Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

不完全な十六分の一夜

2006/12/28 06:57:02
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 ――少し、私の部屋で飲みませんか?

 そう言われた咲夜は返事こそしなかったが、黙ってうなだれたまま美鈴の後に続いていった。



 ―◇―◇― ◇◇◇― ―◇◇◇―



「それじゃ、ちょっと待っててくださいね。私、グラス持ってきます」

「…………」

「あ、咲夜さん、椅子にかけてください。私がベッドに座りますから――」

「……いい」

「えっ?」

「ここで、いい」

「――そうですか」









「はい、どうぞ」

「…………」

「――ちゃんと持ってますか? 手、放しますよ?」

「……ん」

「さあ、飲みましょう。明日も元気にお仕事ができるように――乾杯、っと」

「……いただきます」










「どうです? わりと可愛い味のお酒でしょ?」

「…………」

「これ、私が作ったんですよ。金木犀の花を摘んできて、白ワインに――」

「……あなたまで……」

「えっ?」

「あなたまで、一緒に怒られることなかったのに……」

「……咲夜さん、それは、」

「どうして?」

「ど、どうしてって……その、ほら。私って怒られるのには慣れてますから。あ、あはは……」

「理由になってない」

「うっ……だ、だって、気付かなかった私にも責任があるじゃないですか」

「……そんなの、私の責任に比べれば無いようなものだわ」

「で、でも、」

「どう考えても全面的に私が悪いのよ。お嬢様にお出しする料理にニンニクを入れるなんて」

「……あぅ……」

「あ、でもあなたの気持ちが嬉しくないわけじゃないのよ。ごめんね」

「は、はい」

「……美鈴、もう一杯もらえるかしら?」

「――はいっ!」









「今更こんなことを言うのもなんですけど、料理は本当においしかったんですよ?」

「……ええ。それは、食べるあなたを見ていれば訊くまでもなかったわ」

「私はニンニク、大好きなんですけどねー」

「……だから入れちゃったのよ……」

「え? 咲夜さん、なにか言いました?」

「言ってない」









「……でも、もうやめた方がいいのかもしれませんね」

「なにを?」

「咲夜さんの料理の味見ですよ」

「えっ……」

「体が丈夫でよく食べるからって理由で私が任されてますけど、私、いつもおいしいって言って食べるばっかりでなにも――ってなんで泣きそうな顔してるんですか咲夜さん」

「べ、別にしてないわよそんな顔! 美鈴、もう一杯頂戴」

「は、はい」









「――ふぅ。とにかく、あなたは気にせず食べてくれればいいの。細かいことは私が気にかけるべきなんだから」

「でも、だとすると私が味見する意味ってあるんですか? 咲夜さんの料理だったら味はいつだって完璧ですよ。そりゃ私はこのお役目、楽しみにしてますけど……」

「わ、私だって――」

「え?」

「あ、いや……こほん。いい? お嬢様のお口に入るものなんだから、万が一のこともあってはならないの。だからあなたは毒味役でもあるのよ」

「……はぁ。そういうことでしたら」

「わかった? これもれっきとした従者の務めよ。美鈴おかわり」

「あの、咲夜さんそろそろ、」

「おかわり」

「……はい、どうぞ」









「……ぷは」

「あ、咲夜さん。いつのまにかこんな時間――」

「大体ねぇ!」

「ひっ!?」

「私が誰のためにいつもいつも頑張って料理してると思ってるのよ!」

「お、おおお嬢様のためでは?」

「そうなのよっ!」

「……あの。言いたいことがよく、」

「そうなんだけど……はぁ……しっかりしなきゃ駄目よね。お嬢様のための料理を作ってるときにあなたの――」

「――私の?」

「…………なんでもない」

「え、えっ? なにか言いかけましたよね。私がなんですか? 気になりますよー」

「あー、うるさいうるさい。もう寝るっ」

「ちょっ……咲夜さん、こんなところで寝たら服がしわになっちゃいますよ?」

「んー? ああ……そうね。……んしょ……」

「い、いやいやここで脱げって意味じゃなくて!」

「いちいち注文が多いわねぇ……一体どうしろっていうのよ」

「うわ、いつの間にか服がきっちりたたまれてるっ」

「んー……美鈴の匂いがする~」

「へ、変なこと言わないでくださいよ!」

「なによー。美鈴のベッドだから美鈴の匂いがするんでしょー。どこが変なのよぅ」

「そういう意味の変ではなくっ!」

「あ、それともベッドからするのはあくまでベッドの匂いであって、美鈴の匂いは美鈴からするものだと言いたいのかしら。あなたも意外に細かいわね」

「いや、わけわかりませんよ!」

「……よっ、と。では改めて」

