Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

あれこそまさしく魂魄奥義!

2006/11/27 07:53:04
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 それは、明けない冬が来るよりも、だいぶ前。まだまだ、一人の少女が半人前にも満たなかった頃のお話です。

「妖夢よ」
「はい」
 白玉楼。
 そこは、幽霊漂う冥い界の場所。そこには大きなお屋敷があり、咲かない桜を携えた空間となっている。まさにその一室に、二人の人間――いや、人間と称するには、些か語弊のあるもの達がいた。
「妖夢よ。お前には、次にこの白玉楼を守ってもらうものとして、わしの知る限りの事を授けてきた」
「はい」
 巌のような表情を決して崩さない、年老いた、しかし、それでいてなお鋭さを失わない男性、名を魂魄妖忌。
 彼の前にちょこんと腰を下ろしているのは、まだまだ凛々しさよりも幼さの方が全面的に出されている少女、名を魂魄妖夢という。
「あらゆる剣術、あらゆる体術、そしてあらゆる心。お前には器があった。故に、わしはお前のために、心を鬼にし、お前を鍛えた。わかるな?」
「はい」
 今日、ここに呼び出された理由を、妖夢は知らない。
 幾分、緊張した面持ちを浮かべる彼女に妖忌は続ける。
「わしはこの白玉楼を後にする。だが、その前に、妖夢。お前には、我が魂魄家秘伝の奥義を伝えなくてはならない」
「奥義……ですか」
「うむ。奥義だ」
 取り出した扇をぱたぱたやる妖忌。妖夢から「お師様。それは『奥義』じゃなくて『扇』です」とのツッコミが来るのを期待しているのかもしれない。しかし、案に相違して「して、その奥義とは?」とごくごく自然に訊ねられるだけだ。
「……うむ」
 ちょっぴり寂しかったのか、ぱたんと扇を閉じて、小さくため息。
 しかし、その表情をすぐに最初のものに戻し、彼は言った。
「この奥義は、習得するのも困難を極めるが、それより何より、使用の際に刹那を見いだす必要がある」
「……はい」
 よほどすごいものなのだろう。妖夢は、小さく喉を鳴らす。
 一体、それはどのようなものなのか。
 たった一撃で、世界すら切り裂く斬撃か? いやいや、はたまた、あらゆる攻撃を受け流す鉄壁の盾か? いや待て、何も奥義が『技』であるとは限らない。『業』――すなわち、心構えの可能性もあるじゃないか。
 ――彼女の瞳は、真剣に妖忌を見つめる。
 妖忌は、そんな彼女の視線を受け止めながら、口を開いた。




「……『みょん』だ」



「……え?」
「みょん、だ」
「みょん……?」

 どうしよう、意味がわからない。
『みょん』? みょん、って何だ。振り向かないことか? それとも諦めないことか?
 いでよ、白玉楼刑事ヨームバン? いやちょっと待て、語呂が悪い。

「……あの、お師様。それは?」
「端的に言うのなら、お前にしか使いこなせない技だ。これを極めれば……お前は、恐らく、最強となるだろう」
「最強……ですか」
 ……なるほど。
 世の中には、意味のわからない名前を持った究極の一撃が存在しているじゃないか。たとえば不夜城レッドとか殺人ドールとか。
 あれ? 何かどっかで聞いたことがあるっていうか聞くことになるような気がしないでもないな。まぁ、いいか。
 ともあれ、そういう類のがあるのだ。その『みょん』とやらも、さぞかし凄まじい奥義なのだろう。
 ならば、俄然、興味が湧いてくる。習得したその時、自分は、ここ、白玉楼においてふさわしい剣士になれるのだろうか。
「で、では、お師様。その奥義、是非ともわたくしめに伝授を!」
「うむ。修行は厳しいぞ、妖夢よ」
「心しております」
「では――時間は一時でも惜しい。始めよう」


