Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

season off

2006/11/14 18:54:42
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1
※前作と関連した部分が多いです。
 未読でもなんら問題はないですが、訳が分からない可能性があります。
 既読でも訳が分からない場合もありそうです。
 だめじゃん自分。







幻想郷のとある場所。
広大な湖の一角に、洋館が建っています。

目に刺さるような紅で彩られ、光を取り込む窓は殆ど見られず。
人間が住むには不便極まりない構造。



しかし、そこに棲む者は、正確に人間ではないのです。



私は、今その館の庭の片隅で座り、空を見つめています。
頂点を過ぎて沈み始めた太陽は、程よい暖かさを生み、気を抜くと眠気に誘われて。
周囲では、数羽の小鳥が落ち葉の陰に潜んでいた虫を啄ばんだり、私の手にとまったり、膝の上で居眠りしたり。
その無垢な姿に自然に笑みが零れるけれど。

「この館には怖い悪魔や、魔女や、狗が居るの。あんまり近づいちゃ駄目だよ。」
鳥がとまったままの手を顔の側に寄せて、諭す様に言う。
語りかけても、言葉なんて通じてないだろうけど。小鳥は少し考えるように首を傾げてから、空に飛立って行った。
それに釣られるように、地面で餌を探していた数羽も続く。

次第に小さくなってゆく小鳥たちを見送りながら、その自由さを羨みながら、私は誰にでもなく言葉を紡ぐ。

「いいよね、貴方達には羽があって…。私は、ここから逃げる力も、翼も持ってないの…。」










ガッ。





いや、私がNGワードを言ったわけじゃないですよ?
唐突に頭を掴まれました。ガッって。気配すら感じさせずにこんなことが出来るのは一人しか居ません。

「怖い狗で悪かったわねぇ…というか貴女も悪魔でしょうに」
「あはは…はは。時間止めて接近するのは心臓に悪いですよー?」

完璧で瀟洒なメイド犬。じゃなかった。メイド長の咲夜さん登場。
思わずホールドアップしつつ振り向こうとしましたが、首が動きません。立ち上がれません。
とっても怪力です。

「ところで、さっきの独白は不軌と見なしていいのかしら?」
「や、やだなー。ちょっと囚われのヒロインごっこしてみただけですよ?」

殆ど物理的な圧力を伴った霊力を背中で感じつつ言い訳。というか、私が謀反を企てても誰にも勝てませんって。

「ふぅ…ん」

納得してくれたかな?

「ねぇ小悪魔。」
「何ですか?」
「囚われのヒロインは、ヒーローに助けられるまで酷い目に遭わされていた。というのが自然だと思わない?」

駄目でした。とっても死刑宣告です。
今なら涙が宝石になったりしそうな気がしますよ。

あれって、目尻とか目頭で結晶化したら悲惨ですよね。

「はぁ…まぁ不問にしてあげるから。さっさと仕事の続きをしなさい」

ぷるぷる震えてたのが功を奏したのか、咲夜さんの手が頭から離れました。
本当は思いついた事をリアルに想像して笑いそうだったのですが。
助かったので結果オーライですね。

振り向くと、既に咲夜さんの姿はありませんでした。忙しそうだなぁ…。

あんまりサボってるとリアルハリセンボンにされそうなので、仕事を再開しましょう。



立ち上がろうとして、膝の上で居眠りしていた小鳥が、まだ居るのに気づきました。
咲夜さんのプレッシャーに耐えるとは…。末恐ろしい小鳥さんです。

そのまま立ち上がるのも何なので突っついて起してあげたら、頭の上に移動してまた眠ってしまいました。
まぁいいけど、フンだけはしないで下さいね?


気を取り直して、その辺に放り投げてあった箒を拾い、周辺を見渡します。
辺りは一面落ち葉だらけ。
まさに落ち葉の絨毯。落とし穴があっても誰も気づきそうに無いですね。
隙を見て掘って置こうっと。

その元凶は相変わらず紅魔館を覆っている蔦。
前からあった庭木とかの落ち葉に加わって凄い量になっています。

で、私がこの落ち葉を一人で片付けることになったのですが…。
黙々と作業するのもつまらないので、顛末を思い出しながら作業しましょうか。











あの日。紅魔館が蔦に覆われた数日後。
お嬢様のあまりにも唐突な館の改名宣言があった日。
声明文が天狗の新聞に載ってから一時間という、かつて無いほどの短時間で霊夢さんと魔理沙さんが突入してきました。

で。

紅霧異変の時の様に館全体で迎え撃ったのですが…。

私はまたボコボコにやられるのが嫌だったので、早々に死んだ振りしてました。
早く終わらないかなーとか思っていたら、偶然お嬢様と二人の会話が聞けたので、音声のみでお楽しみ下さい。




