目の前に敵がいる。
どんな姿なのか、何故敵なのかもわからない。
ただ相手を倒す事が自分の使命の様な気がして、立ち向かおうとする。
何度も、何度も。
私にしかできない事だから・・・
突如、目が覚める。
いつもの朝。
「あー・・・・・・・」
全く、むかむかする様な夢だ。
このところ同じ夢ばっかりでうんざりする・・・
いや、一昨日は誰かが祝い酒を持ってきてくれる夢だったかな。
そう誰か来ないだろうか。あまりにも暇すぎる。
いつもと変わらない、何か変化でもあればいいのに。
でもそれは、
今日も平和な一日が約束されている、ということ。
夏の太陽もいつも通り、まぶしい限り。
賽銭箱の中も・・・カラだ。
「もう一眠りしようかな」
と、何かの気配。
これは妖怪だろう。
振り返ると賽銭箱の上の空間に切れ目があり、そこから見知った妖怪が乗り出してきていた。
「なんで来るかな。また仕事を増やすつもり?」
妖怪が神社までやってきている。多分たいした用も無いんだろう。
暇だから来たとでも言うかもしれない。が、一応問いただす。
「何の用?」
「いえ、暇でしたので」
「・・・・・」
ここは怒らなければならない所だ。
「妖怪が―――」
「どうせ暇なんでしょう?お互い様ね」
「・・違う。私は暇じゃない」
「あら。もう一眠りしようとしてたのは誰だったかしら」
「それは・・・・」
その通りだ。これはさぼっているのかもしれない。
「まぁいいわ。お茶でも飲んでいきなさい」
「お邪魔するわ」
この見た目も雰囲気も怪しい妖怪は「紫」という。
名字があったような気もしたが忘れた。必要とすることもないし、いいか。
神社によく来ている者の一人。妖怪の中でも結構強いらしい。
私が知っているのはこのくらい。
あ、動物も飼ってたっけ。猫と狐と・・・あと何か。
本当によくわからないやつだけど何故か私に付きまとう。
目的は何なのかと初めは警戒していたけど、すっかり慣れてお茶を出すくらい何てことはない。
こんなのと仲良くなってもいいのだろうか。
「どう修業はちゃんとやってる?」
「あんたには関係ない」
「あらやってないのね。誤魔化さなくても「やってない!」って言えばわかるわ」
「鬱陶しいなあ、もう」
早く帰ってくれないだろうか。
――――――――――――――――――
また神社に来た。ほとんど日課になっているのかもしれないわね。
まあどこにでもすぐに行けるんだけど。
「あんた、どこにでも出てくるわね」
「あなたはもう少し外に出るべきよ」
「私の勝手」
「他人の忠告は聞くべきです」
「あーはいはい。そうね、明日からは散歩ぐらいには行きます」
「誰かさんみたいになっちゃうかも」
「いくつか思い当たるけど絶対ならない」
彼女は篭る事が多い。
別に日陰が好きとかじゃないと思う。
「そういえば昨日の妖怪は、ちゃんと駆除したの?」
昨日は何かうるさいのが来てた。
凄く懐かしい様な姿だったので一応仲良くなっておいたアレだ。
「ばっちりよ」
「そう、じゃあまた呼んで来ても問題ないわね」
「それは困る」
「・・・本当に追い返したの?」
退治してこそ巫女だ。
「やりたい放題されて・・・逃げられた」
「情けないわね」
「うっさい」
アレにも負けたのか。
彼女は歴代の巫女と比べて、弱い。
修業をさぼっているからなのか、それとも才能がないのか・・・
まぁそこら辺の妖精よりは遥かに強いのだが。
何にしろ博麗の巫女が役に立たないほど弱いというのは幻想郷にとって大問題である。
「貴方には巫女の素質がないのよ。やめてしまってはどうかしら?」
「な・・!何言って・・・・そんな事・・・」
「博麗の巫女をやめる気はないのね」
彼女はしっかりと頷く。
どこかしっかりしてる方だと思う。
けれども・・・
「じゃあ何故さぼってばかりいるの?」
「だって、どうやればいいのか・・・・」
「今まで我武者羅にやってきたから、とりあえずの能力はあるのかしらね。
でもそれだけじゃだめよ。巫女としての仕事を果たして問題を解決しないと意味ないわ」
はっきり言わないといけない。
「貴方がどう意識してるのか知らないけど、あまりに不勉強なら本当に巫女をやめて
里へ戻り、他の人間に任せるべきよ。今の貴方には巫女は務まらない」
「っ・・!・・・あ・・う・・・・」
・・・まただ。
「でも・・・そんな・・・私・・・・
・・・・・うっ・・ぐすっ・・・・私・・だって・・・・」
これが彼女の悪い所なのだ。
泣けば許されるわけでもないのに追い詰められると自己防衛する。
「嫌だ・・・・巫女・・やめるなんて・・・・絶対・・・嫌ぁ」
ぼろぼろと涙をこぼす姿を見ていると呆れてくる。
自分のやるべき事をやっていれば辛い思いもしなかったかもしれない。
といっても辛い思いをさせてるのは私。
だが幻想郷がどれだけ私の中で大きい存在か彼女にはわからない。
幻想郷を思うからこそ、博麗の巫女には巫女なりの均衡を保っていてもらわなければ困る。
幻想郷で、博麗の巫女だから、その役目をきちんとこなすのは当然。
「泣いたって何にもならないわ」
「うっ・・うっ・・・ぐすっ・・・」
「泣くのも修業のうちなの?それならそれでいいけど、一体何の役に立つんでしょうね」
「・・う・・ぁ・・ゆ・ゆか・・りの・・うっ・・・せいじゃ・・ない」
「このくらいで泣かないでほしいわ。そんなことで巫女だなんて信じられない」
「な・なに・・・よ・・・・・年寄りの・・くせに・・」
「怒るわよ」
「もう・・・怒って・・る・・・ぐすっ」
「・・・・はあ」
彼女が巫女として立派になるにはまだ時間が必要だ・・・。
めんどいかもしれないが、この話全体が、お話の掴みとしてなら、先が気になりすぎる掴みなんだよコンチクショー。というわけで続きを希望してみる
はたして彼女は人間と妖怪の中間に立つことができるのでしょうか。
続き思いついたら是非。