「う~ん、ないの?」
行方不明になったとある本、それを捜していた小悪魔が帰投した。暗い表情に残念な結果を確信しつつ、しかし一抹の希望を込めて私は言う。
「はい、ないですね」
即答。
「亡失認定かしら?」
「そうですね」
「惜しかったのだけど…仕方がないわね、やっぱりあの時かしら?」
「うーん、それで間違いないかと」
「はぁ、迂闊だったわ」
事件の原因をほぼ断定した小悪魔を見て、私は一つため息をついた。
このヴワル魔法図書館でも、年に何度かは所蔵書の亡失事件が発生する。
その大半は黒い悪魔によるものであり、残りは大体自分の失敗を隠そうとした小悪魔の犯行だった。だけど、時としてそのどちらにも属さない亡失事件が発生することがある。
理由は様々だが、大体は新型魔法発動の失敗によるもので、異世界へと還らじの旅に出てしまう事が多い、でも今回のは違うわね。
今回は…
「ねぇパチェ、本がなくなったって…そもそもこの無…とっても広い図書館の何処に本があるかなんてわかるの?」
しかし、私の思考は、側に居たレミィによって遮断された。言外に『もうちょっと狭くしない?』なんて声が聞こえるが無視。『無駄に』広いと言いかけたようだけど、その報いはしっかり受けてもらおう。
「ええ、本は全て分類して収めているし、今回なくなったのは大きくて特殊なタイプなの。なくなりようがないわ」
そう、この大図書館は手入れが行き届いた私の庭、そこにある本とトラップの位置は、私と、我が従者の小悪魔が完全に把握している。
まして、特殊分類に属する本は間違いようがないのだ。
「だからもっと広くなっても大丈夫、蔵書を増やしたいのよね」
そんな私の呟きに、レミィの顔色が青ざめていくのがわかる。
「あ…でもほら、もう本は一杯あるし、予算は限られてるし…」
レミィのささやかな抵抗も…
「ですよねーもうちょっと増えてもいいですよね、魔理沙さんにいくらかもっていかれちゃいましたし」
小悪魔の追撃により足を止められ…
「そうね、館の警備が甘いせいで」
私の一言で粉砕された、完全な連携口撃ね。
「あ…う…」
沈黙したレミィをよそに、私たちは早速図書館の蔵書を増やす計画を練る。
「魔導書でしょうか、増やすとしたら…」
楽しげに言う小悪魔に私は応じる。
「そうね、高いけど館の防衛能力向上には大切よね、高いけど」
「ですよね、魔理沙さんに盗られてちょっと減っちゃってますしね、高いですけど」
こんな時に阿吽の呼吸ができる小悪魔が私は大好きだ。
「一昨日は机がなくなって…今日は椅子がなくなって…明日はベットかしら…」
そして、悲しそうに独語するレミィも大好きだ。
「それで…何で本がなくなったのよ?」
しばらくして復活したレミィが言った、まぁ隠すほどのことじゃないけど…
「はい、パチュリーさまがこないだ黒い悪魔が来たときに魔法を発動したんですけど、その時にうっかり使っちゃったみたいなんですよ」
小悪魔に言われると何か腹立たしい。
「あら?魔導書?魔導書って使ったらなくなるの?」
不思議そうに言ったレミィだけどそれは違う。
「違うわ、余程のものでない限り、魔導書それ自体が魔法攻撃と引き替えに消滅するのはないわ。大体が魔法の術式を書いたものか、もしくは魔導書自体が攻撃力を持つものよ」
そう、だから魔法の発動でなくなることなんてあんまりないし、そんなものは惜しくて使えないわ。
そもそも…
「なくなったのは魔導書じゃないんです。内容は普通の歴史書なんですけど…」
小悪魔…人のセリフをとらないで欲しいわ、レミィに偉そうに講釈するのが私の楽しみの一つなのに…
「じゃあ何で魔法を使うとなくなるのよ?」
不思議そうに言ったレミィに私は言った。
「間違って召還しちゃったみたいなのよ、近くにあったから…」
「何で?パチェって本を召還するスペルカードなんて持っていたっけ?」
レミィの頭に?が増えた。身を乗り出して聞いてくるレミィを見られたのだから、あの本位は安いものね。
「いいえ」
私は首を振る。
「じゃあ何の魔法使ったのよ?」
そろそろいらいらしてきたらしいレミィに私は言った。
「レイジィトリリトン」
行方不明になったとある本、それを捜していた小悪魔が帰投した。暗い表情に残念な結果を確信しつつ、しかし一抹の希望を込めて私は言う。
「はい、ないですね」
即答。
「亡失認定かしら?」
「そうですね」
「惜しかったのだけど…仕方がないわね、やっぱりあの時かしら?」
「うーん、それで間違いないかと」
「はぁ、迂闊だったわ」
