「痛いじゃないウドンゲ」
「そうですか」
ちなみにウドンゲは何もしてない。
廊下で出くわすなり、開口一番これ。
「ウドンゲ、あなたいつの間にかうどんらしくなって」
「ふー、ふー、ちゅるるん、ちゅるるるん」
「ベッキーぃ」
鈴仙の後ろから除夜の鐘を中途半端に高くしたような声がしたので、振り返ってみるとてゐだった。
「そう、ウドンゲとももうお別れなのね」
「そうなんですか。悲しいですね」
「悲しいねぇ」
さらば、ウドンゲ! 君のことは忘れないよ!
次回宇宙戦記ウドンゲインZ・最終回! 「嗚呼、残光のガイア」に……チェック☆メイド!
「歯が痛い。集中できなくて仕事にならない」
「致命的じゃないですか師匠。ししょー!!」
鈴仙は、叫んだよ。
どうもえーりん、虫歯らしいよ。
「じゃあホラ永琳。さま。歯医者行けばいいじゃん」
てゐ、頭いい! 歯が痛いなら歯医者に行こう! 目が痛いなら目医者に行こう! 内臓が痛いなら内科に行こう!
「歯医者嫌い。怖い。あのキーンって音。うわー」
「師匠ってば子供っぽいー。そこに痺れる憧れるゥー」
医者が歯医者嫌い。まあ、本人にしてみれば別物、なのかな?
「でもさ永琳さま、今ちょうど歯医者でキャンペーンやってますよ。虫歯撲殺とか何とか」
「歯、折っちゃってるねそれ」
「鈴仙うるさい」
「ひどいや」
「へぇ、具体的にどんなキャンペーンなの?」
お、えーりんが興味を示したぞ!
やっぱり治したい気持ちはあるみたい。当然かぁ!
「今虫歯を見せるともれなくパンチで折ってくれるのよー」
「男気溢れるゥー! 素敵! でも痛いのイヤ」
永琳さまに男気なんていらないさ。僕らの女医さんだもん。女医さん。女医!! ウフフンフーン
だから痛いのイヤ。納得だね!
どっちにしろそんなキャンペーンやってないけどね!
「で、でも師匠、歯医者行かないと酷いことになりますよー」
「なぁに、死にはしない」
「あんたは死ななくても、あんたの医療ミスで患者が死ぬ。集中できないんでしょう」
ごもっとも。珍しく鈴仙がまともなこと言ってる! うどんのくせに!
やんやん、惚れちゃいそうだわ! うどんに!
「でもぉ」
「可愛く言っても優曇華でございます!」
どうしても歯医者に行かせたい鈴仙ことウドンゲ、必死に呼びかけます。
呼びかけてるんですよ。
「永琳。さま。あっちの歯医者では今、虫歯を治すとウドンゲがもらえます」
「え! あ、いやそう、もらえるんですよ!」
身売りウドンゲ、健気だねぇ。
「うーん、そうなの?」
「しかも今ならおまけでもうひとつ付いてくるのよー」
「付いてくるんですよ! 私が!」
ウドンゲひとーつ、ふたーつ。今あるのがひとーつ。合わせてみっつ!
「そんなにたくさんいらないわ」
「そんなっ! 師匠!」
ああ、このままじゃ歯医者に行ってくれない! 師匠がッ! 歯医者にッ!!
ならこのまじかる☆てゐに任せろウドンゲ。私がこの口車で永琳を、っ永琳さまを手篭めにしてみせるわ!
歯医者にッ! 行ってほしいだけだッ! このテウィがッ!!
聞こえてるぞォー! この三馬鹿トリオォがァ! そんなに言ったってェ! 歯医者になどォ行くンものかァー!!
「あそこの歯医者ではウドンゲを抱っこできます」
「ウウッ! 抱っこだと……。この、私がッ! ウドンゲをッ!」
「イエス、ミセス永琳!!」
「誰がミセスだこの秋葉原兎がァー!!!」
永琳は殴ったよ。僕らのアイドルてゐたんを殴ったよ。
オーラで。
ゆ、許せないィィィィ! フンガー!
「だがパンチは尻から出る」
「師匠それはパンチじゃなくてパンチラです」
「だまらっしゃい」
永琳は目からビームを放ったよ。鈴仙はコゲたよ!
「褐色キャラというには黒すぎますよ師匠」
「じゃあ黒キャラでいいじゃん」
わぁー、永琳あったまいー! っとてゐ復活! さすがてゐだ、なんともないぜ。
「もう何でもいいから歯医者に行ってください師匠」
「敗者になれだとォ? てめェ、この俺様を誰だと思って言ってんだァ? アァ?」
「サー! 永遠亭のナンバー2、八意永琳さまであります! サー!」
「あー歯痛い」
「だから敗者行け永琳。さま。サー」
もうそろそろどうでもよくなってきたんで、さっさと歯医者行ってくれますかね?
「あー、てゐ頭いいからわかった。歯医者怖いのが子供っぽいわけだからいっそ幼児化しろ永琳」
「そうですよ師匠。そうですよ師匠」
それはいい! 理屈は抜きにして。
「幼児化したら怖いものがもっと怖く見えるじゃない」
「今更まともなツッコミするな永琳!!」
「てゐこわぁい」
怒ったてゐもかわいいよ!
もはや完璧に呼び捨てなのは、どうしましょうね?
りりかるまじかる。
「というわけで鈴仙、あんたはなのはのコスプレするのよ」
「それが運命(さだめ)だとでも言うのかー!」
「うん」
ウドンゲ、体張ります。
「ウドンゲがそこまでするなら、私も思い切って幼児化するわ」
「よっしゃぁ、そうこなくっちゃ! さすがは俺たちの永琳さまだ!」
よっしゃあ! そうと決まれば早速準備開始……。
「あ」
「あ」
「あ」
おい! 永琳の口から何か飛んだぞ!
は……歯だ! 歯が抜けたァ!
永琳の虫歯抜け落ちた!
どんだけオンボロなんだァ!? ここまで放置しやがって!
しかもすぐさま生え変わった、だとォー!?
「あんたは鮫だー!」
断定で。
「そう、私は鮫。女は海」
もう痛くないらしいよ。
「蓬莱人の生命力は世界一ィィィィ」
「私は、師匠を歯医者に行かせたかっただけだ!」
どうしても。
「いやぁ、お疲れ」
「サー! んじゃ仕事に戻ります、サー!」
「サー! トウッ! サー!」
月兎防衛軍第八艦隊、これにて解散!
前作も今作も二話で打ち切り・それがポリシー!
宇宙戦記ウドンゲインZ! また宇宙のどこかで会おうぜ!!
君のコスモに、チェック☆メイド!!