永遠亭の食事は騒々しい。
こりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこり……。
人参を食べる連中がほとんどであるため、どうしてもこうなる。
そんな中で人参以外の食べ物を食べる二人は栗ご飯に舌鼓を打っていた。
「美味しいじゃないイナバ」
「本当に美味しいわ。
人参料理以外も随分と腕を上げたわね」
「ありがとうございますっ!」
輝夜と永琳が口々に言うと、栗ご飯のおひつの横で緊張した様子で二人がそれを口に運ぶのを見ていた鈴仙はほっとしたように微笑んだ。二人は一緒に膳に出された牛蒡とシメジの味噌汁や柚子を隠し味にした浅漬けにも喜んで箸を伸ばす。
「「おかわり」」
「はいっ!」
と、その日はそれでよかったのだが、敬愛する師匠と普段あまり触れ合う機会のない輝夜に褒められたのがよほど嬉しかったのだろう。
鈴仙がノリにノッた。
「今日はきりたんぽ鍋にしてみましたっ!
てゐが作ってくれたきりたんぽが美味しいですよー」
「鮭のはらすを譲ってもらえました。
脂が一番のった部分を塩焼きでどうぞ」
「今日の朝食はとろろ汁です。さっき掘ってきたばかりの新鮮なとろろと麦飯。
白玉楼の妖夢さんに分けてもらった梅干とどうぞ」
どれもあまり値ははらないものの、旬のものばかりでやたらと美味しい。
その美味しさに隠れて破滅の足音がすぐそこまでやってきていることに、永琳でさえ気がつけなかった。
「……太ったんじゃない?」
久しぶりに弾幕りあうために会った妹紅が輝夜を見ての一言目がそれだった。
「そ、そんなことないわよー!!」
絶叫と共に放たれた弾幕が訝しげに首を傾げていた妹紅を飲み込もうとする。が、焦りと動揺で妙に集中的に放たれた弾幕は妹紅にあっさりと避けられた。余裕のある妹紅は付き添いで一緒に来ていた慧音に向かって、
「ねぇ、慧音もそう思うよね」
「あー」
慧音は困ったように視線をそらせた。
「ほら、慧音は優しいから指摘しないだけでやっぱり太ったと思ってるわよ。
あんたその服で外見からそれだけ太ったと思われるんだから、
中身はかなり酷いことになってるんじゃないの?」
そこまでつらつらと言い連ねた妹紅は、輝夜が黙ってふるふると震えていることに気がついてにんまりと笑った。
「ま、いいんでないの。私が生まれたころはそういう体格のほうが好まれてたんだし。
でも、今の時代でそういうのなんていうか知ってる?
……お・で・ぶべらっ!?」
輝夜が涙目で放った弾が顔面を直撃する。
そのままなし崩しに弾幕ごっこに移行する二人を見上げていた永琳は、苦笑しながら近づいてきた慧音の目礼に応じて頭を下げた。
「お久しぶりだ、永琳殿」
「ええ、本当に。でも、私たちはあまり顔をあわせないほうがいいのだけど」
「ああ、その通りなんだが」
永琳と慧音は手のかかるじゃじゃ馬娘の親同士と言った関係で、かなり友好的な関係を築いている。最近だと慧音側は人里に疫病が流行りそうになると相談したり、永琳側は人里の学校を通じてモノを教えるのが上手い慧音に弟子の指導方法を相談したりと輝夜、妹紅のことだけではない関係もでき始めていた。
「姫はもともとやせ過ぎなくらいだったから、
あまり気にすることはないと思うのだけど」
「ああ、そうだな。
彼女はあのくらいでちょうどいいな」
言いながら慧音は弾幕ごっこで色とりどりの輝きが瞬く空を見上げて見る。確かに普段であればすぐに息切れを起こす輝夜が未だに元気に飛び回っている辺り、あれで適正体重ではないかと思う。
そう、輝夜はそれでいいのだが。
慧音は視線を永琳に戻した。
「永琳殿。怒らないで聞いて欲しい」
「はい?」
「貴方も以前に比べるとかなりふくよかになっているぞ」
永琳の表情の変化を見ていた慧音が慌てて、
「元々の体つきが輝夜殿と比べて貴方のほうが女性的だったというだけなんだ!