「久方ぶりの白玉楼は、相も変わらず辛気くさいところなのね」
「あらぁ、ひどいわねぇ。こう見えてもぉ、お庭のインテリアとかにはぁ、気を遣っているのよぉ」
「庭の空気だけで、この白玉楼の雰囲気が決まるわけでもないでしょうに」
 片手に品のいいデザインの扇子を持ちながら、歩く女が一人。それは、優雅な姿の裏側に獣を超える獰猛さと剣呑さ、そして何より、歪んだ衝動を持つもの。その名前を、八雲紫という。彼女は、この白玉楼の主である、ふわふわおっとり漂う少女、西行寺幽々子の友人であり、今日、たまたま、戯れにここを訪れたのだ。
「まぁ、いいわ。
 ところで、幽々子。もうじき、白玉楼も代替わりをするでしょう? その、次にあなたを守る剣は誰になるの?」
「魂魄妖夢っていう子よぉ」
「あら、そう。どんな子?」
「そうねぇ……。真面目で、堅物で、でもちょっとだけ寂しがりで。だっこしてあげたくなるような子、かな?」
「それは、是非とも、一度見てみたいわね」
 こっちで、何か大事な話をしているみたいなの、と幽々子が歩いて……というか、ふわふわ飛んでいく。それの後を歩きながら、紫は、つと、思う。
「……変わったわね」
 ――と。
 しかし、何が変わったのかには触れず、ふっと笑うだけだ。
 二人はそうして屋敷の長い廊下を歩き、妖夢達がこもって久しい部屋の前に立つ。この向こう? と視線で訊ねてくる紫に、同じく幽々子が、そうよ、と視線で答える。さて、その『妖夢』なるのはどんなものなのか。興味津々で、紫は、そっと障子を引き開け――、





「みょん!」
「違う! そんなに元気よく言ってどうする!」
「……みょん」
「勢いが足りなすぎる。もっと、自分というものを前面に押し出せ!」
「みょんっ……!」
「甘い! 妖夢よ、お前が漂わせるべきなのは、『魂』だ! お前の持っている『みょん魂』だっ!」
「……みょんっ」
「うむ……いいぞ。近くなってきた!」
「ほ、本当ですか!?」
「うむ! だが、これで終わりではないぞ!」
「はいっ!」






 ぴしゃっ!

「……えーっと……何あれ?」
「………………………」
 紫の引きつりまくった声をスルーして、幽々子は「今の子が妖夢よ」と努めて平然と返した。ただし、頬に一筋の汗。
「……あの子?」
「……うん」
「みょんみょん鳴いてたのが……?」
「うん……そう」
「……………みょん夢?」
「…………間違ってないわ」
「………………………」
「………………………」
「将来……いじりがいがありそうね」
「……そーね」

 魂魄妖夢、齢不明。
 すでにこの時から、いじられ属性の花が開花しつつあったのだった。



「よ・お・む~」
「みょんっ!?」
 いきなり後ろから幽々子に抱きつかれ、びくっ、と背筋をすくませた妖夢が振り返る。
「ゆ、幽々子さま……びっくりした。脅かさないでくださいよぅ」
「うふふぅ。幽霊はぁ、他人を脅かすのが生き甲斐よぉ?」
「そう言う厄介な生き甲斐は丸めてゴミ箱に放り込んできてください。
 ……それで、何かご用ですか?」
「実はねぇ、魔理沙がぁ、宴会するからこっちにこいぃ、ってぇ」
 またですか、とため息を一つついて。しかし、自分の主人が、あまりにも嬉しそうな顔をしているので言い出すことが出来ず、結局「わかりました」といつも通りの返事しかできない。そんな彼女であるが、すでに白玉楼の剣として役目を果たすようになって、はや、幾年。今では、一人前、とは言い難いものの、もうそろそろ『半人前』の看板を下ろす時期が来ている印象を漂わせていた。
「じゃあ、お酒と料理と……あと、何がいるでしょうか?」
「これぇ」
「ねこみみはつけません」
「……却下よ」
「みょんっ!?」




 ――白玉楼を遠く離れた、しかし、どこかそれに近い位置にある、そんな曖昧な場所。それが、彼岸の橋を渡った先の、名もなき場所。
 彼岸の地に一人腰掛けて、三途の川の渡し守をしている彼女へと、彼は思い出話を語っていた。
「そんなことがあったのかい」
「うむ」
 渡し守――小野塚小町は、へぇ、とうなずきながら、
「いや、あの子の妙な口癖にも、そんな由来があったんだね。何かい。それじゃ、あれは、あの子にとっての……そうだね、気合いを入れるとか、何かそんな話があったのかい」
「……うむ」
 小町の言葉に、彼、妖忌は深くうなずきながら、
「あれは……」
 大きく、息を吸い込む。
 そして、青い――だが、そこには現実感の宿らない青さを浮かべる空を見上げて、つぶやく。






