「今日のごはんはカレーがいいわ」
幽々子様がおっしゃいました。なればこの身魂魄庭師、その命令を
「それでは料理にかかります」
家に帰ると開口一番、幽々子様に申し上げ。きらきら輝くその瞳、かかる期待に答えましょう。気合一発たすきを締めて、台所へと向かいます。にんじん、じゃがいも、たまねぎ、牛肉。まな板という舞台上、剣の舞はお手の物。この包丁と私の腕に、切れぬ材料ほとんど無い。にんじん、じゃがいも、ころころと。たまねぎ切ると涙が浮かぶ。嗚呼これしきで泣くものか、この身の未熟に自ら
「まずい」
なにこれほんとにカレーなの、紫に聞いたわ、カレーとは、
「…………っく……」
唇噛んで涙をこらえ、そそくさ出でたる白玉楼。幽々子様のお叱りは、いくらなんでもあんまりです。好き嫌いしちゃいけません、師匠もいつも言っていた。エイこれしきで泣くものか、この身の未熟に再び叱咤。幽々子様のその舌を、ぎゃふんと言わせる料理を作れ。しかし何がいけないの、味見をしても分からずじまい。もはや恥など忍んでいられぬ、わからなかったら人に聞け。再び降り立つ人の里。板前さんに話をすれば、にっこり笑って言いました。ならば秘策を授けよう。板前さんに手ほどきを受け、なるほどこれはと開眼したり。何度も何度も頭を下げて、板前さんにお礼を尽くし、決意と共に白玉楼、帰ってきました台所。精魂込めてたまねぎ刻み、もはや涙は枯れ果てた。ぐつぐつ
「さあ召し上がれ、幽々子様」
幽々子様の瞳がきらり、挑戦的に光り増す。そのたおやかな指を滑らせ、右手に握れるスプーンの、銀の輝きふんわりと、宙に描ける放物線。その曲線の危うさに、固唾を呑めば、息詰まる。さらりとひとさじすくわれる、ルウとごはんのハーモニィ。手がゆうらりと運ばれて、永遠と須臾のはざまの時間。茶色い味の
「う……美味い!」
嗚呼感じるわハーモニィ。野菜とお肉のハーモニィ。なんと甘美で繊細な、これがカレーというものなのね。一口舌に乗せたなら、華麗に踊るわ軽やかカレー。茶色いルウに美味しさあふれ、サンバルンバとお祭り騒ぎ。空気震わすお
「幽々子様……」
嗚呼今だけは泣いてもよかろう。幽々子様の喜ぶ姿に、私も胸がいっぱいです。ほかほか盛られたごはんとルウ。銀のスプーンせわしなく、止まらず口に運びます。五穀豊穣の神々も、その食べっぷり見たならば、大いに喜ぶことでしょう。ああ、幽々子様、幽々子様。胸に秘めたる万感の思い、全てを込めて、私は言います。
「それはハヤシライスといいます」
幽々子様は死んだ
甘いカレーだったらまだ救いがあっただろうにゆゆ様哀れwwwww
おせちもいいけど、カレーもね。