ただ、その……その分、増えた分が目に付くというか、なんというか……」
永琳は愕然としながら服の上から自分のわき腹を摘んでみた。
ぷに。
「まったく! デリカシーのかけらもないんだから!」
妹紅と弾幕りあった輝夜が竹林の道をずんずんと歩いていく。
着ている服はかなりぼろぼろになっているが、リザレクションを繰り返したためか本人は多少すすけているものの綺麗なものだ。服と髪の間からのぞく肩や、服の焦げ目から見えるおへその辺りなど、性別を問わず触れてみたいと思わない者はいないだろう。
だが、永琳にはそんなことに意識を向けている余裕はなかった。確かにお風呂に入ったときに足を洗おうとすると妙につっかえるような感じはした。何故そのときにつっかえたものが何なのかを考えてみなかったのか。
「ただいまっ!」
後ろで歯噛みしている永琳に気付かず輝夜は永遠亭の玄関をくぐると、沓を脱ぎ散らかしてどすどすと廊下を進んでいく。永琳は輝夜の沓を揃えてそれを追う。
ちょうど台所で料理をしていたところだったのだろう、エプロンをつけた鈴仙がひょいと顔を出した。
「あ、おかえりなさーい。
もうすぐ晩御飯……」
「イナバ! 今日から私ダイエットするわ!
だから私も人参でいい!」
「え……」
鈴仙が絶句している間に輝夜は自室へ行ってしまった。
「ウドンゲ、わた」
輝夜を見送った鈴仙が、困ったように笑って振り返った。
「あ、はい。なんでしょうか?」
しも人参で、とは続けられず永琳の口が無意味にぱくぱくと動いた。
狂視、幻視とは違う理由で赤くなりかかっている目がすがる様に見上げてくる。
だがしかし ここで情に 溺れれば
待ち構えるは 肉団子の身
「私はしっかりいただくわ。
よろしくね」
「はい! 今日はですねー」
嗚呼、私の馬鹿。
永琳が後悔に血の涙を流しそうになっていると、一転して嬉しそうにぴんと耳が伸びた鈴仙が説明を始める。
「紅魔館の美鈴さんからすごく良いお肉をいただきました!
それで、あんまり手を加えると逆に勿体無いかなと思いましたので!」
鈴仙の説明にだらだらと背中を冷たい汗が流れる。
ヤバイ。この話の流れはどう考えてもヤバイ。
鈴仙は説明を途中で切ると永琳の手を引いて、今まさに調理を行っているらしい台所へと連れて行く。
「んもー。鈴仙ちゃん、ちゃんと最後まで自分で焼きなさいよー」
鈴仙とおそろいのエプロンのてゐがフライパンを振っている。
軽く謝りながら鈴仙がそれを受け取って中を永琳に見せた。
「ステーキにしてみましたー。
お肉の脂で焼き焦がしたカリカリのガーリックとどうぞー」
ガーリックてんこ盛りステーキだった。
思わず永琳の足元がふらついた。
この腹の肉を減らすには最低でもこれを上回る運動をこなさないといけないのか。
「あ、姫の分が余ってしまいましたので、
良ければもう一枚食べてくださいね、師匠」
「まあすてき」
なんかもう、いろいろとダメだった。
こりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこりこり……。
人参を食べる連中がほとんどであるため、どうしてもこうなる。
そんな中で人参以外の食べ物を食べる二人は栗ご飯に舌鼓を打っていた。
「美味しいじゃないイナバ」
「本当に美味しいわ。
人参料理以外も随分と腕を上げたわね」
「ありがとうございますっ!」
輝夜と永琳が口々に言うと、栗ご飯のおひつの横で緊張した様子で二人がそれを口に運ぶのを見ていた鈴仙はほっとしたように微笑んだ。二人は一緒に膳に出された牛蒡とシメジの味噌汁や柚子を隠し味にした浅漬けにも喜んで箸を伸ばす。
「「おかわり」」
「はいっ!」
と、その日はそれでよかったのだが、敬愛する師匠と普段あまり触れ合う機会のない輝夜に褒められたのがよほど嬉しかったのだろう。
鈴仙がノリにノッた。
「今日はきりたんぽ鍋にしてみましたっ!
