Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

華麗熱烈インパルス(妖)

2006/12/25 01:58:16
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「今日のごはんはカレーがいいわ」

 幽々子様がおっしゃいました。なればこの身魂魄庭師、その命令をいとおうものかは。されどひとつの大問題、私の料理は和風専門。カレーなるものいかなるものかと、向かった先は人間の里。昼間の賑わう大衆食堂、板前さんに聞いたらば、お皿に盛られて出てきたカレー。師匠の教えを思い出し、技は教わるものならず、盗んで自分のものとせよ。構えるスプーン、刃のきらめき。いざ一口をほおばれば、なんと甘美なスパイシィ。野菜の奏でるハーモニィ。辛さ感動涙があふれ、極楽冥府にふさわしき、この味確かに盗みたり。板前さんにお礼を言って、向かった先は八百屋さん。八百屋の主人も顔見知り。おやおや今日は肉じゃがかい。いえいえ今日はカレーです。我が意を得たりと主人の笑顔。そんならこれはサービスだ。八百屋の主人特製の、茶色いスパイス頂きました。

「それでは料理にかかります」

 家に帰ると開口一番、幽々子様に申し上げ。きらきら輝くその瞳、かかる期待に答えましょう。気合一発たすきを締めて、台所へと向かいます。にんじん、じゃがいも、たまねぎ、牛肉。まな板という舞台上、剣の舞はお手の物。この包丁と私の腕に、切れぬ材料ほとんど無い。にんじん、じゃがいも、ころころと。たまねぎ切ると涙が浮かぶ。嗚呼これしきで泣くものか、この身の未熟に自ら叱咤しった。大きな鍋で牛肉炒め、続いて野菜も炒めます。頃合見つつ水を足し、あとはクツクツ煮込みます。アクが出たなら取り除け、一時たりとも目離すべからず。くつくつ、くつくつ、聞こえるは、野菜と肉の華麗なコーラス。煮えるお鍋にあやまたず、茶色いスパイス加えましょう。おたまでぐるぐる混ぜたなら、魂魄カレーの出来上がり。お皿に盛り付けお膳に運び、ささ幽々子様、召し上がれ。幽々子様はゆるやかに、銀のスプーン、ひらりとひとさじ、白いお口にお運びになり、ぽつりとひと言、おっしゃいました。

「まずい」

 なにこれほんとにカレーなの、紫に聞いたわ、カレーとは、天竺てんじく伝来神秘の味よ。こんなものを華麗と呼ぶの、カレー華麗に美しく、甘くなくてはいけないでしょう。箱入り娘とお思いかしら、私の舌は騙されない。カレーひとつも作れなければ、魂魄庭師の名前が泣くわ。あなた真面目にやる気はあるの、悔しかったら作り直しよ。それともできないっていうのかしら。妖夢はだめね、うぷぷぷぷ。っていうかニンジンは嫌いだっつってんだろダラズ!

「…………っく……」

 唇噛んで涙をこらえ、そそくさ出でたる白玉楼。幽々子様のお叱りは、いくらなんでもあんまりです。好き嫌いしちゃいけません、師匠もいつも言っていた。エイこれしきで泣くものか、この身の未熟に再び叱咤。幽々子様のその舌を、ぎゃふんと言わせる料理を作れ。しかし何がいけないの、味見をしても分からずじまい。もはや恥など忍んでいられぬ、わからなかったら人に聞け。再び降り立つ人の里。板前さんに話をすれば、にっこり笑って言いました。ならば秘策を授けよう。板前さんに手ほどきを受け、なるほどこれはと開眼したり。何度も何度も頭を下げて、板前さんにお礼を尽くし、決意と共に白玉楼、帰ってきました台所。精魂込めてたまねぎ刻み、もはや涙は枯れ果てた。ぐつぐつうなるお鍋の中に、煮込んであるのは裂帛れっぱくの気合。さあ見せましょう華麗なる、私の料理に刮目せよ。

「さあ召し上がれ、幽々子様」

 幽々子様の瞳がきらり、挑戦的に光り増す。そのたおやかな指を滑らせ、右手に握れるスプーンの、銀の輝きふんわりと、宙に描ける放物線。その曲線の危うさに、固唾を呑めば、息詰まる。さらりとひとさじすくわれる、ルウとごはんのハーモニィ。手がゆうらりと運ばれて、永遠と須臾のはざまの時間。茶色い味の奔流ほんりゅうが、つるりとお口に吸い込まれ。もぐもぐ、もぐもぐ、幽々子様。その時カッと目を見開いた!

「う……美味い!」

 嗚呼感じるわハーモニィ。野菜とお肉のハーモニィ。なんと甘美で繊細な、これがカレーというものなのね。一口舌に乗せたなら、華麗に踊るわ軽やかカレー。茶色いルウに美味しさあふれ、サンバルンバとお祭り騒ぎ。空気震わすお囃子はやしは、幻想郷にも響きましょう。日出づる国に起こりし奇跡、天竺人もびっくりよ。カレー、カレー、ああ華麗。とろける甘さに幽々子感激、さすが妖夢ね見直した。これなら妖忌も鼻高々よ。

「幽々子様……」

 嗚呼今だけは泣いてもよかろう。幽々子様の喜ぶ姿に、私も胸がいっぱいです。ほかほか盛られたごはんとルウ。銀のスプーンせわしなく、止まらず口に運びます。五穀豊穣の神々も、その食べっぷり見たならば、大いに喜ぶことでしょう。ああ、幽々子様、幽々子様。胸に秘めたる万感の思い、全てを込めて、私は言います。



「それはハヤシライスといいます」



 幽々子様は死んだ

乙カレー。

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※拙作『華麗熱烈インパルス(咲)』(プチ作品集10)を読んでおくと、もっとカレーが食べたくなります。
つくし
http://www.tcn.zaq.ne.jp/tsukushi/
コメント



1.名無し妖怪削除
幽々子単に華麗が嫌いなだけかよwwwwwww
2.変身D削除
これはなんとも素敵な意趣返し(wwwwwwwwww
3.名無し妖怪削除
幽々子死んじゃったw
4.名無し妖怪削除
それはねーだろwww
5.CACAO100%削除
幽々子wwwww駄目駄目だなwwwww
6.名無し妖怪削除
妖夢と板前のおっちゃんヒドスwww
7.翔菜削除
ハヤシライスwwwww
甘いカレーだったらまだ救いがあっただろうにゆゆ様哀れwwwww
8.名無し妖怪削除
思いっきりコーラ吹いたww
9.名無し妖怪削除
早速騙されてるじゃねえかw
10.名無し妖怪削除
幽霊だから元から死んでるけどWW
11.名前ガの兎削除
おまっwwwwwwwwwwwwwwwwww
12.名無し妖怪削除
ちょwwwwwwwwwwwww
13.名無し妖怪削除
人様が丹精込めて作った料理を無下にする様な輩は個人的にはナックルパートも妥当と考えますが……成程、この手があったかw
14.名無し妖怪削除
死んじゃったよwwwwww
15.名前なんていらねえよ削除
なんてオチなんだwww
おせちもいいけど、カレーもね。