Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

またあえるひまで

2006/12/14 01:17:50
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誰も居ないそこには、ただぽつんと手紙があった
何の変哲も無い手紙のようで、見るものが見れば劣化を防ぐ術が施されている事に気が付くだろう
そんな手紙の内容は、こう言う出だしで始まる

『お嬢様、あの楽しかった時間から何年経ったのでしょうか
 100年200年があっと言う間に過ぎて行き、とうとう500年を過ぎた頃からは数える事も止めました』

癖の見えない丁寧な文字が綴られている手紙は、まるで誰かへの報告書のようであった

『紅魔館が様変わりしてしまった事をお許しください
 誰も居ないこの館を見た時の悲しみが忘れられず、愚かにもお嬢様の真似事のように妖怪を集めメイドとして住まわせました
 咲夜さんが居ないこの館、私が教育したメイド達の姿を彼女が見たら怒り出すかもしれません
 捨てられた人間や行き場の無い妖怪を受け入れてメイドとして働かせる今の館をパチュリー様が見れば、これでは保育館だと皮肉る姿が目に浮かびます
 もしかすれば、明るい笑い声が木霊する図書館に怒るかもしれません』

さらりと、手紙の置いてある部屋の窓から緩やかな風が舞い込む
すると風が手紙の続きを読んでいるのかのように、一枚目の手紙が捲られた

『驚いた事と言えば、これを綴る数年前にあの八雲紫様がこの館へと訪れに来た事でしょう
 巫女を務める事が出来る娘がこの館に居るのだと言われた時は、上を下への大騒ぎでした
 八雲様が連れて行った娘は、何処かお嬢様も知っているあの巫女に似ているかもしれません
 腋は空けさせませんでしたが、そもそも空けようとしていた事に巫女の業の深さが窺えます
 連れて行かれる時には泣いて嫌がったあの娘も今では立派な博麗の巫女ですが、考えが妖怪寄りなのが心配です
 拾ったのも育てたのも妖怪である私であったのが原因なのかもしれません
 母親だと名乗り出た人間を半殺しにしたとの知らせを聞いた時は血の気が引きました、きっと私の顔は誰が見ても青くなっていたと思います』

そこで二枚目の手紙が終わっており、風がその手紙を捲ると出てきたのは今までとは別人が書いたであろう手紙
その手紙に綴られる文字は、まるで怒って力強く書き殴ったかのように乱暴な文字だった

『この前、自分が私の母親だと名乗り出た女が居た
 こちらの感想としては「だから何? 」だったのだが、その女は自分を神社に住まわせろと言う
 勿論断るつもりだったが運悪く友達の○○が来ていて、その女は、その人間は○○を指差してこう言った
 「な、何で此処に妖怪が居るのっ!? 貴女は巫女でしょ!? そこにいる妖怪を早く退治しなさいよっ! 」』

其処まで書いて落ち着いたのか、乱暴だった文字が丁寧な物になっていた

『甲高い声が耳障りだったので、貴女に教えて貰った【じゅうれんこんぼ】で黙らせました
 神社の前にその人間を投げ捨てましたが人間って全体的に脆い癖に変に頑丈だから困ります、生きてやがりました
 その後は人間を回収しに来た人間の後をつけて、村に入ったところを感情のままに襲撃しました
 とりあえず巫女は中立の立場であり、それに取り入ろうとする者は罰せられるのだと大声で叫びながらボコります
 泣いて謝っても許しません、気絶するまで締め上げました
 人間であれば誰でも良かった、止めに入った○○までも殴り倒したのは少し反省しています
 翌日、私が巫女をする事となった原因であるスキマが苦言しに来たので蜜柑と芋の皮を投げ付けてやりました
 初勝利です、あの自称永遠の19歳がぐずり泣いて帰った姿は一生忘れることは無いでしょう』

此処で文字が止まり、今までの詰めるように書いてあったのが不思議なほどに行が空けられている
そして手紙の最後には、たった二文が書かれていた

『私の母親は、昔もこれから先も一人しか居ません
                貴女の娘より』

再び風に手紙が捲られて見れば、其処にあるのは丁寧な癖の無い文字

『今の私は不幸ではありません、自信を持って幸福であると言えます
 けれども私の中に、止まったまま動き出すことの無い私が居ます
 フランドール様に追いかけられた私、パチュリー様と傍に居る図書館の司書に笑われた私
 多くのメイド達と一緒に仕事をした私、咲夜さんに怒られた私
 そしてお嬢様に、レミリア様に仕えた私が居ます
 あの時に止まってしまった私が居ます』

はらりと、手紙が捲られた

『だから私は待っています
 またフランドール様に追いかけられる事を
 またパチュリー様と傍に居た図書館の司書に笑われる事を
 またメイド達と一緒に仕事をする事を
 また咲夜さんに怒られる事を
 またレミリア様に仕える事を』

はらりと、手紙が捲られる

『私は待ち続けます
 此処で待ち続けます
 きっとまた出会える事を願いながら、いつまでも待ち続けます
 私は幸せです
 幸せな時間はあっと言う間に過ぎて行くのなら、きっとまた会える日もあっと言う間に来るでしょう
 私は待ちます』

はらりと、手紙が捲られる

『そして出会えたら、あの時には言えなかった思いを言います
 あの時の私では言えなかった言葉を伝えます
 知って欲しい想いがあります
 会えるのが、楽しみで仕方がありません
 私はそんな日が来るのを待ち続けます
 そうして、また会えたら』

