あらすじ
トップをねらえ
あの子はかわいい優曇華院。
月のうさぎの優曇華院。
今日も明日も明後日も。
きっとずっと、家族と一緒。
「もーいーかーい?」
「まーだだよー♪」
風もやさしい秋のころ。
外でイナバのはしゃぐ声。
竹の林の奥にある。
永遠亭の一部屋で。
ちくりちくりと縫い物してる。
今日はお針子優曇華院。
手にはイナバのお気に入り。
ピンクのちいさなワンピース。
「もー、すぐにダメにしちゃうんだから」
口では文句を言いながら。
針を動かしちくちくり。
「ホントにもー」
縫い物しながら思い出す。
少し昔のものがたり。
「鈴仙さま~、鈴仙さま~」
「一緒に遊びましょうウサ~」
「かくれんぼしましょうウサ~」
「ウサ~」
「――ん、ごめんね。そんな気分じゃないんだ」
月の隠れる少し前。
月のうさぎは悩んでた。
「あ、鈴仙」
「――てゐ、だっけ」
「うん、そう」
「なにしてたの?」
「ちょっと、月を見てたの」
「そっか――邪魔しちゃったかな」
「ううん、平気」
地上のうさぎと全然にてない。
ひとりぼっちの月うさぎ。
イナバがよくしてくれるけど。
なかなか上手になじめない。
「――鈴仙さま、わたしたちと全然違うウサ」
つかず離れず微妙な距離で。
なかよくなるのが、むずかしい。
「――耳が垂れてないウサ」
悩んで悩んでちいさなため息。
かくれてこっそり吐くときに。
「――背もすらっと高いウサ」
イナバの皆のないしょの話。
大きな耳が、聞き分けた。
「――手も足もう~んと長いウサ」
地上のうさぎと全然にてない。
ひとりぼっちの月うさぎ。
「――全然ちがうから遊んでくれないウサ?」
「――私たちのこと、キライなのかもしれないウサ…」
それは違うと言いたいけれど。
信じてもらえる自信がない。
それが怖くて膝抱え。
俯き一人で泣いていた。
「――そんなことないったら!」
「てゐさま!」
「うさぎはみんなさびしがりなんだから、そんなことあるわけないでしょ!」
「で、でも――」
「大丈夫、私に考えがあるわ!」
「あ、それ!」
「そういうこと! さ、皆着替えて!」
「はいウサ~」「はいウサ~」「はいウサ~」
「―――?」
トタトタ近づく足音に。
泣き虫うさぎは顔を上げ。
怪訝な顔して振り向く先に。
地上のうさぎの群れを見る。
「あ――」
皆が皆、おそろいの。
紺の制服、着替えてた。
「鈴仙さま~」
「鈴仙さまとおそろいウサ~」
「耳も立ててみたウサ~」
「一緒ウサ~」
「これから牛乳を飲んで背も伸ばすウサ~」
「だから一緒に遊ぼうウサ~」
「ウサ~」「ウサ~」「ウサ~」「ウサ~」
ところどころが歪んでて。
不恰好ではあったけど。
色とデザイン、しっかり合わせた。
彼女と同じ服を着て。
「―――っ」
膝を抱える彼女の腕を。
かわりばんこに引っ張りながら。
「ほら、服もおそろいだし、耳も一緒だよ、鈴仙。
さびしがりや同士、さびしくないように友達になろうよ。ね?」
笑顔で皆が頷いた。
「――――うん………ありがとう……」
「あー、もー、こんなに破いちゃって~」
竹の林の奥にある。
永遠亭の一部屋で。
ちくりちくりと縫い物してる。
今日はお針子優曇華院。
「ホント、元気なんだから」
口では文句を言いながら。
顔には笑顔がたっぷりで。
「鈴仙さま鈴仙さま」
「かくれんぼしようウサ~」
「ウサ~」
「はいはい、これが終わったらね」
「はいウサ~」「はいウサ~」「はいウサ~」
皆もやさしい秋のころ。
はしゃぐイナバにそう返す。
あの子はかわいい優曇華院。
月のうさぎの優曇華院。
今日も明日も明後日も。
きっとずっと、家族と一緒。
