「メリークリ○○ス!!」
蹴った。軸足が摩擦で床を焦がすくらいに。
目の前のサンタの格好をしている蓮子だったものは、見事に玄関の壁に頭ごとめり込ませている。どこぞの新進気鋭な芸術家が作ったオブジェのようだった。
クリスマスはメリーの家でパーティーよと蓮子がのたまったので、仕方なくチキンやらケーキやらシャンパンを用意したのだが(費用は当然折半)、本日夕方、学校で蓮子と分かれた後用意して待ち構えてる所に私の家のインターフォンが鳴らされ、ドアを開けた途端これである。
お、動いた。
首から上が壁なのか壁から身体が生えてるのか分からない状態だった、ぐったり蓮子サンタが再起動をかます。ぎゅ、ぎゅと両手を壁につけて何とか首を引っこ抜こうと頑張ってるようだが、私の蹴りの威力が相当良かったのか、なかなか抜けないようだ。
ギャグじゃなきゃ死んでるよなぁこれ。
まぁいいや、このまま放っておくと餓死して私の玄関にシュールなオブジェクトを作ってしまうので手を貸してやることにした。蓮子の肩に手をかけ、片足を壁に。ぎゅーっ、と肩を全力をかけて壁から引き離そうとするが、なかなか抜けない。というか、蓮子が私の手をタップしている。あぁ、窒息しそうで苦しいのね。早く出してあげるわと更に力を入れたところで豪快な音を上げて蓮子が壁から抜けた。
「ぶはっ、死ぬかと思った……何するのよメリー」
「いや苦しそうだったし」
「あれは首が折れそうだったのよ! メリーのせいで。損害賠償を請求するわ。主に唇で」
「蓮子……アンタ自分で何言ったのか分かっててそんなことのたまってるのかしら?」
「え、だからメリーのクリt
蹴った。見事なほどの後ろ回し蹴り。今なら武技言語も使えそうな気がする。
今度は踵で狩るような蹴りだったので壁に被害はない。
玄関の床に叩きつけられた蓮子が反動で浮いたのでついでに空中コンボを叩き込んだ。無駄に頑丈な玄関である。
◆◆◆
「私思うのよねー。男の子のは問題ないのに女の子のは放送禁止っておかしいって」
「あのね……一応年頃の娘さんだと言う事を忘れてませんか蓮子さん」
気だるそうに私のこたつに顎をのっけて、目の前で赤く丸い物体(多分トナカイの赤鼻だろう)をころころ転がしてた蓮子がのたまった。いかにも学生らしい質素な部屋の小さなこたつにもぐりこむサンタクロース。背後の玄関は世紀末も裸足で逃げ出すほどの荒れっぷりだがこの際気にしない。修理代は蓮子に請求するし。
ため息をつきつつ蓮子の反対側に足をもぐらせる。ちなみに蓮子の傷はあっという間に治ってる。ギャグキャラ万歳。
「いいじゃない別に。いくら言ったって減るもんじゃないし」
「減るわよ、色々と」
人間としての尊厳とか。
ぶー、と口を尖らせる蓮子も可愛いものだが、中身はまごう事なきオッサンである。
「はぁ……まぁどうでもいいわ。とっとと始めましょ」
「わーいメリーの手料理ー」
近場のスーパーで出来合えの物を買ってきて並べただけである。
「ね、ね、食べさせて」
両手をこたつにもぐらせたまま天板の上で可愛い口を開けるサンタクロース。
……あんな奇行がなければ十分可愛いんだけどなぁ。ちょっと頬が熱くなるのを感じながら、スーパーで特売340円の照り焼き骨付きチキンを手でちぎって放り込む。
「あむあむ……おいしー」
にへら、と緊張感のない笑みをこぼす。一体どっちがサンタクロースなのやら。
「次次ー、そこの一口から揚げがいいな」
「いい加減手を出しなさいよ……」
「やだー、寒いもん」
そんなもこもことした暖かそうな紅白なのに贅沢である。ため息一つ、小さな鳥のから揚げをつまんで放り投げる。
「あむっ」
上手いこと蓮子の口に収まる。何だか犬にジャーキーを与えてるような気分である。
「んぐんぐ……メリーってさぁ」
「ん?」
「世話焼くの好きだよね」
「な、何よいきなり」
「私の突飛な行動に文句一つ言わずについてきてくれるし」
「文句は道中何度もこぼしてるけどね」
「結局ついてきてるじゃない」
「そ、そりゃサークル活動だからね……」
