Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

たに たに

2006/12/27 23:25:17
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あらすじ

 アリスでありんす










「おーい、ムーミーン! 遊びに行こうぜー!」



「あ、魔理沙だ。パパ、ママ、いってきます!」
「ああ、いっておいでムーミン」
「夕飯までには帰ってくるんですよ」
「はーい」



 パパとママに送り出されて、ムーミンは外に出ました。
 そこは緑に囲まれた不思議の郷、幻想郷。
 巫女やメイドや妖怪たちが住む、幻想の世界。

 ムーミンハウスの玄関の先には黒い帽子をかぶって箒を持った女の子が待っています。
 釣竿とバケツを持っているので、今日は釣りに行くのかもしれませんね。
 挨拶を交わしたムーミンと女の子、魔理沙は一緒に箒に跨り、空へ。
 夏の日差しが眩しい青空は、雲ひとつない快晴の空でした。


「今日は絶好の釣り日和だね」
「私の日ごろの行いがいいからだな」


 風を切る魔理沙とムーミンの姿を、パパとママは微笑んで見送ります。


「突然ムーミン谷の周りが見知らぬ景色になったときは驚いたものだが」
「住んでみれば、いいところですねえ」
「そうだねえ、ママ」


 のどかな風が吹いて、今日もムーミン一家のおだやかな一日がはじまります。


 ムーミンたちが幻想郷にやってきてから季節は過ぎ。
 ムーミンたちは幻想郷で、のんびりと暮らしていました。




  -楽しい一家と一年と-




「~~~~~♪ ~~~♪」


 緑の帽子をかぶった旅人が、切り株に腰掛けてハーモニカを吹いています。
 周りにはうつ伏せに寝転がって頬杖をついている氷精や、木の枝に腰掛けて目を閉じた蛍の妖怪。
 その他にもいろんな妖精や妖怪たちが、輪になってハーモニカにうっとりと聞き惚れています。

 そんな光景も、春が過ぎた今では珍しくもありません。

 幻想郷に新しい仲間がやってきて、少しばかり経った頃。
 そこにはいつもの幻想郷の、平和な光景がありました。


「スナフキンのハーモニカは上手だなあ」


 最初、パパを見て驚いていた魔理沙も、今ではムーミンと並んで釣りをするほど。
 ムーミンたちのユーモラスな外見にも、すぐに慣れてしまいました。

 外の世界からやってきた不思議で楽しい一家と仲間たちも、すぐに幻想郷に馴染んで。
 一緒にやってきた緑の帽子の旅人と、幻想郷ライフを楽しんでいます。


「フローレンはまたアリスの家か?」
「うん。人形の作り方を習うんだって」
「ふーん。フローレンは女の子趣味なんだな」
「魔理沙だって女の子じゃないか」
「私はボーイッシュな女の子なんだ。お、釣れた」


 こんな風に。



「ねー、スナフキーン、もっとハーモニカ吹いてよー」
「私も聞きたいな~」
「ごめんよ、もうそろそろ夕飯の支度をしなきゃいけないんだ」
「えー」
「ええー」



 夏のお日さまが西に傾いて、長い影法師が出来る頃。
 ハーモニカを吹いていた旅人の演奏も終わり、集まっていた皆も帰っていきます。

 釣りをしていた魔理沙とムーミンも、帰り道。
 バケツいっぱいの魚をお土産に、ムーミンハウスへ戻ります。


「今日は大漁だったな~」
「そうだね。パパとママもきっと大喜びだよ」


 大漁をよろこぶ二人を出迎えるのは、えんとつからもくもくと煙を吐くムーミンハウス。
 玄関の扉を開ければ、やさしいパパとママが待っているはずです。
 それはごくごく普通の、どこにでもある、家族の待つ家の風景。