てゐが作ってくれたきりたんぽが美味しいですよー」
「鮭のはらすを譲ってもらえました。
脂が一番のった部分を塩焼きでどうぞ」
「今日の朝食はとろろ汁です。さっき掘ってきたばかりの新鮮なとろろと麦飯。
白玉楼の妖夢さんに分けてもらった梅干とどうぞ」
どれもあまり値ははらないものの、旬のものばかりでやたらと美味しい。
その美味しさに隠れて破滅の足音がすぐそこまでやってきていることに、永琳でさえ気がつけなかった。
「……太ったんじゃない?」
久しぶりに弾幕りあうために会った妹紅が輝夜を見ての一言目がそれだった。
「そ、そんなことないわよー!!」
絶叫と共に放たれた弾幕が訝しげに首を傾げていた妹紅を飲み込もうとする。が、焦りと動揺で妙に集中的に放たれた弾幕は妹紅にあっさりと避けられた。余裕のある妹紅は付き添いで一緒に来ていた慧音に向かって、
「ねぇ、慧音もそう思うよね」
「あー」
慧音は困ったように視線をそらせた。
「ほら、慧音は優しいから指摘しないだけでやっぱり太ったと思ってるわよ。
あんたその服で外見からそれだけ太ったと思われるんだから、
中身はかなり酷いことになってるんじゃないの?」
そこまでつらつらと言い連ねた妹紅は、輝夜が黙ってふるふると震えていることに気がついてにんまりと笑った。
「ま、いいんでないの。私が生まれたころはそういう体格のほうが好まれてたんだし。
でも、今の時代でそういうのなんていうか知ってる?
……お・で・ぶべらっ!?」
輝夜が涙目で放った弾が顔面を直撃する。
そのままなし崩しに弾幕ごっこに移行する二人を見上げていた永琳は、苦笑しながら近づいてきた慧音の目礼に応じて頭を下げた。
「お久しぶりだ、永琳殿」
「ええ、本当に。でも、私たちはあまり顔をあわせないほうがいいのだけど」
「ああ、その通りなんだが」
永琳と慧音は手のかかるじゃじゃ馬娘の親同士と言った関係で、かなり友好的な関係を築いている。最近だと慧音側は人里に疫病が流行りそうになると相談したり、永琳側は人里の学校を通じてモノを教えるのが上手い慧音に弟子の指導方法を相談したりと輝夜、妹紅のことだけではない関係もでき始めていた。
「姫はもともとやせ過ぎなくらいだったから、
あまり気にすることはないと思うのだけど」
「ああ、そうだな。
彼女はあのくらいでちょうどいいな」
言いながら慧音は弾幕ごっこで色とりどりの輝きが瞬く空を見上げて見る。確かに普段であればすぐに息切れを起こす輝夜が未だに元気に飛び回っている辺り、あれで適正体重ではないかと思う。
そう、輝夜はそれでいいのだが。
慧音は視線を永琳に戻した。
「永琳殿。怒らないで聞いて欲しい」
「はい?」
「貴方も以前に比べるとかなりふくよかになっているぞ」
永琳の表情の変化を見ていた慧音が慌てて、
「元々の体つきが輝夜殿と比べて貴方のほうが女性的だったというだけなんだ!
