外誰がいるんですか?」
 問い返された…きょとんとした表情で。
「そんな素直に問い返されても困るんだけど…」
 本気で言ってたの?少しレミィをいぢめすぎたかしら?これからは少し控えましょうか…少し。
「はい、それでパチュリーさまがじめじめじとじと陰湿根暗密室キノコ栽培最適少女なのはいわずもがななんですけど、本棚の裏までそんな状態になるのは困るんですよ。ほら私ってば明るい太陽少女ですし、ただでさえ陰いこの図書館に『湿』まで加わったら本当に陰湿図書館になっちゃうじゃないですか、これじゃヴワル陰湿図書館です。そんな所にひまわり妖精さんなんか呼んだら即時昇天ですよ、可哀想に」
 小悪魔は早口で言い終える。…もうどこから怒ればいいのやら。私はあまりの毒舌ぶりに反論すらできない。
 それにしても育て方間違えたかしら…いつの間にこんな毒舌に…昔は素直だったのに…
 私は、自分の教育方法について非常に思い悩んだ。外界で流行っているらしいゆとり教育なんかに頼ったのが間違いだったわ。
 やはりここは古代スパルタ式に…
「いやいや、そんな『教育方法間違えた』なんて顔しないでもいいじゃないですか。どうやったってパチュリーさまは教師になれるわけないですし。あ、反面教師なら向いてるかもですけど」
「…思考を読むのはやめなさい」
 ホント、失礼極まりないわね。思考を読むのもどうにかしてほしいけど…
「いえいえ、お気になさらず」
「気にするわ」
 にっこり笑って言う小悪魔だけど、それはあなたが言うべき言葉じゃないと思うわ。
 今度は教育関連の本を集めないと…自分の従者を、素直でおしとやかで従順なように教育する為の手段を…
 あれ、でもそんな従者じゃあ面白くなさそうね。難しいわ…教育って、どうしたら自分の理想の従者にできるのかしら。
 しかし、私の思考は小悪魔によってたちまち中断される。
「つまりですね、パチュリーさまがここにいるとますます湿度が加速するわけなのですよ」
「人の話を聞きなさい」
 それにしても人をまるで加湿器みたいに…
「だ~か~ら、たまには湿度の元を外に出して図書館内を乾燥させないと、色々なものに悪影響が出ると思うのですよ、ほら主に私とか私とか私とか」
 そう言って自分を指さす小悪魔。つまり本より『私』が重要と言いたい訳ね…
「はぁ、で、何が言いたいの?」
 さすがに疲れてきた。主に精神的に…
 そんな私に、小悪魔は満足げな表情を見せてこう言ったのだ。







「二人でお出かけましょうよパチュリーさまぁ。もうお弁当も紅茶も外での本もご用意しているんですよ、そりゃもう最高傑作なやつを。むきゅーグッズも完全ですし、日傘雨傘槍傘も各種取りそろえました♪あ、ナメ公は退治しましたよ?もう本棚の間隔や本の間隔も広げましたし、パチュリーさまが外出なされれば湿気の心配はあんまりないです、っていうかもう完璧です。私ってば完全で瀟洒で最強ねって感じですから。だからパチュリーさまぁ~」 
 そう言って私に抱きつく小悪魔に、私はため息を一つ。
「一緒に出かけたいのなら最初からそう言いなさい、そもそも退治したんなら私に飛びつく必要はないでしょう…」
 だけど、私の言葉に、小悪魔は笑ってこう言い返してきた。
「だって…それじゃあつまらないじゃないですか♪」
 素直じゃないわね…誰に似たのかしら?
「もちろんパチュリーさまですっ♪」
 目の前に花咲くいたずら笑顔、やれやれ。

 私はため息をつくと、小悪魔と一緒に、ゆっくりと立ち上がったのだった。





『おしまい』















































 ちなみに、外は吹雪でした。

 
 小悪魔と出会う前のパチュリーに、理想の従者とはどんなものか聞いたら、一体どんな言葉が返ってくるのでしょう?

 たぶんそれは…
アッザム・de・ロイヤル
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http://www.rak2.jp/town/user/oogama23/
コメント



1.削除
何気にもやしの心を読むこあと、落ちが最高でした
2.名無し妖怪削除
甘えるこぁが辛抱たまらん
3.七ツ夜削除
こぁかわいいよこぁ


そしてオチに噴いたwww
4.アッザム・de・ロイヤル削除
ご感想ありがとうございましたww
>都様
何気にもやしと書いているあなたに乾杯wwこぁってこんな感じかなぁ~っと思うのです。パチュリーの心を読んでいて優位に立っているように見えて、実は依存している。…まぁ、それは全員がそんな感じみたいに思っているのですが。

>名無し妖怪様
あげませんよ?

>七ツ夜様
こぁが可愛いのは仕様ですww
5.SETH削除
むきゅーグッズ?w
6.アッザム・de・ロイヤル削除
>SETH様
ご感想ありがとうございました。紅魔館最大の軍事機密にして、最大の金食い虫だそうです♪