 ありふれたその風景は、けれど魔理沙の胸をきゅっと締め付けます。


「――ん、じゃあ、またな、ムーミン」


 いつもよりほんの少し、玄関より遠くで立ち止まった魔理沙。
 ムーミンに別れを告げて自分の家に帰ろうとしたところで、玄関の扉が開きました。


「おかえりなさい、ムーミン。あら、ちょうどよかったわ」
「ただいま、ママ」
「ちょっといいかしら、魔理沙ちゃん?」
「こ、こんばんわだぜ――」


 やさしいママの声に、魔理沙はぎくしゃくと振り向きます。
 開いた扉の向こうからは、おいしそうなシチューの匂い。

 自分で作るのでも、霊夢やアリスに作ってもらうのでもない。
 誰かのおかあさんが作ってくれた、料理の匂い。


「一緒に帰ってくると思って、夕飯を用意したの。よかったら食べて行ってくれないかしら?」

「あ―――」


 それは、魔法の森に一人で暮らす魔理沙の心をやさしく満たし。
 同時に、せつなく締め付ける匂いと言葉でした。

 扉の向こうには、パパが待っています。
 ママは魔理沙の返事があれば、すぐに夕飯の支度をしてくれるでしょう。
 ムーミンと一緒に、今日の出来事を話しながら、テーブルを囲んで味わう団欒のひととき。

 宴会とも、友達の霊夢やアリスと味わうものとは、また別の時間。
 魔理沙がどこかに置いてきてしまった、なつかしいあたたかさがそこにはありました。

 魔理沙は騒ぐのが好きで、霊夢や、アリスや、他の人妖や妖精たちとよく一緒に居ます。
 けれども、皆が皆、大体一人で暮らしているので、お母さんや、お父さんとは一緒ではありません。
 友達と一緒に居るのとは違う、家族だけが持つ、特別なぬくもりの手招きに。



「――――うん。ごちそうになります、だぜ」



 ほんの少しせつなくて、とてもあたたかい。
 そんな不思議な気持ちを胸に、魔理沙はちいさく頷きました。
 その日から、魔理沙が博麗神社に夕飯を食べに行く回数が少しだけ、減ったそうです。




「こんにちわ~」
「こんにちわ、美鈴さん」
「氷上釣りの方、どうですか?」
「残念ながらまだ」
「ありゃりゃ。もう少し西へ移動した方がいいのかも」
「なるほど。それじゃあ、西へ移動してみます」



 夏と、秋が過ぎて。幻想郷に冬がやってきました。
 境界の妖怪が冬支度を始めて、冬の妖怪が顔を出すくらいの、ある寒い日の夕暮れ。
 魔理沙は魔法の森の自分の家で、ぽつんと椅子に座っていました。

 壁にかけた時計がチクタクと針を刻む音だけが響く家の中。
 冬だと言うのに暖炉に火は入っておらず、明かりも灯っていません。
 薄暗くて寒々しい、一人の家。家の中は、今の魔理沙の気持ちとそっくりでした。


「―――――」


 魔理沙の座るテーブルの上には、かたづけられないままのティーカップが4つ。
 ここには、さっきまでムーミン一家がやってきて、話していたのです。
 今はもう居ません。話を終えて、ムーミンハウスへ帰ってしまいました。

 冬になると、ムーミンは冬眠しなければいけないから。
 春まではお別れなんだよ、と、告げて。


「――――」


 夏にはたくさんムーミンと遊びました。
 釣りをしたり、弾幕を教えたり、色んなところへ遊びに行ったりしました。
 パパによく飛ぶ竹とんぼの作り方を教えてもらったこと。
 パパの持っている本は、どれも幻想郷にない本だったこと。
 ママの作ってくれたクッキーや、シチューの味。
 ママに会うたびに、なんとも言えないあったかい気持ちになったこと。

 一人で居ると、そんなことが次々に思い出されてゆきます。
 何回も、ムーミンハウスにお呼ばれして、食事をごちそうになりました。
 お泊りだってしたことも、宴会に招待したこともあります。

 いつも、ムーミンたちは家族でひとつでした。
 楽しい一家と過ごしたこの一年。
 ムーミン一家のあたたかさに憧れて、甘えて。
 いつものよりほんの少し、等身大の自分を見せた一年。

 それも、もうおしまいです。
 あの楽しくて、やさしい一家とは―――春までお別れだから。



「――――おなかすいたぜ」



 きゅう、と可愛く鳴るおなかを押さえて、魔理沙は呟きました。
 そろそろ、夕飯の時間です。今日の夕飯は、ママの持ってきてくれた、大好きなシチュー。

 それを思うと、魔理沙は―――泣きそうになりました。

 椅子の上で白いエプロンをぎゅっと握って。
 つんとする鼻の奥からこみ上げてくるものを、じっと我慢して。
 魔理沙は、泣き虫の虫がおとなしくなるのを、待ちました。




    コンコン ガチャリ


「魔理沙、居る?」
「―――あ」
「ああ、やっぱり。家に居たのね。明かりくらい点けなさいよ、もう」
「――アリス」
「うわ、寒っ。暖炉に火もいれてないの? 風邪ひくわよ、まったく」
「―――アリス」
「アンタちょくちょく勝手に泊まりに来るから、私も勝手に泊まりに来たわよ」
「――――アリス」


