「ですよね♪」
目の前の少女…小悪魔の楽しげな声に、私は答えた。
「そうね…」
他の者が聞いたなら不機嫌極まりないと判断するであろう私の声も、この子ならその中には不機嫌のかわりに上機嫌が含まれていることなど簡単に察してくれるだろう。
「それでですね、私が一番面白かったなーって思った所は、その主人公って実は…」
腕をぶんぶん振り回して本の感想を言う小悪魔、正直話の内容は頭にあんまりはいってこないのだけど、こうしている時間が幸せなことにはかわりはない。
「もう、パチュリーさまったら…ちゃんと私の話聞いてくれてるんですか?」
そんなことを考えていたら、小悪魔がいつの間にか頬を膨らませてこっちを見ている。仕方がないわね…
「聞いてないわ」
「うっわ…誤魔化すことすらしませんよこの魔女」
目の前の小悪魔は相変わらず元気に表情をころころ変える。
「あのですね、他人の話はちゃんと聞きなさいって誰かに言われなかったんですか?」
人差し指を立てながら言う彼女に、私は答えた。
「言われたわ、主にレミィに。言われても聞いてないだけ」
「わーさすがパチュリーさま、唯我独尊他人の迷惑顧みず、ひたすらまっすぐ直進猛進でいらっしゃいますね、尊敬です。そうなりたくはありませんが」
本当、面白いわこの子、レミィとは別な意味で。
「即座のつっこみはさすがね、小悪魔。レミィとは違うわ」
私の言葉に、彼女は微笑ましいほど胸を張ってこう言った。
「あったりまえですよ。なんてったってこの小悪魔、口達者な事では紅魔館最強を自負しております。あんなもじもじ吸血鬼なんかに後れはとりません」
誇らしげに言った小悪魔だけど、一言余計なのに気づいてないわね。
「…後でレミィに言いつけようかしら、今の発言」
私の言葉に、小悪魔は首を傾げて自分の言った言葉を反芻し…そして…
「わー!?やめてくださいよっ!!なんでか知らないですけどレミリアさまの視線が冷たい気がするんですよっ!羨望っていうか嫉妬っていうか…そんなのが混じった視線が突き刺さるように…」
慌てる小悪魔の表情は本当に面白い、これだからこの子をからかうのはやめられない。
「…それはたぶんレミィがあなたのいたずらに業を煮やして、そろそろ新技の標的にしようと考えてるからじゃない?」
意地悪な表情を作って私は言った。嘘だけど。
「それ嫉妬も羨望も関係ないじゃないですか。…じゃなくて!あーどうしよう…どうしよう…パチュリーさまぁ何とかしてくださいよ~」
そう言って私の肩を揺する小悪魔は、やっぱり面白かった。
「あ~もううっとうしいわね。まぁ美味しい紅茶を淹れてくれたら考えてあげないでもないわ」
「あ、はい!直ちに遅滞なく可及的速やかに前向きに善処しようと考えておりますですはい」
私の言葉に、適当にそれらしい…一つ変なのが混じってるけど…言葉を並べて言葉を返した小悪魔は、たちまち台所へと消えていった。
「さて…と」
小悪魔が立ち去ったのを見た私は、おもむろに立ち上がり、懐から小瓶を取り出す。
「さぁ、新開発の睡眠薬。砂糖壺をそのままにしたのは迂闊だったわね小悪魔」
呟く私の顔は、とっても満ち足りていたのだろう。
「パチュリーさま、お待たせしましたっ!小悪魔特製アールグレイフラワーズ、もちろんミルクたっぷりです」
数分後、ぱたぱたと駆け込んできた小悪魔の手にはお盆にのっている二つのティーカップ、相変わらずいい香りね。
「いただくわ、ほら小悪魔、あなたも座りなさい」
「はいっ♪」
既に安心しきった様子の小悪魔は、紅茶に『砂糖』をいれてかき混ぜると、言った。
「もうパチュリーさまったらお優しいですね、これでとりなして下さるなんて私はなんといい主人に仕えたかと感涙なのですよ」
さっきとはうってかわって従順な小悪魔だけど…
「…涙を見せるのはいいけど、左手に持ってる目薬がちょっと余計ね」
ぼたぼたと大粒の涙をこぼす小悪魔に、私は呟いた。途端に彼女の表情が変わる。
「あ…いえ、あのですね、これはその…最近目が痛くてですね、その…」
面白いように狼狽する小悪魔を見ながら、私は言った。
「まぁいいわ。紅茶でも飲んで落ち着きなさい」
「ありがとうございますパチュリーさま…うう、パチュリーさまの優しさが目にしみます」
まだ言うか。
まぁいいわ、これで小悪魔はばたんきゅー、さて寝ている間に一体どんな落書きをしてやろうかしら…
私は、『砂糖』抜きの紅茶を飲みながら満足げに思う。いつか使うこともあろかと、おとといなぞは考えている内に夜が明けてしまったのだ。でもまさかこんなに早く使うことができるようになるとはね。
「あ…え…しまっ…」
そんな思考の間に、小悪魔はゆっくりと椅子にもたれかかる。
「一服…盛りましたねパチュリーさま…」
こちらを恨めしげに見る小悪魔に、私は言った。
「盛ったわ」
「ぐ…無念」
一体この子は昨日どんな本を読んだのかしら?