事件の原因をほぼ断定した小悪魔を見て、私は一つため息をついた。
このヴワル魔法図書館でも、年に何度かは所蔵書の亡失事件が発生する。
その大半は黒い悪魔によるものであり、残りは大体自分の失敗を隠そうとした小悪魔の犯行だった。だけど、時としてそのどちらにも属さない亡失事件が発生することがある。
理由は様々だが、大体は新型魔法発動の失敗によるもので、異世界へと還らじの旅に出てしまう事が多い、でも今回のは違うわね。
今回は…
「ねぇパチェ、本がなくなったって…そもそもこの無…とっても広い図書館の何処に本があるかなんてわかるの?」
しかし、私の思考は、側に居たレミィによって遮断された。言外に『もうちょっと狭くしない?』なんて声が聞こえるが無視。『無駄に』広いと言いかけたようだけど、その報いはしっかり受けてもらおう。
「ええ、本は全て分類して収めているし、今回なくなったのは大きくて特殊なタイプなの。なくなりようがないわ」
そう、この大図書館は手入れが行き届いた私の庭、そこにある本とトラップの位置は、私と、我が従者の小悪魔が完全に把握している。
まして、特殊分類に属する本は間違いようがないのだ。
「だからもっと広くなっても大丈夫、蔵書を増やしたいのよね」
そんな私の呟きに、レミィの顔色が青ざめていくのがわかる。
「あ…でもほら、もう本は一杯あるし、予算は限られてるし…」
レミィのささやかな抵抗も…
「ですよねーもうちょっと増えてもいいですよね、魔理沙さんにいくらかもっていかれちゃいましたし」
小悪魔の追撃により足を止められ…
「そうね、館の警備が甘いせいで」
私の一言で粉砕された、完全な連携口撃ね。
「あ…う…」
沈黙したレミィをよそに、私たちは早速図書館の蔵書を増やす計画を練る。
「魔導書でしょうか、増やすとしたら…」
楽しげに言う小悪魔に私は応じる。
「そうね、高いけど館の防衛能力向上には大切よね、高いけど」
「ですよね、魔理沙さんに盗られてちょっと減っちゃってますしね、高いですけど」
こんな時に阿吽の呼吸ができる小悪魔が私は大好きだ。
「一昨日は机がなくなって…今日は椅子がなくなって…明日はベットかしら…」
そして、悲しそうに独語するレミィも大好きだ。
「それで…何で本がなくなったのよ?」
しばらくして復活したレミィが言った、まぁ隠すほどのことじゃないけど…
「はい、パチュリーさまがこないだ黒い悪魔が来たときに魔法を発動したんですけど、その時にうっかり使っちゃったみたいなんですよ」
小悪魔に言われると何か腹立たしい。
「あら?魔導書?魔導書って使ったらなくなるの?」
不思議そうに言ったレミィだけどそれは違う。
「違うわ、余程のものでない限り、魔導書それ自体が魔法攻撃と引き替えに消滅するのはないわ。大体が魔法の術式を書いたものか、もしくは魔導書自体が攻撃力を持つものよ」
そう、だから魔法の発動でなくなることなんてあんまりないし、そんなものは惜しくて使えないわ。
そもそも…
「なくなったのは魔導書じゃないんです。内容は普通の歴史書なんですけど…」
小悪魔…人のセリフをとらないで欲しいわ、レミィに偉そうに講釈するのが私の楽しみの一つなのに…
「じゃあ何で魔法を使うとなくなるのよ?」
不思議そうに言ったレミィに私は言った。
「間違って召還しちゃったみたいなのよ、近くにあったから…」
「何で?パチェって本を召還するスペルカードなんて持っていたっけ?」
レミィの頭に?が増えた。身を乗り出して聞いてくるレミィを見られたのだから、あの本位は安いものね。
「いいえ」
私は首を振る。
「じゃあ何の魔法使ったのよ?」
そろそろいらいらしてきたらしいレミィに私は言った。
「レイジィトリリトン」
次は服か食器か。
失った本ってのが粘土板文書(じゃないにしろ土製)だったものと思われる
>SETH様
このレミィなら喜んでかじられてくれそうです(え?)
>名無し妖怪様
同感です♪
>二人目の名無し妖怪様
>次は服か食器か。
ちょ…!?
>トウヤ様
そう言っていただけますと…ww
>禍を呼ぶ程度の能力様
そーなのですー
>三人目の名無し妖怪様
>四人目の名無し妖怪様
三人目の名無し妖怪様、わかりにくくて申し訳ありませんでした、次からはもう少しわかりやすさを考慮したいと思います。
そして、解説としては四人目の名無し妖怪様の仰った通りです、音速遅めの作者に代わり、解説をしてくださいましてありがとうございました。
>徹り縋り様
なったわけですww