はらりと、手紙が捲られそうになったところを一つの手が押し留めた
その手は捲られて飛ばされた手紙を大きな封筒に入れ、机の引き出しへと仕舞い込む
カチリと引き出しの鍵を閉め、手の持ち主は音もなく風のように部屋を出て行った
パタパタと、窓辺のカーテンだけが揺れている
また会えたら



実 験 で 私 を 過 去 に 飛 ば し た パ チ ュ リ ー 様 と 咲 夜 さ ん は 一 発 ぶ ん 殴 り ま す



★修正、ご指摘を感謝
上から下への大騒ぎ(重力に囚われる) → 上を下への大騒ぎ
数日前(インスタント巫女) → 数年前
改行(左詰め) → やって見たら変だったので申し訳ないと思いつつ止めました
根っこ
コメント



1.名無し妖怪削除
ウホッ、いい台無し・・・
2.名無し妖怪削除
うわーーー。なんてテクニカル。なんて秀麗なオチ。お美事です。
にしても、何千年前にぶっ飛ばされたんだ、美鈴……。
3.灰天削除
いえーい、騙されました。
というか、また会える頃には美鈴が一大勢力をつくっていそうだw
4.悠祈文夢削除
――こうして、美鈴おっかさん伝説が幕を開けた――
5.名無し妖怪削除
根っこさんの描く美鈴のしなやかな優しさがツボなのですドツボなのです。
6.名無し妖怪削除
ここまでされて一発で済むのか。 それほどまでの一発なのか。
こーゆー落ちは大好きです!!
7.名無し妖怪削除
<こうして、美鈴おっかさん伝説が幕を開けた
そ う い う こ と か
8.手スタメンと削除
折角面白い話なのだから改行して欲しい
画面端で切れてて見づらい
9.しず削除
美鈴! 美鈴! 優しいひと!
親子話は親子話、オチはオチときっちりしてて大好きです。
後日談読みたいですね~。
10.名無し妖怪削除
うむむ、オリキャラの巫女もすごくイイ!
…というか、ここに500年以上いるなら確実にレミリアより先に美鈴が住んでいるという事態になる。紅(ホン)魔館の誕生か!?
11.名無し妖怪削除
やがてお嬢様が紅魔館を乗っ取りに来るのですね。
「私は魔法で過去に飛ばされた貴方の従者だ」なんて声に聞く耳も持たずに。
12.名無し妖怪削除
後書きで
哀しい気持ちが
バニッシュ&デス(字余り)
13.名無し妖怪削除
見事に騙されました。いいオチです。

あと日本語の間違いの指摘を
×上から下への大騒ぎ
○上を下への大騒ぎ
14.名無し妖怪削除
つまり、
過去に飛ばされた美鈴が紅魔館の原型を作る

それをレミリアが奪いに来る

紅美鈴は門番に

紅美鈴、過去に飛ばされる

……無限ループ?
15.名無し妖怪削除
少なくとも千年単位では飛ばされてるよなあ。
さらりとステキはお話でした。GJ。
16.変身D削除
オチまで含めて良いお話でした、特に巫女の所とか頬がにやけて止まりませんでしたよ。
あと、飛ばされた美鈴は兎も角、やはりゆかりんは千年単位の年齢だったようですn(スキマ
17.名無し妖怪削除
このままいくと美鈴が無限ループに入ってしまうので過去のパチュリー様に未来に返してもらわないとだめですね
しかしそんなことを見知らぬ一介の妖怪にやってくれるパチュリー様かどうか…
18.名無し妖怪削除
美鈴という異分子がやってきた時点でその過去と元の過去は次元が違ってるから無限ループにはならないよ!
19.名無し妖怪削除
いつかやって来る主人を待つ従者、とゆーのは絵的にはすごく綺麗だなあ。
20.名無し妖怪削除
うほっいいオチ!
21.暇人削除
あとがきで台無しだー!!!

だがそれがいいGJ
22.名無し妖怪削除
>――こうして、美鈴おっかさん伝説が幕を開けた――

ものすごく納得した。
23.名無し妖怪削除
細かいんですが疑問点が一つ出てしまったので書きます。
「手紙を綴る数日前に紫が博麗の巫女を連れて行った」とありますが、その後巫女が仕事に慣れる期間や自称母親を殴り倒したイベントを考えるとそれらが数日間の出来事というのは短すぎはしませんか?
どうも気になったもので。
24.名無し妖怪削除
妖怪って年を重ねれば強力になったような?
現在=中国…①
再会時=幻想郷有数の大妖怪+おっかさん…②
①と②から「紅魔館おっかさん奮闘記」が…。
25.名無し妖怪削除
おっおっかさーん!!
26.名無し妖怪削除
幻想郷最強の包容力は伊達じゃないぜ!
27.名無し妖怪削除
>美鈴という異分子がやってきた時点でその過去と元の過去は次元が違ってるから無限ループにはならないよ!
なりそうなのが幻想郷。
28.名前が無い程度の能力削除
オチで台無しw
だが、GJ!!
29.名前が無い程度の能力削除
台無しだー!
あとこんなところにツッコむのもおかしいかもしれませんが、
あとがきの追記のところの(インスタント巫女)に吹いたwww
30.名前が無い程度の能力削除
なんというオチw
31.名前が無い程度の能力削除
もってかないで~(後書きで)
32.名前が無い程度の能力削除
2度楽しめた