まぁいいわ早速…
私が小悪魔の顔に落書きをしてやろうと立ち上がった時だった。
「え…?」
身体が…重い。それ以上に瞼が重い。
「まさか…」
疑うまでもない、私も一服盛られた…私を眠らせて、顔に落書きして魔法水晶に記録して、それを取引材料に…小悪魔の思考が手に取るようにわかる。最大の好機とは最大の危機…か、油断したわ。
さてはあの目薬すら疑いを他に…向け…
私の意識はそこで途切れた。
目の前の少女…小悪魔の楽しげな声に、私は答えた。
「そうね…」
他の者が聞いたなら不機嫌極まりないと判断するであろう私の声も、この子ならその中には不機嫌のかわりに上機嫌が含まれていることなど簡単に察してくれるだろう。
「それでですね、私が一番面白かったなーって思った所は、その主人公って実は…」
腕をぶんぶん振り回して本の感想を言う小悪魔、正直話の内容は頭にあんまりはいってこないのだけど、こうしている時間が幸せなことにはかわりはない。
「もう、パチュリーさまったら…ちゃんと私の話聞いてくれてるんですか?」
そんなことを考えていたら、小悪魔がいつの間にか頬を膨らませてこっちを見ている。仕方がないわね…
「聞いてないわ」
「うっわ…誤魔化すことすらしませんよこの魔女」
目の前の小悪魔は相変わらず元気に表情をころころ変える。
「あのですね、他人の話はちゃんと聞きなさいって誰かに言われなかったんですか?」
人差し指を立てながら言う彼女に、私は答えた。
「言われたわ、主にレミィに。言われても聞いてないだけ」
「わーさすがパチュリーさま、唯我独尊他人の迷惑顧みず、ひたすらまっすぐ直進猛進でいらっしゃいますね、尊敬です。そうなりたくはありませんが」
本当、面白いわこの子、レミィとは別な意味で。
「即座のつっこみはさすがね、小悪魔。レミィとは違うわ」
私の言葉に、彼女は微笑ましいほど胸を張ってこう言った。
「あったりまえですよ。なんてったってこの小悪魔、口達者な事では紅魔館最強を自負しております。あんなもじもじ吸血鬼なんかに後れはとりません」
誇らしげに言った小悪魔だけど、一言余計なのに気づいてないわね。
「…後でレミィに言いつけようかしら、今の発言」
私の言葉に、小悪魔は首を傾げて自分の言った言葉を反芻し…そして…
「わー!?やめてくださいよっ!!なんでか知らないですけどレミリアさまの視線が冷たい気がするんですよっ!羨望っていうか嫉妬っていうか…そんなのが混じった視線が突き刺さるように…」
慌てる小悪魔の表情は本当に面白い、これだからこの子をからかうのはやめられない。
「…それはたぶんレミィがあなたのいたずらに業を煮やして、そろそろ新技の標的にしようと考えてるからじゃない?」
意地悪な表情を作って私は言った。嘘だけど。
「それ嫉妬も羨望も関係ないじゃないですか。…じゃなくて!あーどうしよう…どうしよう…パチュリーさまぁ何とかしてくださいよ~」
そう言って私の肩を揺する小悪魔は、やっぱり面白かった。
「あ~もううっとうしいわね。まぁ美味しい紅茶を淹れてくれたら考えてあげないでもないわ」
「あ、はい!直ちに遅滞なく可及的速やかに前向きに善処しようと考えておりますですはい」
