健康な人間にとって、風邪とは認識しにくいものだ
特に、たとえ冬だろうと腋の開いた巫女服を着るような人間にとっては
「もうすっかり冬ね」
肌寒さに体を震わせ、ゾクリと背筋を走った何かを寒いからだと思い込む
博麗の巫女、博麗霊夢は本人さえも気づかずに風邪を引いていた
そんな巫女は、次の日の朝に毛布の中から出ることが出来なかった
寒いのは冬だから、鼻水が出るのは寒いから
セキが出るのは暖房具(火鉢)を使って部屋が乾燥しているから、体に力が入らないのは朝食を抜いたから
カラカラカラと、巫女の勘が空回りする
けれど、部屋を暖めて毛布に包まっている現状は正しい
体が温まれば巫女は動く、昼食を食べれば完治していた事だろう
だが、そんな時に限って彼女は現れるのだ
「霊夢ー、生きてるかー? 」
魔法使い、霧雨魔理沙である
閉めている引き戸をスパンと開け放ち、新鮮ではあるが極めて冷えた空気を持ち込んで登場
巫女はその暴挙に、毛布へと頭を引っ込めることしか出来ない
そんな巫女を見ても、魔法使いは何時まで寝ているのか、としか思わない
「霊夢、もう昼だぜ? 」
「・・・・うっさいわねぇ」
嗄れた声だった、常人なら喉を痛めているのかと心配するだろう
けれど魔法使いは違う、喉を痛めいているのなら原因があると周りと見渡して火鉢を見つける
空気の乾燥が原因だと瞬時に理解し、かって知ったる他人の家と言わんばかりに数秒で良く冷えたお茶を入れた
「ほら、喉が渇いてるだろ? 」
「・・・・ありがと」
傍目から見れば美しい友情だろう、けれど別の視点から見ればなんとも残酷極まりない
暖めていた体が受け取るのは冷たいお茶、確かに喉は潤うかもしれない
しかし体が冷える、喉が潤った事からすっきりしたのだと勘違いする巫女の体は確かに冷えていた
「しっかし霊夢、何時まで寝てるんだ? 」
「寒いのよ」
「体動かせば、暖かくなるぜ」
そんな事を言う魔法使いは元気そうだった、巫女は魔法使いを見て体を動かせば暖かくなるのかと思う
魔法使いは、暖かくなる魔法を使っていた
「じゃあ、弾幕ごっこね」
「あぁ、弾幕ごっこだな」
これが例えば、人形遣いであったなら気づいたかもしれない
ふらふらと飛ぶと言うより浮かぶ巫女、まるで見当違いの方向へと投げられる御札
魔法使いから見た巫女は、寒さで元気が無い、その程度にしか見えなかった
いつもふらふらふわふわ飛んでいるし、御札は例え見当違いの方向へと飛ぼうともホーミング
いつもと違う巫女、その巫女を魔法使いはいつもと違う戦法なのだと認識する
御札が死角から迫る、いつもは避けても追いかけてくる御札が上下左右の区別無く迫ってくる
「ははっ! そう来なくちゃな! 」
魔法使いは燃える、そんな魔法使いに対して巫女の視界はぐるぐると螺旋を描いていた
「魔理沙が六人? 新しいスペルカードみたいだけどまたパクったのね」
ならばと巫女は手持ちの御札を出し惜しみせずにばら撒く、本当にばら撒く
魔法使いはばら撒かれる御札に対し突っ込んだ、突き進みながら避ける魔法使いの顔に浮かぶのは笑顔
巫女と魔法使いの距離が近づき、魔法使いがスペルカードを放とうと構えたときにそれは起こった
巫女は風邪を引いていた、魔法使いはそれに気づかなかった
だからこそ起きた悲劇、避けることの出来なかった喜劇
「へーちょ」
べちょり
特に、たとえ冬だろうと腋の開いた巫女服を着るような人間にとっては
「もうすっかり冬ね」
肌寒さに体を震わせ、ゾクリと背筋を走った何かを寒いからだと思い込む
博麗の巫女、博麗霊夢は本人さえも気づかずに風邪を引いていた
そんな巫女は、次の日の朝に毛布の中から出ることが出来なかった
寒いのは冬だから、鼻水が出るのは寒いから
セキが出るのは暖房具(火鉢)を使って部屋が乾燥しているから、体に力が入らないのは朝食を抜いたから
カラカラカラと、巫女の勘が空回りする
けれど、部屋を暖めて毛布に包まっている現状は正しい
体が温まれば巫女は動く、昼食を食べれば完治していた事だろう
だが、そんな時に限って彼女は現れるのだ
「霊夢ー、生きてるかー? 」
魔法使い、霧雨魔理沙である
閉めている引き戸をスパンと開け放ち、新鮮ではあるが極めて冷えた空気を持ち込んで登場
巫女はその暴挙に、毛布へと頭を引っ込めることしか出来ない
そんな巫女を見ても、魔法使いは何時まで寝ているのか、としか思わない
「霊夢、もう昼だぜ? 」
「・・・・うっさいわねぇ」
嗄れた声だった、常人なら喉を痛めているのかと心配するだろう
けれど魔法使いは違う、喉を痛めいているのなら原因があると周りと見渡して火鉢を見つける
空気の乾燥が原因だと瞬時に理解し、かって知ったる他人の家と言わんばかりに数秒で良く冷えたお茶を入れた
「ほら、喉が渇いてるだろ? 」
「・・・・ありがと」
傍目から見れば美しい友情だろう、けれど別の視点から見ればなんとも残酷極まりない
暖めていた体が受け取るのは冷たいお茶、確かに喉は潤うかもしれない
しかし体が冷える、喉が潤った事からすっきりしたのだと勘違いする巫女の体は確かに冷えていた
「しっかし霊夢、何時まで寝てるんだ? 」
「寒いのよ」
「体動かせば、暖かくなるぜ」
そんな事を言う魔法使いは元気そうだった、巫女は魔法使いを見て体を動かせば暖かくなるのかと思う
魔法使いは、暖かくなる魔法を使っていた
「じゃあ、弾幕ごっこね」
「あぁ、弾幕ごっこだな」
これが例えば、人形遣いであったなら気づいたかもしれない
ふらふらと飛ぶと言うより浮かぶ巫女、まるで見当違いの方向へと投げられる御札
魔法使いから見た巫女は、寒さで元気が無い、その程度にしか見えなかった
いつもふらふらふわふわ飛んでいるし、御札は例え見当違いの方向へと飛ぼうともホーミング
いつもと違う巫女、その巫女を魔法使いはいつもと違う戦法なのだと認識する
御札が死角から迫る、いつもは避けても追いかけてくる御札が上下左右の区別無く迫ってくる
「ははっ! そう来なくちゃな! 」
魔法使いは燃える、そんな魔法使いに対して巫女の視界はぐるぐると螺旋を描いていた
「魔理沙が六人? 新しいスペルカードみたいだけどまたパクったのね」
ならばと巫女は手持ちの御札を出し惜しみせずにばら撒く、本当にばら撒く
魔法使いはばら撒かれる御札に対し突っ込んだ、突き進みながら避ける魔法使いの顔に浮かぶのは笑顔
巫女と魔法使いの距離が近づき、魔法使いがスペルカードを放とうと構えたときにそれは起こった
巫女は風邪を引いていた、魔法使いはそれに気づかなかった
だからこそ起きた悲劇、避けることの出来なかった喜劇
「へーちょ」
べちょり
⑨は風邪を知らない
つまり霊夢は⑨だった
そして魔理沙は⑨である
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