「どうなってるの?」
「おや霊夢、良く聞いてくれたな。
この幻想郷は明治17年に創られた物だが、実際の期日はハッキリしていない。
とはいえど、それは何月何日か、と言う程度で、明治17年というのは判明しているのだ。
一説では明治18年ではないか、というのもあるが、それも実は間違いではないのだ。
さっき判明していた、というのは取り消しておいてくれ。私の能力でも、そこまでのことは求められない。
白黒付けるというのなら、あの裁判官でも呼んだほうが良いだろう。
そうしてその時幻想郷が誕生したわけだが、実は誕生した当時はここまで賑やかではなかった。
妖怪が跋扈し、人間達は灰色の煙の中で逃げまどう、というところか。
まるで地獄絵図だった、といわれている。
しかし今こうして平和になっているのは、実はお前の家系、博麗が大きく関わっているのだ。
幻想郷を創った神主は、お前の家系、博麗の大元とされている。
だからこそ、お前はあれほどの力を身につけられているのだ。
そしてもう一つ関係しているのは、あの八雲のスキマ妖怪だ。
実はあやつもこの平和に一役買っている。どんな役割かというと、人を攫って妖怪への認識を改めることだ。
私のようにお人好しな妖怪ばかりだと、妖怪への認識が薄まって、逆に人間同士で争い事が起きてしまうだろう。
それを阻止する為に、あいつは一役買っていたのだ。
だが、私はあまりあいつを好きにはなれない。わざわざ人を攫わなくても、他にも手段があるだろう、と思うのだ。
いやしかし、あまり甘すぎるといけないというのもある。
なぜならば、その人攫いをした八雲の妖怪を、その博麗の神主が退治する、ということをするためだ。
それによって、博麗という姓がこの地位を確立出来ているんだ。
今お前がこの地位にいなければ、あまりにも強すぎる人間として、人間からも妖怪からも追われる立場にあったに違いない。
それはあまりにも辛すぎるだろう、お前には。
まぁ、そうして今の平和があるわけだが、それでもこの平和が砕かれることもある。
例えば、この間の吸血鬼が霧を起こした事件だ。
お前が解決したようだが、それまでにここでも被害が出ていた。
湿度が上がることによって、工場が一時活動休止したり、作物に悪影響を与えたりしていたのだ。
このような被害は、実はかなり久しぶりの被害だったと言える。
60年前には、この間起きた事件のように、花が大開花する、という事件があったのだ。
その花のおかげで、土から養分が取られ、作物が駄目になってしまうこともある。
逆に、向日葵のような植物に関する栽培業をしている人は利益を得たようだが。
まぁそれはいいとして、他にも色々な事件があった。
春が無くなった事件を覚えているか?あれは久々に大災害を被った。
冬が続いたせいで、少量の備蓄がなくなり、餓死寸前に陥った者がいる他に、作物が取れなかったこともあった。
あの時は妹紅にも来て貰って暖を取ったりしたが、それでも村全てを暖められなく、病気に掛かった者も沢山居た。
おそらくあのまま冬が続いていたら、死人も出ていただろう。
それを解決してくれたお前には、正直感謝している。
次に偽の満月の事件だな。あれは別に大した事件ではなかったのだが、お前はそれを直しに行った。
まぁ、私の手違いでちょっと戦ってしまったがな。
いや、その後の、妹紅にお前等が会いに行った時のは手違いではなかったな。あれは本気だった。
妹紅がお前等を受け入れるはずがないと思ってな。
しかしお前は強いな、霊夢。これだけの異変を全て解決するなど、私には到底できっこない。これが博麗の巫女たる由縁か。
いや、違うか。口が滑った。お前は好きでやっているわけじゃなかったな。その立場から、やらなければなかったのか。
今のは私の失言だ。謝ろう。
ところで、つい最近の大開花の時は、お前以外にもかなりの人妖が探りに行っていたな。
夜雀や氷精などを見かけた。おそらく、あれは60年前と同じ事象だろうな。
お前の先代が止めに行ったのを見た記憶がある。
あれは主犯など居ない、必然の事象だったのだな。
お前も先代も、閻魔を犯人と見て攻撃したようだが、それは違ったようだな。
閻魔はただそこにいるだけで、別に悪いことはしていない。だが、まぁ疑われても仕方はない。
死者が多くなると言うことは、それは閻魔に押し寄せてくる。だから、捌ききれていない閻魔にも責任はある。
だが、それを責めるわけにはいかないな。何事にも限度という者がある。かなり必死だったのだろう。
しかし、そんな閻魔を攻撃するなど…度胸があるんだな、霊夢。…霊夢?
…おや、寝ているようだ。ちょっと退屈すぎたかな。子供にもよく言われるんだ。
まぁ仕方ない、少し寝かせてやるとするか。私も…確かに、眠く…すー…」
「かー…すー…」
無理か