ただ、その……その分、増えた分が目に付くというか、なんというか……」
永琳は愕然としながら服の上から自分のわき腹を摘んでみた。
ぷに。
「まったく! デリカシーのかけらもないんだから!」
妹紅と弾幕りあった輝夜が竹林の道をずんずんと歩いていく。
着ている服はかなりぼろぼろになっているが、リザレクションを繰り返したためか本人は多少すすけているものの綺麗なものだ。服と髪の間からのぞく肩や、服の焦げ目から見えるおへその辺りなど、性別を問わず触れてみたいと思わない者はいないだろう。
だが、永琳にはそんなことに意識を向けている余裕はなかった。確かにお風呂に入ったときに足を洗おうとすると妙につっかえるような感じはした。何故そのときにつっかえたものが何なのかを考えてみなかったのか。
「ただいまっ!」
後ろで歯噛みしている永琳に気付かず輝夜は永遠亭の玄関をくぐると、沓を脱ぎ散らかしてどすどすと廊下を進んでいく。永琳は輝夜の沓を揃えてそれを追う。
ちょうど台所で料理をしていたところだったのだろう、エプロンをつけた鈴仙がひょいと顔を出した。
「あ、おかえりなさーい。
もうすぐ晩御飯……」
「イナバ! 今日から私ダイエットするわ!
だから私も人参でいい!」
「え……」
鈴仙が絶句している間に輝夜は自室へ行ってしまった。
「ウドンゲ、わた」
輝夜を見送った鈴仙が、困ったように笑って振り返った。
「あ、はい。なんでしょうか?」
しも人参で、とは続けられず永琳の口が無意味にぱくぱくと動いた。
狂視、幻視とは違う理由で赤くなりかかっている目がすがる様に見上げてくる。
だがしかし ここで情に 溺れれば
待ち構えるは 肉団子の身
「私はしっかりいただくわ。
よろしくね」
「はい! 今日はですねー」
嗚呼、私の馬鹿。
永琳が後悔に血の涙を流しそうになっていると、一転して嬉しそうにぴんと耳が伸びた鈴仙が説明を始める。
「紅魔館の美鈴さんからすごく良いお肉をいただきました!
それで、あんまり手を加えると逆に勿体無いかなと思いましたので!」
鈴仙の説明にだらだらと背中を冷たい汗が流れる。
ヤバイ。この話の流れはどう考えてもヤバイ。
鈴仙は説明を途中で切ると永琳の手を引いて、今まさに調理を行っているらしい台所へと連れて行く。
「んもー。鈴仙ちゃん、ちゃんと最後まで自分で焼きなさいよー」
鈴仙とおそろいのエプロンのてゐがフライパンを振っている。
軽く謝りながら鈴仙がそれを受け取って中を永琳に見せた。
「ステーキにしてみましたー。
お肉の脂で焼き焦がしたカリカリのガーリックとどうぞー」
ガーリックてんこ盛りステーキだった。
思わず永琳の足元がふらついた。
この腹の肉を減らすには最低でもこれを上回る運動をこなさないといけないのか。
「あ、姫の分が余ってしまいましたので、
良ければもう一枚食べてくださいね、師匠」
「まあすてき」
なんかもう、いろいろとダメだった。
と、言うわけで気づいてあげて( ;ω;)
個人差。唾液酵素や男性と女性の差等は在るものの――
実は肉は余り太らんぞ?
特に赤身。蛋白質をエネルギーに代えるのは効率悪いのでな。
ネックはやはり脂身か。
あと、食べ合わせの問題がな。炭水化物、特に白米を多量に取った場合は――
ご覧の諸君、私はここまでのようだ。今、目の前で矢が引き絞られている。
あ、あと燃やす手段として腹筋は止めような。
筋肉付いて余計太くなr(アポロ13
おでぶじゃねー、ぽっちゃり系だーッ!
あと他の方々も仰っておられますが食べ物の描写と種類が多彩で良かったデス(礼
そりゃあ食べるしかないさ!
がんばれえーりん!w
妙にリアルな感じがして人事のように思えなかった…orz
そしてその薬をお分けてくださいお願いします。