私の言葉に、適当にそれらしい…一つ変なのが混じってるけど…言葉を並べて言葉を返した小悪魔は、たちまち台所へと消えていった。
「さて…と」
小悪魔が立ち去ったのを見た私は、おもむろに立ち上がり、懐から小瓶を取り出す。
「さぁ、新開発の睡眠薬。砂糖壺をそのままにしたのは迂闊だったわね小悪魔」
呟く私の顔は、とっても満ち足りていたのだろう。
「パチュリーさま、お待たせしましたっ!小悪魔特製アールグレイフラワーズ、もちろんミルクたっぷりです」
数分後、ぱたぱたと駆け込んできた小悪魔の手にはお盆にのっている二つのティーカップ、相変わらずいい香りね。
「いただくわ、ほら小悪魔、あなたも座りなさい」
「はいっ♪」
既に安心しきった様子の小悪魔は、紅茶に『砂糖』をいれてかき混ぜると、言った。
「もうパチュリーさまったらお優しいですね、これでとりなして下さるなんて私はなんといい主人に仕えたかと感涙なのですよ」
さっきとはうってかわって従順な小悪魔だけど…
「…涙を見せるのはいいけど、左手に持ってる目薬がちょっと余計ね」
ぼたぼたと大粒の涙をこぼす小悪魔に、私は呟いた。途端に彼女の表情が変わる。
「あ…いえ、あのですね、これはその…最近目が痛くてですね、その…」
面白いように狼狽する小悪魔を見ながら、私は言った。
「まぁいいわ。紅茶でも飲んで落ち着きなさい」
「ありがとうございますパチュリーさま…うう、パチュリーさまの優しさが目にしみます」
まだ言うか。
まぁいいわ、これで小悪魔はばたんきゅー、さて寝ている間に一体どんな落書きをしてやろうかしら…
私は、『砂糖』抜きの紅茶を飲みながら満足げに思う。いつか使うこともあろかと、おとといなぞは考えている内に夜が明けてしまったのだ。でもまさかこんなに早く使うことができるようになるとはね。
「あ…え…しまっ…」
そんな思考の間に、小悪魔はゆっくりと椅子にもたれかかる。
「一服…盛りましたねパチュリーさま…」
こちらを恨めしげに見る小悪魔に、私は言った。
「盛ったわ」
「ぐ…無念」
一体この子は昨日どんな本を読んだのかしら?
まぁいいわ早速…
私が小悪魔の顔に落書きをしてやろうと立ち上がった時だった。
「え…?」
身体が…重い。それ以上に瞼が重い。
「まさか…」
疑うまでもない、私も一服盛られた…私を眠らせて、顔に落書きして魔法水晶に記録して、それを取引材料に…小悪魔の思考が手に取るようにわかる。最大の好機とは最大の危機…か、油断したわ。
さてはあの目薬すら疑いを他に…向け…
私の意識はそこで途切れた。
これだけ良い話を書けるならばもっと楽しいのを作ってほしいです。
ちなみにこの話の評価は95点です。
>月影蓮哉様
発想が私と一緒だよ月影さん!
砲塔側面には『紅い月』が描かれているそうです。
>翔菜様
メイド達には、紅魔館最凶コンビと言われているそうです。
>名無し妖怪様
ガマはお気に召しませんでしたか…精進が足りませんでした。これからも、技量向上に努めようと思いますorz
>二人目の名無し妖怪様
さすがだ!最後の一文であなたの心をつかみます…なレミリア様です。
>CACAO100%様
>その頃魔理沙はアリスに薬を持っていた
えー!?