「―――さっき家にムーミンたちが来たわ。季節ごとの別れって、けっこう寂しいものね」



 扉を開けて、突然現れたアリスの胸の中へ、魔理沙は飛び込みました。
 アリスの方がほんのちょっと背が低いので、抱き合っているようにしか見えなかったのですけれど。
 


「アリス……ムーミンが…」
「分かってるわよ。アンタ、仲良かったもんね」
「ムーミンが……」
「うん。今日は一緒に居てあげるから」
「ムーミ……ムーミン……っ」
「私、何も聞いてないし、見てないから」
「ひっ……うっ…」
「思いっきり、泣いていいわよ」


「う゛え゛え゛え゛え゛、ム゛ーミ゛ーン゛ー!!!」



 冬のある寒い日の夕暮れ。
 魔理沙は思いっきり、泣きました。
 アリスは、魔理沙が泣き止むまで、ずっと。
 魔理沙を抱き締めて、あやしてあげました。



 家族のあたたかさとぬくもり。
 そして、身近な人のやさしさ。

 そのふたつを感じた一年も、もうすぐ終わりに近づいています。
 冬が終わり、春がやってきて、また会う日まで。


 楽しい一家とは、しばしのお別れです。
 
おしまいです  みなさん、よいおとしを!
じょにーず
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コメント



0.簡易評価なし
1.無評価名無し妖怪 削除
温まりますねぇ。

魔理沙は成長してるんでしょうか
2.無評価名無し妖怪 削除
暖かい物語をくれたじょにーずさんに感謝の気持ちを

そして岸田今日子さんのご冥福をお祈りします
3.無評価CACAO100% 削除
何故だか目頭が熱く成って来た・・・
ムーミン家のシチュー食べてみたいなぁ・・・
良いアリマリご馳走様でした、魔理沙は子供の頃家出たって話しだしなぁ
4.無評価ぼこちょ 削除
暖かいけど少し切ないよ…。
家族っていいですよね。
5.無評価名無し妖怪 削除
暖かさと一緒に懐かしさを感じました。
さりげなくスナフキンが出ていたのも嬉しかったです。

>CACAO100%さん
本人が親父さんに勘当されたって言っていましたしね。真偽は分かりませんが。

岸田さん…orz
6.無評価誰ん者 削除
家族、いいですね。
魔理沙の甘えっぷりがまたなんとも**
7.無評価NEOVARS 削除
氏の魔理沙は、とっても女の子で素敵です。
8.無評価名無し妖怪 削除
このアリスすっげぇ友達思いのいい子だなー。普通に感動した…。
9.無評価TNK.DS 削除
作品に漂う緩やかな空気と世界観で描かれる魔理沙とムーミン一家との楽しい交流・・・ホント心がジーンと温まりました。
今年一年、何回じょにーずさんに泣かしてもらったかな・・・素晴らしい作品をありがとう。そして、よいお年を。
10.無評価名無し妖怪 削除
昔のムーミンにはフローレンじゃない娘だった記憶が。
緑色の娘でノンノだったか?
きっと古いムーミン谷も幻想郷のどこかにあるはず!
11.無評価名無し妖怪 削除
暖かいが、それゆえに少しの別れでも寂しい。
ムーミンママのシチューが食べたい今日この頃です。
12.無評価思想の狼 削除
駄目だ、何回読んでも涙が…。…また、会えますよね?
13.無評価名無し妖怪 削除
泣けたけど……

原作では冬でも活動してるんだよな……スキーとかしてるし
14.無評価名無し妖怪 削除
天才。
15.無評価名無し妖怪 削除
「フローレン」「ノンノ」は年齢踏み絵。

ご注意ください。
16.無評価真十郎 削除
スノークのお嬢さんか。
なつかしす。
17.無評価名前が無い程度の能力 削除
冒頭の魔理沙のセリフでいきなり吹いたけど、全部読んでみたらいい話だった
18.無評価名前が無い程度の能力 削除
感動したぜ…