「ふーん」
目の前のサンタクロースがいやらしい笑みを浮かべる。今、自分の顔はどれほど真っ赤だろうか。
……私も大概変なヤツだと思うけど蓮子も相当アレである。これ以上しゃべられると余計ペースを崩されそうだから、有無を言わさず照り焼き骨付きチキンの残り全部をまとめてを蓮子の口に押し込んだ。
◆◆◆
一通りの安っぽいクリスマス料理にクリスマスケーキをそれなりに堪能した私達は、食後の紅茶を楽しんでいた。甘ったるいケーキの後は渋めの紅茶が良く合う。
目の前のサンタクロースは結局最後までこたつで丸まったまま手を出さなかった。
「さて、食欲を十分に満たした後は」
「私が満たしてあげたんだけどね」
「プレゼント交換よ!」
がば、と両手をこたつからやっと抜き放つ蓮子サンタ。
……って、今言われて思い出した。ご飯やケーキのことばっかり考えてたからプレゼント買うの忘れてた。
「あぁ、そういえばすっかり忘れてたわ……ごめん、買ってきてない」
「いーのよ、いーの。だってこれから貰うし」
「いやあの、だから買ってきてないんだってば、蓮子」
嫌な予感がする。
私の焦りをよそに蓮子は立ち上がり、こたつに上る。いや、いくら女の子の重さでも私の小さなこたつはちょっと耐久性に余裕がないんですが。
ギシギシと音を立てるこたつの上で、蓮子は何を思ったのかサンタ服の裾を思いっきりたくし上げ――――
ビリッ
破いた。
「ええぇええ?!」
「スッパ……レンコー!」
何と言えばいいのか。あぁ、この間見たどこかのお笑いトリオの何とか大サーカスの団長のごとく、見事に真っ二つになった上下のサンタ衣装。
「ていうか下何も着てないの?!」
そりゃ寒いわ。
見事なほどこの寒い季節に一糸纏わぬ生まれたままの姿になった蓮子。頭のサンタ帽子と靴下は脱いでないのがポイント。
いや今はそんなことじゃなくて!
「ちょっと! な、何て格好してるのよ!」
ていうか下から見ると色々見えちゃうから!
そんな私の声もどこ吹く風、スッパレンコーこと蓮子は両手を腰に当て、叫ぶ。
「さぁメリー! クリスマスの交換よ!」
「何?! クリスマスの交換って何?! プレゼントじゃないの?!」
「色々よ。主にクリスマス汁の交換?」
「汁?! ちょ、や、やめなさい蓮子!」
ぐわば、とこたつから飛び降りて私を組み敷く蓮子。
逃れようにもがっちりと私の両肩が床に押さえつけられて動けない。あぁ、蓮子って結構力あるのね……って、手が! 手が!
頑張って蓮子の手を退けようと身体を捻るもそのつど蓮子が体重を移動させて身動きを取れなくさせる。見事な体術。しかもその淀みのない動きは間違いなく訓練されたものだ。
蓮子……恐ろしい子!
「でも、折角だから、するよ?」
「それ違う! セリフの使いどころが違うから! それこないだの新幹線の時の!」
「そんな……私の実家に一緒に帰省したのは両親に私のフィアンセを紹介するためだったのに!」
「今更明かされる驚愕の事実?!」
「もう両親からOKは貰ってるわ! さぁ始めましょうやれ始めましょういざ尋常に、勝負!」
「何のよぉおおお?!」
ずりずりとこたつから引きずり出される。
「ここが メリーの クリスマスね!」
「ちょ、ぱんつ下ろさないで……て、いやああぁあああぁあ!!」
「あはあはぁはアハァハァハァハァハハハハ」
「ちょ、目、目がイッっちゃってる……て、蓮子! 指! 指!」
「えぇ逝っちゃってるわよ既にイっちゃってるから共にイ、イきましょうメリー」
「どこへ?! い、いや! 蓮子! 入ってる! 入ってるからそれ! い……いやああぁあぁああぁあ!!」
「ンメェェエェェエエリィィィイイッッ!! クリスマァァァァァァァアアアス!!」
其れどこで覚えてきた?え?狐?まぁ諦めろ(ぇ?
まさにBラジリアン柔術……!メリーもMエタイばりの立ち技持ってるし、萃夢想に出たら素で強そうな秘封倶楽部ですね!
ヴァジュリーラ・FF!ヴァジュリーラ・FFじゃないか!!
是非しかるべきところで続きを(殴
変体蓮子最高w