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あの子はかわいい優曇華院。
月のうさぎの優曇華院。
今日も明日も明後日も。
きっとずっと、家族と一緒。
「もーいーかーい?」
「まーだだよー♪」
風もやさしい秋のころ。
外でイナバのはしゃぐ声。
竹の林の奥にある。
永遠亭の一部屋で。
ちくりちくりと縫い物してる。
今日はお針子優曇華院。
手にはイナバのお気に入り。
ピンクのちいさなワンピース。
「もー、すぐにダメにしちゃうんだから」
口では文句を言いながら。
針を動かしちくちくり。
「ホントにもー」
縫い物しながら思い出す。
少し昔のものがたり。
「鈴仙さま~、鈴仙さま~」
「一緒に遊びましょうウサ~」
「かくれんぼしましょうウサ~」
「ウサ~」
「――ん、ごめんね。そんな気分じゃないんだ」
月の隠れる少し前。
月のうさぎは悩んでた。
「あ、鈴仙」
「――てゐ、だっけ」
「うん、そう」
「なにしてたの?」
「ちょっと、月を見てたの」
「そっか――邪魔しちゃったかな」
「ううん、平気」
地上のうさぎと全然にてない。
ひとりぼっちの月うさぎ。
イナバがよくしてくれるけど。
なかなか上手になじめない。
「――鈴仙さま、わたしたちと全然違うウサ」
つかず離れず微妙な距離で。
なかよくなるのが、むずかしい。
「――耳が垂れてないウサ」
悩んで悩んでちいさなため息。
かくれてこっそり吐くときに。
「――背もすらっと高いウサ」
イナバの皆のないしょの話。
大きな耳が、聞き分けた。
「――手も足もう~んと長いウサ」
地上のうさぎと全然にてない。
ひとりぼっちの月うさぎ。
「――全然ちがうから遊んでくれないウサ?」
「――私たちのこと、キライなのかもしれないウサ…」
それは違うと言いたいけれど。
信じてもらえる自信がない。
それが怖くて膝抱え。
俯き一人で泣いていた。
「――そんなことないったら!」
「てゐさま!」
「うさぎはみんなさびしがりなんだから、そんなことあるわけないでしょ!」
「で、でも――」
「大丈夫、私に考えがあるわ!」
「あ、それ!」
「そういうこと! さ、皆着替えて!」
「はいウサ~」「はいウサ~」「はいウサ~」
「―――?」
トタトタ近づく足音に。
泣き虫うさぎは顔を上げ。
怪訝な顔して振り向く先に。
地上のうさぎの群れを見る。
「あ――」
皆が皆、おそろいの。
紺の制服、着替えてた。
「鈴仙さま~」
「鈴仙さまとおそろいウサ~」
「耳も立ててみたウサ~」
「一緒ウサ~」
「これから牛乳を飲んで背も伸ばすウサ~」
「だから一緒に遊ぼうウサ~」
「ウサ~」「ウサ~」「ウサ~」「ウサ~」
ところどころが歪んでて。
不恰好ではあったけど。
色とデザイン、しっかり合わせた。
彼女と同じ服を着て。
「―――っ」
膝を抱える彼女の腕を。
かわりばんこに引っ張りながら。
「ほら、服もおそろいだし、耳も一緒だよ、鈴仙。
さびしがりや同士、さびしくないように友達になろうよ。ね?」
笑顔で皆が頷いた。
「――――うん………ありがとう……」
「あー、もー、こんなに破いちゃって~」
竹の林の奥にある。
永遠亭の一部屋で。
ちくりちくりと縫い物してる。
今日はお針子優曇華院。
「ホント、元気なんだから」
口では文句を言いながら。
顔には笑顔がたっぷりで。
「鈴仙さま鈴仙さま」
「かくれんぼしようウサ~」
「ウサ~」
「はいはい、これが終わったらね」
「はいウサ~」「はいウサ~」「はいウサ~」
皆もやさしい秋のころ。
はしゃぐイナバにそう返す。
あの子はかわいい優曇華院。
月のうさぎの優曇華院。
今日も明日も明後日も。
きっとずっと、家族と一緒。
本編読み終わった瞬間泣いてた