「――へっ? ひゃああ!」

「んんー……まさしく美鈴の匂い……」

「か、顔を埋めないでください! ふぁ、い、息がくすぐった――」

「…………めーりーん……」

「さ、さくやさ――」

「…………」

「……咲夜、さん?」

「…………くぅ」









「……はぁ」

「…………」

「しょうがないなあ。下手に動かして起こすと怒りそうだし、ここで寝てもらいますか」

「…………」

「よいしょっ……わ、軽い……」

「…………」

「……よし、と。咲夜さん、おやすみなさい」

「…………」

「さて、私はどこで寝ようか、なっ――?」

「…………」

「さ、咲夜さーん? 放して~」

「…………」

「ぐぬぬ……」

「…………っ」

「咲夜さん起きてますね? 起きてるんですね?」

「寝てるー……」

「起きてるじゃないですか!」

「でももう寝る……」

「わ、私はもう少し後で寝ますから、」

「上司が部下より先に休むわけにはいかないわ……だからあなたも寝るのよ今ここで」

「なにその逆転の発想!?」

「……あなたは次に『服がしわになる』と言う……」

「こ、このまま寝たら私の服だってしわになっちゃいますよぅ。――はッ!?」

「そうよねしわになるわよね着たまま寝たら。さあ脱ぎましょう可及的速やかに」

「きゃ、きゃあ! ちょ、まっ、あわわわ……」

「時間止めて脱がして欲しい? 止めないで脱がして欲しい?」

「ぬ、脱がさないで欲し――って、ひいぃっ! すでにたたまれてる!?」

「ほら、いつまでも騒いでないで寝るわよ」

「うぅ……この状況で眠れる自信が……」

「あら、まだ脱ぎ足りないのかしら? なんならその色気のないシャツとパンダの」

「わ、わーっ! 寝ます! 寝ますって可及的速やかに!」

「……よろしい」

「じゃ、じゃあ、ちょっとだけ詰めてもらえますか?」

「……んっ……」

「あ、そうだ。咲夜さん、空間をいじって屋敷を広くできるんだから、ベッドも広くなりませんか?」

「……なるかもねー」

「それなら――」

「……おやすみ」

「――――……」

「…………くぅ」

「……おやすみなさい」






 ―◇―◇― ◇◇◇― ―◇◇◇―






「おはよう。美鈴」

「お、おはよう……ございます……」

「……なんか、すごい顔してるわね。よく眠れなかったの?」

「ほ……」

「?」

「本当に、ただ寝るだけだったんですね……」

「はぁ? ――あ、当たり前じゃない! 一体なにを考えてたのよっ!」

「い、いえその、すみませんっ!」

「まったく……」















「二人そろって怒られた翌朝に、二人そろって寝坊するわけにはいかないでしょ?」

「――へっ?」

「ところで美鈴。あなた、次の非番はいつだったかしら」



~おしまい~
メイド長にだって、たまには完全でない日もあります。
そして、そんな時は美鈴の出番なのです。
きっと。

主と部下を共に抱えることが喜びでありますように。
幻想郷の中間管理職たちに、幸あれ。



(心の本音)
o彡 咲美! 咲美!
監督
コメント



1.CACAO100%削除
メイド長だって、今一完璧には仕事を終えてしまう事もあるのです
そんな時は、美鈴の出番なのです
その福与かな体で咲y(ザ・ワールド
2.変身D削除
ああ、もう、咲夜さん可愛いなあ(悦
なかなか素敵なさくめーでした、GJ!
3.名無し妖怪削除
さくめー!さくめー!
4.名無し妖怪削除
咲夜さんがすごい可愛いですやばい可愛いですあれもこれも全て咲夜さんの性格の可愛さを辿る思考の可愛さを強調するように周到に考えて配置されていてああもう!!!
5.うみうし削除
あっまーい!
6.名無し妖怪削除
うわ甘いw
7.名無し妖怪削除
パンダのww
8.名無し妖怪削除
甘ーい! めっちゃ甘ーい!
9.じょにーず削除
アナタのさくめーはすばらしい! さく! めー! さく! めー!
10.手スタメンと削除
これは素晴らしい。
11.しず削除
見える。百合色のオーラが見える。
12.名無し妖怪削除
さssっさくめっめmうぎgっぎぎぎぎいっぎぎぎg
13.名無し妖怪削除
ぬう、こいつはめーさくだ!!
14.名無し妖怪削除
ツンデレなのかー
15.名無し妖怪削除
二人が飲んでるお酒はめっちゃ甘ったるいに違いない
16.名無し妖怪削除
とりあえず、
--◇ ◇---
17.名無し妖怪削除
> ―◇―◇― ◇◇◇― ―◇◇◇―
これがモールス信号だったとは…!
18.名無し妖怪削除
おお、マジだwww
--◇ ◇---
19.削除
き、きいてないわよ咲美だなんてっ!
可及的速やかにGJ。

コミケのためのとても良質なエネルギー源になった!(笑)
20.名無し妖怪削除
萌え死ねる。いいですねこのカップリング。

さくめーさくめー!
21.名無し妖怪削除
可愛い咲夜さんが素敵です。
22.名無し妖怪削除
グレート!さくめいいいわー。