Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

図書館小話~たまには気分を変えて~

2006/12/23 11:01:27
最終更新
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ページ数
1
 ぱたぱたと優しい風が頬を撫でて、本を読むにも心地よい。
 机の上の紅茶の湯気は、風に運ばれて消え散っていく。
 頭上にさしかけられた傘は、あまりに可愛い柄で気に入らなかったけど、そこはまぁ本を読み始めたら気にならなかった。

「たまには環境を変えるのもいいものね」
 私は独語する。

 いつもいつも暗い図書館にこもって本を読んでいると、本当にもやしになっちゃうんだから…と、私の大切なおも…げほげほ…お友達がいってくれやがったのは昨日の話だ。
 私は、そんな心配性な友人に、特製ニンニク紅茶十字架飾りのスプーン付きをふるまったあと、素直に彼女の言うことに従った。
 長い長い時の中、たまには気分を変えてみるのもいいかもしれない。そんなちょっとした気まぐれだった。

 一瞬だけ風がやむと、紅茶の香りに混じって、ほのかな土の匂いが鼻に届き、そこからのびる小さな葉が、私の目を和ませてくれた。

「まぁ…たまにはいいわね」
 一瞬本から視線をずらし、私は言った。

 私は、一度物語の中へと入り込んだのなら周囲の状況は気にならない。
 紅茶が降ろうが、本が降ろうが、ごくまれに槍がふってこようが頓着は…最後は少しするけど…しない。
 だけど、物語の世界に入るまでのわずかな時間、一冊の本を読み終え、次の本を手にとるまでのささやかな現実、そんな時の為に、雰囲気というのは大事なのだ。
  
 そんな一瞬の思考の後、私は再び物語の世界へと戻った。
 物語はやがてクライマックスへと進み、最後の戦いへと向かう。
 そこで、今までの努力が試されるとき、私も胸を高鳴らせる。
 すべてをやり遂げた主人公が、虚しさに囚われてしまったとき、私も争いの無情さに考え込んだ。

 長い長いお話の果てに、世界はやがて薄くなり、終末へと向かう。
 ぱらりとページをめくったら、そこが物語の終わりだった。

「…全八巻を16時間、こんなものかしら」
 私は、そう言って顔をあげた。

 世界が…元に戻る。
 物語の登場人物達は、みな本の中へと戻り、そして次の出番までの休みをとる。
 心地よい風が、充実した疲れを癒してくれた。

 私は目をつぶり、物語の余韻に浸る。もしもあの時、別な結末が用意されていたとしたら…?もしもあの登場人物がいなかったら…?
 私は、記憶の本棚にしまわれた物語を呼び出して、その別なありかたを検討する。
 お話を読み終えてのこの時間、それは、本を読んでいる時間の延長でもある。
 本の世界は無限に広がる。一人一人の心の中で、いくつものパラレルワールドを生み出して、そしてそれぞれが発展を遂げる。
 一冊の本には一つの世界がある。そして、それを読んだ人の心の中にも、無数の世界を生み出していく。
 どんな強い妖怪も、どんな強い武器も、世界の創造者が力を与えなければ、その中では何の力も持たないのだ。
 心の中の世界、そのなんと強いことか…
 そして、それを生み出す『本』の、なんと偉大なことか…
 私は、本の偉大さをかみしめながら、思考を再開させ…
 






























 




「ねぇパチェ、もう読み終わったんならいいでしょ?もう羽根であおぐの疲れたんだけど…」
「パチュリーさま、テーブルの上にあるハエトリソウどうしましょう?お菓子置くのに邪魔なんですけど」

 ようとして二つの声に引き戻された。
 周囲を見てみれば、基本はあまり変わらない我が図書館が視界を埋める。
 机の上のハエトリソウの鉢植えと、どこからか持ってこられた傘、そして、疲れ切った表情のレミィだけが、ちょっとした違いだった。
 もう、せっかくの余韻が台無しじゃない!

「…レミィ、あなたはわかってないわ。本は読み終わった後に余韻に浸るのも大切なのよ?私が本を読んでいる間、ずっと黙ってあおいでくれる約束でしょ?ペナルティーとしてあともう一度ね」
「え…パチェ?あの…ちょっ!?」
「小悪魔、ハエトリソウは後で巨大化魔法の実験に使うから第七実験室へ」
「はいっ♪」
 私は、首を振りながらそう言って二人を見た。慌てるレミィと、陽気に答える小悪魔が対照的だ。
「レミィ、友達の健康を気遣ってくれたあなたなら、ちょっと羽根であおいでくれる位してくれるわよね?なんてったって友達だしね」
「え…あ…」
 私が言うと、レミィは真っ青になって沈黙する。
「環境を変えてみたらと言ってくれたのはレミィだものね。これからも気が向いたら頼もうかしら…」
 私はそう言って微笑む。
「あ…あの…ちょ…」
「次は…そうね。確か外の世界のやたら長い歴史書があったわね、本棚いくつかうめてたはずだけどそれを…」
「パチェ!?」
 ようやく言葉を取り戻したレミィを見ながら私は思う。

 本の中の世界もなかなかに楽しいけれど、こちらの『世界』もなかなかに楽しいものだと。



『おしまい』
 さしものパチェも挫折し、むきゅーになったそうです。どの国でも、歴史書というのはやたら長いものが多いのです。
 レミィも過労で倒れたそうですが、それを救護すべき小悪魔は、巨大ハエトリソウとの戦いでそれどころではなかったとかなんとか…
アッザム・de・ロイヤル
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コメント



1.名無し妖怪削除
あぁ、この小話シリーズのレミィのヘタレっぷりに乾杯♪
2.SETH削除
このレミリアさまをたたえる石造をルーマニアにたてようゼ!
3.CACAO100%削除
なんというヘタレ・・・
見ただけでヤムチャを連想してしまった
このレミリアは間違いなくヘタレミリア
4.削除
自分の中でレミリアは既にヘタレキャラになりつつある・・・w
5.アッザム・de・ロイヤル削除
ご感想ありがとうございますww
>名無し妖怪様
乾杯♪

>SETH様
それはもう間違いなく観光名所になりま…ん?何をするやめろ!?うわー(通信不能)

>CACAO100%様
日を追う事にヘタレ化が進行する不治の病なのですww

>都様
ふふふ…こっちゃこ~いこっちゃこ~い(orz)
6.七ツ夜削除
そんなオチかwww流石紫もやs(ロイヤルフレア
7.アッザム・de・ロイヤル削除
>七ツ夜様
ご感想ありがとうございます。
小話シリーズは真面目に終わらないのです♪
8.削除
く…いかん、世はへたれみりあを許容しつつある!再びレミ様にカリスマを取り戻さねば!そう、偉大なる6ボスとして…(大食いゆゆ様とかてるよを思い浮かべ)…やはり、不可避の流れなのか?
9.アッザム・de・ロイヤル削除
>翼
そう…それは運命を操るレミリアですら抗することができない、巨大な時代のうねりなのです…orz
10.アッザム・de・ロイヤル削除
>翼『様』
って今更ですが様つけ忘れorzとうとうやらかしてしまいました。申し訳ありませんorz