「この蔦の下には、まだ弱かった頃の阪○の魂が埋まっているの。他のBクラスのチームを救うには、それを蘇らせる以外に手段は無いのよ!」

「馬鹿な!そんなことして何になるって言うんだ!」

「お前に分かるのか!Aクラスから転落した○浜ファンの悲しみが!いい選手が揃っているのに勝てない広○ファンの嘆きが!一向に浮上の兆しすら無い巨○ファンの失望が!!」

「分かるわけが無いわ!私は優勝セールがお得なチームが勝てばいいもの!」

「まぁ、こいつのアレな言い分は別として!誰かの順位が下がったことで上がった順位に価値なんてないぜ!」

「私の去年の人気投票がそうだったって言いたいのかぁぁぁぁぁぁぁッ!」

「え、ちょ、霊夢、何でお前がキレるん」

ゴス。




かくして、逆ギれいむさんの陰陽ストライクが炸裂。
お嬢様と魔理沙さんは綺麗な放物線を描いて湖にスプラッシュホームラン。推定飛距離は170メートルです。
というか、魔理沙さんは仲間だったんじゃ…?

何となく、落下地点でボートに乗った咲夜さんが待ち構えてて、お嬢様をダイビングキャッチ。
いい笑顔で湖に沈んでいく姿が頭に浮かびました。
魔理沙さんはスルーされたので水柱を上げてベリーインレイクです。


はっ!窓の方から視線のレーザービームを感じます。
悪い意味で億千万の胸騒ぎがするので、この幻覚は想像の海に沈めておきましょう。

ぼこぼこぼこ。







その翌日にはエクストラ(お約束)という事で妹様が暴れた訳なんですが…。

そのスペルは蔦の幻視の影響を受けて、見事に変な方向にパワーアップしていました。
具体的にはこんな感じです。

禁忌『レーヴァテイン -釘バットの型-』

禁忌『フォーオブアカインド -人間ナイアガラ-』

禁忌『フォービドゥンフルーツ -ステロイド-』

さすが妹様だ!全部ルール違反だよ!
そこに痺れる憧れる!
というか、最後のはスペルでも何でもないですね。
スペルブレイクしたらマックシング起こしそうで怖いです。

ちなみに、お嬢様と咲夜さんが妹様と死闘を繰り広げている間、私は大広間の隅っこでチョン避けしてました。

いや、だって避けないと消し飛びそうな威力だし!
隙を見て大型弾を放ったら、妹様の米弾に相殺されてちょっぴりハートブレイクですよ。

で、こっちの騒動は霊夢さん達の出番はなく、パチュリー様の新スペル
水符『コールドバイレイン』によって解決しました。

大層な名前がついてますが、実際は雨降らしただけです。しかも館の中に。
お陰でそこらじゅう水浸し。
お嬢様と妹様は行動不能。
パチュリー様は風邪をひいて療養中と。

無差別攻撃するならせめて自分くらいは守りましょうよパチュリー様…。





そんな訳で、ただいま館内は掃除やら調度品の修復やらに大わらわです。
門番隊の方々までそっちに回っているくらいに。
私は先日の騒動で死んだ振りしてたのがバレて、寒風吹きすさぶ中一人で落ち葉掃き。
よよよ。


そう言えば、今回の騒動は紅魔館だけなのかと思ったら、幻想郷中を地味に侵食していたらしいです。

曰く。白玉楼では妖夢さんが愛用の刀を持ち、畳が擦り切れるまで素振りを繰り返していた。
あそこの主従は、天然さんと努力家なのである意味妥当なのかもしれません。

曰く。人里で慧音さんが「チームは消えてしまっても、猛牛の魂は消えない!」と叫んでいた。
ハクタクは牛じゃないんじゃ…?

曰く。永遠亭ではうさぎ跳びがトレーニングとして取り入れられた。
住人の大半が兎だから普通なんじゃ…という気がしなくもないですが。考えたら負けです。

ちなみに、うさぎ跳びは関節への負担が大きいので止めましょう。
負担の軽さでは加圧式のトレーニングがお勧めです。
パチュリー様に勧められてやってみたら、見事に貧血起して失神しました。
普段パチュリー様はこんな感じで気絶してるんだなーと。妙なシンパシーが得られましたよ。

…ちょっと気持ちよかったなんて思ってないですよ?
失神ゲームは危険です。



そんなことを考えてる内に落ち葉がだいぶ掃き集められました。
風が強くなるとまた散らばってしまいそうですし、今のうちに焼却処分することにしましょう。

炎が吹き上がらないように小さめの山を作って、火の魔術で点火。
乾いた葉は乾いた音を立てて燃え、熾きになって、あっという間に灰に変わっていきます。
少しずつ葉っぱを足しながら、火の勢いが衰えないように。でも、燃え上がってしまわないように。