「……ありゃほんの冗談じゃった」




「…………は?」
「あの頃のわしも、ほんの茶目っ気を出してみようとか思ってのぅ。何やら世の中には『萌え要素』なるよくわからない言葉があることを聞き及んで、これ幸いと孫娘に、ちょっといたずらをしてみたのだが……まさか、本気にするとは」
「え? いや、あの、ちょっと……?」
「まさか今になって『嘘ぴょーん』とは言えず……。ふっ、笑ってやってくだされ、小町殿。愚かな老いぼれを……」
「……あー……いや……えっと……」
 なんつーか、「おい、じじい」なツッコミを入れようかと思ったのだが、それも口に出しづらい雰囲気だった。どうしたもんかと頬をかく小町の視線の先に、とある人物の姿が現れたのはその時である。
「いやぁ……何というか……あそこまで真面目に練習している妖夢を見ると言い出せなくてのぅ。それでついつい、わしも調子に乗ってしまったわけだが、まさかそれがきっかけで、孫娘に『いじられ属性』がついてしまうとは思わなんだ……と、どうなされた? 小町殿」
「しっかりと、その話、この四季映姫・ヤマザナドゥが見聞きしましたよ。魂魄妖忌さん」
「……え、映姫殿……」
 振り返った妖忌の視線の先には、鋼鉄の笑顔の裏側に、青筋浮かべた映姫の姿。手にした勺をぱしぱしと鳴らしながら、一歩、彼女は妖忌に歩み寄る。
「まぁ、人生長いですから。確かに、一度や二度のお茶目は許しましょう」
「……さて、あたいはお仕事お仕事、と……」
「こ、小町殿!?」
「ですが、妖忌さん。あなたは少し、やりすぎました」
「いや、映姫殿! これはいいわけではないが聞いてくれ! 当時のワシは、まさに魂魄の剣として心身共に疲れ果て……!」
「妖忌さん」
「う、うむ……」


「地獄行き決定」
「みょぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!?」
魂魄妖忌 CV:玄田哲章
以上でお楽しみ下さい。

ついでに私に代わってこのじじいにツッコミ入れてくれる人募集。
haruka
コメント



1.変身D削除
去り際に冗談は流石に駄目だろじじい(wwwwwwwwww
2.CACAO100%削除
ちょwwwこの駄目じじいwwww

良いぞもっとやれ
3.名無し妖怪削除
それは奥義じゃなくて扇です!
…よし、代理ツッコミ完了!
4.名無し妖怪削除
>「みょぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!?」
じじいが言っても全く全然かけらも可愛くねーwwwwwwwww
5.名無し妖怪削除
>「みょぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!?」
www
6.名無し妖怪削除
映姫様、これは逆にじーさんの功績を讃えるべきじゃ。
と思ったが、最後の可愛くない悲鳴で地獄逝き。
7.名無し妖怪削除
色々と凄いことやってのけたぜ妖忌のおぢさん!
8.名無し妖怪削除
爺…………
Σd(´Д`*)
9.名無し妖怪削除
なんというじじぃ
みょんを見ただけでドキドキしてしまった
このじじぃは間違いなく天才
10.名無し妖怪削除
このじーさんなら、地獄でも楽しくやっていけるんじゃ無かろうか。
半年後には、山田さんの有らぬ噂が地獄で流行り、
3年後には地獄の国盗り成功してるっぽい。
11.名無し妖怪削除
>『嘘ぴょーん』
そりゃ言えねえだろwwwwwwww
このじじい駄目すぎるwwww
12.翔菜削除
この馬鹿じじめがwwww
13.名無し妖怪削除
>魂魄妖忌 CV:玄田哲章
>「みょぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!?」
これはいいサビの部分で崖から転げ落ちていきそうな妖忌ですね
14.蝦蟇口咬平削除
あれ妖夢にとって、臨兵闘・・・とか喝っとかと同義だったんだ
15.名無し妖怪削除
なあ、爺さん。
冗談ってのはさ、自分に対するイメージによっては本気にとられかねないんだ…。
16.名無し妖怪削除
ちょwwwwww

でも勝手に脳内でCvが若本規夫になりました。すみませn(地獄行き
17.卯月由羽削除
タイトルからてっきり魂魄奥義賢者の舞とかかと思ったらこれはwwww
おいじじいwwwwww
18.名無し妖怪削除
じじいGJ
19.名前が無い程度の能力削除
どこのコッフェルさんだw