…去年もこうやって落ち葉の片づけを手伝って、焼却するときに横着して

火符『火災旋風』

とか言って風の術で遊んでたら、周辺の葉っぱも巻きこんで本当に大惨事になるところでした。
主に私の身が。
年俸ダウンが怖いので、今年は慎重にいきます。

去年と同じ失敗はしないのが私の売りなのですよ。
来年には忘れてる可能性もありますけど。
ちなみに、私の年俸は毎日のごはんとおやつです。
基本的な生活保障が無い幻想郷では、結構な待遇だと思うんですがどうでしょう。


でも、そう考えるとメイド長の咲夜さんも同じ待遇ということに。
つまり、咲夜さんは別のところでお得感を味わっていると。
たとえばお嬢様の傍に常に居られることとか。

…さっき想像の海に沈めたダイビングキャッチ咲夜さんが再浮上してきました。
また思考が逸れそうなので、今度はコンクリートで固めて沈めておきますね。

ごぼぼぼぼぼ…。











さて、焚き火がいい感じに安定してきました。こうなったらすることは一つ!
懐をごそごそ…と。あったあった。
「湿らせた新聞紙とアルミホイルで包んだサツマイモ~」

ててー♪

効果音はイメージです。

お芋を焚き火の下に埋めて、適度な火力を維持しながら休憩。
サボりじゃないですよ?これからの作業効率を保つためです。咲夜さんの気配は常に探っていますが。

ふと、館に接近してくる魔力を感知しました。
多分、魔理沙さんでしょう。
さっきも言ったとおり、門番隊も館内の片付けに駆り出されているため、外で魔理沙さんを迎撃できるのは私だけということになりますね。

…気づかなかった振りをしましょうか。
私一人じゃ足止めにもならないだろうし、狭い館内の方に戦力が集中してる今なら、魔理沙さんも突破は容易じゃないです。

なにより、放っておいたらお芋が消し炭になってしまいます。

仮に図書館にたどり着いても、風邪で寝込んでるパチュリー様を無視して本を奪って行くほど外道じゃないでしょう。
多分。
ついでに看病してってくれるとありがたいんですが。

―――あー?今日は門番も居ないのか?

そうこうしてるうちに魔理沙さんが到着したようで。
ここは正門からは死角なので見えませんが。

―――それじゃせっかくだし、たまには歩きで入らせてもらうぜぇぇぇ!?

あ、さっき掘った落とし穴に落ちた。
慣れない事すると痛い目に遭うといういい例ですね。
落とし穴から這い出た魔理沙さんは、顔を真っ赤にして突入していきました。

頑張れ。館内の皆さん。






















焚き火の中から包みを取り出して剥ぐと、丁度いい焼き具合のお芋が。
二つに割ると甘い、いい香りが漂って食欲をそそります。

頭の上で寝ていた小鳥さんが、その匂いに気づいたのか、手の上に降りてきました。
ちゃっかりしてますね。まるで私のよう。

小鳥さんの分のお芋を取り分けて、さっきと同じように空を見上げます。
澄み切っていて高く見える空は、もう冬が近いことを知らせてくれる。
焚き火と焼き芋で温まった体には、木枯らしも心地いいもので。
普段は図書館に篭ってますから、こういった外でのんびりできる時間というのが貴重に感じるものですよ。


葉が完全に落ち、もう何の幻も映すことのない蔦に覆われた紅魔館。
館内の炸裂音は聞えない振りをしながら。
のんびりとした晩秋の午後は過ぎてゆくのでした。




おわり
最初に思い浮かんだのは、冒頭のヒロインごっこと、末尾の焼き芋の部分だけだったり。

残りの部分は放置されたシリアルの如くふやけて増えました。
でも、そんな状態でもシリアルの糖分が溶けた牛乳は美味しく戴けるのでいいと思います。

なんのこっちゃ。
コメント



1.CACAO100%削除
コンフレーク美味しゅう御座いました(笑)
ええ、流石小悪魔ですね、そんな伏線を用意していてくれるとは!
2.名無し妖怪削除
人間ナイアガラwww
知ってる人何人くらいいるのかなぁ・・・。
3.手スタメンと削除
まったりとした文章の中に散りばめられるネタが濃いなぁ・・・
4.名無し妖怪削除
何故かいつもパリーグに負ける○日ファンの悲しみはどうすれば
5.名無しの一人削除
横○ファンの私は傷を抉られて泣きそうだ・・・